2008年05月14日

ハンティング・パーティ 35点(100点満点中)

ジャーナリスト宣言(笑)
公式サイト

ボスニア紛争の一応の終結から五年後のサラエボで、アメリカ人ジャーナリストがセルビア人勢力の戦争指導者を捜し求める、"実話を元に"を宣伝文句に、社会派の題材をコメディタッチで描いた、リチャード・ギア主演映画。

とは言うものの、確かに実際の紛争を背景とし、実在の人物をモデルとした人物が多く登場するものの、とても実話とは思えない程に都合よく進む展開は、逆に創作だとしたら単に程度の低い御都合主義でしかなく、どちらにせよ首を傾げさせられるものだ。

まず、リチャード・ギア演じる落ちぶれジャーナリスト・サイモンが、セルビア人のカリスマリーダー・フォックスに執心する理由は一応語られはするが、彼の元相棒であるカメラマン・ダックが、現在の地位を放り出してまで、命がけの無謀なミッションに同行する理由付けが希薄すぎるため、この時点で受け入れ難い。

サイモンの動機にしても、つまるところ私怨にすぎず、いわゆるジャーナリスト魂とは正対するものだ。この、ジャーナリズムと私怨との兼ね合いの中途半端さあるいは不明瞭さが、最後まで作品の足を引っ張り続けている。

ラストの"成敗"シーンにて、それは完全な欺瞞となって露呈する。彼らが行った行為は、私怨に私怨をぶつける私刑の肯定いや積極的な推奨であり、復讐の連鎖を生む結果にしかつながらない。それを理性で断ち切るのが、ペンで剣を制すジャーナリストの使命ではないのか。あまつさえ、その私刑を、自分達の手を汚す事なく他人任せにして知らんぷりなのだから、無責任、身勝手、偽善にも程がある。

そもそも、フォックスを捕らえに行ったのかインタビュー記事が目当てだったのかも不明瞭なまま、何の計画も考えもなしに、無思慮無謀としか思えない暴走ばかりを繰り返し、それで案の定生命の危機に陥るも、これまた偶然にも幸運に助かってしまう、との連続は、実話としても創作としてもバカバカしすぎて少しも面白みがない。

フォックス支持者が集うバーにて、怒りを露にしだした店主や客達に対し、サイモンが火に油を注ぐ様な挑発的な行為を行うに至って、「ワザと怒らせて真実を引き出そうとの駆け引きか、さすがプロだな」と思わせたらただ単に怒らせただけで何の意味もなく、追い出されて終わり。何だそれは。

フォックスに関係がありそうな車を発見して、無謀にも猛スピードで追跡したら案の定捕まって、ここでまた、「何かプロジャーナリストならではの駆け引きを行ってピンチを脱するのか」と思わせ、制止も聞かずに猛スピードで追った時点で、当然最悪の場合でも覚悟は出来てるんだろうと思っていたら、銃を向けられた途端に「私はジャーナリオストだから助けてくれ〜」とみっともなく命乞いし、何の覚悟も準備もなかったのかと呆れさせられ、更には、相手が実は知人だったので助かりました、と、伏線も前フリもない唐突すぎるオチ。何だそれは。

フォックスに身柄を拘束され、またみっともなく「私はジャーナリオストだから助けてくれ〜」と命乞いしながら首を切られそうになった瞬間、処刑者のケータイが鳴って助かる。と、これまた伏線も前フリもない唐突すぎるオチ。

ベテランの戦場ジャーナリストならではの知識や機転を活かして、「上手い!」「さすが!」と思わせる様な頭脳プレーでピンチを脱する局面など全くない、全てが伏線も何もなしの、その場で思いついた様な御都合主義ばかりなため、悪い意味で脱力するばかりで少しも楽しめない。

一番役に立たないと思っていたコネ入社の新人が、交渉の場で大ハッタリを決めて重要情報をゲットする展開の様に、意外性や必然が上手く活用されていた場面もあるのだから、もっとそうした展開を用いてくれないと困る。

「報道されている事と現実は違う」とシニカルに言い捨てる場面があるが、だったらジャーナリストが戦地で命懸けで取材を行うのは何のためなのか。今自分達が行っている事を自分で否定してやしまいか。そもそもこの作品自体が、実話と言いつつ創作と偏向にて事実を歪めているのだから、完全な自爆でしかない。おそらく自覚はないのだろうが。

紛争当時の戦地にて、主人公コンビがカメラとマイクを手に銃弾飛び交う中を駆け回る、映画冒頭の戦場シーンは、観客自身がいきなり戦場に放り込まれた様にも思わせ作品世界への導入とした、臨場感溢れる映像の迫力と、そこで交わされる二人の軽妙な会話とのギャップにて、奇妙な面白さを醸し、少なからぬ期待を抱かされるが、見どころはそこだけに終わってしまうのだから、完全な尻すぼみだ。

そして映画本編において、述べた様な欺瞞が鼻につくものだから、結局戦場ジャーナリストなる手合いは、なんだかんだ奇麗事を並べ、社会正義を気取っていながら実は、下衆な野次馬根性と、スリルと冒険に酔って自己満足している、タチの悪いオナニー野郎にすぎないのでは、と思われてしまう事となるのだ。

そして本作の作り手の志において、それは消して的外れではないと、現実におけるリチャード・ギアの政治活動の実情を見れば瞭然である。

「真実に目覚めた」と勘違いしたアメリカのリベラル学生が、若気の至りで勢いに任せて書いた様な、あまりに陳腐で底の浅い脚本が、興味深い題材も達者な俳優の持ち味も、無駄に使い潰してしまった残念作。

本当に学生が作ったのなら、よく頑張ったねと褒めてあげるが、いい歳をしたプロがこの有様では、何とも。


tsubuanco at 20:25│Comments(2)TrackBack(18)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by ぽん   2008年05月14日 23:54
ダッグの恋人が、ギリシャでバカンスを楽しんでいるシーンだけが面白かったです。
2. Posted by つぶあんこ   2008年05月16日 14:44
あのシーンもオチがないですよね。

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