2008年05月29日

暗殺・リトビネンコ事件 2点(100点満点中)

一方ロシアはポロニウムを使った
公式サイト

ロシアとプーチンの悪行を暴露し亡命した、ロシア連邦保安庁(FSB)の元職員、アレクサンドル・リトビネンコ氏への生前のインタビューを中心とした、告発ドキュメンタリー映画

同氏へのインタビューと共に、他の識者や関係者へのインタビュー、および報道映像などを交えて、プーチン政権樹立へ向けて進められた陰謀と、現在も政権維持のために行われている陰謀とを、次々と告発していく内容と、邦題にもあるリトビネンコ氏の暗殺にまつわる疑惑と謎掛けの、二つの要素が上手く絡み合わず、全体の方向性を散漫にしている事が、致命的な構成上の問題。

その点に限らず、特定の事件や事象を採り上げて、章仕立てで構成されている、プーチン絡みの陰謀の数々が、それぞれがどの様な関係性を持ち、全体の流れとして配置され作用しているのか、との指針が散漫で、ただゴッタにレポートを羅列しているだけとしか感じられない事も問題。これにより、今話されている事はどれに対するものなのかの矛先すら散漫となり、その次に話される事もまた繋がりが希薄なため、ストーリーが見えてこない。指針の見えない退屈で単調な構成は、興味を抱き難い結果となる。人によっては爆睡だろう。

この種の告発は、知らない人にもまず興味を持ってもらうだけの、キャッチーでわかりやすい惹きつけ方とまとめ方が重要である。大枠としてのキャッチは邦題で行えているにせよ、それだけではあまりに大枠すぎ、実際に羅列される細かい事象との間に位置する、要約的な進行を、随所に差し挟んで理解させるべきだ。

そうした、本来必要と見られる作業は行わず、まるで知っている事前提の様に、大事なところに限って省略し、どうでもよさそうな事ばかり細かいのでは、告発として成立せず、作っている当人だけが満足しているオナニーでしかない。二時間もかけて延々ダラダラしているだけとは、一体どれだけ話下手なのかと、呆れるばかりだ。

本作の監督アンドレイ・ネクラーソフが、インタビュー映像にても対象だけでなくやたらと自分も画面に映り込み、あるいは自分単独のイメージ映像的なものまでわざわざ撮影して、ところどころに挿入するなど、無意味な自己主張、ナルシシズムがプンプン匂う。彼が映る事で面白くなる事は何一つ無いのだから、オナニーとの指摘は概して的外れではないだろう。

自己主張は露出プレイでなく論説や考察で行うのが、ジャーナリスト、告発者のあり方だろう。マイケル・ムーアの様にキャラクターとして面白い存在に自己演出し、時に自虐的なギャグまで用いてストーリーを進行させる程でない限り、本来伝えるべき内容より前に出る意味は無い

そんな、男優がやたらと映り込んで女優の体を遮り、大声で喘いで女優の声をミュートさせる、ダメなAVの典型の様な、本作の監督の自己演出は、大国の陰謀や人の死という、重い題材を扱うには、あまりにそぐわないものだ。総じて作りの全てが稚拙にすぎる。

そもそもリトビネンコにしても、KGB時代からずっと裏世界で汚い仕事を繰り返して来た張本人であり、結局はプーチン派閥との権力争いに負けた腹いせに告発しているだけとバレバレである。それをまるで、正義の人が悪の権力に殺されたかの様に、悲劇的に描いているのもまた、あざとい印象操作がバレバレでシラケるだけだ。

また、いろいろと疑惑を告発してはいるが、その全部が口述状況証拠によるものばかりでは、その気になればいくらでもウソをつき放題である。

ただし、茶に放射線物質を混入させて暗殺を行った容疑者とされている人物が、インタビューの最後に「茶でも飲んでいくか?」と聞くブラックギャグは笑えたが。



tsubuanco at 17:07│Comments(2)TrackBack(0)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by ざっく   2008年05月27日 01:38
映画は未見なのですが、内容はつぶあんこさんの指摘どおりなんだろうな―って思いました。そもそもリトビネンコの暗殺はロシア的に大した影響もない事件だし(嗅ぎ回るとこうなるんだよ、という見せしめに過ぎない)政権の陰謀と関連付けるには無理がありますからね。

ロシア政権の暴露映画を上質にするには、僕もリトビネンコになりかねないってくらいの肝っ玉で創ってくれないと見ごたえのある作品にはならないんじゃないかな、と。
2. Posted by つぶあんこ   2008年05月30日 17:24
腰が引けた作りの割には、やたらと映りたがってるんですよね監督。

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