おはようございます。
まおまお」で~す。

さて、今回の書籍の紹介はコレです。

和田 秀樹(2010)『40代からの節制は寿命を縮める EBMが教える、「我慢型医療」のウソ朝日新聞出版 740円(税別)

40代からの節制は寿命を縮める EBMが教える、「我慢型医療」のウソ (朝日新書)40代からの節制は寿命を縮める EBMが教える、「我慢型医療」のウソ (朝日新書)
著者:和田秀樹
朝日新聞出版(2010-12-10)
販売元:Amazon.co.jp
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「まおまお」がこの書籍を読んだのは2つの理由からです。
1つは健康知識に興味があるため。
もう1つはタイトルに惹かれたため。
ちなみに以前の健康知識関係書籍のレビューは最後にリンクさせてあります。

この書籍はEBM(=Evidence-Based Medicine)とは「根拠に基づく医療」と言われるものをベースに今の医学的常識を見ていこうというものです。
EBMについて著者はこんな解説をしています。
疫学や統計学によって治療結果を客観的に比較し、それを根拠にしながら、医者が患者と共に治療方針を決めようとするのが、EBMの発想である。(P.41)

この視点に立ったとき、驚くべきことが見えてきます。
例えばメタボリックシンドロームについて。
肥満の人の方が長生きしないという「常識」があり、とにかく痩せることが長生きの秘訣のようになっています。
しかし、こんなことが本書では書かれています。
40歳以上の住民約5万人について、過去の体重、体格も調べて、40歳時点の平均余命を分析した結果、もっとも平均寿命が長かったのは、40歳の時点で「太り気味」だった人だ。以下、「普通」「肥満」と続き、もっとも早死にしたのは、40歳のときに「やせ」だった人である。太り気味の人と比べて6~7年も余命が短い。この順位は、男女とも変わらない。厚労省の目論見は、完全に裏目に出てしまったわけだ。(P.19~20)

また、脳卒中が減った原因について本書ではこのように書いています。
脳卒中は以前よりも減った。これは一般的に、減塩運動や血圧を下げる薬のおかげ(つまり医療的なアプローチの成果)だと思われているが、実はそれだけではない。これも、食生活が豊かになった結果だと見ることができるのだ。
そもそも欧米では、脳卒中といっても脳の血管がつまる脳梗塞が多いといわれている。一方、日本では脳の血管が破れる、脳出血が多いといわれている。
血管はいわばゴム管のようなものだとイメージしてもらうとわかりやすい。そのゴム管が破れるのは、ゴム管の材料をケチったときである。血管のゴムの材料となる栄養素はタンパク質である。食べたものにタンパク質が少なければ、血管は脆く、破れやすくなる。
つまり、日本での脳出血が多かったのは、肉を食べる量が少なくてタンパク質が不足し、血管が破れやすかったから、と考えることもできるのだ。(P.49)

そして、血糖値を下げることについても衝撃的なデータが。
健康診断で測るのは一時的な血糖状態だが、糖尿病患者が測定されるのは、過去1~2カ月の平均的な血糖状態を示す「ヘモグロビンA1c」という数値だ。日本糖尿病協会の基準では、これを6.4パーセント以下に抑えるのが、患者にとって良好な状態とされている。
ところが2010年、イギリスの医学誌「ランセット」に、この常識をひっくり返す研究論文が発表された。「血糖値を正常値近くに下げると死亡率が上がる」というのだ。
調査対象は、インスリンおよび2種類の飲み薬で治療を受けている糖尿病患者およそ4万8000人。開業医のカルテのデータベースに基づき、20年近い歳月をかけて実験された。きわめて信頼性の高い調査だ。
その結果を見ると、患者の血糖値を下げた場合、ヘモグロビンA1cが7.1パーセントまでは、従来の常識どおり、たしかに死亡率が下がった。しかし、それ以上に血糖値を下げると、逆に死亡率が上がってしまう。
もっとも死亡率が低いのは、ヘモグロビンA1cが7.1パーセントのときだ。それが6.0パーセントに下がると、死亡率が52パーセントも上昇する。
先ほど述べたとおり、日本ではいままで糖尿病患者の血糖値を6.4パーセント以下に抑える努力をしてきた。このイギリスの調査結果が正しいとすれば、それは「患者の死亡率を高める努力」だったことになる。(P.56~57)

そして、こんなことも書いています。
そもそも人体にとっては、「過剰」よりっも「不足」のほうがよほど害が大きい。食事のことを考えれば、それは明らかだろう。食べ過ぎは生活習慣病を招くかも知れないが、それですぐに死ぬことはない。しかし、食べなければ人は飢え死にする。
健康で長生きしたければ、この「不足の害」の恐ろしさを忘れるべきではないだろう。若い頃は何かが足りなくてもかなりのところまで耐えられるが、年を取れば取るほど「不足」はすぐに体にダメージを与える。(P.60)

この書籍では以下のような章建てで現代医療の常識と思われていることをEBMという視点から色々と検証しています。
 (1)我慢型医療のウソ―メタボに気をつけても、日本人の死者は減らせない
 (2)がんを防ぎ、がんとうまくつき合う―無駄な「我慢」が免疫力を殺ぐ
 (3)我慢しない食生活―節制よりも、雑食を心がける
 (4)バイアグラが売れない国・日本―諦めと我慢が「感情の老化」を招く
 (5)「我慢しない」ことが寿命を延ばす―介護、お金遣い、人間関係

この書籍を読んでいると今までの医療的常識がガラガラと音を立てて崩れていくような感じを覚えました。
自分の身体は自分で守るしかないので、EBMに則った形での情報は非常に有効だと感じました。

ただこの書籍では老後についても書いている章がありますが、これはデータだけを見て現実を見ていないような論調です。
例えば「60歳以上の世帯の平均貯蓄額は2275万円である」というデータを流量して、もっと老後は豊かに暮らせるという論を書いているが、そもそもこれは平均値のトリックではないか?一般家庭の貯蓄で2275万円を持っている人がどれだけいるのだろうか?大資産家が平均値に組み込まれた瞬間に平均値は上がる。
この辺りのことを配慮せず、老後を語っていることには疑問を感じた。

ある意味、著者にとって門外漢のことを書くのであれば、それなりの検証が必要だと思う。
医学的なことについてはいい話が多いので、この辺りのことは無視して読まれるといいのではないでしょうか?

医学的な部分では結構ためになる情報が多いので、有益だと思いますよ。

ランキング評価
読みやすさ 3
情報量    3
情報質    3
価格     3
と言うことで「★★★」です。
以前にレビューした健康知識関係の書籍は以下の通りです。

川嶋 朗(2010)『川嶋朗式 すぐ効く ずっと効く 冷え克服法エクスナレッジ
 通勤時間の本は何にする?:コップ一杯の白湯で

川嶋朗式 すぐ効く ずっと効く 冷え克服法川嶋朗式 すぐ効く ずっと効く 冷え克服法
著者:川嶋朗
エクスナレッジ(2010-10-20)
販売元:Amazon.co.jp
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古庄 弘枝(2010)『見えない汚染「電磁波」から身を守る講談社 
 通勤時間の本は何にする?:あなたの知らない電磁波過敏症とは?

見えない汚染「電磁波」から身を守る (講談社プラスアルファ新書)見えない汚染「電磁波」から身を守る (講談社プラスアルファ新書)
著者:古庄 弘枝
講談社(2010-09-22)
販売元:Amazon.co.jp
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■川嶋 朗(2010)『川嶋流 がんにならない食べ方 冷えをとり免疫力を高める5つのルール小学館
 通勤時間の本は何にする?:食生活でがん予防をする入門書として

川嶋流 がんにならない食べ方 冷えをとり免疫力を高める5つのルール (小学館101新書)川嶋流 がんにならない食べ方 冷えをとり免疫力を高める5つのルール (小学館101新書)
著者:川嶋 朗
小学館(2010-08-02)
販売元:Amazon.co.jp
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中村 耕三(2010)『新国民病ロコモティブシンドローム―長寿社会は警告する 日本放送出版協会
 通勤時間の本は何にする?:こんな国民病があったんですね

新国民病ロコモティブシンドローム―長寿社会は警告する (生活人新書)新国民病ロコモティブシンドローム―長寿社会は警告する (生活人新書)
著者:中村 耕三
販売元:日本放送出版協会
発売日:2010-03
おすすめ度:4.5
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鳥羽 研二(2010)『間違いだらけのアンチエイジング朝日新聞出版
 通勤時間の本は何にする?:「アンチエイジング」よりも「ウィズエイジング」

間違いだらけのアンチエイジング (朝日新書)間違いだらけのアンチエイジング (朝日新書)
著者:鳥羽 研二
販売元:朝日新聞出版
発売日:2010-03-12
おすすめ度:5.0
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森田 豊(2010)『ねぎを首に巻くと風邪が治るか? 知らないと損をする最新医学常識角川SSコミュニケーションズ
 通勤時間の本は何にする?:健康豆知識を増やしてみよう

ねぎを首に巻くと風邪が治るか?  知らないと損をする最新医学常識  角川SSC新書ねぎを首に巻くと風邪が治るか? 知らないと損をする最新医学常識 角川SSC新書
著者:森田 豊
販売元:角川SSコミュニケーションズ
発売日:2010-03-10
おすすめ度:3.5
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高沢 謙二(2010)『知らないと怖い血管の話PHP研究所
 通勤時間の本は何にする?:血管って本当に大切です

知らないと怖い血管の話 (PHPサイエンス・ワールド新書)知らないと怖い血管の話 (PHPサイエンス・ワールド新書)
著者:高沢 謙二
販売元:PHP研究所
発売日:2010-02-20
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吉田 たかよし(2009)『臓器の急所―生活習慣と戦う60の健康法則』角川SSコミュニケーションズ
 通勤時間の本は何にする?:体調管理のポイントが明快

臓器の急所―生活習慣と戦う60の健康法則 (角川SSC新書)臓器の急所―生活習慣と戦う60の健康法則 (角川SSC新書)
著者:吉田 たかよし
販売元:角川SSコミュニケーションズ
発売日:2009-11
おすすめ度:4.0
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