2008年06月13日

コラソン de メロン 34点(100点満点中)

メロンアイスにガムライス
公式サイト

『音符と昆布』に続くcinemusicaシリーズの五作目。今回は『うた魂♪』でも、歌曲と映画のコラボレーションに挑んだ田中誠が監督。

今回ヒロインの井上和香、かつてサラのCMに出演していた彼女に対し、TMR西川貴教が「高利貸し」とイヤミを言うシーンの、確信的なアイロニーが面白い。

彼女が旧友と再会するシーンでも、「マスクしてても、アンタだってわかった」との台詞は、一応「美人だから」とのフォローがなされてはいるが、実際には、一度見たら忘れられない骨太体型と頭部とのバランスの悪さの、シルエットで気づいたと考えるほうが自然。作り手は彼女に悪意でもあるのだろうか。

だがそんな彼女の最大の売りである巨乳の扱いは、基本的には控えめだ。が、闇バイトシーンにおいては、バストの上と下を縛って絞り上げた緊縛状態にて、そのボリュームを殊更に強調し、あるいは土下座を正面ローアングルで撮影し、重力によって形状を特化されたワカパイを、胸元の開いた衣装にて見せつけるなど、要所は押さえられている。

ただしエロ方面では、彼女よりむしろ脇役の小嶺麗奈が担当扱いだろうか。脱ぎこそはないものの、何故かTMRを執拗に誘惑する小嶺が、彼に手マンされて喘ぐシーンが二回も用意されているのだから、その意図は明確だ。

とはいえ、宮崎あおいの『初恋』にて裸体を披露しながらも、あまりの貧乳にガッカリさせられた小嶺麗奈と、乳がアイデンティティの井上和香では、TMRが小嶺の誘惑を振り切って利用するにとどめる展開も当然。この三角関係に関しては、うまくバランスが取れている。

描かれるのは典型的共依存ダメカップルの、ダメ人間極まりない光景だ。ドラマ『黒い太陽』などでも薄幸役が似合っていた井上と、一体何がいいのか全くわからないが何故か女には不自由しない、とのヒモ男がこれまたよく似合うTMR、演技力は別として、絵面においてはキャスティングは的確。

低予算映画の定番、脱力系コメディとして展開される人間模様は、ディフォルメやギャグを用いながらも、一面的にはリアルな"あるある"を意図したもので、どうしようもない人間のどうしようもない様には、共感も同情も出来ない。だが、どうしようもなさに呆れる事を楽しむのが、本作の狙いなのだから、それで構わないのだ。

タイトルにも用いられ、テーマ的なメタファーであろうメロンアイスは、男の優しさの象徴として用い、ダメな依存性とのギャップとして、ささやかな感動を起こさせる意図なのだろう。だが、そうした気まぐれ的な行為がタイミングよく行われる事こそが、ダメ男から逃れられない罠となるものだ。決していい話とは思えず、むしろ"どうしようもなさ"の究極として見てしまう。

あるいはそれも意図的なのだとすれば興味深い。温泉旅行(未遂)シーンにて、男が財布を預かった時点でどうなるのかは誰にでも予想がつく。だが、そんな彼をヒロインが責めて叩く場面にて、叩く途中で一度キスをし、また叩き始める、との流れは予想外だ。緩急を意図したギャグとして笑えると同時に、依存しきった腐れ縁をも表現しており、二人の関係性が如実に且つ的確に見せられる、名場面と評価出来る。

男がヒロインを裏切ると思わせて、やっぱりそうしないとのパターンを繰り返して、キャラクター描写と同時にストーリーの進展を行う構成にも注視したい。メロン持参の小嶺を追い返す場面を最初に、彼女にラーメンをご馳走になってもそのまま去っていく顛末を最後に置く事で、彼女への態度を完結させ、ヒロインへの誠実を表現している。自転車泥棒場面や公園にタクシーで駆けつける場面なども、裏切りと思わせて助けに来る、との、同様に裏切りを裏切るパターンの一環だ。

ただし女性関係におけるそれでは、安易な予想を裏切ってくれつつも、それ以外の局面においては、裏切ると見せかけた段階で、結局は裏切らないと予想出来てしまうものばかりなため、全てが上手く機能しているとは言い難い。

箱の陰からインド人が現れるカットや、女王様がそのままの衣装でコートを羽織ったのみで帰っていくなど、ツッコミ無しのボケが各所に配され、例に挙げたものも含め、いくつかはクスリと笑わせられる。一方で鳥肌実が演じる知的障害者に関するあれこれは、笑わせたいのかそうでないのかが不明瞭な作劇、演出に終始し、消化不良だ。

彼がヒロインに、「あなただけは優しくしてくれた」と言う場面があるが、メロンを強奪するなどの悪行描写しか思い当たらず、むしろメロンをあげた小峰麗奈の方が優しいだろうと突っ込まざるを得ない。

彼が気絶した段階で、正気に戻ると安易に予想を立てる事は可能で、実際その通りになる、それ自体は構わない。むしろ、彼の存在とその顛末は、赤塚不二夫の漫画にて多用されたパターンを想起させ面白い。その線で考えれば、主人公のダメカップルのダメダメな人情ドラマは、『おそ松くん』の長編ストーリー版における、イヤミとチビ太の共生関係にも共通するものだ。もちろん作り手の意図するものではないだろうが。

その気絶場面の直後に、別の中年男(大家)を思わせぶりに登場させる段取りも、中途半端に理解を混乱させる乱雑なものだ。結局のところ、彼の登場に時間を割く意義は全くないのだから尚更。派遣社員なのか契約社員なのかどっちだと、首を傾げさせられる、やはり乱雑な語用も気にかかる。

だが監督の資質としては、前作『うた魂♪』の様に中途半端に規模の大きい作品より、この程度の小品の方が合っている様にも思える。
『音符と昆布』レビュー
『うた魂♪』レビュー 『雨の町』レビュー


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1. コラソン de メロン〜平成枯れすすき  [ 佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン ]   2008年06月15日 00:15
公式サイト。田中誠監督。井上和香、西川貴教。そこはかとなく「昭和枯れすすき」から連想して「平成枯れすすき」という雰囲気。

この記事へのコメント

1. Posted by くちびるNetworkは名曲です   2008年06月15日 18:58
Q太郎とU子さんのラブストーリーは、やっぱ100%ギャグってねーとダメでちゅね。
キタキタ!って身を乗り出した闇バイトの場面も、女王様が妙にチビで弱そうだし、プレーに入る前に言葉責めのひとつも入れなきゃ、パンツ一丁でワクついてるオジ様達にも失礼だっつーの。監督わかってねーんだなー。ソバ屋の兄ちゃん
は意味不明な存在だし、裸の大将はウザいだけだったし。まぁ、そもそもが、オイラの小嶺麗奈様が手マンだけで骨抜きになるっちゅー無礼千万な設定自体、大問題だーな。観客ナメんなよ!
バケラッタ!バケラッタ!(3作連続裏切られたし、もう田中誠の映画、2度と見ねーぞ!)


2. Posted by つぶあんこ   2008年06月15日 19:51
女王様が小さいんじゃなくて、井上和香がゴツいだけかと。

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