2008年03月28日

ブラブラバンバン 13点(100点満点中)

ふしぎなボレロを てにいれた!
公式サイト

柏木ハルコの音楽部活エロコメディ漫画を実写映画化。

音楽に限らず部活やスポーツで皆が頑張って上手くなるタイプの作品は、一つのテンプレートとして大量に存在し、その中で如何に独自のカラーを出すか、あるいは王道を突き詰めるか、といった作り込みが求められるジャンルに、本作も位置するとして問題ないだろう。

原作の場合は、音楽で発情する少女の特異性を前面に押し出し、エロを強調する事で読者の興味を惹き、そこに部活ものとしての努力や困難を絡め、常にエロありきで展開していく、という方向性をとっていた。音楽はエロに必然を持たせるための素材にすぎないと見ても過言ではない程に、である。そこに面白さがあったのだ。

にも拘らずこの映画版は、音楽部活映画の傑作『スウィングガールズ』の成功を意識したためか、あるいは登場人物達と同世代の若年層をメイン対象としたためか、エロは導入のスパイスに留め、音楽部活青春ものとしての側面に大きく偏った方向性をとっている。この事が本作の、雑多で散漫な仕上がりの根源にあるのだろう。

いい音楽を演奏すると発情し暴走してしまう少女を、だが音楽の才能は抜群にあるため部から外すわけにいかず、どうにかして暴走を押さえるべく試行錯誤する、との展開を表向きのメインストーリーとし、それに平行して部員達の技術や精神の成長を描いていくのが、原作のスタイルである。それを行うには当然、エロい場面をエロく演じられる出演者を起用しなければいけない。

だが出演者達は総じて、アイドル的な位置づけにある者達ばかり。当の発情少女・芹生ですら、元アイドルで現在は歌手の安良城紅では、エロい場面など撮れようもないのだ。実際、芹生と主人公・白波瀬(福本有希)が出会う場面では、発情を見せると思わせておいて、空高く舞い上がっていくという、非現実的な描写に逃げている。ただし、そうした非現実的なイメージ描写で最後まで通すのであれば、それはそれで一つの方向性ではあるが、次の部室での再開場面では、原作に近いかたちで芹生が白波瀬を脱がせて押し倒し、続いて村雨に抱きついてキスする場面まで用意されている。にも拘らずエロはそこ止まりで、そこから先の発情も、発情に対する主に男子のリアクションもロクに描かれなくなるのでは、中途半端にすぎる。

芹生の発情暴走と理由の解明あるいは克服などが、ストーリーのメインにあるかの様に思わせながら、特に後半からはごく平凡な青春部活もののストーリーに安定してしまい、発情に対して何ら説得力のある解答を見せないままに終わられては、楽しめるわけがない。ラストの歌いながらの指揮は、その場面単独で見れば高揚感のあるシーンとも言えるが、何故発情せず暴走もせず歌う事で演奏しきれたのかが謎のままでは、ストーリー構成から逃げて適当に終わらせただけでしかない。

原作を適当に食い散らかして羅列しただけの脚本構成は、あまりに雑で中途半端だ。名門美ヶ丘高校に行く場面などがそのピークだろう。何をどの様に、誰の立場から見せたかったのか、その後の展開にどう繋げたかったのかなど全てが曖昧で、転機として成立していないのだ。

芹生が指揮者に定着した理由もなく(『タブー』の時はホルンパートがなかったからであって、他の曲にその理由は適用されない)、そもそも演奏と指揮では発情の反応が異なるのだろうか、といった根本的な疑問もスルーのままで先へ先へと進められては、話がどこへ向かっているのかも、どこを楽しめばいいのかもわからなくなる。

後半における、他のメンバー達の努力や協調をクローズアップする展開そのものは、部活ものの王道として狙いは理解出来るが、村雨目当てで入ったのが大半と最初に説明しておいて、村雨がいるのに芹生が抜けただけで大量に辞めてしまうなど、自分で決めた話すら抑えられていないのでは、行き当たりばったりにすぎる。最初からいる3人の部員は残留して、ここにきていきなりメインキャラの様にアップを多用され始めるも、結局最初から最後までその他大勢としての扱いしか受けいていないのだから、映像にエモーションが伴っていない。これなら部員を大量に辞めさせる必要はなく、最後の演奏の不自然な吹替えの違和感も軽減された筈だ。

とにかく人物描写が記号、類型、表層的なものばかりに終始し、あまつさえ上述の様に、誰をどう動かし捉えるかすら、何の考えもないとしか思えない有様なのだから、青春群像劇として成立していない。白波瀬歩を中学時代に振った少女(南明奈)が、何の用もなく最後まで出続けているなど、あまりに作劇が雑すぎる。

怪物キャラとして周囲を振り回すべき存在である芹生もまた、中途半端な描写と演出により、良い意味での個性を出せずに終わっている。これはエロを控えめとした時点でも既に必然ではあったが、それに加えて演じる安良城紅がビジュアル演技双方ともに全く魅力や能力に欠けている事が最大要因だろう。

芹生は原作でも、「昔のエロ本に登場するインチキ女子高生」と揶揄される、とても高校生には見えない大人びたビジュアルと巨乳の持ち主ではあるが、強面ながらも美人であり、喋りさえすれば結構普通の子であるとの設定で、だからこそ発情や暴走時のインパクトが強くなるのだ。では安良城紅はどうか。中途半端な馬面の老け顔は、確かに「昔のエロ本に登場するインチキ女子高生」的ではあるが、美人には当たらない。汚らしい茶髪が老け顔の印象を強めているのも、明らかにヘアメイクの失敗だ。だいたい、マトモに日本語も喋れない人間を、普通の日本人役として起用し、台詞を喋らせている時点で、マトモに映画を作る気などない事は明白だ。ドラマ版『カバチタレ!』に出演していた頃の香里奈や、少し前の岩佐真悠子の様なイメージが、本来の芹生であった筈。

スクールカースト下位キャラを演じる福本有希や足立理あたりは好キャスティングと言えるが、近野成美はキャラ演出がチグハグで、無理から乱暴な言葉を使わされているだけにしか見えない、岡田将生などは結局どんな人だったのかすらよくわからないまま、といった具合に、ストーリー、人物設定、人物描写、演出、演技、全てが中途半端なバラバラな状態。これでは作品として完全に破綻している。

結局、『スウィングガールズ』らに類する作品のヒットに安易に便乗し、様々な金勘定を優先させただけの、志の低い企画の時点から、面白い作品など生まれよう筈もない事は決定づけられていたのだ。監督も脚本も無名の若手なのだから尚更。

エロコメディとしてはそこそこ面白い原作が、この映画のせいで一緒くたに駄作扱いされやしないか、そちらが心配だ。



tsubuanco at 15:34│Comments(4)TrackBack(5)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by よゆぽん   2008年03月27日 17:11
まいど、ども。

原作を抜きにして、コメディーにするのか青春ものするのか、ハッキリしたらもうすこしマシになってたような気がします。

2. Posted by くきねえ   2008年03月28日 00:03
1 大いに同意しますね。
原作と吹奏楽好きで見に行ったのに作りがヘボすぎて台無しだったし
3. Posted by つぶあんこ   2008年03月31日 17:56
リアル奏者なら噴飯ものでしょうね
4. Posted by わとそん   2008年10月18日 19:55
チャンネルNECOで見ました。
たしかにぬるい映画でした。

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