2008年04月20日

銀幕版 スシ王子!〜ニューヨークへ行く!〜 38点(100点満点中)

歌:山崎照朝
公式サイト

昨年放送されたTVシリーズ版を前フリに、満を持して登場する筈だったこの映画版だが、TVシリーズの視聴率的惨敗が却って本作の負けムードを決定づけ、完全に目論みが外れてしまったにも拘らず、製作し公開することは最初からの決定事項なため、やめるわけにいかず無理から公開、との状態は、業界のしがらみがモロに出てしまっており、作品内容よりも笑えてしまう。『海猿』の様に、先に映画を作って好評ならTVシリーズ化、それも好評ならまた映画化、との方向にしておいた方が、失敗した時の傷も少なかっただろうに。

そもそもこの企画でイケると考えた上の偉い人達のオツムのレベルが心配だ。王子ブームなんぞ、マスコミ主導で作り上げて、リテラシーの無い一部のバカ女がみっともなく踊らされていただけの、空虚極まりないものにすぎなかったのに、それを作った側にいる方が、本当に世間に受け入れられると思いこんでしまうとは呆れる。韓流ブームの拡大路線で失敗した反省すらないのだろうか。そんなにバカな国民ばかりではないと知るべきだ。

さて今回の映画版、一応はTVシリーズの続編的な流れとなっているものの、本作だけを観ても問題なく理解出来る様に配慮はされている。というより元からマトモなストーリーなぞ無いのだから、いくらでも話を続けられるし、逆にどこから始まっても問題ないのだが。作品認知度の低さは現場レベルでは自覚している様で、TVシリーズに登場したキャラやネタの段では、いちいち御丁寧に映像をフラッシュバックさせてくれているのだから、一見さん大歓迎の親切さは徹底している。

とはいえ作品としての完成度はお世辞にも高いとは言い難く、むしろ低い。TVシリーズにおいても、主人公の特技である寿司と空手の使い分けや組合せを有意にドラマにもキャラクターにも活かしきれず、どっちつかずの中途半端さが全体を支配していたが、今回もまた、ストーリー、ギャグ、感動、アクション、など、全てにおいて中途半端で散漫、行き当たりばったりに終始したものでしかない。

主人公の行動目的は一貫して寿司および空手の"修行"にある。そして今回はシャリ作りを極める事が、全編通しての最大の目的と設定されている。にも拘らず、主人公がまだシャリを極めていない途中の段階で、釈由美子に食べさせたオニギリが口内でスパークしてはおかしいだろう。その場面だけ見れば、ロングショットにて釈の目や口がいちいちスパークする絵ヅラは面白いが、ストーリーが疎かになっては本末転倒だ。

最後の寿司対決でもまた、勝負の決め手となるのが"人を見てのネタ選択"だけでは、今まで延々と米作りを行ったり(それで人まで死んだり)、竹を切って握る力加減を見極めたりしていた成果が何も活かされていないではないか。あまつさえ食べた人の口内がスパークする演出すらないのでは、表現が一貫していない。

審査の推移にしても、特にベジタリアンなどは最初から司を推していないと筋が通らない、など、ひたすら作り手の都合を優先させるために本道を無理から捩じ曲げている事がバレバレな展開ばかりでは、いくら枝葉の小ネタに面白いものがあっても、お話として成立していない。

映像表現においても、コメディ方面における堤幸彦の悪い癖である、狙いの不充分な散漫で適当な画角、演出が多々見られるのが辛い。

自身でアクションヒロインを演じる事が出来ると、『修羅雪姫』などで既に証明している釈由美子のアクションシーンを、寄りすぎ揺らしすぎのハンディカメラの映像ばかりで構成してしまい、せっかくスタントではなく本人が演じている動きを、全く楽しめなくしているのだから、どうかしている。屋上での型シーンでも、本人なのに何故か後ろから撮っているなど、観客が見たがっているものを見せないでどうしようというのか。

ペペロンチーノとの決戦中に伊原剛志が乱入する段にて、この時乱入して来たのが誰なのかを、ハッキリ知らせたいのかそうでないのかが曖昧なカット割りなため狙いを汲み取れず、中途半端にしばらくしてから伊原だと気づくのでは、何をどう見せたいのか不明で盛り上がらない。しかも何故無事なのかもわからないままでは尚更。

司にライダーキックを決められたペペロンチーノが倒れるカットも、気持ちよくぶっ倒れるなりしてカタルシスを与えるべきところながら、やられたのかどうかもよくわからないグダグダした演出と締まらない画角では、少しも決まっていない。

ギャグ面では、序盤の英会話ネタの使い方、特に最初に入ったインチキ寿司屋を出る時に、最初に練習していた言葉を使うなどの、言葉選びやタイミングは面白い。が、後半に多用される、発音の違いをいちいち突っ込んで訂正するパターンは、ただイヤミなだけでクドい。

全体的にギャグが少なめで、どちらかと言えば感動を狙った展開や設定のウエイトが大きい事も、本来バカバカしくあるべき作品のムードを停滞させている要因か。釈由美子の過去の回想などは、オチで明かされる正体でズッコケさせるための長い前フリと考えられなくもないが、河太郎の顛末は泣けもせず笑えもせずで明らかに失敗。

師匠役で特別出演の石原さとみは、そのダミ声が元の師匠のキャラクターイメージとマッチしており面白く、やはり彼女はシリアスよりコメディ向きだと再確認出来るが、設定的には、ただ単に美少女に扮してみた、ではなく、師匠の若い頃の姿としておき、過去の因縁をその時代と絡めたものにすれば、ストーリー的な唐突さも軽減されただろうに。現状ではあまりに取ってつけた感が強い。

また、アメリカで変化した寿司冒涜堕落の様に描いている事も、気にかかるところだ。アメリカで独自の発展を見せている寿司文化の様と、厨房や料理人のレベルが低い事を、意図的に混同させて印象を誘導しようとの狙いが見え見えなため、余計にひっかかる。

衛生や調理技術、接客姿勢を踏まえた上で、オリジンとは別のものを作り出していく事は、日本におけるラーメンなどを挙げるまでもなく、誠実な仕事と相反するものでは全くない。本作での主張は、単に偏狭な島国根性にすぎず、外国人の職人でもいい仕事は出来るとしている、前半の展開とも矛盾したものだ。

最大の見どころが、釈由美子と太田莉菜にダブルキスされる、痴女AV紛いの主観映像では、劇場映画としてあまりに寂しい。何もかもが中途半端だ。

少女時代の釈由美子を演じた田中明は要注目。似てないが。



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この記事へのコメント

1. Posted by 通りすがり   2008年04月23日 16:14
>王子ブームなんぞ、マスコミ主導で作り上げて、リテラシーの
 無い一部のバカ女がみっともなく踊らされていただけの、
 空虚極まりないものにすぎなかったのに、
 それを作った側にいる方が、本当に世間に受け入れられると
 思いこんでしまうとは呆れる

薄々多くの人が感じてはいたが口に出せなかった事でしょうが、
(男が口に出すとそれだけで女性批判、女性軽視者と取られる)
当の女性によってここまでズバズバ斬られているのを見ると
本当に痛快です


>アメリカで変化した寿司を冒涜や堕落の様に描いている

その通りだと思います
それを描くんなら機械で握ったライスボールに
奇形魚の切り身を乗せた日本の回転SUSHIも
似て非なる勝利として批判されてしかるべきだと思います
2. Posted by つぶあんこ   2008年04月25日 12:00
まあ下手なバイトが握るよりは、機械の方が品質は安定するんですけどね。
3. Posted by ばろん   2008年04月28日 19:22
スシ王子見てきました。わざわざw
カツーンの中丸が用水路から抱き上げられて死ぬシーンだけは評価してもらえると嬉しいです。結構いい演技してたと思うんですよwあのシーンだけでチケット代の80%位は元取れたかなとwww
4. Posted by つぶあんこ   2008年04月28日 23:02
カツーンとやらは亀梨とハゲ以外よく知りません(><)
5. Posted by ぽん   2008年05月07日 10:43
3 こんなでも、ドラマ版より100倍は面白かったので自分的には満足でした。
6. Posted by つぶあんこ   2008年05月16日 11:53
ドラマの方がタダで観られる分、許せると思いますが(笑

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