2008年04月15日

スルース 60点(100点満点中)

わかってると思うけど荒らしはスルーでつよ!(`・ω・´)
公式サイト

映画『ウィッカーマン』等でも知られる舞台劇作家アンソニー・セイファーによる戯曲を、ジョセフ・L・マンキウィッツ監督が映画化した1972年『探偵<スルース>』の、ケネス・ブラナー監督によるリメイク作

舞台版は日本でも日本人俳優によって演じられるなどしているが、本作はあくまでも72年版映画のリメイクとして作られている。それは、老紳士と青年とが丁々発止の化かし合いを繰り広げる本作において、旧作にて青年役を演じたマイケル・ケインが、今回は老紳士役を演じている、キャスティングの時点から明らかだ。

そして今回青年役を演じるのが、マイケル・ケインが66年に主演した映画『アルフィー』の、04年リメイク版にて主人公となったジュード・ロウなのも、狙い済ましたキャスティングだ。『アルフィー』と同じく本作の青年マイロもまた色男の女たらしなのだから、この段階からニヤリとさせられる。

もともとが舞台劇である本作、映画版においても、舞台は老紳士ワイク邸内にほぼ限定され、その閉塞された空気がシチュエーション・ミステリーの緊張感を高める役割を担っている。特に今回は、監視カメラ等のセキュリティ遠隔操作を演出に活かし、透明エレベーターや吹き抜けの階段などを一所に密集させるなどして、より閉鎖的な密度の高い空間を作り出す事に成功している。

屋外の様子が、基本的には監視カメラの視点として見せられ、内部に居ながらにして見ている、やはり閉塞した空間をどこまでも保ち続けるといった、息の詰まる仕掛けを基盤から徹底している。と頼もしく思っていたからこそ、終盤になっていきなり、完全な第三者の視点が登場するのはいただけない。

旧作を踏襲して展開させられる、第一、第二のゲーム展開は、先述の空間設計を効果的に活かした人物の出と入り、移動、あるいはこれも舞台的に大仰に演出された、主演二人の血管が切れそうな演技、そしてそれを、今度は舞台とは真逆に、超アップを多用して緊張感を殊更に伝えるカット割り、などを駆使した一進一退のサスペンスは、たとえ筋書きを知っていても引き込まれる、知らないなら尚の事目を離せなくなるものだ。

だが、旧作とは全く違った展開を見せる第三ゲームにおいて、真実と嘘、目的と手段が完全に混同し、観客だけでなく主人公達までもが混濁に陥ってしまう事となる、その狙い自体は面白いとしても、作品の方向性までもが、目的と手段が混濁してウヤムヤに収束させられてしまっては困る。先述の第三者視点の挿入なども、悪い意味での混濁を助長するものだ。

このストーリー変更はあるいは、旧作の様に老紳士然とは見えず、旧作のマイロがそのまま年をとったかの様に、にじみ出る嫌らしさや意地の悪さが前面に押し出されたままのワイク像を見せる、マイケル・ケインの演技スタイルに引張られてのものだと考えれば、理解出来なくもない。だがそれでは、企画的なインパクト先行のキャスティングが、作品本来のあり方をネジ曲げてしまった事でもあり、納得出来るものではないだろう。

おそらくは本作から受ける違和感は、富豪と貧乏人、誇り高き英国紳士と下層階級のチンピラ、といった、二人の主人公の年齢以外のキャラクター的差異を、的確に対比表現出来ていなかった事に尽きるのではないか。

その危惧は実は、序盤の段階から既に現われている。ワイクが狂言を提案し始めるまでの、出会ってからの二人の探り合いが、そうしたキャラクター的差異の表現が徹底されていないために、表向きの会話と裏の心理戦との投影が感じ難いために、方向性が見えず退屈に感じてしまうだけでなく、マイロが狂言を呑んだ説得力が薄れ、展開が唐突に感じてしまう事にも繋がっているのだ。

旧作を意図したキャスティングが、旧作に及べない要因となってしまうなど、作品ストーリーよりむしろ皮肉な現実であり、苦笑する他無い。本作だけを単独で捉えてもやはり、述べた様な序盤の退屈や終盤の違和感は拭えない筈だ。

この『スルース』という作品に興味があるのであれば、先に今回リメイク版を観てから、旧作を見て、完成度の高さに唸らされる方が、幸せなのかもしれない。旧作はDVD化されていないため、大きくて古いレンタル屋でもない限り置いていないのが困りものだが。



tsubuanco at 16:01│Comments(0)TrackBack(10)clip!映画 

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