2009年03月24日

悲夢 Himu ★★★★★

公式サイト プラデラレビュー

キム・ギドクがまた凄いものを作った。やりたい放題に見えるのに完成度は高いというのが天才的。

劇中にて明確に明示される白と黒の対称をはじめ、男と女、夢と現実、睡眠と覚醒などなどあらゆる要素が表裏一対となって、時に一周して同一にもなるなど、整理されたカオスなる矛盾した状態となる。人物の役割がいきなり変わったりなどは「夢」の中での唐突な曖昧の表現でもあり、オダギリだけ日本語なのに韓国人と普通に話が通じているとう、本作最大の違和感は、これまた「夢」のメタファーでもありつつ、過去のキム・ギドク作品に共通する大命題「コミュニケーション」の、今回の方向性の象徴でもある。

ここ最近の作品では、『弓』、『絶対の愛』、『ブレス』と、寡黙と饒舌を交互に用いており、今回もまた嫌というほど喋りまくるも、だが饒舌な作品の方では真意の疎通は阻害され続け、寡黙な作品はその逆。という仕様も共通。その辺りの「らしさ」の組合せを見てとっていくだけでも楽しい。

「饒舌」側の作品においては特に、通常の韓国映画を更に上回るオーバーアクションを演じ手に要求する事で、逆に空虚さを際立たせる仕掛けも入念。こうした意味のある演出に対し、笑うという幼稚なリアクションしか生じない人間は、己の底の浅さも自分が笑われている恥ずかしさも自覚出来ない未熟児でしかないので映画館に来なくていい。

夏目雅子を似顔絵化した様な、極端な顔の美女をヒロインに据え、その強烈な目力のインパクトに魅力と狂気の双方を感じさせる一方、もう一人のこれまた対称となるブサイクを配するも、だがそのビジュアルもまた役割的な必然となる。など、ギリギリの線で装飾過多にならず、非現実な現実世界を作り出す背景美術も含め、何から何まで狙いすましたキム・ギドク節が全ていい方向に出た、奇跡的状態。

オダギリジョーの存在や日本語が、韓国人にどう捉えられるのかは知らないし、それ以外の外国人にとってはそもそも伝わり辛い仕掛けではある。その意味では日本人が一番、本作の妙味を味わえる幸運に与れるとも考えられる。もちろんマトモな日本人なら、だが。

『弓』レビュー
『絶対の愛』レビュー
『ブレス』レビュー
『映画は映画だ』レビュー



tsubuanco at 17:32│Comments(4)TrackBack(4)clip!映画 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 悲夢  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2009年03月24日 19:15
 『狂おしいほど切ない、 愛しい人に出会う夢』  コチラの「悲夢」は、韓国の鬼才キム・ギドク監督と海外監督作品初出演のオダギリ・ジョーがタッグを組んだ”日韓の才能による奇跡のコラボレーション!”として話題の2/7公開となったPG-12指定のファンタジー・ロマン....
2. 悲夢★SAD DREAM  [ 銅版画制作の日々 ]   2009年03月24日 23:36
キム・ギドク ×オダギリジョー 日韓の才能が集結! 3月21日公開。公開初日の鑑賞となりました。めったに公開初日に行くことないのですが・・・・。夕方からの2回上映のみ。何で?他の作品はかなり多く上映回数多いのに。この作品の上映回数は少ない。やはり一般受けし...
3. 悲夢  [ LOVE Cinemas 調布 ]   2009年03月30日 01:15
奇才キム・ギドク監督作品。主演は現在『PLASTIC CITY プラスティック・シティ』が公開中のオダギリ・ジョー。共演がイ・ナヨン。先日観た同監督の『映画は映画だ』がなかなか面白かったと思ったら、同じ監督の作品が同時期に公開されているということで新宿のレイトショーに...
4. 『悲夢』  [ 京の昼寝〜♪ ]   2009年03月30日 12:25
□作品オフィシャルサイト 「悲夢」□監督・脚本 キム・ギドク □キャスト オダギリジョー、イ・ナヨン、チア、キム・テヒョン、チャン・ミヒ■鑑賞日 2月7日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★(5★満点、☆は0.5)<感想>  オダジョー・ファンの...

この記事へのコメント

1. Posted by サスケ   2009年04月07日 03:31
5 はじめのイ・ナヨンの顔ならばまだしも…オダギリの顔には笑えないです。
身内笑いにしてもありえないですね。ほんと気が殺がれました。映画館に来なくていい同感です。
イ・ナヨンが柴崎コウに見えて仕方なかったです。
2. Posted by つぶあんこ   2009年04月10日 16:14
今の芸能人なら、柴咲よりも大政絢の方が似てる気が。
3. Posted by サスケ   2009年04月10日 18:08
新世代ですね。一瞬関めぐみも入ってるかなと。
4. Posted by たまに読む   2009年10月10日 00:11
1 今さっきDVDで観ましたよ。

つぶあんが書いてるように、確かに対比や演出は良いんだけどさ、正直終盤の展開が嫌いだな。

何かメンヘラ腐女子が好きそうな感じしたんだけど俺だけ?「あの人の為に俺辛いけど耐えるよ!」みたいな、さ。

どうも生理的に合わない。酷いとは思っちゃいないが嫌いだなこの作品(´_`)

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Comments