170503 歌舞伎座おはようございます。
「まおまお」で~す。
いつもブログを見ていただきありがとうございます。

今回の書籍の紹介はコレです。

関 容子『海老蔵そして團十郎』(文藝春秋,2007) 581円(税別)



この書籍をサクッというと


十二代目市川團十郎さんを中心として、父である十一代目市川團十郎さんや、お子さんである十一代目市川海老蔵さんのことがよく分かる親子三代記です。

目次


第一話 花の海老さま
第二話 助六と宮本武蔵
第三話 役者の家の女たち
第四話 筋を通す
第五話 艶聞
第六話 世紀の大襲名
第七話 星を見る人
あとがき
文庫版のためのあとがき
解説 池内紀


市川團十郎という名跡


歌舞伎界の中でももっとも重きを置かれている名跡が「市川團十郎」です。
江戸時代より歌舞伎宗家と呼ばれ、他の歌舞伎役者の名跡よりも格上、簡単にいってしまえば歌舞伎役者の頂点に立つ大名跡です。

ところが明治時代に活躍した劇聖、九代目市川團十郎さんの後、次の市川團十郎が登場するまでに長い時間が必要でした。

その間に歌舞伎界も大きく変化し、歌舞伎役者の頂点として実権も持っていた時代から、象徴としての大名跡というように変化していきます。

その流れに抵抗しようとしたのが、今の十一代目市川海老蔵さんの祖父である十一代目市川團十郎さんでした。

十一代目市川團十郎さんは癇癪持ちで、家庭内暴力の権化のような一面を持つ人でした。
しかし、当時、十一代目市川團十郎を襲名する前は「海老さまブーム」を巻き起こすなど、すごい人気の役者さんでもあったのです。

この辺りのことは以前に紹介した宮尾登美子さんの『きのね〈上〉』『きのね〈下〉』に小説の形を取って描かれていますので、興味がある方は読んでみるといいと思います。
さて、十一代目市川團十郎さんは襲名後、がんに侵され、約3年後にお亡くなりになります。

十一代目市川團十郎さんがお亡くなりになったとき、十二代目市川團十郎さんは、まだ大学生でした。
父である「市川團十郎」という大きな後ろ盾がなくなったことで、非常に苦労しながら、十代目市川海老蔵、十二代目市川團十郎という名跡を襲名していきます。

そのお子さんである十一代目市川海老蔵さんの襲名前後に白血病を発症し、闘病の末、お亡くなりになります。

十一代目市川海老蔵さんはアメブロをはじめ、さまざまな話題があるのでご存じの方も多いと思います。

本業の歌舞伎でも一説によると、もっともチケットが取りにくい役者さんとのこと。
十一代目市川海老蔵さんの演目は2回観ていますが、確かにチケットを取りにくい感じがしましたので、あながちウソではないような感じがしています。

さて、ざっと十一代目市川團十郎さんから十一代目市川海老蔵さんまでの流れを書きましたが、当書籍はこの流れで現代と過去を行き来しながら、親子三代の歴史を書いています。

今までに「市川團十郎」という大名跡の歴史に関しては、さまざまな書籍が出ています。
その中で当書籍の特徴は、生前の十二代目市川團十郎さんとのインタビューを通じて、大名跡の歌舞伎役者としての父と子がどのようなものであるのかに特化していることです。

歴史上の知らない市川團十郎ではなく、戦後の「知っている」市川團十郎にフォーカスしているので、他の書籍に比べ、情報量やエピソードの量が違います。
ただし、十一代目市川團十郎さんだけを取り上げている『きのね〈上〉』『きのね〈下〉』は別格ですが・・・・・・。

さて、そのような親子三代記の中にも歌舞伎の奥深さを知る情報がいろいろと書かれていました。
そんな情報を取り上げていきます。

演目『助六』の「福山かつぎ」の役割


歌舞伎十八番の1つに『助六』という演目があります。
「まおまお」も今年、初めて歌舞伎座で『助六』を観ました。

この演目には「福山かつぎ」という役があります。
この役、舞台の1つの役だと思っていましたが、当書籍によると違う意味があるというのです。

それは次期助六候補の若手に振られる役ということ。
将来、『助六』の主人公である助六を演じる可能性があるかもしれないということです。

「まおまお」が観たときの「福山かつぎ」は二代目坂東巳之助さんが演じていました。
二代目坂東巳之助さんは2015年に亡くなられた十代目坂東三津五郎さんのご子息。
もしかしたら二代目坂東巳之助さんも将来、『助六』の主人公である助六を演じる可能性があるのかもしれませんね。

演目『助六』は特別な演目


さて演目『助六』ですが、舞台の最初に口上を述べるという、他の演目とはちょっと違う始まり方をします。

このときの口上で述べられるのが「河東節十寸見会(かとうぶしますみかい)」の紹介です。
河東節十寸見会とは、ご贔屓筋の人たちによる三味線などの演奏集団。
いつもの歌舞伎座のプロの演奏者ではなく、『助六』ではこの河東節十寸見会が演奏するのが恒例です。

当書籍によると『助六』の上演までにはさまざまな儀式があるとのこと。
まず『助六』の上演が持ち上がると、真っ先に河東節十寸見会の人たちに出演を願い出るそうです。

そのタイミングは上演の約半年前に河東節十寸見会の世話人と興行主である松竹の人がしかるべき料亭に集まります。
そのとき助六の役者さんは紋付き袴の正装で依頼の口上を述べるそうで。
この依頼が承認されると上演が本決まりになるそうです。

ただし『助六』で河東節十寸見会が演奏をするのは、成田屋(市川團十郎家)のときだけ。
他の役者さんが『助六』を演じるときは、演奏はしないという徹底したものとのことです。

十二代目團十郎さんの奥さまについて


名跡を継ぐ役者さんに嫁ぐ場合、歌舞伎界の中で育った女性かどうか、苦労という面で違ってきます。
歌舞伎界、つまり梨園で育ってきた女性の場合、小さいときから梨園の状況を知っているため、嫁いだ先でもスムーズなサポートがしやすい傾向にあります。

しかし、梨園外の女性の場合、一から梨園のしきたりを覚えなければなりません。
その上で夫である役者さんだけでなく、関係者すべてに配慮しなければならないため、かなりの苦労をするようです。

十二代目團十郎さんの奥さまは、梨園の外で育ったため、苦労されたようです。
というのも、すでに十一代目團十郎さんも、その奥さまもお亡くなりになっており、梨園のしきたりを教えてくれる人が存在しなかったのです。
そこから大名跡を支えていく訳ですから、相当、苦労されたことが行間から伝わってきます。


他にもさまざまなことが書かれており、團十郎という大名跡を継ぐということがどれだけ大変かが分かる内容となっています。


まとめ


当書籍から分かったことは以下のようなことです。
 1.当書籍は十二代目團十郎さんのインタビューを中心にして、父である十一代目と
  ご子息である十一代目市川海老蔵さんのことが書かれています。
 2.とくに十一代目については『きのね〈上〉〈下〉』を読むと、より理解が
  深まります。
 3.親という後ろ盾を失うと、歌舞伎界では大変なことが行間から理解できます。


最近、市川團十郎家にまつわる書籍を何冊か読みました。
今回紹介した書籍も含め、やはり「團十郎」という大名跡は他の役者さんよりもさまざまなエピソードがあることを改めて感じました。

とくに十一代團十郎さんは、小説のモデルにもなる話題に事欠かない人。
十一代目からの團十郎家を知る上では以下のような書籍もあるので参考にされるといいかもしれません。

宮尾 登美子『きのね〈上〉』『きのね〈下〉』〉』(新潮社,1993)
赤坂 治績『団十郎とは何者か―歌舞伎トップブランドのひみつ』(朝日新聞出版,2017)


ランキング評価
読みやすさ  3
情報量    3
情報質    4
価格     3
と言うことで「★★★」です。


次回も見に来てくれると嬉しいです。


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