2008年03月29日

カンフーくん 22点(100点満点中)

子供をバカにした子供をバカにする映画
公式サイト

中国からやってきた8歳の少年が、日本支配を企む悪と戦うカンフー特撮映画

何故かここ最近、日本やアメリカでパロディ系カンフー映画が多く作られているが、本作もあるいはそのムーブメントに便乗したのだろうか、にせよ企画意図が今ひとつ不明瞭で、その事が最終的な完成度にまで引きずられている感が強い。

基本的には子供層をターゲットとしているであろう本作だが、では何故泉ピン子が主人公少年と並ぶ重要ポジションにキャスティングされているのか、という疑問が、まず誰でも浮かぶだろう。あまつさえ、彼女の役どころは"ニュー幸楽"なる中華料理屋の女主人とあっては尚更、子供達はそれがパロディネタと理解出来るわけもなく、本作が対象としているであろう小学生の親達にしても、『渡る世間〜』を能動的に観る程には、まだ老け込んではいない。

それだけでなく、カンフーの使い手としてのアクション場面が、キャラクター立ておよびストーリー展開の必然として設定されている役どころなのだから、他にいくらでも適役はいる筈だ。いろんな意味で使いづらい泉ピン子をわざわざ使う意味からして不明瞭に尽きるのだ。

実際、公園で太極拳の演武を行っている初登場シーンでは、彼女に使い手らしい動きが出来ない事をごまかすべく、やたらとアップを多用して落ち着きなくカメラをグルグル回らせるなどして、肝心の体の動きが少しも伝わらない。この時点で、彼女の起用に無理があった事と、作り手の映像センスがその無理を補うまでに及んでいない事が顕著となっている。後に登場するエアギター場面でもやたらと顔アップを多用して、肝心のパフォーマンスを見せないのだから、センスや理解のなさは確定的だ。

メインのスタッフも、特撮監督としてはともかく、映画監督としてはセンスと力量に多いに疑問が残る小田一生が監督な時点で、良質なジュブナイルドラマは期待出来ない状態だ。さらに脚本が何故か『おじゃる丸』などで知られるアニメ監督・大地丙太郎と、どういうつもりなのか全く不明な人選。

そもそも原案としてクレジットされている山岸きくみなる名前からして、『カタクリ家の幸福』の脚本家として過去に仕事を残しているものの、経歴も素性も一切不明の謎の人物である。企画の時点で既に怪しさ満点で迷走しているのだ。これで面白いものが出来ると考える方がおかしい。

主人公・カンフーくんは、確かにアクションは頑張っているものの、中国語と日本語のコミュニケーション障壁という事項を踏まえても尚、心情部分でのキャラクター性が不明瞭で上辺のみに終始し、完全に記号化してしまっている。一応は慢心から挫折、克服といった、カンフー映画のお約束的流れに沿っている事で、余計に年齢以外の没個性・記号化が進んでいる。大体にして劇中で「かわいい〜!」と連呼される程、実は可愛い顔つきではなく、むしろ憎たらしいタイプの顔立ちとは、かなり早い段階で気づく筈。

子供をターゲットとした悪の陰謀に、友情と根性で立ち向かう子供達、という図式は、最近では『クレヨンしんちゃん』の劇場版における基本パターンそのままだが、『クレしん』の場合はTVシリーズで認知されている子供達が奮迅を見せるからこそ、そしてディフォルメされたアニメだからこそ成立しているのであって、そのまんま上辺だけを実写で再現されても、説得力のカケラもなく寒いだけだ。ストーリーはともかく、演出や映像、あるいは編集がひたすらに説得力に欠ける、狙いの絞りきれていないものに終始している事で、本当に上辺だけにしか感じられない

カンフーくんが日本へやって来るシーンにて、最初に老師に突き飛ばされる段階では、画面左側にいる老師が右にいるカンフーくんを後ろすなわち右方向に飛ばしているのに、空を飛び続ける一連の映像では、カンフーくんは右から左へと飛び続けている映像を見せられるのだが、普通の日本人の感覚として、中国から日本への移動は、左から右へ移動するビジョンを浮かべはしないだろうか、最初の段階で、映像で伝えるセンスや狙いの不確かさは露呈しているのだ。

テレビの中に敵がいると勘違いしてテレビに貼り付いていた筈のカンフーくんが、突然家を飛び出して学校へと急行する展開があるが、どうして彼がテレビに見切りをつけたのか、どうして学校へ向かったのか、など、ストーリーを進める上で最低限必要な説明が完全にスルーされているに至っては、とても正気とは考えられない。

ヒロイン(藤本七海)の父親が誰なのかを、意図的に不明確としているのかと思わせつつ、過去の回想場面で中途半端に父親の姿や声を見せてしまっては、その時点で誰だかわかってしまうだろう。ところがその場面の映像や演出をどう見ても、正体を隠したいのか、バラしたいのか、あるいは匂わせておきたいのか、狙いが全く見えてこないのだから困る。後の展開で「実は私が父親だ」と明かす場面の演出もまた、その時点で明らかとなって驚かせたいのか、そうではなく既に知られている事の再確認なのか、全く狙いが不明瞭に尽き、曖昧模糊とした中途半端に終始している。

観客の誰もが大人だと知っている矢口真里が、ヒロインの同級生として小学生役で登場する、ネタとして極めて美味しい素材も、彼女が初登場する一連のシチュエーションの段階で、彼女が同級生なのか、あるいは子供っぽい教師なのかもよくわからないまましばらく話が進み、教室に担任教師(佐藤めぐみ)が入ってきて、矢口が席について授業を受けている段になってやっと、小学生役である、というおかしさに気づかされるのだ。これまた狙いが不明瞭。

その矢口が大人である正体を現し、悪の女幹部(佐田真由美)と戦うシーンもまた、カンフーくんのラストバトルと平行して交互に見せるなどして、クライマックスを大いに盛り上げる事が出来た筈が、始まったと思ったら場面が飛んで、戻ってきたら決着がついている手の抜き様。『CASSHERN』では映像構成が雑多すぎて何をしているのかすらわからなかった佐田のアクションを、今回あるいはちゃんとしたものが見られると期待だけさせてこのザマでは、ガッカリにも程がある。

本筋の出来が悪くては、矢口が小学生という秀逸なネタも、藤本七海と上野樹里、武田真治、藤田ライアンらとの各競演ネタも、全て不発。非常に勿体ない。

子供向けだからこんなもんで構わないだろう、と、子供をバカにした姿勢で作られている事が、作品全体から伝わってくる、材料をトッ散らかしただけの子供騙し作品。出演者ファンや特撮、カンフー映画好きなら、一応は要チェックだろうが、期待だけは厳禁。



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1. 【2008-79】カンフーくん(KUNG FU KUN)  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2008年04月06日 18:53
1 人気ブログランキングの順位は? 燃えよ”ちっちゃな”ドラゴン!! 日本の子供を守るため、 悪の組織に立ち向かう! この強さハンパじゃねー!!!
2. 真・映画日記『カンフーくん』  [            ]   2008年04月19日 20:32
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4. カンフーくん 観てきました  [ よしなしごと ]   2008年04月27日 01:43
 今までの記録に挑戦!1日4本観るぞ??!と決心した、その3本目は、カンフーくんでした。

この記事へのコメント

1. Posted by 滝飯   2008年03月31日 20:59
右から左へ飛ぶのは子供向けヒーローのお約束だという見方があるようですが、どうでしょうか?
2. Posted by ぽん   2008年03月31日 23:35
4 まぁ、確かにいたらぬ点は多々ありま
したが、気楽に楽しめる映画でしたけ
どね。
僕は久々に声を出して笑えましたよ。
3. Posted by つぶあんこ   2008年03月31日 23:58
主役格が右から左に移動する事が多いのは確かにあるんですが、それは日本文化に関連した理由からで、時々言われる心理的どうこうは、サブリミナル効果と同様オカルトなんですよね。

本作該当場面の場合、件の手法を用いるなら、その前段階、突き飛ばされる一連から"右から左"に方向付けておかないと成立しないんです。オカルト論でいけば、大人(親や先生)は右、子供(生徒)を左に配置する事になりますし、飛ばした後の老師の目線と飛ぶ方向も一致しますから。

でも現状では、突き飛ばす時と飛んでる時で方向が逆ですから、根本的にダメなんです(笑

これが、本編班と特撮班との連絡が疎かだったとかならまだわかるんですが、本作は本編も特撮も同じ監督だから困っちゃうんです。

東宝映画『士魂魔道 大竜巻』の、稲垣浩と円谷英二の無言の連携として知られる有名逸話の真逆ですね。

とまあ、至らなすぎる作品なわけで、何とも。

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