2008年04月07日

ダーウィン・アワード 30点(100点満点中)

万引きなんてよくある事。(書店は)配慮してくれないと。
公式サイト

「考えられない」バカな死に方をした人間に対し、バカ遺伝子を根絶した功績を讃えて贈られる、不謹慎極まりない実在の賞を題材にとした、ブラックコメディ映画。

同賞の公式サイト(英語)や、実例を羅列した書籍『ダーウィン・アワード 死ぬかと思ったインターナショナル』などを読んでもわかる通り、「事実は小説より奇なり」を地で行くバカバカしいエピソードの数々は、事実を事実として提示するだけでも興味深く魅力的となる、顕著な体現と言えるものだ。

ゆえに、この題材で映画を作るのならば、再現ドラマ仕立てでも擬似ドキュメント仕立てでも何でも、ただ事例をそのまま再現して並べ立てるだけで、充分に面白いものが出来るに決まっているのだ。にも拘らず本作、蛇足極まりないフィクションを前面に押し出すという、上質な料理にハチミツをぶちまけるがごとき愚行を犯しているのだから、せっかくの素材も台無しである。

プロファイリングの天才だが血を見ると卒倒するヘタレ捜査官と、生保会社の汚れ仕事担当の美女(ウィノナ・ライダー)とが、噛み合ないドタバタ劇を繰り返して、未解決事件の真相に迫っていくメインストーリーは、確かにそれ単独で作品を成立させるならば、ブラックなコメディとしてそれなりに笑え楽しめるものに仕上がっていた可能性もある。ドキュメント製作と称して付きまとうカメラマンの存在も、視点や干渉の距離感を突き詰めて、映像および構造的なギミックとして有為な必然として作用させていれば、面白いアイディアと感心出来た筈だ。

だが本作、二人の主人公の珍道中ドラマ、ダーウィン賞の再現ドラマ、およびドキュメントカメラマンの存在、らが、全く噛み合ずにバラバラ、中途半端なゴチャ混ぜにしかなっておらず、互いに面白さを殺し合っているのが実情。

主人公のプロファイリング(という名の妄想)で見せられる、ダーウィン賞相当の死亡事故の見せ方がドラマ仕立てで、フィクションドラマである珍道中の方にドキュメント的なカメラ視点を持ち込んでいる、逆転構図がそのままミスマッチとしかなっていない事が、その最大要因と思われる。

プロファイリングにしても、主人公の妄想視点に拠った映像構成にて終始見せてくれるのなら、観客もその視点を共有して、繰り広げられるズッコケ顛末に入り込む事も出来るのだろうが、思い出した様に主人公とのシンクロが挿まれる程度の中途半端では、今展開しているシチュエーションは、誰の主観によるものなのかさえ曖昧となってしまい、俯瞰的な視点でしか見られないのでは楽しめない。

ドキュメントカメラ視点も、これまた思い出した様に挿入されるのみで、ではそれ以外の映像はどういった視点に拠るものなのか、との差異が明確でないために、必然や効果が全く活かされてずに、中途半端な印象を与えるだけになっているのだ。

イチゴに練乳をかけて客に出す様なマネをしている時点で、本作の作り手から人を楽しませるセンスが欠落している事は瞭然なのだが、たとえば梶原一騎の様に、ノンフィクションをベースにフィクションを大幅に投入し、それをノンフィクションであるかの様に表現する事で、受け手側の興味を大きく引きつける作品とする事も可能だった筈だ。それが出来ないのはやはり、人を楽しませるセンスというものがどうしようもない程に根本的に欠落しているとしか考えられない。『すべらない放し』にて、明らかに作った話を披露してあまつさえスベッた関根勤並の悲しさである。

結局、笑える、あるいは興味を持って見られるのは、予告で紹介されたのと同じだけの"事故"の顛末だけであり、それがよりによって予告で見せられたほぼそのまんまなため、インパクトが大幅に減少した状態で見せられるのだから困り果てる。作り手だけでなく、日本の宣伝スタッフもまた、人を楽しませるセンスが大きく欠落している様だ。

題材に興味があるなら、賞の公式サイトや本を読んだ方が有意義であり、敢えて本作の鑑賞を選択する意義は薄い。現代アメリカ社会においての保険会社の暗部や、人と違う事に懸命になる様を嘲笑する風潮に対する警鐘や告発といったテーマも、ミスマッチの素材が拒否反応で分裂状態では、同じく中途半端な上滑りにすぎない。

こんな仕事しか回ってこなくなったウィノナ・ライダーの落ちぶれた姿を鑑賞する、といった、後ろ向きな楽しみを得られる人はいるかもしれないが。


tsubuanco at 14:31│Comments(0)TrackBack(1)clip!映画 

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1. 「ダーウィン・アワード」  [ クマの巣 ]   2008年05月04日 08:33
「ダーウィン・アワード」、DVDで観ました。 バカな死に方をした人間に、愚劣な遺伝子を消滅させたことに敬意を表して贈られるダーウィン...

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