2010年08月11日

学術雑誌を枕にした長いつぶやき


 最近、日本学術会議が学術雑誌の現状と問題解決に対する提言を行った。その中で、国際誌の購読料高騰の問題とともに、日本の学会の英文誌のステータスの低さが取り上げられている。

 この手の話を聞くと、「またか」と思ってしまう私は危機感がなさ過ぎるのだろうか。昔から繰り返し出てくるネタであるし、「わが国には世界に冠たる**がない」というステートメントが多すぎるように感じるのだ。研究の世界では、**の中には次のようなものが悉く入ってしまうのだから。

(1)ソフトウェア(Gaussianを初めとする商用ソフト、Labview、コンパイラ、データ解析用のOriginやDelta graphなど)
(2)ハードウェア(オシロスコープ、ロックインアンプを初めとして大小の計測器、PC、拡張ボード等)

自分の実験室を見回しても、殆ど全てが外国製品だ。オシロはHP、レーザーはContinuumと、アメリカ製品が圧倒的に強い。居室でデータ解析に用いているものも
・Gaussian,GaussView,WebMO,Chem3D,ChemDraw
・Origin,種々のコンパイラ
といったように悉く外国製品。学術雑誌だけを取り上げても「なんだかなぁ」と今更感が強いのだ。問題は、「なぜそうなのか、これからそれを変えていくことがよいのか(そもそも可能か)」を議論することのように思えるのだが。

 理由として考えられるのは以下のようなことだろうか。
・日本では優秀な人材が当該分野に供給されていない
・そもそも学術研究向けの製品を作る企業が少なく、規模も小さい
・一国での市場が小さいので、初めから国際市場狙いが前提となるが、そのための言葉の壁がある

 以前書いたように、ebayで豊富に出回っている実験用品などは科学・技術大国の証であり、アメリカは例外的な存在だ。欧州の各国も日本とさして状況は変わらないと思うのだ。ただ、連帯してアメリカ物に立ち向かうことは可能だ。英国Royal Society of Chemistryの通称PCCPと言う雑誌は、英国のJCS Faraday transactionとドイツのBerichte der Bunsen-Gesellschaftという2つの物理化学系雑誌が統合して出来たものだ。Impact Factorを見る限り、アメリカのJCPやJPCを上回る雑誌に成長している。

 したがって、私の考えは以下のとおり。
(1)日本も一国主義・自給自足の幻想を捨て、共闘しよう
どこと共闘するかが唯一且つ最大の問題だが..

(2)キャリヤパスのひとつとして、これらの分野を強化しよう
たとえば、国際誌の専属エディタや編集スタッフとして博士号を持つ人間を雇用してはどうだろう。今は偉い先生が片手間でやっていることだが。また、ソフトウェア製作や研究用試作品製作の後押しを会社として成り立たせるまでに国がバックアップする。理研ベンチャーのような形式を全国版で大規模に展開すればよいと思う。Gaussianについてくる英語の分厚いマニュアルや別途購入する教則本を見ると、これらを作るだけでもかなりの人材が必要であることがわかる。こういった分野に優秀な人材が行って成功すれば、輸入超過状態の日本の研究現場が変わっていくように思えるのだが。


tsukimaru123 at 00:16│Comments(0)TrackBack(0) 研究一般 

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