2008年04月19日

映画クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者! 40点(100点満点中)

四人揃ってゲーハー中年団!
公式サイト

TVアニメシリーズ『クレヨンしんちゃん』の劇場版16作目。

四作目の『ヘンダーランドの大冒険』以来12年ぶりに、本郷みつる監督作となる事が、旧来のファンにとって期待を抱かせる要素となっている本作だが、今ひとつ物足りない結果に終わっている。

ストーリー、キャラクターともに、極めて薄味、大味で、全てが表層的な通り一遍に終わっている事が、最大の問題点だろう。

たとえば前半、しんのすけだけが巻き込まれていく非日常と、ヒロシの通勤に代表される日常描写が、しんのすけの心的孤立を強調するなどの、今回は特にしんのすけ個人の活躍に重点を置かれているストーリーを、重層的に膨らませるなどの絡み方もせず、ただ単に、後に登場する虚構現実が虚構であると観客に気づかせるための準備でしかなく、その割には、やたらと時間を割いて日常を繰り返し続けるために、無駄にダレさせる要因となっている。

公共マナーや環境問題を取ってつけた様に扱っているのも、メインのストーリーと絡んでいない事で興醒め。敵の作戦あるいは侵略結果に関連させるなどすれば、必然としてストーリーに絡み、違和感を覚える事も無かっただろうに、唐突に差し挟んでいるだけでは工夫が無さすぎる。

電車通勤を印象付けておいて、合体戦闘シーンでのギミックとギャグに活用した点では面白く、評価出来るだけに、徹底の無い中途半端さが余計に残念に感じられる。

ゲストキャラクターの存在の薄さにしても、そもそも彼らはそれぞれどんな人なのかが、あまりに類型的、記号的な表層をなぞらえただけに終始しているから、彼らがどうなろうがどう動こうが何の興味も持てない状況となってしまう。

中盤に見せられた空中戦シーンが、フルCGアニメーションとした事で却って迫力が薄れ(むしろ冒頭の空中戦の方が楽しめる)、ただ長いだけで楽しめない結果に終わってしまったのは、敵のキャラクターが薄い、あるいは無い事も、大いに影響している。この場面でやられてしまった敵・マックが、この後一切登場しないとは、あまりにアッサリしすぎで、しかも登場しなくとも全く惜しくないのだから、魅力が無いにも程がある。

意味ありげに登場する犬・クロも、野原家に迎え入れられるまでは、ギャグも含めて存在感を出しているものの、その後の展開にほとんど登場せず、しんのすけとの関係すら希薄なままで最終決戦に突入してしまうために、正体を明かされたところで何の感慨も沸かない。

味方となるマタも同様、ただ現れてストーリーに沿って役割をこなしているだけに過ぎず、実は女の子と判明したところで、ちょっとした小ネタ以外何の展開も見せないのでは無意味だ。敵女キャラであるプリリンと、しんのすけを巡って"おねいさん対決"に持ち込めるシチュエーションまで設定されながら、特に何もしないのでは困る。

と、全てにおいて心情的なドラマ展開が薄味で、盛り上がりというものが全く無いままいつの間にやら終わってしまうのでは、子供でも退屈する。

ただし、部分部分でのギャグや小ネタ等においては、定番の劇画調作画や、先述のシロ、クロ絡みの場面など、少なからず笑えるものが多く散見され、楽しめるのは救いだ。

序盤に登場する玩具売り場など、ディフォルメされた漫画世界にリアルを感じさせる背景の設計と作り込みは変わらず秀逸。アクションソードよりアクション潜水艦の方が気になる。出崎統が『元祖天才バカボン』あたりで多用した、シュールでサイコな世界観を表現する、パースが歪んだサイケデリックな背景画を意識したであろう、夜の悪夢の様な背景が、リアルな背景との対比を強調しているのも見逃せない。

出崎統への意識は、その場面に登場するイタチの描写が、『ガンバの冒険』のノロイを髣髴とさせる事からも明白。他にも、ミュージカル場面の歌が『プリンプリン物語』に登場する『世界お金持ちクラブの歌』のパロディであったり、敵ボス・ダークの顔の左右を真横からのショットで切り返す演出が『マジンガーZ』のあしゅら男爵だったり、冒頭の空中戦に登場するクワガタ状のキャラクターが、シルエットやシャッターの開き方など、『宇宙の騎士テッカマン』のぺガスを思わせたりと、パロディ的な発見の楽しみも、そこかしこにて得られる。

話題づくりのためのゲストである小島よしおの扱いがぞんざいだったり、ケツだけ星人を「つまらない」と切り捨てて、前作までの監督に対する悪意を感じさせたりと、皮肉めいた仕掛けにもニヤリとさせられもする。(それで前作以下の出来に終わっているのも皮肉だが)

と、面白い部分をストーリー内に有意に組み込めずに、バラバラなままに終わらせてしまった、脚本の散漫さが、今回の最大の問題点だろう。久々の復帰で材料を扱いきれなかったか。

しかし金矛はどう見ても剣だ。

『嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』レビュー



tsubuanco at 18:53│Comments(0)TrackBack(4)clip!映画 

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1. [映画『クレヨンしんちゃん:ちょー嵐を呼ぶ 金矛(きんぽこ)の勇者』を観た]  [ 『甘噛み^^ 天才バカ板!』 ]   2008年04月21日 20:53
☆感動した。 ・・・知ってる気になって知らないものがある。 『クレヨンしんちゃん』は私にとって、そういうものだった。 『ドラえもん』ならば、私が子供の頃からテレビでやっていた。 だが、子供に人気の『クレヨンしんちゃん』が始まった時には、私は、もう大人にな...
2. 【2008-99】映画クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛(キンポコ)の勇者  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2008年04月27日 22:34
2 人気ブログランキングの順位は? 選ばれし”おバカ”の伝説と冒険が始まる! ひとりの幼稚園児が うっかり闇の扉を開いてしまった・・・
3. 映画クレヨンしんちゃん 「ちょー嵐を呼ぶ金矛の勇者」 どうしたんだ?  [ ノルウェー暮らし・イン・ジャパン ]   2008年05月05日 15:47
クレヨンしんちゃんの映画もすでに16作目。 毎年公開されているとすると、かれこれ16年目ということになる。 思えば、ねえねが幼稚園の時から、全ての作品は見尽くしている我が家。 しんちゃんとは、かなりの長いお付き合いになっているわけだけど、はて・・・・?い...
GW中の映画9本観まくり、4/30は、109シネマズ富谷で「あの空をおぼえてる」、<a href="http://minkara.carview.co.jp/user

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