170603 歌舞伎座おはようございます。
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今回の書籍の紹介はコレです。

長谷部 浩『菊之助の礼儀』(新潮社,2014) 1,500円(税別)

菊之助の礼儀
長谷部 浩
新潮社
2014-11-27


この書籍をサクッというと


歌舞伎界の名門、尾上家の御曹司である五代目尾上菊之助さんについて書かれたエッセイ集。
菊之助さんの人柄が伝わってくる1冊です。


目次


1 美しさの謎 『京鹿子娘二人道成寺』
2 京・四季・南座 『弁天娘女男白浪』
3 初対面の日 『グリークス』
4 アッピアの夜 『弁天娘女男白浪』
5 立役への道 『児雷也豪傑譚話』
6 海老蔵襲名 『助六由縁江戸桜』
7 早朝のパリ 『鳥辺山心中』
8 菊之助の礼儀 『NINAGAWA十二夜』
9 仲違い 『加賀見山旧錦絵』
10 去りゆく人と 『二人椀久』
11 アスリートの体力 『春興鏡獅子』
12 ブロマイドのなかの親子 『与話情浮名横櫛』
13 大顔合わせ 『仮名手本忠臣蔵』
14 赤坂・ロンドン・銀座 『曾根崎心中』
15 平成中村座の菊之助 『菅原伝授手習鑑』
16 立女方への道 『伽羅先代萩』
17 立役への挑戦 『盟三五大切』
18 真実の恋 『摂州合邦辻』
19 東日本大震災を受けて 『うかれ坊主』『藤娘』
20 初役の一年 『籠釣瓶花街酔醒』
21 歌舞伎座新開場 『熊谷陣屋』
22 哀れな女 『東海道四谷怪談』
23 弁天小僧を生きる 『青砥稿花紅彩画』
24 桜の花の舞い散る頃に 『京鹿子娘道成寺』
25 新しい命 『勧進帳』
あとがき


尾上菊五郎家の御曹司であるからこそ


歌舞伎界には名跡と呼ばれる名門役者さんの「家」があります。
有名なのは「市川團十郎」という名跡。
これは歌舞伎界の中でも一番の大名跡です。

それに匹敵するような大名跡の1つが「尾上菊五郎」いう名跡。
一般的にはなじみがないかもしれませんが、歌舞伎界では今でも「團菊祭」と銘打った歌舞伎興行が行われます。

團は明治時代に活躍し、劇聖とも呼ばれた九代目市川團十郎さんを、菊は五代目尾上菊五郎さんという2人の偉業をたたえて行われるもの。
歌舞伎界では大名跡中の大名跡といっていいでしょう。

今回紹介する書籍は大名跡、尾上菊五郎家の御曹司である五代目尾上菊之助さん(以降、尾上菊之助さん)について書かれたエッセイです。

菊之助さんのお姉さんは女優の寺島しのぶさん。
お母さんは富司純子さん。
そして、義父は鬼平犯科帳の鬼平を演じた二代目中村吉右衛門さんです。

昨年から歌舞伎座に足を運ぶようになりました。
大名跡の御曹司のため中心登場人物としての出演演目が多数ある中で、実は尾上菊之助さんの演目を観たのは1回だけ。
これについては当書籍で理由が分かりましたので、後で紹介します。

当書籍のエッセイ1つ1つから伝わってくるのは、尾上菊之助さんのおごらず謙虚な姿勢。
歌舞伎界の大名跡の御曹司であれば、自分の周囲の対応に勘違いしてしまいそうですが、それがないのです。

逆に大名跡の御曹司だからこそ、周囲よりもいい役を与えられていることを自覚し、ひたすらに修行に励む。
その姿勢がひしひしと伝わってきます。
本当にすごい人だな~と感じた次第です。

謙虚さの言葉の数々


菊之助さんの謙虚な姿勢が伝わってくるのが、彼が話している言葉の数々です。
それらをピックアップ。
音羽屋の少年だというだけで、出していただいた踊りです。(P.12)

僕の年齢からすると、今は、実力以上の役に恵まれています。これは父のおかげです。庇護があるからです。(P.33)

よく周囲にちやほやされて自分を見失う人がいますが、菊之助さんは自分の立場を冷静に見ており、そのため、誰よりも謙虚なのかもしれませんね。

尾上菊之助さんの演目を今までほとんど観てこなかった理由


当書籍で知ったのが、今でも尾上菊五郎劇団が存在していることでした。

この劇団制というのは戦前、軍部が演劇も戦時高揚のために利用するために創られたもの。
いわゆる大名跡の役者さんたちを座頭にして、興行主の松竹と分離し、軍部がコントロールしやすいようにしたのです。

中でも戦後まで活躍した劇団が六代目尾上菊五郎さんを座頭にした菊五郎劇団、そして初代中村吉右衛門さんを座頭にした吉右衛門劇団です。

戦後、六代目尾上菊五郎さんと初代中村吉右衛門さんは相次いでお亡くなりに。
そのときに2つの劇団は違った動きをします。

菊五郎劇団は座頭が亡くなった後、集団指導体制に移行して劇団を存続させていきます。
吉右衛門劇団は座頭死去を機に解散してしまいます。

といってもこの話は終戦からまだそんなに経っていない頃の話。
まさか今でも劇団が存続しているとは思ってもいませんでした。
ところが当書籍では菊五郎劇団は代を変えながら存続していることが書かれていました。

劇団が存続しているということは、劇団以外の役者さんたちの交流は限られたものになります。

今までは九代目松本幸四郎さんなどの演目を観ることが多く、交流が少なければ、当然のことながら劇団の御曹司である尾上菊之助さん出演の演目を観る機会がないのです。

まさかまだ形を変えても劇団が存在しているとは。
本当に「驚き」の一言です。

尾上菊之助さんの多忙な生活


歌舞伎役者で人気がある人はハードな生活を送っています。
菊之助さんもその中の1人。
当書籍では以下のように書かれています。
若手花形で人気のある俳優は、私たちからみると想像を絶する多忙な生活をしている。
朝十時前に劇場に入って、一日を舞台と楽屋で過ごし、舞台を終えて風呂に入って劇場を出るのは、夜の九時を過ぎてしまう。そんな日々が、休演日なしで二十五日間続く。中日をすぎれば、夜の部が終わった後も、次の月に出る芝居の台詞を覚え、映像で段取りを学び、先輩俳優や踊りのお師匠さんを訪ね稽古を積む。いったい、いつ心と身体を休めるのだろうと、溜息をつきたくなるような日常である。(P.55)

このペースが何年間も続く訳です。
よぼどの人でないと、燃え尽きてしまうような感じ。
本当にすごいですね。

襲名のため将来は男役も


女形として活躍している菊之助さんですが、将来は「尾上菊五郎」という大名跡を継ぐ可能性が大きいです。

「尾上菊五郎」は男役(立役)の大名跡。
そのため、大名跡を継ぐためには、今後、男役(立役)を演じていかなければなりません。

菊之助さんのお父さんでもある七代目尾上菊五郎さんも以前は女形として活躍していたそうですが、今ではすっかり男役(立役)の役者さんのイメージしかありません。
当書籍でも男役(立役)への意欲を燃やしている旨のことが書かれています。

また、七代目尾上菊五郎さんも以下のようにいっています。
最後は立役一辺倒になるんじゃないですか。今、女形の経験をばっちり積んでおけば、立役になっても政岡とか玉手(御前)はできますよ。だけれども、どっちかというと立役になるでしょうね。(P.133)

今後は襲名のための徐々に男役(立役)の演じる機会が増えてくるかもしれませんね。


まとめ


当書籍から分かったことは以下のようなことです。
 1.尾上菊之助さんは大名跡の御曹司として、おごることなく、非常に謙虚な姿勢を
  貫いています。
 2.尾上菊五郎劇団は現在でも存続し、独自の活動をしています。
 3.菊之助さんは将来、「尾上菊五郎」という大名跡を継ぐため、現在の女形から
  男役(立役)へシフトする可能性が高くなってきます。


当書籍では十八代目中村勘三郎さんとの交流なども描かれており、勘三郎さんから少なからず、さまざまなことも学んでいたことも書かれています。

なかなか菊之助さんの出演する演目を観る機会がないですが、今後、観る楽しみが増えた1冊でした。


ランキング評価
読みやすさ  3
情報量    3
情報質    4
価格     3
と言うことで「★★★」です。


次回も見に来てくれると嬉しいです。


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