2008年04月13日

ヒットマン 59点(100点満点中)

剃っているのではない! ハゲているだけだ!
公式サイト

『トゥームレイダー』等で知られるイギリスのゲーム会社、アイドス制作の暗殺ゲーム『Hitman』シリーズを原作とした、ヴィン・ディーゼル製作総指揮によるアクション映画。

原作ゲームは、いかに目立たず見つからず暗殺ミッションを遂行するかに挑戦する、『メタルギア』にも似たタイプのステルスゲームである。今回の映画版でも、ホテルや教会で逃げ隠れしながら戦うシーンや、トイレでの襲撃シーンなど、武器の取捨選択も含め、ゲームを髣髴とさせるシチュエーションが用意されており、プレイ経験がある者なら、ニヤリとさせられるだろう。

ただしそれ以外の、ストーリーやキャラクター面においては、ゲームとは異なる映画独自のカラーが強められており、逆に未プレイの方がスンナリと作品を受けいれられるかもしれない。

謎の組織に育成された暗殺戦士が、組織を裏切って元の仲間に追われながら戦う、との基本設定は、『雷鳴のザジ』『少女コマンドーIZUMI』など枚挙に暇がなく、一ジャンルとして成立していると見ていいだろう。同じく、事件に関わる女性や子供を守りながら戦う、との人物構図も、『レオン』『グロリア』等、ひとつのテンプレートとなっているものだ。

すなわち本作、主人公を含む暗殺戦士が揃って、ハゲ頭の後頭部にバーコードという奇妙なビジュアルである事以外、今までにない新しい要素は特段には存在せず、映像的にも、過去のアクション映画で見た事のある様なものに終始しており、ゲームの映像化以外での価値は薄い。ロシア特殊部隊の装備が、何故かゲームとは異なり押井守のケルベロス然としているのは笑いどころか。

ストーリーは単純ながら、だがその中でもいろいろと不足に感じる部分が多く、あまり良くしたものとは言えない。

"機関"の説明が曖昧なのは、世界観に深みを持たせるためとして構わないが、今回の顛末に、機関の関与がどの程度あり、主人公がどこまですれば"達成"となるのかが曖昧なままなのは、話の方向性が見え辛く、結末にスッキリを感じられない要因となっており中途半端だ。途中で漏れた"目撃情報"の曖昧さも同様。

連れて逃げた女も、そこまで執拗に守り通す動機は最後まで曖昧なままで、パターンに乗っかっただけ、作品に華を添えたいだけ、との安易な意図が見え見えで、そのためだけに形のいい生おっぱいTバック生尻を披露してくれたオルガ・キュリレンコには頭が下がる思いだ。(この裸体披露、最初はシーツで隠して見せないのかと思わせた次の瞬間に、シーツを勢いよく引っ剥がして丸見えとする、一瞬焦らすタイミング演出は秀逸)

終盤にバスタブに拘束されたFSB幹部(プリズンブレイクのティーバック役のロバート・ネッパー)が、その後どうなったのか全く触れられていないのも中途半端。そもそも何故彼をあそこまで追い込んで、狙撃指令を出させる必要があったのかも謎だ。(TVやDVD収録の吹き替えでは若本規夫が演じてくれるのだろうか期待)

中盤の電車内での格闘シーン、主人公がシートの影に隠れている黒人暗殺者を発見した段で、観客の誰もが、最前まで主人公(と間違えた別人)を尾行していた黒人捜査官が、ここで主人公と対面したと思ってしまう筈だ。だが実際にはその捜査官とは違う、新キャラである暗殺者なのだが、どちらも黒人でスキンヘッドで黒スーツでは、見分けのつけ様がなく、混乱するに決まっている。機関の暗殺者にはあらゆる人種がいるとの設定を匂わせる仕掛けは、別のところで用いるべきだった。

その直後、現れた計三人の暗殺者と主人公が対峙する局面にて、追われているのは主人公だけなのに、何故か四つ巴の様に各々が銃口を向け合うのでは、余計に彼らの役割や意図がわからなくなって混乱する。絵面的な見栄えを重視するあまり、本筋への理解が疎かになってしまっては本末転倒だ。意味がわかるのが剣劇が始まってしばらく経ってからでは、あまりに遅すぎる。

ただし、本作にて悪の組織的に配置されているロシア政府にまつわるあれこれには、悪意や皮肉がいちいち込められている様で、ニヤリとさせられる部分も多い。現場で証拠品にうっかり触って台無しにしてしまう様なお粗末さを始めとし、大観衆とマスコミが注視する中、大統領が完全に脳漿をぶちまけて暗殺されたにも拘らず、軽傷でしたと報道されて通ってしまうあたり、ソ連時代から続くロシア政府の情報操作を悪意たっぷりにディフォルメしており、あの場の目撃者は全員消されたのだろうか、などと邪推させられ楽しめる(現実で報道された麻酔注射事件などがあるだけに、冗談と笑い飛ばせないのが困るが)。

大統領の弟が武器と麻薬を密売している組織のボスで、そいつが死んだら大統領自身が公式に葬儀に参列するなど、どこまで本気で描いているのかわからない、ストーリーの破天荒さは、後半になるともう逆に楽しまなければ損な気にさせられてしまう。その一方で、ゲームにも登場するエージェント・スミスの存在を、中盤で伏線的に提示しておいて終盤に回収するなど、納得させられる構成もあるのだから小憎い。

観て損したと思う程ではないにせよ、ゲームの実写化を確認したい人や、オルガ・キュリレンコの裸を見たい人でもない限り、敢えて劇場鑑賞を選択する意義は薄いだろうか。

特にロバート・ネッパーファン(というより若本ファンか)は、吹き替え完成待ちが妥当だろう。



tsubuanco at 14:51│Comments(4)TrackBack(13)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by フーコ   2008年04月13日 20:06
2 みました。

始まりがダークエンジェルに酷似しててそこから嫌な予感しました。


もしかして何か関係があるのか、ジェシカアルバがゲストで出るのかと淡い期待して裏切られてしまいました。


映画は個人的に残念でした。
2. Posted by つぶあんこ   2008年04月15日 18:42
ネタはありがちですからね。
3. Posted by 健太郎   2008年05月06日 14:20
2 こんにちは。
遅くなってしまいましたが、4月中になんとか抑えました。

予告で<アネ・マリア>を流しながらの銃撃戦が凄く良くてぶっちゃけこれ狙いだったんですが、予告だけでしたね。
「予告満点、本編及第点」てやつでしょうか?

エロくしたりダークにしなかったのは気に入っているのですが、もしかしたらそのせいで物足りないのでしょうか?

元がゲームなので深い突っ込みはなしですね。

>ケルベロス
方々のblogを流れてきましたが、ケルベロスねたはここが初めてです。
ほかにも突っ込んだ方がいて嬉しいです。
4. Posted by つぶあんこ   2008年05月16日 11:51
ゲームの映画化にしてはよく出来ている方かと。

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