2008年05月17日

幽霊 VS 宇宙人 総合24点(100点満点中)

つまり、ヒドラ対ウルトラマンですね。わかります。
公式サイト

シュールホラーコメディドラマ『怪奇大家族』の元ともなったとされる、清水崇と豊島圭介がそれぞれ幽霊と宇宙人をお題に、自主制作にて作った短編を二本立てで贈る、オムニバスのシュールコメディ競作企画『幽霊 VS 宇宙人』の、最新版第三弾。当初は本当に個人的に撮っていたものが、回を追うごとに少しずつ予算規模がアップしていっているのが面白い。

のだが、インパクトの強いビジュアルと緻密な構成ロジックにて、圧倒的に面白いホラー映画を作る能力があり、ホラー描写の匙加減を暴走させる事でギャグに転化出来る清水崇はともかく、ホラーオムニバス『コワイ女』にて、一人で作品全体の平均点を落としていた豊島圭介は、これまでに面白いと思えた作品は超短編である『ユメ十夜』の一編くらいで、そもそも清水崇と比べるに値しない実力差が、根本的な問題として存在する。

第一弾および第二弾ともに、清水パートはそれなりに笑えて面白いが、豊島パートは寒くて退屈なだけ、との傾向に完全に固まっており、今回も同様。特に今回はお題を"現代版の四谷怪談"と共通させている事から、センスの差異は殊更に顕著に現われている。

まず清水崇による『ロックハンター伊右衛もん』 単独45点

ドキュメント調に四谷怪談の説明が始まる導入部から、その再現映像的ニュアンスで挿入される、伊右衛門とお岩のミニドラマにて、伊右衛門を演じているのが山中崇というだけで、シリーズを追って観ている者ならば、「またコイツかよ!」と出オチ的に笑えてしまう。

主題歌がムード歌謡コーラスなのは、前作『怪談 轢き出し地獄』からの引張りネタ。終盤に見られる、殴る切り返しも、『轢き出し〜』のバトルシーンの踏襲。宮下ともみのキャスティングは、第一弾のDVDジャケットにて、彼女が白装束の幽霊姿でモデルを担当していた事からの、本編へのスピンオフネタである。

堀部圭亮が登場したと思ったら、キャラ名が「ホリベモン」でクスリと笑わせ、その「もん」が主人公伊右衛門と共通し、正体の示唆となっていると気づかされる。更には前作『轢き出し〜』の"リアルドラえもん"をも彷彿とさせ、やはりシリーズを引張ったネタとしても機能している。柳ユーレイの顛末も、名前ネタの一環か。

そのリアルドラえもんを演じていた植田裕一が、今回も出演し、まずスーパーマンやウルトラマンなどのパロディキャラとして、様々なコスプレを披露する事で、これまた前回のドラえもんネタを踏まえたギャグとして笑わせている。このパロディ場面、しっかり音楽や映像をそれっぽく作り込む事で、それを植田裕一が演じているズレによるおかしさを引き出せている。ある意味で「コス」ではないターミネーターが一番笑えるというのも面白い。

それだけではなく、「子供の成長が早い」との、キャスティングの都合を言い訳しているだけと思わせたギャグをも最終的に絡めて、大オチの一つとしている構成は秀逸。そしてこの子供、成長するごとに胸のカエルプリントがリアルになっていくのは、同じく『轢き出し〜』にてのび太が着ていたシャツのプリントを使った小ネタと共通している。

本作ではその様な、前作までのシリーズを意図的に踏襲した繰り返しネタが多用されており、それを発見出来るか否かで、楽しめる度合いも大きく変わってくる。逆に言えば、前作までを観ていない事には、本作を評価するに当たらないのだ。

主人公が銃を乱射するのは『松ヶ根乱射事件』ネタだろうか、と思っていたら、ハリセンボンによるインターミッションに山下敦弘が出演していたので、その解釈で正解だろう。ただし清水が担当したこのハリセンボンパートは、件の山下敦弘を春菜(デブ)が罵倒するくだりや、はるか(カッパ)が彼氏とラブラブな様が、最近の熱愛発覚報道と被っているなどが笑える程度で、終始グダグダなトークに徹しており、本当に休憩時間と化しているのは困る。閑話休題。

板尾の嫁を想起させる仲村みう演じるギャルは、それ自体は大して面白くはないものの、父親とのグダグダな掛け合いがシュールな面白さを醸しており、最後のオチに使われたのも納得。メガネが飛んだくだりのアドリブも、適度な間の悪さがリアルで笑わされる。にしても全く仲村みうに見えないのは凄いが。

とは言え、前二作『こっちを見ないで』『怪談 轢き出し地獄』に比べると、予算規模に反して作品の質は落ちている様にも感じられる。何も考えず好き勝手に作れる環境の方が良かったのか、あるいはそろそろネタ切れか。

そして豊島圭介による『略奪愛』 単独3点

こちらはもうどうしようもない。コメディといいながら笑える場面が一つもなく、テンポが悪く安っぽいメロドラマに終始。今どき田舎者の訛りトークで笑えるとでも思っているのだろうか。

女性が謎の踊りをしている映像を無意味に見せられるのは、第一弾の『ぼくの宇宙人』と同じネタだが、どちらも無意味なだけでつまらない。


山本彩乃
演じるファム・ファタールを、その魔性を感じさせる様に、エロティックに撮れていないのが、メロドラマとしての観点においても致命的。存在自体がエロエロな山本彩乃を、ここまで魅力なく撮れる方が却って凄い。

ホットパンツを履かせているのに、フトモモのボリュームを捉えるわけでもなく、後ろからヒップラインを見せるでもなく、この監督は、女性の美とエロスに対する敬意というものが無いのだろうか。レズキスのシチュエーションまで用意しながら、全くエロくなくあっさりスルーでは、笑う事も興奮する事も何も出来ない。

いろいろと用意されている小道具などが全く有為に絡まず、逆に無意味ゆえの笑いにも繋げず、ただ出てくるだけばかり。この無駄遣いぶりは、前作までにも共通するものだ。不条理と考え無しは違う。

コメディとしてはあまりに真面目で暗すぎて笑いどころがない。寒いギャグとしか思えない無意味な枝葉ばかりで脈絡がなく興味も持てないため、マジメなドラマとしても成立していない。のでは、一体どう楽しめというのか。これでは観客役の春菜同様に爆睡するしかないし、しても入場料の半分以外は損しない。

いい加減、仲がいいだけの理由で一緒に作品を作るのはやめてほしいと、誰か近しい人が言うべきだ。



tsubuanco at 16:44│Comments(0)TrackBack(1)clip!映画 

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1. 【2008-119】幽霊VS宇宙人  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2008年05月29日 01:07
2 人気ブログランキングの順位は? SFかコメディか? エロスはロマンか? 夢にまで見た? 異種格闘技恋愛映画 ここに降臨!! 人間どうなるよ?

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