2008年05月21日

同級生 43点(100点満点中)

「え、だったら同級生じゃん」「いやクラスどころか学校も違うから」
公式サイト

女性向け芸能雑誌『JUNON』が企画した、『JUNON恋愛小説大賞』第一回優秀賞の受賞作である、鹿目けい子による同名短編小説を、『仮面ライダー電王』におけるゼロノス:桜井侑人役にて、子供から主婦までガッチリハートを掴んだ元ジャニーズJr.の中村優一主演により映画化。2006年度のJUNONスーパーボーイに選出された高橋優太と久保翔が脇を固めており、一方でヒロインとなるのは少女向けファッション誌『SEVENTEEN』専属モデルの桐谷美玲 JUNON読者層のミーハー女性をメインターゲットとしている事は明確。エルフのゲームとは無関係だ。

また本作、同じく鹿目けい子作の短編小説『体育館ベイビー』の映画化とワンセット製作、同時公開という企画である事が、大きな特徴と言える。同じ時間、同じ人物、同じ舞台ながら、パラレルワールドとして別物のストーリーがそれぞれ展開する構成は、まさに二作をワンセットで鑑賞する事を前提としている。評点は単独作品としての評価であり、二作一対としてならば10点ほど上乗せ出来る。

原作ストーリーとの関連性から鑑みても、題材やストーリーの方向性からも、まず本作『同級生』が基本として存在し、変化球なパラレル番外編として『体育館ベイビー』が用意されていると見受けられる。

基本だけに、というよりは原作のスタイルがケータイ小説にも近い、ベタな難病悲恋もののストレートど真ん中だけに、あるいは原作と映画の内容の踏襲と改変の格差からも、先にこちら『同級生』を観てから続いて『体育館ベイビー』を鑑賞する、という順番が、作り手の意図しているところだろう。

が、予想外の事が何一つ起こらない、あまりにベタ、王道に終始する本作は、単体の作品とした場合、特段の面白味に欠けている事も確かである。ゆえに実際には、変化球の『体育館ベイビー』を先に鑑賞して、少し普通ではない世界観に興味を引かれオチに苦笑し、それを踏まえた上で王道の『同級生』を観る事で、王道ストレートである事が却って意外性となりギャップゆえの面白さが生まれる、との楽しみ方を選択する方がお得にも思える。両作の情報差および主軸の差異による反復とズレを比較して楽しむ上でも、その順の方が相応しい筈。両作比較に関する事は『体育館ベイビー』レビューの方にて記述する。

話を本作に絞る。恋愛絡みの基本ストーリーは原作とほぼ同一だが、水泳部員という設定は映画オリジナルだ。これは単に、メインのイケメン俳優を半裸にさせる、ファンサービスに必然を持たせるためだけの、とてもわかりやすい改変であり、それ以上でもそれ以下でもない。ファンは素直に大事なところ以外まる見えの裸体美を鑑賞すればいい。しかも水泳部だけに当然濡れている呼吸も粗くなる、フェティッシュのツボを突いた設定選択は上手い。ヒロインもまた元水泳部の筈が、回想シーンなどで水着姿を披露する事が全くないのだから、狙いは完全に絞られているのだ。

女性向け作品だけに、少年が主人公で彼の心情をメインに描くものながら、全ては女性の願望を投影させた、理想の中にしか存在しない男性像として、極めて都合良く描かれている。これは男性向け作品に登場するヒロインが、男にとって都合のいい存在として理想的に描かれている事と同質であり、方向性としては正しい。

一方で女性側の描写は、病院の廊下で主人公と不意に出会ったヒロインが、焦り気味に妹(桜庭ななみ)の方を見て「ヘンじゃないかな?」と目で合図し確認を求めるなど、リアルを散りばめた演出および、ツンデレにも程がある、決して美化せず不器用で意固地な面を強調する人物描写などにより共感や感情移入を生むのも、女性向けの方向に沿ったものだ。

現代が舞台なだけに携帯メールがコミュニケーションツールとして用いられているが、古くから文通などを用いた、出会う事のない文字のみのやりとりによって、自身の脳内で相手像を膨らませて恋してしまう、との展開は、プラトニック恋愛ものとして王道。そして実体を見せない相手と、現実生活において主人公を見ている人物が、実は同一であった、とのギミックもまたベタ中のベタ。

だがベタというのは面白いからこそ多用される。主人公が"本人"の前で"憧れの君"を褒め讃え、逆に"本人"を比較罵倒する、との、これまたベタベタに王道で鉄板的に受け手側をヤキモキさせる展開も必須だ。

そうした手法を、どちら側の視点をメインとするか、との選択がまず分かれ道となるだろう。本作では主人公が受動側として、観客に対してもその真相を隠し、後から明かして驚かせる、とのスタイルだが、最初にメールが届き、ヒロインらしき病床の少女が登場した時点で、観客の誰もが同一人物と安易に予想してしまうに決まっている。

にも拘らず、主人公に対してだけでなく、観客にとっても謎のままにしようとの作劇にて進められるのでは、感情を主人公にシンクロさせればいいのか、「気づかない」主人公にイライラする野次馬視点で楽しめばいいのかが不明瞭となってしまう。どうせバレバレなのだから、後者の作劇に徹底させた方が、素直にベタを楽しめたと思うのだが。

だが、主演の中村優一の端正な顔立ちを、これでもかと必然的に照明をあててアップで捉える映像を多用し、彼が恋愛に対し浮かれたり必死になったり、時にマヌケな行動もとってしまい、とにかく"愛する女"のための、ありとあらゆるアクション、リアクションを追い続ける本作は、恋愛映画に女性が求める「こんな風に愛されてみたい」との願望を満たす上では、充分以上の成果となっており、指針としては成功している。

難病映画とは言え、韓流映画の様に殊更に号泣したり、自分が悪いくせに「助けてください!」と無責任に叫んで呆れさせる様な事もなく、過剰な押しつけを行わず、直接ではなく間接的な描写を重ねて、後からジンワリ泣かせようとの意図による作劇は好感が持てる。

オマケに二人は最後まで一度も触れ合う事すらないのだから、純愛にも程がある。その意味では、お手軽に読める御都合主義ながらも、ケータイ小説とは真逆の志と言えるかもしれない。

夏の大三角、ベガ、アルタイル、デネブ、と出る場面は、当然笑いどころだろう。




tsubuanco at 15:19│Comments(0)TrackBack(0)clip!映画 

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