2008年03月26日

アフター・ウェディング 81点(100点満点中)

あー父さん母さーん あー感謝してーますー♪
公式サイト

デンマークの女性監督スサンネ・ビアによる、米アカデミー外国語映画賞ノミネート作品。同監督の『しあわせな孤独』にも出演していたマッツ・ミケルセンが主演となる。

幸せなラブストーリーを想起させるタイトルに反してヘヴィーな人間苦悩が繰り広げられるのは、前作『ある愛の風景』同様。基本的な作劇や演出、映像手法もまた、これまでの作品と大きく変わるところはないが、決してマンネリに陥らないのは、それだけ同監督の作家性が完成されているという事だろう。

家族を題材に、対比や対称、相似あるいは逆転の図式が描かれていく人物構図も変わらずだが、今回は特に、父親としての生き方を構図の主軸としている様に見受けられる。

主人公ヤコブ(マッツ・ミケルセン)と実業家ヨルゲンの二人が、父親像の投影として配置されている。実の子と育ての子というファクターを、二人それぞれに少し異なるかたちで背負わせながら、結果として"育ての子を手放す"同じ選択を双方に取らせるなど、比較によって人物像を彫り込み、一人の人物の感情描写から、別の人物の感情をも推測、想起させるべく作り込まれている。

ヨルゲンに生き方を左右する選択を迫られたヤコブが、今度は自分の養子(的存在)に同じく今後の人生を大きく左右する選択を迫る、相似の図式の後に、それぞれが選んだ結果は真逆のものとする、など、比較構図をパターン化せず様々に駆使する絡み合いが、単純化しないリアルなドラマを生んでいる。

序盤に娘の口から「父に本当の事を教えてもらった」と言わせておいて、終盤には、もう一つの秘密は教えてもらえなかったとし、互いに対する理想と現実の食い違いによって、愛や悲劇を単純化しないなど、似た図式をずらして反復させる手法の巧みさにより、説得力のある感動へ導かれる事となる。

判明する二つの大きな秘密自体は、大映ドラマや韓流ドラマにありがちなものであり、それそのものは特筆すべきファクターではないが、それを決してベタなメロドラマに終わらせずに、監督得意の手法にて、固執する志向思う様にいかない現実の狭間で苦悩する人間を描いているのだから、やはり創作にとって大切なのは、題材よりも表現手法に尽きるのだと再認識させられる。

複数の人物がそれぞれの思惑を抱えて絡み合うドラマを、本作では基本的に一対一の局面を多用して事態を推移させる事で、比較構図がより明確となり観客の理解や認識も容易となるべく構成されていると見出せれば、手法が的確であると一層に感心させられるだろう。家族が集うなどの場面でも、人物関係を描く段に至っては、対峙する二人以外は背景と化してしまう程に無駄なく用いられているのだ。

監督による男性像や女性像の特徴は、『ある愛の風景』レビューにて既に書いたので重複は避けるが、二人の父親の人物像と母親あるいは娘のそれを比較すれば、本作でも変わらない事は明白。子供の使い方が優れているなども同様。それにしても毎度、娘役のビジュアルおよび演技の魅力高さには畏れ入る。

主要人物が出揃うまでの展開があまりにも出来すぎていると観客に思わせておいて、劇中にて「出来すぎだ」と言わせる事で、これは誰かが何らかの目的で仕組んだ事であると、観客に対し真相への興味を抱かせるべくコントロールするといった様に、予想を先回りして興味を持続させる作劇も秀逸。

インパクトの強い題材を選択した前作『ある愛の風景』に比べれば、確かに重くはあるものの大人しめな印象を受けるが、完成された創作テクニックは健在であり、映画好きならば間違いなく楽しめる傑作である事に相違ない。

ハリウッドデビューとなる次作『悲しみが乾くまで』への期待も高まるというもの。


tsubuanco at 17:22│Comments(1)TrackBack(5)clip!

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この記事へのコメント

1. Posted by 満塁   2008年03月26日 22:53
ハイッハイッ(笑)
“焼銀杏”“幸うす子”に続く娘。ネタは、意外とベタでしたねぇ。

失礼しました。初めましてです。
ハローの現場に原資を割かれ、ここ数年は年間70本程度の鑑賞に止まっている自分にとっては、とても参考になるブログで“あー感謝してーますー♪”

これからも宜しくお願いします。

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