2008年04月11日

ぼくたちと駐在さんの700日戦争 64点(100点満点中)

「喫茶店でアルバイトだって!」「あの早乙女愛が!」
公式サイト

同名連載ストーリーブログを原作としたコメディ映画。宣伝では「『時効警察』と『ココリコミラクルタイプ』のスタッフが贈る」と謳われているが、『ココリコ〜』はともかく、本作の監督である塚本連平が『時効警察』を手がけたのは一話だけである。嘘ではないが胡散臭い宣伝と、これでは自ら明かしている様なものだ。

その胡散臭さは元となったブログの時点から既に存在する。『電車男』の社会現象化の後を追い、売れない作家にネットでストーリーを書かせ、それを既成事実として「ネットで話題!」との宣伝文句で書籍化する作為バレバレのパターンに、本作も相当する。

確かに、ネット上に転がっている名も無き人が書いた創作ストーリーには、大いに興味を惹かれ楽しまされ、続きが待ち遠しくて仕方のないとまで心を掴まれてしまうものも存在する。だがそうした作品は、まず最初に目にした時点で「面白そうだ」と感じさせられ、次回への引きに興味を抱かされる作りとなっているものだ。そうでない事には、他に何もする事のない暇人でも無い限り、敢えて貴重な時間を割いて読もうなどと思うわけも無いのだから。

そしてこのブログ、第一話目を読んでも、そうした興味を惹かれる事はなく、能動的に続きを追う気持ちにさせられない、導入部として完全に失敗している中途半端な始まりでしかなく、あらかじめ用意しておいた長めのストーリーを、適当にブチ切ってアップしているだけだと最初から瞭然としているのだから、失笑する他無い。

そしてそんな、まだ面白いかどうかの判断材料すら無い一話目の段階で、コメント欄は絶賛の書き込みで埋まっているのだから、仕込みがバレバレで寒々しい事この上なく、その仕掛けのお粗末さによって、余計に興味を失ってしまうのだ。

「人気No.1!」「怪物ブログ」などと大々的に謳われている文句が本当ならば、それこそ『電車男』や『恋空』並に知られていてもおかしくないのに全くそんな事はなく、今回の映画化に際しても、閑散とした劇場の中を見れば、本当のところは一目瞭然。いかにも程度の低い宣伝屋が考えそうな稚拙なビジネスである。

ところがこの映画、とるに足らない原作と同様とるに足らない出来なのかと言えばそんな事はなく、笑えて楽しめる作品に仕上がっているのだから、スタッフおよび出演者達の、"プロの仕事"の確かさには畏れ入るばかり。

70年代後半を舞台とし、当時の社会風俗の事物をキーワード的に羅列してノスタルジーを喚起し、コント的なやりとりによって形作られていくキャラクターコメディで笑わせる、というのが本作の基本的な方向性であり、監督の塚本連平も、脚本の福田雄一も、TV番組にてそうしたコント的作品をメインに活動しているのだから、笑えないとなると死活問題だ。

福田雄一が台本を書いている『ココリコミラクルタイプ』は、俳優にコントをさせている事が特徴の一つであり、本作の(映画版としての)狙いにはピッタリ合致しているのだ。

とは言え、用いられているネタそのものに、今までにない斬新なアイディアなどが見られるわけではなく、あくまでも登場人物達の台詞の掛け合いによる、間の取り方や演技の見せ方によって、面白く感じるテンポに仕上げているのが実際のところ。

そう鑑みるに、俳優の持つ素のキャラクターを活かしつつ、ボケとツッコミをシチュエーションに応じて演じ分けさせている、キャスティングと演出の相乗効果が、本作の笑いの基盤となっている事は間違いない。特に駐在を演じる佐々木蔵之介の、相手に合わせて微妙にテンポやトーンを変え、一番面白くなる様にコントを展開させる手腕は抜群である。主人公ら高校生集団だけのコントがしばらく続いた後、場を引き締める様に登場し笑いのレベルを上げて去っていく、その立ち位置は、作中におけるそれと俳優としてのそれが上手く融合しているものだ。

昭和のきれいなお姉さんがハマる麻生久美子、劇中当時アイドルだった事をネタに活かしている石野真子など、女優陣のキャスティングや配置も絶妙。懐かしネタをコント的笑いに絡める手法を、有為に活かしている。

豊田エリー倉科カナら若手女優も、エロ方面のポジションにて青春期の煩悩を表現しつつ、やはり笑いネタにも絡める様に配置、構成されており、無駄と感じさせていない。水沢奈子の出番が少なすぎるのは惜しまれるが。

のだが、成嶋こと里演じる幼女の立ち位置が、ベタな感動を押しつける終盤へ向けての伏線の域を出ない、作為が前面に出たものに終わっているのが勿体ない。彼女自身は元気良く自然に子供っぽさを演じているだけに、役割の不自然さが却って目につくのだ。水着場面の撮り方がさりげなくエロいのは気のせいか。

市原隼人や石田卓也はほぼ予想通りの演技とキャラクターに安定し卒がなく、同じく安定したデブキャラを安定して演じる脇知弘など、安心出来る笑いが基盤となり、そこに冨浦智嗣による、本来の個性を作劇と笑いに絡めた独自色の笑いがプラスされる事で、本作の特異性を放っている。彼は使い方さえ間違わなければ鉄板の存在感で作品カラーを支配する異才であり、これはキャスティングの勝利。女装がエロいのは気のせいでは決して無い。小柳友のマヌケ演技も、見た目のバカっぽさまんまの演出が決まっている。

アイキャッチ的に挿入される懐かしネタも含め、総じてテレビ的演出、構成にて展開する本作において、辛うじて映画的な作りが見られたのが、竹中直人演じる親方とママチャリの取材シーンだろうか。親方の長話を、話は切らずにカットを細かく割って画角を切り換え、話はシームレスに続いているのに何故か二人の座り位置と角度は変化していると、違和感のあるカット割りをワザと繰り返す事で、長話の長さを表現しつつ笑いの要素ともしているのだ。竹中の演技がいつものパターンに終わっているのが残念。

終盤の感動展開はツッコミどころが多すぎて興醒めだが、そこまでの細かい笑いに外れは少なく、気持ちよく楽しめるものには仕上がっている。元が作為的なものだけに、いろいろと作為が目につくのは仕方ないだろう。各出演者の演技センスを再確認する楽しみも得られる筈だ。やっぱり佐々木蔵之介は素晴らしい。



tsubuanco at 17:49│Comments(10)TrackBack(16)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by たんたん   2008年04月09日 19:29
かなり笑いました。笑いについての感想は、納得同感です。でも、映像のピンボケ汚さには幻滅しました。映画館で見るに値しない。
2. Posted by あきひろ   2008年04月10日 08:24
栃木県民なので贔屓目になってしまうんですけど、久しぶりに何も考えず笑える映画を観ました。原作ファンからの評判は悪いようですが、原作は時々「あざとすぎる」と感じるところがあったので(あれを名作、と考える人がいたのだとしたら、あまり本を読んでいない人ですね。キャラクターが立っているという良い点はありますが)、映画製作者側はそういうところをやや意図的に削いだような気がします。映画なのでカタルシスは多少必要なのでしょうが、クライマックスのシーンまでの持って行き方はちょっと上手くないですねぇ。例えば、ネタバレになりますが児童に対する医療行為は親の同意があればいいので、主人公達が花火を打ち上げる理由に、もう少し納得できるものが欲しかった。
3. Posted by まさひこ   2008年04月10日 12:45
そんなにえらそうに書くなら、
おまえがこれを超える作品を作ってみろ。
つぶあんこ。
きもw
4. Posted by つぶあんこ   2008年04月10日 15:30
ピンボケは映写上の問題では。

花火は素人が打ち上げると重罪ですから、金払えば済む問題じゃないんですよね。つーか先に手配済みと教えてやれよと。


うわー信者きんもー☆
他人を「エラそうだ」と言う人間がまたエラそうなんですよね(笑
志村ー、鏡、鏡!
5. Posted by とおりすがりさん   2008年04月11日 22:08
閑散としてましたか?
こちらは日曜でしたが、8割がた埋まっていましたよ。ちなみに京都。
上映規模なりのお客は入っていそうですよ。
映画は面白かったです。
原作は長いので読む気がしません。
7. Posted by つぶあんこ   2008年04月15日 17:52
オイラの時は数人でしたけどね。
まあそんなミクロかつ証拠を出せない事を言い合っても無意味ですが。
8. Posted by シュウ   2008年04月19日 22:03
5 今年一番面白かったです。
9. Posted by 咲太郎   2008年06月07日 12:24
冨浦智嗣の女装、色っぽかったです。
下手すれば、そこら辺のアイドルの上を行くかもです。
最初、女の子が男役をやっているのかと思いました。
10. Posted by つぶあんこ   2008年06月11日 17:35
冨浦智嗣、コメディはともかく、シリアスでは使いどころに困りそうですけどね。
11. Posted by ice   2008年09月06日 14:25
こんにちは

いきなりですけど佐々木蔵之介の素晴らしさ

同感です( ̄∀ ̄)

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