2008年03月14日

俺たちフィギュアスケーター 60点(100点満点中)

ウィル・フェレルのすべらない映画
公式サイト

コメディ俳優ウィル・フェレルと『バス男』ジョン・ヘダーがフィギュアスケートのペアを組む、スポ根コメディ映画。邦題は過去にウィル・フェレル主演した『俺たちニュースキャスター』から派生したものとは言うまでもない。

現実の有名スケーター達が何人か出演している事からも、おそらくはアメリカのスケート業界のバックアップあるいは承認を受けていると推測されるが、実際にはスケート業界の裏側、内幕をブラックに皮肉る様なギャグばかりが用意されており、"洒落のわかる大人"の仕事と感心させられる事しきりだ。

"夢"と"商業主義"とがせめぎ合う存在である、大会マスコットキャラクターの扱いにまず、そのブラックな皮肉が文字通り象徴されており面白い。序盤の大会では火だるまになってオシマイだったものが、最後の大会のキャラクターはしっかりリベンジを果たしているあたり、ギャグを繰り返して発展させる基本に忠実だ。

表彰式で乱闘した選手に処分を下す場に、現実に過去ハーディングと揉めて話題になったケリガンを登場させるなど、単なるサービス出演ではなく、ネタとして機能させているのも見事。そしてそんな役を受けてくれた本人もまた、"洒落のわかる大人"なのだろう。一方で名前しか登場しない人物の扱いがクソミソなあたり、おそらくは出演を断られた意趣返しであろうと推測させられ、また苦笑ものだ。どちらに転んでもネタに利用してしまう貪欲さが素晴らしい。

ライバルペアの存在も含め、業界内をどちらかと言えばマイナスイメージの強い風に描いておいて、単なるブラックギャグ要員として出オチと思われたストーカーが、物語そのものに意味を与える重要な役割を演じ、エンドロールの締めまで行ってしまうなど、とことんスケート界を笑いものにしつくす意地の悪さが徹底している。

そうした小ネタ関連の意識徹底は見事なまでだが、ではストーリー的な面、特に主人公二人の心情的な変遷はどうかと見れば、こちらはかなり徹底が足りず、芯の通らなさを感じてしまうのが辛い。

最初は反目し合っていた二人が、いつしか認め合って最強ペアとなる、という王道を描くには、転機およびそれが必然となる前段を描いておかなければ、そういう話だからそうなるに決まっているのだと押しつけている事にしかならない。

本作はそれが顕著で、ペア結成初競技の際に、転んだジミーにチャズが手を差し伸べる局面が、"転機"として配置されているが、その時その場で"認め合う"必然を生むための、前段となる振りがそれ以前にあまりに不足し、むしろ近づけばケンカしている描写ばかりが印象に残っているため、唐突すぎるのだ。

そこで観客に「いきなりかよ!」と突っ込ませるアメリカンギャグを狙っているにしては、前後のリアクションがあまりに普通すぎ、笑うところなのか感動するところなのか、判断に困らされてしまう事となる。

最後の試合のピンチから大技成功の流れにしても同様に、スポ根友情モノの体で見せるにはマヌケで、バカバカしいと笑い飛ばすにはマジメで、結局、バカに徹するわけでも努力と友情の感動に徹するにも、どちらの側も中途半端でメリハリがない

これはあるいは作り手側の中に残っていた迷いや照れが、そのまま現われてしまったのだろうとも推測され、その事はオチの文字通りの投げ出しっぷりからも見て取れる。

認め合う転機が唐突なら、女性絡みの仲違いからの復帰もまた唐突で、チャズが誤解を解こうと何度も電話する描写は面白いが、結局その電話を聞く事なしに和解したのでは、ギャグとしてもストーリーとしても構成の筋が通っていない。トイレで真相を聞かされたにしても、現場で実際にチャズがケイティの乳を揉んでいたのは事実なのだから、そこに対してのフォローをギャグとして展開する事も可能だった筈だ。

終盤にて、チャズの足を応急処置している女性医療スタッフの、大きく開いた胸元を映像として強調しながら、チャズが全く無反応だったのは、おそらくは大技の成功とペアの昇華によって依存症を克服したという意味なのかもしれないが、少しわかりにくい。

と、ストーリーやメリハリには問題が多く、素直に楽しむには引っかかる要因となってはいるが、秘技練習で人形の首を何度も斬ってしまう場面で、その人形の顔がわざわざジミーに似せてあったり、セックス依存症コミュニティの会合帰りに絡み合うメンバー達の中で、一人だけ単身オナニーしていたらしき男がいるなど、劇中の誰も突っ込まず流してしまう"ボケ"を見出してクスクス笑う楽しみは、充分に得られるだろう。

と言っても、あくまでもシニカルギャグなためクスクスニヤニヤ止まりで爆笑とまでは行かないのが実情。チンコネタで笑うのは小学生までだろう。劇場で無理から大声を出して笑って、「ここで笑えるオレってイカすだろ」とでも言いたげな、空気の読めないオナニーマンは、存在自体が迷惑なので家から出ないでほしい。笑い方にもセンスは要求されるのだ。



tsubuanco at 17:53│Comments(8)TrackBack(4)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 真・映画日記(2)『俺たちフィギュアスケーター』  [            ]   2008年03月15日 18:59
JUGEMテーマ:映画 (1から) 午後3時半に映画館を出て渋谷に移動。 「シネマGAGA」でやる『俺たちフィギュアスケーター』の次の時間を見ると4時40 分の回のようだ。 十分に間に合う。 渋谷のTSUTAYAで前売り券を買おうとしたが……なんと売り切れ! 仕方なく、当...
2. 【2008-62】俺たちフィギュアスケーター(BLADES OF GLORY)  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2008年03月21日 00:04
5 人気ブログランキングの順位は? 史上初! 男子フィギュアペア?
3. 俺たちフィギュアスケーター  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2008年08月18日 20:42
 『たとえ何が起こっても、氷の上では華麗に舞うぜっ!それが俺たちの生きる道!?』  コチラの「俺たちフィギュアスケーター」は、日本での公開時にも結構話題になっていたフィギュア男子ペアが大活躍する爆笑コメディです。いやぁ〜、季節はずれにも程がある!まぁい....
4. 【映画】俺たちフィギュアスケーター…ショート・サーキットってどんな映画だったっけ?  [ ピロEK脱オタ宣言!…ただし長期計画 ]   2008年08月27日 20:44
今日{/kaeru_fine/}は夕方頃から庭で友人らとバーベキュー{/silver/}の予定。 天気を気にしていたのですが多分大丈夫(夕立ちは怖いですけどね{/face_ase1/})。 …ということで、夕方以降は酔っている{/face_ase2/}と思われるので今のうちにブログの更新です。 本日は映...

この記事へのコメント

2. Posted by 力薬   2008年03月12日 20:30
字幕で「ググる」という単語を使われていたのが気になりました。以前同級生に振った際理解されていなかったみたいなので…
携帯でも変換認識されてるということは今や一般用語としてすっかり浸透しているのでしょうか、驚きです。(の割にはあまり聞きませんね…

本編はシニカルやシュールギャグ好きなので遠出の甲斐ありと満足しましたです。竹のカーテンやアイアンロータスやら、北の国ネタが妙にツボにきました。
3. Posted by 羽生   2008年03月13日 00:08
あら?渋谷の映画館では大部分のお客さんが爆笑してましたが、彼等は全員オナニーマンですか?価値観や感受性の違いをいちいち非難されるって嫌だな…
4. Posted by 埼玉の孤狼   2008年03月13日 10:18
スティーブン・セガール氏の「DENGEKI 電撃」のエンド・ロール観た時点では???だったのですが、ウィル・フェレル氏のようなシモネタ専門のお下劣コメディアンって、米国では一つのジャンルとして確立しているようですね。

多少誇張気味に描かれてはいるのでしょうが、日本と違い、あちらではフィギュア・スケートって、スポーツ・競技、と云うよりも、興行・見せ物、の側面が広告などでかなり色濃く強調される点が、成程エンターテイメントのお国柄かな、と。

何だかプロレスみたいだ、とも思いました。最近日本のプロレスの興行形態も、だいぶアメリカン・ナイズ?されましたよネ。
5. Posted by カナブン   2008年03月13日 13:04
ああ…コメントが反映されない…プライドあんの?
6. Posted by つぶあんこ   2008年03月13日 16:56
「ググる」は新聞記事にもなった記憶があります。

UWFのレーザーやスモーク演出、FMWのゲテモノデスマッチ路線や男女合同興行、SWSのWWF輸入らがシンクロして行われ始めたあたりが、アメリカン化への転機ですかね。その前にグレートカブキの逆輸入なんかもありましたが。

渋谷(笑)
他人が笑わないと自分が安心して笑えない、中身カラッポのメッカじゃないっすか(笑
東京の観客はレベルが低いから楽だというのは、お笑い界でも常識ですよ。

>価値観や感受性の違いをいちいち非難されるって

そう言うアンタ自身が、オイラが価値観や感受性で書いているブログをどうこう言うのはズルいですよ?

同じIPで名前だけ変えてバレないと思ってる卑怯者のクズが、
どの口でプライド(笑)
腹いてえ(笑)

もうひとつ、オイラはオマエの母ちゃんじゃないから、
相手してやる義務はないんですよ(笑)
お外に出れたらまたおいで(笑)
8. Posted by 関東の貴   2008年03月17日 12:50
ど、毒あんこちゃんだ!

渋谷にホラー映画を観にいくと、観客のリアクションがいちいち大きくてそれはそれで面白かったです。でもマナーがなぁ‥‥。。
9. Posted by 埼玉の孤狼   2008年03月18日 00:12
え〜、小生が鑑賞した地は、山手線沿線最大の魔都にして、ダ埼玉(旧い・・・)県民御用達の、池袋、でありんした(笑)。

上映開始前から、そうなるんじゃないのかなぁ、とあらかじめ覚悟?していた通り、ポップコーンとコーラを手にした7〜8人のガイジンさんの集団が、シモネタギャグのシーンで気持ち良さそうに大笑いしていましたョ。

まぁ彼らの場合、映画を鑑賞に来ている、のではなくて、イベントとして楽しんで過ごしている、ってな感覚なのでしょうし、やっぱり笑いのツボが微妙に異なるみたいでして、ツラれて笑う、と云う訳にもなかなかいかないですよネ。
10. Posted by つぶあんこ   2008年03月18日 16:48
ノーカントリー観た時にいた外人客が、ブラックユーモア的な会話場面でいちいち声を出して笑ってて非常にウザかったです。郷に入っては郷に従えよと。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments