2008年04月04日

ファーストフード・ネイション 17点(100点満点中)08-100

東京コミュニケイショーン 人見知りするかー
公式サイト

マクドナルド告発ノンフィクション本『ファストフードが世界を食いつくす』を元に、ドキュメントでは取材が困難との理由から、フィクションとしてのドラマ仕立てに再構成された、『スクール・オブ・ロック』『スキャナー・ダークリー』のリチャード・リンクレイター監督作品。脚本には原作者のエリック・シュローサーも参加している。

しかし、実際の企業のリアルな有りようを、事実の取材を重ねてデータを提示していた原作本とは異なり、モデルが明白とはいえ架空の企業、創作の人物達による創作ストーリーにしてしまっては、所詮が作り事の作り話でしかなくなり、いかようにも偏向や捏造による印象操作を行えるのだから、作品としての意味合いは全くの別物となってしまう事は必然。ドキュメントとして製作しても、作り手に都合のいい様に構成編集して印象を誘導する事が可能なのだから尚更だ。

そうして、作り手の主張を都合よく登場人物に担わせて、観客に特定の印象や感情を抱かせる事に成功しているのかと言えば、大いに疑問。

大企業の寡占状態による、食の工業化や分業化、あるいは分業された各現場間の乖離や格差、といった問題点を表現したいとは伝わってくるものの、それが何故問題なのかは、本作からは的確には伝わってこない

例えば、店舗の厨房で働くバイトの、職業倫理意識の低さを描いていると思しきシーンも、それはそのバイト自身の知能やモラルに問題があるだけだ。個人経営の小さな料理店でも、あるいは家庭の主婦でも、こんな行いをするバカはどこにでもいるのだから、企業批判とは関係ない。

食肉工場内で起こる諸問題も同様。上司とセックスしたりクスリをやったりなどは、その個人がバカなだけで、これまた単にバカがバカをやっているだけでしかない。これでは、劣悪な環境で働かされる不法移民に同情的になるどころか、こんなバカは搾取されようが捨てられようが当然と呆れるだけだ。

牛糞混入の原因を調査に来た本社社員の行動も、どう見ても本気で調査をしようとしているとは思えない適当な仕事ぶりと適当な終わらせぶりでいつの間にかいなくなっている始末。これまた個人の資質や人間性に問題があるとしか見えない。混入理由を人から推測の伝え聞きだけで終わらせるなど、映画として作った意味がゼロだ。

大体が、食肉工場の労働環境は、映画内で見せられる限りは少しも劣悪に見えないのだから困る。むしろ、誰がやっても同じ結果を出せる簡単な仕事を与えてもらい、本国では考えられない金額の報酬をもらえ、日本のフリーターより何倍も良い住環境まで与えられているのでは、やはり同情心などカケラも起こらず、個々人の意識の低さや利己性ばかりが鼻につくだけだ。

機械に巻き込まれて重傷を負ったのも、そいつが危険な場所でボーッとしていたマヌケだからにすぎず、クスリの陽性反応が出てクビになったバカに至っては完全な自業自得だ。不法移民だからこそ、それ以外で目をつけられない様に生きていこうと思わないものか。あまりに程度が低すぎて話にならない。

もっと大変で金にならない仕事などいくらでもある。青木雄二が「今までで一番キツかった仕事はパチンコ店員」と、まるで苦労自慢の様に事あるごとに述べているを目にする度に、結局コイツは肉体労働や現場仕事の事など何も知らないのだと苦笑させられるのと同じ事だ。

屠殺シーンや解体シーンをショッキングな映像として見せるに至っては、あまりにも幼稚な偽善性に呆れ返って涙どころかため息すら出ない。ましてやその現場を、やりたくない穢れた仕事であるかの様に強調し、感傷を押しつける作劇や演出にはウンザリする。これは作り手自身が、こうした職業を見下し毛嫌いし差別しているに他ならないと、図らずも露呈している有様だ。

子供が産まれるのはチンポをマンコに突っ込んで発射するから、肉を食えるのは動物をぶっ殺して切り刻んでいるから、それは何ら特別な行いではないのだ、とは、あらためて教えられるまでもなく、普通に常識ある大人であれば普通に認識している筈だ。こんな中途半端で上っ面だけのお手軽描写で「考えさせられた」などと言うに至っては、すなわち普段から何一つ自分の頭でものを考えていないのだと、己の自覚なき愚かしさを露呈させているだけにすぎない。ましてや、これを観て「ファストフードに行く気が無くなった」と思うなどは、あるある大辞典を観て納豆を買いに走る、家畜以下の愚衆の極みである。考えなしにも程がある。

バイト少女の家族描写も、全く面白くもないテンションが高いだけの会話を延々聞かされて楽しめるわけもなく、自分で考えろと言っているオヤジ自身が、何の考えもなく通り一遍の事しか言えていないのだから、親や親戚がこんなバカだから娘もバカなのかとしか思えない程度の低さに尽きている。

自分達が真実に気づいた選ばれし者だと勘違いして自己陶酔し、現実も現状も何も知らずに都合良く妄想しただけの作戦を行うバカガキプロ市民達のバカさ加減をバカバカしく描いているのは、現実の同種の連中の愚かしさをリアルに見せており笑えたが、それが作り手の狙いなのかどうかは怪しい。

一つの企業を中心に、様々な立場からバラバラに行動する人達を描く群像劇としても、方向性や絡み合いが極めて散漫、中途半端なまま何のオチもなく終わりでは、映画として成立していない。まさか屠殺を見せて問題提起などと、幼稚な投げっぱなしで終わらせられたと思っているのなら、とことん程度が低すぎる。

結局、アメリカ人やメキシコ人は考えなしのバカばかりでマトモに働きもしない、としか伝わって来ないのだから、別の意味で笑えはするが、これでは逆に資本家の搾取に正当性を与え推進させるだけだ。アメリカの工業史と重ねて業界発展を俯瞰視する、興味深い原作本の独自視点を用いないから、こんな上辺だけのおためごかし作品しか出来ないのだ。

規格化、工業化された食の現状を知るには、フラットな視点で提示される上に映画として計算された構成を楽しめる『いのちの食べかた』の方が、何億倍も面白く役に立つ事請け合い。フィクションの娯楽劇として現実の搾取問題をクローズアップした『ブラッド・ダイヤモンド』ら、本来の意図が近似する諸作品の足元にも及ばないハンパものだ。

本作、ただ事実をフラットに提示するだけで問題提起となり得た筈が、中途半端な作為を盛り込んで台無しにしてしまった、それこそウンコが混じったバーガーと同じ不良品に終わっている。それを見抜けず「美味しい美味しい」と食べている者の滑稽さよ。

映画好きなら観ていて当然の『いのちの〜』を観てもおらず、本作だけを観て今更のショックを受けて、「いま、絶対に見るべき映画のひとつである」などと褒めちぎっているプロの映画批評家など、まさかいる筈ないと思いたいが…。


tsubuanco at 16:34│Comments(3)TrackBack(7)clip!映画 

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1. Posted by ニコ堂   2008年04月03日 17:59
1 いのちの食べかたは見てませんが、この映画は絶賛しません。
だってヘッポコだから。
ブラックジョーク映画だと思ってたのにガッカリだょ(・ω・`*)
2. Posted by 関東の貴   2008年04月04日 16:21
お前とお前は帰ってよし!‥でしたっけ?(映画と関係ありませんが)
3. Posted by つぶあんこ   2008年04月07日 17:39
ヘッポコ…いい響きです(笑

以前、板尾の嫁が本当に板尾の嫁だと思ってる人に会ってビックリしました。

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