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ヘンリーヘンリーズ、彼らはRCサクセションの再来であり、本来こうあるべきだったエレファントカシマシである。


演奏が終わってすぐの転換のときに、ぼくはツイッターにそう書き込んだ。
実に素晴らしく、頼もしいステージだった。


9月30日、金曜日。
新宿、紅布。


チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカン、
ヘンリーヘンリーズ、
これが初の対バンとなる。
もともと、チャランポももちゃんがツイッターやブログなどで、自分のリアル後輩として紹介していて知ったバンドである。
まだCDも出ていなかった頃だ。
で、気になってはいたけれど、今回ようやく観る機会がやってきたという訳です。





さて、ももちゃんの後輩、ってことは高校2年(!)のヘンリーヘンリーズ。
全員こざっぱりした髪型で、ドラマーがチャランポTシャツを着ている以外は、ヴォーカルがギンガムチェックの長袖シャツ、ギターは半袖シャツ(で、裸足)、ベースは赤い半袖シャツに黒いベスト。
さりげないけれど、どこか決定的に新しさを感じさせる佇まいである。
ヴォーカルは曲によってギターを持ったりもする。

というようなことは、途中で冷静さを無理矢理取り戻して、頭のなかにメモしたのであって、最初はそれどころではなかった。
感動して言葉なんか出て来なかった。

終演後にCDを購入したのだけど、そこには収録されてないらしい曲のフレーズが頭に残っていた。
大切なことが何か、みんな判ってるんだろう、ただちょっと忘れてるだけさ…みたいな歌詞だ。
ロックンロールで、そういうフレーズを説得力を持って男の子が歌っているのを聴いたのは、久しぶりだった。
久しぶり、というのはつまり、清志郎以来、という意味だ。

彼らはOKAMOTO'Sの次の世代ってことになる。
早くも新世代の登場。
いや、ちょっと離れて見れば、OKAMOTO'Sも含めての新世代、ってことかな。

もちろん、新しければ何でもいいって訳じゃない。
ヘンリーヘンリーズには、注目に値する、なんて言い方では足りない本質的な新しさがある。

彼らは、自分たちの演奏に酔っているところがまったくなかった。
酔っているふうなアクションはしていたけれど、完全に覚めていた。
単純なロックンロール馬鹿ではなく、確信犯的に、敢えてロックンロールを選んでいる、そんなステージだった。

そのステージングが意味するものを、ぼくなりに翻訳するなら、
《新しい時代の新しい社会を、これから一緒に作っていこうぜ》
という表明だったのだと思う。
華奢なシンガーは何度も何度も、両手で客席に投げキッスをしてみせた。
それは決してセックス・アピールではなかった。
開かれた暗号のような、そんなジェスチュアだと、少なくともぼくは感じていた。
若い女の子たちも、中年男性諸君も、等しく投げキッスを受け止めて、熱狂的な拍手で返していた。





チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカン、完全な編成で観るのは久しぶりだ。
またしばらく観られないようだし、きょう来て良かった。

セットリスト的には、定番といっていいものだった。
インスト2曲のあとで、ももちゃんが登場し、“ムスタファ”が始まる。

今回、個人的に面白かったのは、一緒に観ていたチャランポ初体験のアキラくんが、ももちゃんにいじられたこと(笑)。
毎度のことだけど、ライブ未体験のひとのために、詳細は伏せます。
現在のライブの規模だと、そろそろ観客はみんなネタを知ってるって感じになりそうなので、今後の動向が注目されますね。

あと終演後もネット上、ツイッターなどで話題をさらったのは、トランペットごまちゃんが「脱いだ」件(笑)。
告知のコーナーで物販の紹介をした際、ごまちゃんがエプロン(前掛け)ふうに身につけていたのが実は手ぬぐいで、「実は」とかいっても、最初からバレバレな感じでおかしかったのだけど。
それだけでは済まなかったのだ。
さらに、Tシャツがあるという話を小春ちゃんがしだすと、ごまちゃんはおもむろに衣装を脱ぎだしたのです!
すると衣装の下には、ブタのイラストが描かれたチャランポTシャツが!
実に盛り上がった一幕でした。

“人生のパレード”はやはり圧倒的なクライマックスだった。
演奏はもちろんだが、ももちゃんの歌唱、歌っていないときの目線ひとつ、指先の動きひとつ取ってみても、完璧だった。

ラストの“ただ、それだけ。”では、途中で“カチューシャ”(もちろん、ロシア民謡の)を演奏に組み入れたりしていた。
そうしたちょっとした変化もファンとしては楽しいが、それも太い音楽的な背骨があってこそである。
また、ひっしーがアドリブで“ハイウェイ・スター”を吹いた場面もあって、これも笑いを誘った。
チャランポとディープ・パープル…、遠すぎる…(笑)。
すかさず沸き起こったアンコールに応えての、お馴染みのジプシー・ダンス・ミュージック“ハバナギラ”でみんな踊って、イベントは幕を閉じた。





さいきんよく思うのだけど、CDが売れない云々ていうのは、もうJ-POPに飽きてるんじゃないか。
もちろん、だからジプシーだ、ワールドミュージックだ、ということではなく。
要は中身の問題で、音楽じたいの喜びを感じられる作品が、メジャー・フィールドでは激減している、ってことだと思う。

この数日前、タワーレコード渋谷店で、小春ちゃんが参加している「キウイとパパイヤ、マンゴーズ」のインストア・ライブがあって、たまたま時間があったので観に行ったのだが。
これが予想をはるかに超える面白い音楽だった。
レゲエ/ダブをベースに、ドラムスはシンセドラムみたいなセットだし、三味線を弾きながらのヴォーカル、シタールとヴァイオリン、パーカッションにエレキギターに、小春ちゃんのアコーディオン、といった、《いわゆるワールド・ミュージック》ではないけれどワールド・ミュージックとしか言いようのない、しかもポップな歌もの。
楽しかった。

邦楽にほとんど興味を示さないチャランポが、ヘンリーズやOKAMOTO'Sには言及する、というのは、単なる友人関係というだけではないと思う。
いや、逆にいえば、ダサいことをやっていたら親しくならないだろう。
だからこそ、初めて観るヘンリーズにも、ぼくは期待していた訳だし。

新しい音楽の動きはここにある。
それは間違いない。
いまほど、テレビや音楽雑誌を遠く感じたときは、過去になかった。
ぼくはかなり、わくわくしている。


写真は終演後。
紅布の入口前にて。