2008年05月26日

花影 39点(100点満点中)

飛騨の国から仮面の忍者を呼んだ。その名は!
公式サイト

日本と韓国を舞台に、在日女性韓国人男性の出会いと恋愛を描いた、市川森一の原案・脚本による日本映画。大岡昇平が1961年に発表した同題の小説および、川島雄三監督によるその映画化とは無関係。

市川森一のキャリアスタートは、円谷プロ製作の『快獣ブースカ』である。そのブースカや、しばらく後に手がける『シルバー仮面』などで、(良い意味で)正気で書いたとはとても思えないシュールでサイコなストーリーを発表していた市川だけに、本作後半のトンデモ展開もまた、「市川だなあ」で納得出来るものだ。それが良いとか面白いとかに直結するわけではないが。

だが一見トンデモなだけの様で、「具体的な日時も決めずに待ち合わせ?」「なんでいきなり韓国語ペラペラやねん」との、観客全員が全力で突っ込む超展開に、後からちゃんと万能のエクスキューズがなされており、「それなら仕方ないか」と無理から納得させる、いや納得しないと仕方ない気持ちにさせてしまう力技は、市川森一ならでは。凡百の韓流作家なら、とにかく泣き喚かせて誤魔化そうとするところを、上品に流しているのも助かる。

だが、キム・レウォン演じる青年の真相はハッキリするものの、後の展開にて、墓参の儀式中に子供達が駆けつけるシーンがあるが、その子供達の存在が、どこに行ったとの説明も無く直後には完全に消えている。これは、実はあの一団は最初から全員死んでいた、とも解釈でき、下手なホラーより怖い。そして笑える。

だが、後半のサイコ展開以降は、実は古典的怪奇譚の踏襲でもあり、「そういうものだ」と、もはや何でも受け入れる気にさせられはするが、そこに至るまでの、普通のメロドラマとして見せられる前半部にまで、納得の行かない、あるいは意味のわからないツッコミどころが多々あるのは問題だろう。

まず二人の関係からして、何故青年がヒロインに一目惚れしたのかが全然わからない。劇中に人気モデルとして登場した伴杏里ならともかく、父親のコネで業界にしがみついているだけの山本未來は、劇中人物達が口々に言う「美人」には全く見えず、こんな馬面でガリガリの貧乳の、30歳過ぎて客観的には女として終わっている、しかも性格は最悪の女の、どこに一体魅力があるのか。最初から筋が通らない。

一方ヒロインの側も、男と別れた上に仕事も上手くいかず凹んでいるピークとはいえ、手紙が来て尚ロクに思い出せもしない程度の存在でしかなかった青年に、わざわざ会いに行くのも無理からの展開で、会った途端にラブラブになるのも無理すぎる。いやこれは霊パワーと解釈すればいいのか。

物語の転機の一つとして用意されている、スキャンダルが暴露される展開は、全てが終わった後に暴露されてしまい、もう何も無いのにダメージだけ食らってしまう、との皮肉は意地悪で面白く、その後の、取り返しがつかなくなった後で"再会"する構造的伏線にもなっていると解釈する事も可能だが、そもそも何故そのタイミングで暴露されたかの伏線や前フリが無いため、唐突な印象を受けてしまう。不倫相手(石黒賢)の妻が倒れる伏線は用意していたのだから、こちらにもあるべきだ。

その不倫相手との別れシーン。交わされる会話そのものは、互いの身勝手なエゴがぶつかり合ってどちらも幸福になれず、でも男側には行くところがある。との皮肉な図式は真っ当に面白いが、その場面に限って石黒賢が眼帯をしたままな意味が全くわからず、「それなに?」と聞かれ「ものもらい」と返す説明も、取ってつけたものでしかない。

真面目なシーンが眼帯ひとつでシュールコントと化してしまった珍場面として、インパクト大である。別の仕事の都合でスキンヘッドで登場したギャバン隊長が、「その頭、どうしたんですか?」と聞かれ「うん、ちょっとな」で全て済ませてしまった『三人の宇宙刑事スペシャル』を彷彿とさせ、佐藤浩市のオカマ演技よりも、よっぽど笑える。

恋愛ものとしての観点で、もっともリアル且つ興味深く作られている部分は、メインの男女よりむしろ、序盤に登場する在韓日本人少女仲谷みなみ)の方だろう。

言葉が通じないヒロインと青年の通訳として介在しながら、互いに対し悪意を込めた"意訳"を伝える事で、実は全く会話が成立していないのに、二人は通じていると思い込んでいる、との、表面的なギャグとしてもまず面白い。

だがそれ以上に、この少女が青年に対し、女として想いを抱いており、ヒロインを女としての"敵"とみなし、故にコミュニケーションの成立を阻止している、との、女が生まれた時から備えている情念を描き、単にあっけらかんと笑えるだけのシーンに終わらせていないのだ。

このシチュエーションこそが、作中における市川森一節のピークと見て間違いない。最初に一番面白いところを出してしまったから、後半は超展開にするしかなかったのだ、とも見て取る事も可能。

どちらにせよ、あまり真面目に観るといろいろと面食らうので注意が必要。本編前にキム・レウォンがカメラ目線で素で登場し挨拶した時点で、韓流オバサンの財布だけをターゲットにした、志のあまり高くない作品と瞭然なのだから、気づくだろうが。



tsubuanco at 18:47│Comments(0)TrackBack(1)clip!映画 

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1. 【2008-69】花影 hanakage  [ ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! ]   2008年05月29日 00:54
2 人気ブログランキングの順位は? 満開の桜の樹の下、僕は一目でアナタに恋をした あなたの夢の中にいたい

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