170601 認知症おはようございます。
「まおまお」で~す。
いつもブログを見ていただきありがとうございます。

今回の書籍の紹介はコレです。

山本 朋史『ボケてたまるか!―62歳記者認知症早期治療実体験ルポ』(朝日新聞出版,2014) 1,200円(税別)



この書籍をサクッというと


軽度認知障害(MCI)になってしまった週刊朝日記者が、自らの認知症の進行を止めるべくさまざまなことに取り組む姿をレポートした1冊。


目次


はじめに
第1章 もしかして認知症!?
第2章 仲間とのトレーニング
第3章 笑いと汗と格闘の日々
第4章 三歩進んで二歩下がる
第5章 まだまだ、ボケてたまるか!
番外編


ボケていく恐怖


今回紹介する書籍は認知症の初期段階である「軽度認知障害(MCI)」の疑いがあると診断された「週刊朝日」記者のレポート。
薬に頼らず、自ら認知症早期治療による認知力アップトレーニングをしながら、その状況を詳しく報告したものです。

著者が自分に違和感を覚えたのは、記者としてはやってはいけない取材スケジュールの「ダブルブッキング」を行ったため。
今までの物忘れとは違うと直感的に感じ、すぐに東京医科歯科大学病院の「もの忘れ外来」で診察を受けることに。

ここでは著者がその後お世話になる筑波大学の朝田隆医師により診察が行われ、結果、認知症の初期段階である「軽度認知障害(MCI)」の疑いがあるとの診断結果が出ました。

ショックを受けつつも、朝田医師によるアドバイスで認知症薬に頼るよりも、デイケアによる認知力アップトレーニングを勧められ、週1回都内の自宅から朝田医師のいる筑波大学まで通うことに。

そこで行われる認知力アップトレーニングを通じて、認知力の減退を可能な限り防ぎながら、現状よりも状況を改善していくプロセスが分かりやすく解説されています。

著者も書いていますが、違和感を覚えたとしても、それを放置しておくと数年後には症状が進んで認知症になる恐怖を覚えたとのこと。
自らがだんだんと目の前の記憶がなくなっていくというのは、本当に恐怖の何物でもありません。

そんな認知症の初期段階で著者が行ってきたトレーニングなどや認知症のトピックを中心にピックアップしていきます。

認知症になる大きな要因とは?


著者が認知症の初期段階の疑いがあると診断され、自らのことを振り返っています。
その中で認知症になった要因の1つとして5年以上睡眠導入剤を飲んでいたことを挙げています。

医師からは因果関係は少ないといわれていましたが、読者から「認知症にとって睡眠薬や睡眠導入剤は重大なリスクファクター」との指摘を受けて断薬をすることに。
先日も紹介した『睡眠薬中毒』でも同様の趣旨のことが解説されており、安易に睡眠薬や睡眠導入剤を飲むのは控えた方がよさそうです。

初期段階がその後を決める


著者はダブルブッキングをしたことで違和感を覚え、病院での診察と検査を受けました。
結果、「軽度認知障害(MCI)」と疑われるとの診断を受けましたが、その後の認知力アップトレーニングで、認知力の減退を防ぐようにしています。

ところが著者のような初期段階で受診する人は少数です。
多くの人は現実を受け入れることができず、そのまま放置し、悪化した状態で受診するケースがほとんど。
そのため、できることは限られてしまうのです。

大事なことは違和感があった時点で病院の検査を受けること。
万が一、認知症の初期段階であると診断されても、認知症アップトレーニングがあります。
それらを取り組むことで、一気に進行することをできるだけ防ぐようにしていくことが大事です。

医師によって対応が違うことも


ただし認知症と分かっても、場合によっては本人に告げない医師もいるそうです。
認知症を完全に戻す根本的な治療法は現段階でほとんどありませんので、告知しても当人を落ち込ませるだけで解決にはつながらないとの判断からです。

また、医師によっては勉強不足が否めない人もいるそうです。
まず認知症といっても、アルツハイマー型だけでなく、レビー小体型や脳血管性、前頭葉型などの種類があり、症状もそれぞれ違います。
医師によっては、そのことを詳しく調べずに、すぐにアリセプトなどの薬を処方するとのこと。

また、認知症の初期段階であれば薬を使わずに、デイケアでの認知力アップトレーニングなどで治療する方法もありますので、確認してみるといいでしょう。

認知症を遅らせるために良いこととは?


著者が行ってきたのは筑波大学附属病院で行われているデイケアの1つで、「認知力アップケア」というもの。

ここでは認知機能アップのテレビゲームや柔軟体操、ステップダンス、体力テスト、絵描き、料理など多種多様なカリキュラムが実施され、認知機能の回復を行うようにしています。

ポイントは集中力と敏捷性、そして同時にいくつものの作業を行うことで脳へ刺激を与え続けること。
このことで、認知力アップにつながり、認知症の症状の進行が緩やかになる人も多くいるそうです。

ただしカリキュラムで脳が活性化しても、1週間たつと元に戻ってしまう人も。
そのため、自宅での日常生活でいかにそれらのカリキュラムが取り入れられるかが認知症の進行を遅らせたり、改善したりするために必要なのです。

著者が実感した筋肉トレーニング


多くの認知症患者は、筋肉痛や外傷などの痛みをあまり感じないといいます。
つまり身体の感覚神経が脳につながっていないという仮説です。
認知症患者が遠くまで徘徊(はいかい)するのも、足の疲れや痛みが脳まで届きにくくなっているから可能ということ。

健常者は軽度認知障害(MCI)という通過点を通って、認知症になります。
つまりMCIの状態で運動も含めた治療を行うことで、認知症が治る可能も高くなるということです。

そのため、著者は認知症と筋肉トレーニングの研究をしている本山輝幸さんの指導の下、筋肉トレーニングに励むことに。

ポイントは鍛えるべき筋肉に自分の神経を集中し、脳と身体の感覚神経のネットワークを構築するように心がけること。
当書籍ではその運動方法が写真つきで解説されていますが、健常者でもかなりハードなものです。

ところがこれが著者には認知力アップの手ごたえを実感できるトレーニングだったようで。
加えて著者は歩数計をつけて日々も意識して歩くようにしています。

他にも認知症を効果的に治す「7アップ運動」というものがあります。
これは筋力能力、バランス能力、デュアルタスク、歩行能力、柔軟性、敏捷性、巧緻性(手・足の器用さ)の7つの項目を鍛えること。
これらを意識することが、認知力アップに役立つとのことです。

当書籍では他の認知力アップのカリキュラムよりも筋肉トレーニングに比較的多くの紙面を割いています。


まとめ


当書籍から分かったことは以下のようなことです。
 1.著者は記者であるため、認知症初期症状の改善方法を分かりやすく紹介して
  います。
 2.初期の認知症対策には、一度にいくつものことを行うマルチタスクが
  脳に刺激を与えるので効果的です。
 3.筋肉トレーニングは脳への神経をつなげ、著者も効果を一番実感している
  方法です。


認知症になると本人よりも家族への負担が大きくなります。
実は私の母もつい最近、突然、認知症に。
あまりの急変ぶりに現実を受け入れるまで、しばらく掛かりました。

幸い攻撃性が強いアルツハイマー型ではなく、血管性認知症、それも「まだら認知症」と呼ばれるときどき正常に戻るタイプでした。
それでもやはり介護が大変なことに変わりはなく、施設に入所した現在でも、施設からの連絡などがあるため、なかなか気が休まりません。

認知症の怖さを実感しているだけに、この書籍の認知力アップトレーニングは健常者でも大事なことだと痛感。
少しずつ生活に取り入れています。
認知症のことを知る上でも、なかなか興味深い内容となっていますので、多くの人に読んで欲しい1冊です。


ランキング評価
読みやすさ  3
情報量    4
情報質    5
価格     3
と言うことで「★★★★」です。


次回も見に来てくれると嬉しいです。


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