151202 辞書おはようございます。
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今回の書籍の紹介はコレです。

赤瀬川 原平『新解さんの謎』(文藝春秋,1999)  550円(税別)

新解さんの謎 (文春文庫)
赤瀬川 原平
文藝春秋
1999-04


この書籍をサクッというと


三省堂で出版されている国語辞典の『新明解国語辞典』(通称、新解さん)。
辞書とは思えない攻めの文例表現が多く書かれており、一種の読み物と化している。
そんな辞書とは思えない人格を持っている新解さんの魅力を紹介した1冊。


目次


新解さんの謎
第一章 言葉の森の奥へ
第二章 深まる謎
第三章 見えてきた新解像
紙がみの消息
あとがき
<対談>原平さんの謎 豊田由美・岡野宏文


読み物として面白い辞書を知っているだろうか?


解らない言葉があったら辞書を引くだろう。
そこには短く意味と例文が載っている。
例文は控えめで、そこに面白さを求めたりはしない。


ところが読み物としても面白い辞書を知っているだろうか?
そこには、従来の辞書の概念を打ち破ったようなぶっ飛んだ文例が多数掲載されている。
それこそが三省堂の出版している『新明解国語辞典』(通称、新解さん)。
一般的な辞書とは一線を画し、ツッコミどころ満載の内容なのだ。
当書籍では新解さんの例文を取り上げて、その面白さを分かち合う内容となっている。


そもそもは夏石鈴子さんがきっかけ


当書籍によると新解さんの面白さに気づいて、著者に色々と伝えたのは後に『新解さんの読み方』や『新解さんリターンズ』を出した夏石鈴子さん(当時は鈴木眞紀子さんといっていた)。
ちなみにこのイニシャルをとって、著者はSM嬢と書いている。
決してあっちのSMではないので、ご注意を。


『新明解国語辞典』(通称、新解さん)の魅力


新解さんと呼ばれる『新明解国語辞典』。
とくに第四版は語釈や文例が面白い。
まるで一個の人格を持ったように、読者に語りかけていく。
その口調や考え方は辞書の域を超えている。
そのため、『新明解国語辞典』でありながら「新解さん」というあたかも1人の人間であるかのように見て取れるのだ。


著者はそんな新解さんについてこう書いている。
(中略)いけないなあ、考えることがリアリズムになりすぎる。単なる辞書なのに。これは明解というより、実感国語辞典だ。(P.17)


他にもSM嬢こと鈴木眞紀子さんとの会話ではこんな話が。
「ぼくもね、最初はヘンな辞書、ちょっとおかしな辞書、と思っていたけど、よんでいくうちに変わったね」
「はい。何というか、最初感じるいかがわしさみたいなのが、だんだん味になってはなれられなくなるというか、そういい新興宗教みたいな力があるんです」
「そうだね、新明解じゃなく新宗教というか、いや冗談じゃなく、ふつうの辞書というものはもっと守りの姿勢にあるもんだよね」
「そう思います。ほかからミスを指摘されないように、されないようにで、説明はもっと最小限に切り詰めてます」
「それがふつうだよね。だけどこの辞書はなんといっても明解パワーだから、守りを考えるというより、むしろミスを恐れず攻め込んでくる。明解にするために攻めている。攻めの辞書だねこれは」
「凄い。攻めの辞書!」
「いや、凄いことだよこれは。あえて“明解”としている意味がわかるね」
「そうです。ぐいぐい攻め込まれてしまうんです。とくに用例のところでファウルラインぎりぎりまで攻め込んでいるんですけど、次の“ぴたり”なんか見て下さい」(P.31)

と、新解さんについて熱く語っているのだ。
一般にイメージする無味乾燥な用語の解説が載っている辞書との違いが、この会話からも分かる。


語釈の例


『新明解国語辞典』ではこれまでの一般的な辞書とは違う語釈をしている。
通常、感情などは感じられないのだろうが以下の語釈には怒りのようなものを感じる。
【動物園】生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえてきた来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設。(P.138)

既に一般の語釈の領域を超え、人格を持った新解さん。
彼は動物園1つについても鋭いまなざしを向けている。
このような辞書が今まであっただろうか。
これが『新明解国語辞典』第四版の魅力なのだ。


当書籍の評価


当書籍では、新解さんの魅力を伝えているのだが、残念な部分もある。
それはこの1冊、丸々が新解さんについて書かれたものではないということ。
約半分は、著者は雑誌『諸君!』で連載していた「紙々の消息」という紙にまつわるエッセイ。
正直、この話は面白くない。
なぜ、新解さんネタと一緒にしたのか理解に苦しむ。
そのため、新解さんを伝える1冊としては、物足りなさを感じてしまう。


新解さんの魅力を充分に引き出しているのは、当書籍のきかっけとなった鈴木眞紀子さん(別名、SM嬢)こと夏石鈴子さんの『新解さんの読み方』
同じ『新明解国語辞典』第四版を取り上げているので、より新解さんのディープな世界に入り込めるであろう。


ここで1つ注意がある。
『新明解国語辞典』については、夏石鈴子が第四版と第五版の改定のタイミングでエッセイを出している。
だが、第五版は第四版に比べて、あきらかに語釈や例文のパワーが落ちている。
恐らく編纂者の交代などもあったのだろう。
現在は第七版まで出版されている。
しかし、夏石鈴子さんも取り上げていないようなので、やはり普通の辞書に近づいているのかもしれない。
『新明解国語辞典』第四版の面白さを充分に味わい尽くすこと、それが新解さんの魅力を知ることなのかもしれない。


まとめ


当書籍から分かったことは以下のようなこと。
1.『新明解国語辞典』第四版(新解さん)は誰が見ても辞書というよりも読み物として面白い。
2.新解さんは攻めの姿勢により明解さを出そうとした。
3.当書籍は新解さんについては半分の紙面しか割いていないので、魅力を充分に味わえない。

当書籍ではせっかくの面白いネタを中途半端に料理してしまったような感じがする。
それが残念でたまらない1冊。


ランキング評価
読みやすさ  3
情報量    1
情報質    1
価格     1
と言うことで「★」です。


次回も見に来てくれると嬉しいです。


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