2008年06月16日

バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び 52点(100点満点中)

バレエがー バレエがー 好き好き 好き好きーっ好き〜♪
公式サイト

20世紀初頭
にフランスのパリで結成された、ロシア人を中心としたバレエ団、バレエ・リュスおよびその後継であるバレ・リュス・デ・モンテカルロとコロネル・ド・バジルらの軌跡を追った、ドキュメンタリー映画

当時の実際の映像を用いて、時系列に沿ってわかりやすく解説を加え、現在存命の関係者からのインタビューによる回想も交える事で、"バレエ・リュスの歴史"を通り一遍ながら認識、追体験出来る作品構成は手堅い。

単純に団の趨勢を述べるのみでなく、ロシア革命第二次世界大戦などの歴史と平行し絡めていく事で、ロシア(ソ連)人を中心としたダンサー達が、本国ではなくヨーロッパや米国を渡り歩き続けた理由を明確とし、団の存在自体を、歴史の中にリアルに位置づけられるものとして構成。観客の興味の導入を各方向から促しているのも上手い。

アメリカの特に南部で根深かった人種差別をも絡め、異邦人の集団が外国を流浪した事実が、客観的にも奇異であったと強調しつつ、だからこそ内部では人種差別が行われなかった事とも併せ、理想と現実のギャップによる苦境や挫折を語り、単純な思い出語りの自慢話に終わらせていない。当時差別を受けた団員の現在を見せ、語らせる事で、過去の事実の生々しさを醸し、同時に現在の克服を強調してポジティブな印象を与えるなど、ダメなドキュメンタリーにありがちな事実の羅列のみに終わらない様、全てに意味を持たせ、観客を惹き付ける構成力は素晴らしい。

リフト時における姿勢の差異を、男性プリンシパルの回想として語らせて、当時覇を競っていたプリマのキャラクター差異として、観客に興味深く伝えるなどの、各人物の視点から別の人物を語らせ、それを一方通行ではなく各人物から各方向に行わせる事で、一面的ではない人物像がそれぞれに浮かび上がってくる、人物紹介自体にストーリー性を持たせる手法も的確。

経営者に気に入られた女性が抜擢され、人間関係に軋みが生じたり、ダンサーあるいはコレオグラファーとして優れている者は経営力に難があり、金勘定に長けている者は、現場を顧みないジレンマなど、あまり良い印象は持たれない事柄までも、歴史の事実として踏まえながらも、だがそうした色々があったから今があるのだと、全てを許容して現在の自分を誇っている元団員達の、人生に前向きな姿勢が如実に伝わり気持ちいい。

2000年に開催された同窓会の模様が、"現在"として用いられている本作において、見た目は老人の集団ながらも、皆が一様にバレエの事を愛していると、その笑顔の数々が物語っているわけだが、「好きだから」で人生を全う出来るのは、真に才能と意識のある選ばれし天才のみである事も確かだ。一般人にすぎない観客にとっては、だからこそ彼らの過去が如何に特別なものであったかと、より一層に伝えられる事となる。

しかし、全身を随意にコントロールし美しい形と動きを作り出すバレエでは、全身を見る事が重要となるのだが、各所にて存分に見せられる当時の映像の多くが、足元が切れている割に頭の上が不自然に空いているとの、素人が撮ったとしか思えない、バレエの記録としては拙いものである事が、大いに不満となる。

もちろん、脛から上だけの動きを見ても、彼ら彼女らのパフォーマンスが超一流である事は明白だ。だが、だからこそ、足先の角度や動きまで全てを鑑賞し、世界トップレベルの美しさを堪能させてくれるべきではないか。映像がそれしか残っていないのだろうとは想像出来るが、何とも残念。

バレエにある程度興味があり、概略は基本常識として既知であったとしても、ここまで具体的に歴史を捉えた資料は、やはり貴重。一度限りの劇場鑑賞だけでなく、自宅で何度も観たくなる作品だ。



tsubuanco at 14:10│Comments(1)TrackBack(1)clip!映画 

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20世紀初頭のパリに始まり、一度は解散した伝説のバレエ団“バレエ・リュス”の再生の歴史を追うドキュメンタリー。20世紀のあらゆる芸術とエンターテインメントに影響を与えたバレエ・リュスの知られざる軌跡を、かつてのダンサーたちへのインタビューなどを交えながらひも...

この記事へのコメント

1. Posted by kimion20002000   2009年02月17日 16:57
バレエの団員たちは、歴史の中で栄光を得ながらも、たぶん少ない報酬で、どさ回りをやっていたのだろうなあ、と思わされます。
好きでなきゃ、あるいは舞台が持つ魔術性みたいなものがなければ、やってられないと思いました。

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