2008年03月20日

マリア・カラス 最後の恋 24点(100点満点中)

イノセントから新型ランドシップを手に入れた、カラス・カラスの最後の決戦(銀河万丈)
公式サイト

世界的に有名なオペラ歌手マリア・カラスの没後30年を機に製作された本作、彼女の晩年をフィクションとして描いた2002年作品『永遠のマリア・カラス』の前段として触れられた、ギリシャの海運王アリストテレス・オナシスとの愛人関係を題材としている。邦題ではわかりにくいが、原題が『CALLAS E ONASSIS(カラスとオナシス)』である事からも、マリア・カラス一人ではなく二人が中心である事は大前提だ。

だがそれにしては、特に前半の構成において、若干のバランスの悪さを感ぜざるを得ない。カラスの最初の夫メネギーニ氏と、後に愛人となるオナシスとの差異を明確とし、その対比によって"最後の恋"の必然としているのであれば、納得の行く構成と言えるが、どうにも中途半端だ。

太った容姿を揶揄され、自身もコンプレックスを抱いていた若きカラスを、メネギーニは見た目に関係なく"歌手"として扱い、その能力を見出したとする、二人の"出会い"シチュエーションを、カラスを演じる美人女優ルイザ・ラニエリにデブスーツまで着させて再現している、序盤のオーディション場面。これはカラスを歌手としてではなく一人の女性として(表向きは)扱ったオナシスとの対比を意図したものであり、その点においては成功しているが、対比となる材料がその場面のみに留まり、その後別れに至るまでの二人の関係性が、描写としてあまりにも希薄では、対比して盛り上げるための情報があまりに少なすぎるのだ。

そのため、特に悪いところが見当たらないメネギーニの愛や信頼を捨ててまでオナシスに惹かれていく展開が、現実としてそうだったからそういう事にしておけとでもいった、極めて誘導的なものでしかなく、ドラマとしての必然、説得力に欠けてしまう結果に繋がっている。これでは出会いまでに要された尺も無意味に等しい。

何故その様に、メネギーニの描写が希薄なのかと鑑みれば、彼を描けば描く程、観客の感情移入や同情は、愛に苦しむ(という流れとされている)カラスやオナシスより、メネギーニの方へ向いてしまう事に繋がってしまうからだろう。何せ特に悪い事をしてもいないのに捨てられるのだから、可哀想に決まっている。だから観客に考える暇を与えないうちに、サッサと退場させられてしまうのだ。

そんな欺瞞と誤摩化しが最初から存在するカラスとオナシスの恋愛は、それ自体が愛という美名を冠していいものか首を傾げるものでしかなく、どれだけ奇麗ごとを並べて感動的な悲恋話にしようとしても無理がありすぎ、本作ではその疑念を払拭出来ていない。

一人の女性として扱ったというが、ではオナシスは、カラスが無名の、少し美人で少し歌が上手いだけの一般女性だったら、そもそも自分のものにしたいと願っただろうか。カラスの側も、オナシスが世紀の大富豪ではなく、そこらのショボくれたジジイだったら、過大なる愛をささやかれ続けたところで果たしてなびいただろうか、当然無いだろう。結局は欲や執着と打算による結びつきでしかない事は明白で誤摩化し様は無い。それはカラスとは結婚せずにジャクリーン・ケネディとは結婚した事実からも瞭然であり、贅沢に溺れて研鑽を忘れ、舞台上で音を外す失態に陥るなど、堕落したカラスの状態もまた同様。

これで感動出来る話になるわけがないのに、無理からそうさせようと必死な事ばかりが伝わってくる、特に終盤の強引なコジツケには、苦笑する他無い。

ただし、カラスとオナシスを始めとする、実在の人物を演じたそれぞれの俳優の、ビジュアル的ソックリ度はかなり高く、その点では問題なく楽しめる事は間違いない。特にカラスを演じたルイザ・ラニエリの美しさは、内容の空虚さに耐えて最期まで見させ続けるだけの魅力を誇るものだ。そのためにデブ時代さえも美人に見えてしまうのは困りものだが。

本当の自分(笑)を大切にしてほしくてたまらない、セレブ(笑)に憧れるメロドラマ好きスイーツ層であれば、奇麗ごとにまみれたお安いドラマでも、むしろその方が楽しめるのかもしれないが、大人には無理だ。



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