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SME乃木坂ビルへ行ってきた。
取材でも打ち合わせでもなく、また建物の内部にも入らない、という形での訪問(と言っていいのだろうか)は初めてだった。

この日、2014年3月21日の15時から18時まで、大滝詠一お別れ会の一般向け献花が行われた。
SME乃木坂ビルにはイベントホールがあるので、てっきりそこかと思って足を運んでみたら、そちらはそちらで関係者向けのお別れ会があったようだ。
その手前の空間が特別会場となって、献花台や通路が作られていた。

警備員や社員の皆さんが丁寧に案内にあたり、特に混乱も、また奇妙な熱狂もなく、列は静かに、スムーズに進行していた。
柵を使用して作られた臨時の通路を進むと、祭壇のあるスペースの入口で、献花のための花を一輪手渡される。
まず手前に展示があり、ここには『ナイアガラ・ムーン』の裏ジャケット写真、シャツ、愛用のリッケンバッカーなどが飾られていた。
続いて中央に祭壇。
大滝詠一の遺影が花に埋もれるように飾られていた。
その右側には『ロング・バケイション』のサイン入りポスターパネル、更に左側に『ナイアガラ・トライアングル Vol.2』のジャケットを拡大したパネル、こちらは3人のサイン入り。
献花台は祭壇の正面に設置され、無数の白い花が、驚くべき秩序を保って整然と積み上げられていた。

献花し、手を合わせる。

短い順路の最後には、何と自動車が置かれていた。
愛車であるキャデラック。
キャデラックというと、クルマに詳しくないぼくには、派手なアメ車の代名詞みたいなイメージしかないが、いろいろ種類があるのだろうけど、意外にシックなものだな、という印象だった。

会場には『ナイアガラ・ソングブック 2』が流されていた。
しばらく遠巻きに祭壇を眺め、“ガラス壜の中の船”が終わるのを待って帰った。

帰りは受付のあるビルの入口前を通るのだが、そこでカードを一枚手渡された。
写真は有名なもので、積み上がったマスターテープらしき箱のタワーが、その横でディレクターズ・チェアに座って足を組む大滝詠一の上に今にも崩れ落ちてきそうになっている、というシチュエーションのもの。
それにサインが添えられたデザイン。
裏面には英文で短い言葉があり、日付と、そしてレーベル・ロゴ。


***


これから、どうすればいいのか判らない。
今年はずっとそんな気分で、毎晩のように、ナイアガラーの皆さんががんばってアップしたラジオ音源などをネットで聴き漁っている。
確かに毎日何かと出来事はあって、もう3月も後半な訳だが、気持ちは大晦日で固まってしまっているようなところがある。
深い霧の中にいるみたいだ。

ぼくが生まれ育った銚子では、海沿いの街ということもあり、しばしば霧が出た。
だから、歌の文句に霧が出てくると、情景はリアルに感じられた。
ぼくは『EACH TIME』がいちばん好きなのだけど、それはひとつには、この霧の手触りが音に感じられるからかもしれない。
歌詞にも出てくる。

とはいえ、霧というワードは多羅尾伴内楽團には3曲もあるし、『ナイアガラ・カレンダー』にも出てくる。
ギター・インスト的な世界観ではかなりポピュラーなワードだろう。
けれど、その使われ方は書き割りのような場合がほとんどのように思う。

『EACH TIME』における歌詞の「霧」はあくまでもイメージとして登場するフレーズだ。
にもかかわらず、アルバム全体に、音として《霧》が感じられる。
それはこのアルバムのブリティッシュ志向と無縁ではないだろうけれど、感じ方は個人的なものだから、はっきりとは判らない。
ただ、『Each Times 号外』で能地祐子さんが「“水”を感じるアルバム」と書いていたのを読んで、まるきり外れてもいないのかな、とは思ったのだが。

だけどレースはまだ 終わりじゃないさ
ゴールは霧の向こうさ

このフレーズが持つ普遍性は、30年間ぼくを捉えてきた。
ぼくは思うのだけど、音が水なら、エコー成分は霧ではないだろうか。
この曲、“1969年のドラッグレース”の深いエコーは、聴き手を時間の霧の中に置き去りにする。

さて、どこへ行けばいいのだろう。
霧はいつか晴れるが、ずっと待っている訳にもいかない。
いや、本音ではずっと待っていたいかもしれないな。

少しずつ、何とかやっていこう。
このブログも、再開する。
そして本日、3月22日は、トークイベントで大滝詠一について話す。
ほとんど日本のロックの歴史を語るようなことに、どうしてもなるだろう。



音街トークライブ
『百万人の音楽変格活用 大滝詠一/ナイアガラ編』

3/22(土) @南青山Lunar(ルナ)
18:00 open
18:30 start
¥1000(+1D)

《出演》
●津田 真
●金子麻友美(ゲスト)
●ODAMARI(アシスタント)

※バーベキュー食べ放題メニューあり・1500円(マイ皿制)
※鶏と海老の濃厚薬膳おじや・800円
※両方セット・2000円

全体を5部に分けて、その都度、休憩なりバーベキューなり、その場の流れで進行します。
ちなみに5部とは、

1.はっぴいえんど
2.ナイアガラ1期
3.ナイアガラ2期
4.ナイアガラ3期
5.『EACH TIME』再訪

となります。
プロローグ、エピローグもある予定。
同じようなことは、なかなか出来ないと思うので、お時間ありましたら遊びにいらしてください。