2007年ベスト映画

2008年01月01日

2007年劇場鑑賞映画 マイ総括

2007年は370本の新作映画を劇場鑑賞することが出来たが(名画座等での旧作鑑賞や自宅鑑賞を含めると500本くらいか?)、その中で、これだけは外せない作品をピックアップしてみようとの思いつき企画。

あえて順位づけは行わないが、どれも価値ある作品であり、そんな必要もないだろう。

日本映画、米映画、米以外の海外映画から各20本ずつ、アニメーション映画、ドキュメント映画から5本を、自分が2007年中に劇場鑑賞した作品の中から独断で厳選した必見作を順不同に。

ただしTVシリーズの劇場版は、日本で放送されていない等一部例外を除き割愛。

(タイトルをクリックすると個別レビューページが開く)
日本映画
それでもボクはやってない
おカタい題材を長尺にも拘わらず娯楽作品として見せきる手腕が秀逸。

ユメ十夜
硬軟取り混ぜた才能の宝庫。競作型オムニバスの成功例。

エクステ
主演女優と男優の特性を活かしきった上で、監督のセンスも充分に発揮された、恵まれし作品。


確信的センスの持ち主である黒澤清の集大成。思考停止を示す笑いは負けの証。

大帝の剣
日本映画らしからぬ、湿っぽくならない伝奇SF娯楽活劇。特撮大作映画としても貴重。

俺は、君のためにこそ死ににいく
鉄板的な泣かせネタを、押し付けがましくならない様に客観視させつつ同一視させる演出が秀逸。特撮映像も見もの。

転校生 さよならあなた
セルフリメイクながら過去の栄光に固執しないセルフ換骨奪胎が見事。近年邦画の定番ネタを盛り込まされながら独自に昇華したのも素晴らしい。

キサラギ
キャラと会話だけで飽きさせない傑作密室劇。オタクものとしても中々。

松ヶ根乱射事件
田舎のネガティブ面をシリアスになりすぎず娯楽として描いた技量が見事。『天然コケッコー』の前フリとしても最適。

大日本人
松本人志の集大成を映画の体裁に纏め上げた大作。ロクに映画を観ていない人間に限って「映画ではない」と判で押した反応を見せるのも面白さのうち。

天然コケッコー
原作をそのまま実写化した様なキャスティング、原作のダイジェスト的な内容ながら、監督の作家性をも損なわず、全てが高い次元で融合した秀作。

蟲師
大友克洋のビジョンをそのまま実写映像として映し出した、ロケーション、画面構成の素晴らしさを堪能出来る、見事な"大友克洋の映画"

包帯クラブ
偽善的なストーリーを青春劇として感動させるべく、演出、映像における堤幸彦らしい個性がいい方向に働いた作品。

アコークロー
沖縄の外向きではないロケーションを活かし、シュールなサイコホラーとしての演出も秀逸。

殯の森
賞を取るために本気を出して、それが適ったのだから上手くないわけがない。まさに計算されつくした作品。

サッド ヴァケイション
青山作品2作の"その後"に終わらず、変わらぬ高いセンスによって今後を期待させる一品。女は怖い。

クワイエットルームにようこそ
キャラクターコメディが三谷幸喜の様に上滑りに終わらず、本質と即物を織り交ぜた構成と演出、それを支える観察と理解が見事。

魍魎の匣
監督のアクの強さがいい方向に働き、映像化向きでない原作の換骨奪胎を果たした傑作映画。

転々
三木聡ワールドの集大成。三浦友和はどこへ行くのか。

マリと子犬の物語
犬と子供で泣かせる映画で、犬と子供の演技が天才的なのだからダメなわけがない。

・他にも『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』『赤い鯨と白い蛇』『アヒルと鴨のコインロッカー』等、単館公開系の小品に良作が目立ち、いわゆる邦画バブルの裾野での恩恵が感じられた本年、『恋空』や『クローズZERO』の予想外の大ヒットの一方、『椿三十郎』など正月大作の大不振と、年末よりも秋期の方が映画館が賑わうという、誰も予測出来なかった現象も見られ、作品以外の面でもいろいろと楽しめたのが印象的。

米映画
Gガール 破壊的な彼女
アメリカンコミックの直球的パロディとして秀逸。

DOA-デッド・オア・アライブ
コスプレ、格闘、水着、ヘンテコ日本、娯楽性がテンコ盛り。

ゴーストライダー
ダークになりすぎないダークヒーロー映画。GRの再現度は高い。新旧GRの併走シーンに感涙。

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
あらゆるタブーを笑いものにするだけで突っ走るだけに、笑うためにはそれなりの知識と理性が必要とされる、笑いの無差別テロ。

ラブソングができるまで
基本に忠実なラブコメに、80年代ポップスのパロディによるノスタルジーなどを盛り込んだ、大人のための一品。

ロッキー・ザ・ファイナル
過去を振り返らせつつ今を諦めず未来を見据える、負けそうな大人へ向けた人間賛歌が素晴らしい。

主人公は僕だった
文学を題材としただけに、表現とロジックの練りこみが秀逸な、筒井康隆的シュールSF。

スパイダーマン3
正義のヒーローと等身大の人間の両立を、ハイセンスな映像で描ききった大娯楽作。

アポカリプト
主人公の受難を延々見せる前半、ひたすら逃走し続ける主人公を見せる後半、単純構造を全く飽きさせない、秀逸なドM映画。

300
オッサン達がひたすら敵を迎え撃ち続けるだけの、アクション映像のみでひたすら押し通し、それで飽きさせない魅力的な映像、演出が最高。

トランスフォーマー
世界中のTFファンにとっての"事件"であり、それだけで価値は高いが、残念ながらそれ以外の価値が薄いのは困る。

プラネット・テラー in グラインドハウス
ロドリゲスの趣味とセンスが大爆発した、確信的スプラッタコメディ。

デス・プルーフ in グラインドハウス
同じくタランティーノの趣味とセンスが大爆発。緩急の切り替えが見事。

グッド・シェパード
地味なドラマを3時間飽きさせない構成、演出が秀逸。興味深い題材負けしない手堅い作品。

ヘアスプレー
シュールコメディの匂いを残しつつ、ミュージカルとノスタルジーで王道的に楽しませつつ、社会派テーマも忘れない、バランスのいい娯楽作品。

キングダム / 見えざる敵
時代を反映したリアルな題材を、リアルを重視した映像、演出で見せつつも、ハリウッド的な娯楽性と両立させた秀作。

FLY BOYS
娯楽作品としての戦記ものを、王道を押さえ丁寧に描いた良作。

ホステル2
前作を踏まえた上で、更なる発展性によってマンネリ化せず興味を増大させ前作を超えた、秀逸な続編。

ボーン・アルティメイタム
スリルとサスペンスを盛り上げるためにブレるハンディカメラを多用しながら、見せる狙いは全く外さない、究極に素晴らしい映像構成だけでも大いに価値あり。

スターダスト
王道ファンタジーをアイロニカルに揶揄する、英国的なウィットに富んだ娯楽作。

・挙げていない中でも『今宵、フィッツジェラルド劇場で』等、大作の影に埋もれながらも印象的な意欲作は多く、やはり懐の広さを感じる。

続編、リメイク、人気原作ものなど安易な企画が目立つのは日本同様だが、物量の桁が違うだけに勢いで押し切れるのが強みか。来年も傾向は同様だろうが、逆に考えればそれだけ安定しているという事だろう。

米以外の海外映画
人生は、奇跡の詩
いかにもイタリア映画らしいコメディに、現代的な舞台を持ち込んだギャップの妙。

パフューム ある人殺しの物語
猟奇変態映画を大作として作り上げてしまっただけでも価値がある。

ルワンダの涙
現実の事件をホラー映画的な構造で描き、より恐怖と悲劇を実感させた狙いが見事。

ブラックブック
歴史を背景に性と暴力と陰謀の負の側面を娯楽として描く、バーホーベンの趣味とセンスが大爆発した傑作。

約束の旅路
ヨーロッパ的な社会派観点による題材によって、ベタなヒューマンドラマを高いフィールドへ押し上げた良作。

ダニエラという女
美女に翻弄されるダメな男達なるありがちなコメディが、独特の映像、演出センスとモニカ・ベルッチの魅力によって傑作化。

明日、君がいない
ショッキングな題材よりむしろ、同一時間軸を何度も繰り返して各人物を追い続ける撮影手法と作品構成により、観客の認識と理解を操作する手腕の上手さが光る逸品。

サン・ジャックへの道
欧米社会を悩ませる宗教問題をシニカルにあざ笑いつつ、全てを超越する感動とカタルシスになだれ込ませる描写、構成が見事。

ストリングス 愛と絆の旅路
徹底された特殊な世界観を、ストーリーやテーマにまで活かしきった作劇、演出、映像、全てがオンリーワン。

パラダイス・ナウ
テロリスト側の視点で物語を描きながら、決して自己正当化や自己陶酔に走らず、誰にでも共感できるドラマに仕上げた分別とセンスが素晴らしい。

絶対の愛
現実を舞台に、現実的な題材を用いながら、独自の演出、作劇、映像によって非現実的な世界を作り出し観客を魅了する、監督の異能の集大成。

私たちの幸せな時間
韓流映画的な偽善的でお涙頂戴の題材を用いながら、そちらに逃げ込まずに秀逸な演出と映像によって人物を彫り込んだ傑作。

黒い眼のオペラ
台詞を用いず映像と現実音だけで飽きさせず全てを表現しきる、優れた文学性。

ストーン・カウンシル
低予算ながら撮影と演出の工夫でサスペンスを高めている。モニカ・ベルッチの美貌と爆乳もまだ衰えず。

ボルベール<帰郷> 
本来凄惨な話のはずが、何故か笑えて泣けるいいお話になってしまう、作劇と演出の妙。ペネロペ・クルスの美貌と爆(略

長江哀歌
詩および静物画を映画というメディアにて表現しきるセンスと技量が秀逸。

パンズ・ラビリンス
ファンタジーと見せかけて何よりも現実を描く巧みな世界構成。美少女の無垢と可憐を強調した演出により涙なくしては見られない。

オフサイド・ガールズ
イベントの臨場感を最大限に利用しつつ、テーマと娯楽性を両立させて押し付けない作りが気持ちいい。

厨房で逢いましょう
シュールでサイコでシニカルなブラックコメディは予想を裏切り期待を上回る出来。

ゾンビーノ
アメリカンを揶揄するブラックさと、ゾンビコメディとしての娯楽性を見事に両立。

・『パンズ・ラビリンス』『ブラックブック』等、敢えてハリウッドを離れて作られた大作の完成度の高さが目立ち、『ルワンダの涙』や『パラダイス・ナウ』ら社会派の題材を興味深く描いた意欲作も印象的だが、一方でアジアでの才能の突出も興味深い。逆に香港映画にこれといった逸品がなかったのが寂しい。

アニメーション映画
モンスター・ハウス
ホラー映画のお約束をことごとく皮肉るパロディセンスと、巧みな映像構成により大人向けの娯楽作に。

こま撮りえいが こまねこ
この可愛さは日本でしか作れない。ツボをつく動きとストーリー展開は的確すぎる。

秒速5センチメートル
地に足の着いた世界描写にて痛々しい青春の悩みを露呈。ここまでされて泣けない筈がない。

河童のクゥと夏休み
王道的題材ながら子供向けに囚われず、全てを丁寧にリアルに描いた秀作。偽善的テーマを押し付けないバランス感覚も気持ちいい。

ルイスと未来泥棒(3D版)
ディズニーとピクサーの理想的なコンビネーションによる幸福な成功例。エキセントリックなキャラクター描写と物語構成の完成度は高い。

・『ドラえもん』『ヱヴァンゲリヲン』『アクエリオン』『シンプソンズ』等、TVシリーズを基盤とした作品にも秀作はあったがとりあえず割愛。それに加えて視覚的インパクトの強い3DCGやモデルorクレイアニメーションらが主流になりつつある中、オリジナル企画の『河童のクゥ』がそれなりの規模で製作および公開されたのは、日本映画界にまだ良心が残っていたと安心できる一幕でもある。

ドキュメント映画
市川崑物語
岩井俊二が市川崑のパロディでドキュメント作るだけで面白くないわけがない。

コマンダンテ
カストロの貴重な生映像。歴史に残るカリスマ的独裁者の自己演出の中に真実を見出せるか。

100万ドルのホームランボール 捕った! 盗られた! 訴えた!
低俗でくだらない題材ながら、人種差別をテーマに持ち込む事で興味深さが倍増。

童貞。をプロデュース
低俗でくだらない題材ながら、リアルな童貞像を捉えきった着眼と編集は見事。

いのちの食べかた
思想や宗教的な押し付けを行わず、現状を切り取って見せるセンスが秀逸。整然とした死の行進に何を感じるか。

・他にも、『デート・ウィズ・ドリュー』等、印象的なネタ作品はあり、フェイクやヤラセも含めて企画力と編集力の面白さが勝負の当ジャンル、どんな題材が出てくるかわからないのが楽しい。

一方で、具体的なタイトルはいちいち挙げないが、思想的な押し付けに辟易する様な、カルト啓蒙じみた作品が多々あるのも事実で、こちらはその透け透けの意図を苦笑しながら観るのが正しい鑑賞だろう。


以上、370本中から70本を挙げてみた。ワーストは語っても楽しくないので省略。2008年も出来るだけ多くの面白い映画に出会える事を願う。


tsubuanco at 14:19|PermalinkComments(20)TrackBack(12)clip!
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