おはようございます。
「まおまお」で~す。
いつもブログを見ていただきありがとうございます。
今回の書籍の紹介はコレです。
海老原 嗣生『お祈りメール来た、日本死ね― 「日本型新卒一括採用」を考える』(文藝春秋,2016) 820円(税別)
日本の新卒一斉採用は問題がある制度なのか?
欧米の採用状況と比較しながら日本の採用制度の優れた面を検証していく1冊です。
はじめに
0章 就活って今、どうなってるの? 何が問題なの?
1章 100年論争を棚上げするための処方箋
2章 やめられない止まらない日本型雇用
3章 欧米型雇用の不都合な真実 ~日本型批判者が語らない欧米型の問題点~
4章 進歩的提言の限界 ~木に竹を接ぐ改革案は、就職強者の優遇策にしかならない~
5章 日本型が変えねばならない本当の短所
「働く」は、縦と横の比較の中で語ろう
参考文献
大学生の就職活動(以下、就活)は昔も今も大変。
景気に左右されて、採用される人数も大きく変化します。
そのため、有名大学の学生でないと就職しづらいという話も巷には溢れました。
毎年のように日本の新卒一括採用の弊害が叫ばれ、欧米のように一年中採用される制度に改めるべきという話も出ます。
本当に欧米の採用制度は優れていて、日本の採用制度は問題だらけなのでしょうか?
そんな疑問に答えてくれるのが今回紹介する書籍です。
欧米の採用制度がなぜ年中行われているのか、そして対比して日本の新卒一括採用制度の優れた点を解説しています。
欧米の採用活動は年中行われています。
それだけ聞くと、非常に採用状況が活発のように思えますが、そんなことはありません。
欧米では未経験者を大量に採用することがないのです。
欧米ではポスト別に個別採用が行われるのが一般的。
あるポストにいた人が、転職、退職、解雇などによりその会社から去るとそれを埋めるために採用が行われます。
日本人の感覚ですと、わざわざ外部から人を採用しなくても社内の人を昇格させたり、異動させたりすれば済むような話ですが、欧米ではそうはいかないのです。
ところが欧米では昇格や異動などは本人の同意が必要になります。
もし本人が同意してポストを埋めることができたとしても、今度はそこで空いたポストに対して、昇格や異動が必要になってきます。
その都度、延々に該当者へ同意を取り付けるという果てしない作業が続きます。
日本とは異なり、欧米では企業に人事権がなく、職務範囲・勤務可能地域を逸脱するような異動・配置転換を一方的に行うことができないのです。
結果、外部から空いたポストにふさわしい人材を採用することになります。
また、欧米企業ではキャリア形成がまったく異なります。
日本は経験や勤続年数などによってポスト(職位)が上がっていきますが、欧米ではそのようなことは一般的にありません。
欧米企業では最初に採用されたポストを昇格もせず、ずっと勤めるのです。
採用は高専から有名大学院まで、どのレベルの学校を卒業したかで決まります。
ポストを上げるためには、その経験が必要になってきます。
そのため、大学や大学院に入り直したり、数年間に渡るインターンシップを行ったりして「できる」ことを証明しなければならないのです。
ちなみにインターンシップは無報酬や最低限の報酬だけということも珍しくありません。
そして年間を通して、空いたポストを獲得するべく就職活動が行われます。
これが欧米で年中、採用活動が行われている実態です。
つまり欧米では進学先によって、その先に就ける職種がほぼ見えてしまっている厳しい階層社会であることが年間を通じて採用が行われる背景としてあることに注意しなければなりません。
欧米の社会背景を含むシビアな現状に比べ、日本の場合、そのポストにふさわしいかどうかでは判断されません。
あくまで人柄や可能性、あやふやな「能力」という観点から採用されます。
また、昇格や異動が社内で頻繁に行われるのは、企業が人事権でそれらを雇用者の同意なく行えるためです。
欧米のように果てしない雇用者への同意取り付けがない分、スムーズに社内昇格が行われます。
また、未経験でも育てることにより、必要なスキルや能力を育んでいくというのも日本独自に近いです。
確かに就活における大学別での選考はあったとしても、最初から正社員の門が閉ざされている訳ではありませんし、入社後も昇格する可能性もあります。
欧米のように入った当時のポストをすっと勤め上げるか、それが嫌であればそのポストにふさわしい学歴やキャリアを形成してポストを獲得するかというシビアなものではないのが日本の採用システムなのです。
当書籍から分かったことは以下のようなことです。
1.日本型採用システムと欧米型採用システムの違いは、社会制度の違いに
あります。
2.欧米型採用システムが年間を通して採用を行っているのは、空いたポストを
社内で埋めることができない仕組みになっているため。
3.日本型採用システムの優れた点は未経験者を大量採用し、育て、社内で
ポストを埋めることができるような仕組みができていることです。
当書籍の優れている点は、欧米型の通年採用の表層的な部分ではなく、社会制度を背景とした部分までしっかりと分析している点です。
日本でも欧米型の通年採用を行うのであれば、社会制度の大きな変更を伴うこととセットで考えなければなりません。
果たしてそれは今までの日本の社会制度になじむものであるのでしょうか?
また、それはこれから就活を行う学生にとってもメリットがあるのでしょうか?
ある一面だけを見て論じることに一石を投げている1冊でした。
ランキング評価
読みやすさ 3
情報量 4
情報質 5
価格 3
と言うことで「★★★★」です。
次回も見に来てくれると嬉しいです。
「まおまお」で~す。
いつもブログを見ていただきありがとうございます。
今回の書籍の紹介はコレです。
海老原 嗣生『お祈りメール来た、日本死ね― 「日本型新卒一括採用」を考える』(文藝春秋,2016) 820円(税別)
この書籍をサクッというと
日本の新卒一斉採用は問題がある制度なのか?
欧米の採用状況と比較しながら日本の採用制度の優れた面を検証していく1冊です。
目次
はじめに
0章 就活って今、どうなってるの? 何が問題なの?
1章 100年論争を棚上げするための処方箋
2章 やめられない止まらない日本型雇用
3章 欧米型雇用の不都合な真実 ~日本型批判者が語らない欧米型の問題点~
4章 進歩的提言の限界 ~木に竹を接ぐ改革案は、就職強者の優遇策にしかならない~
5章 日本型が変えねばならない本当の短所
「働く」は、縦と横の比較の中で語ろう
参考文献
問題点は多いが日本の採用システムは捨てたものではない
大学生の就職活動(以下、就活)は昔も今も大変。
景気に左右されて、採用される人数も大きく変化します。
そのため、有名大学の学生でないと就職しづらいという話も巷には溢れました。
毎年のように日本の新卒一括採用の弊害が叫ばれ、欧米のように一年中採用される制度に改めるべきという話も出ます。
本当に欧米の採用制度は優れていて、日本の採用制度は問題だらけなのでしょうか?
そんな疑問に答えてくれるのが今回紹介する書籍です。
欧米の採用制度がなぜ年中行われているのか、そして対比して日本の新卒一括採用制度の優れた点を解説しています。
なぜ欧米は年中採用を行っているのか?
欧米の採用活動は年中行われています。
それだけ聞くと、非常に採用状況が活発のように思えますが、そんなことはありません。
欧米では未経験者を大量に採用することがないのです。
欧米ではポスト別に個別採用が行われるのが一般的。
あるポストにいた人が、転職、退職、解雇などによりその会社から去るとそれを埋めるために採用が行われます。
日本人の感覚ですと、わざわざ外部から人を採用しなくても社内の人を昇格させたり、異動させたりすれば済むような話ですが、欧米ではそうはいかないのです。
ところが欧米では昇格や異動などは本人の同意が必要になります。
もし本人が同意してポストを埋めることができたとしても、今度はそこで空いたポストに対して、昇格や異動が必要になってきます。
その都度、延々に該当者へ同意を取り付けるという果てしない作業が続きます。
日本とは異なり、欧米では企業に人事権がなく、職務範囲・勤務可能地域を逸脱するような異動・配置転換を一方的に行うことができないのです。
結果、外部から空いたポストにふさわしい人材を採用することになります。
また、欧米企業ではキャリア形成がまったく異なります。
日本は経験や勤続年数などによってポスト(職位)が上がっていきますが、欧米ではそのようなことは一般的にありません。
欧米企業では最初に採用されたポストを昇格もせず、ずっと勤めるのです。
採用は高専から有名大学院まで、どのレベルの学校を卒業したかで決まります。
ポストを上げるためには、その経験が必要になってきます。
そのため、大学や大学院に入り直したり、数年間に渡るインターンシップを行ったりして「できる」ことを証明しなければならないのです。
ちなみにインターンシップは無報酬や最低限の報酬だけということも珍しくありません。
そして年間を通して、空いたポストを獲得するべく就職活動が行われます。
これが欧米で年中、採用活動が行われている実態です。
つまり欧米では進学先によって、その先に就ける職種がほぼ見えてしまっている厳しい階層社会であることが年間を通じて採用が行われる背景としてあることに注意しなければなりません。
日本が新卒を同時期に採用している理由
欧米の社会背景を含むシビアな現状に比べ、日本の場合、そのポストにふさわしいかどうかでは判断されません。
あくまで人柄や可能性、あやふやな「能力」という観点から採用されます。
また、昇格や異動が社内で頻繁に行われるのは、企業が人事権でそれらを雇用者の同意なく行えるためです。
欧米のように果てしない雇用者への同意取り付けがない分、スムーズに社内昇格が行われます。
また、未経験でも育てることにより、必要なスキルや能力を育んでいくというのも日本独自に近いです。
確かに就活における大学別での選考はあったとしても、最初から正社員の門が閉ざされている訳ではありませんし、入社後も昇格する可能性もあります。
欧米のように入った当時のポストをすっと勤め上げるか、それが嫌であればそのポストにふさわしい学歴やキャリアを形成してポストを獲得するかというシビアなものではないのが日本の採用システムなのです。
まとめ
当書籍から分かったことは以下のようなことです。
1.日本型採用システムと欧米型採用システムの違いは、社会制度の違いに
あります。
2.欧米型採用システムが年間を通して採用を行っているのは、空いたポストを
社内で埋めることができない仕組みになっているため。
3.日本型採用システムの優れた点は未経験者を大量採用し、育て、社内で
ポストを埋めることができるような仕組みができていることです。
当書籍の優れている点は、欧米型の通年採用の表層的な部分ではなく、社会制度を背景とした部分までしっかりと分析している点です。
日本でも欧米型の通年採用を行うのであれば、社会制度の大きな変更を伴うこととセットで考えなければなりません。
果たしてそれは今までの日本の社会制度になじむものであるのでしょうか?
また、それはこれから就活を行う学生にとってもメリットがあるのでしょうか?
ある一面だけを見て論じることに一石を投げている1冊でした。
ランキング評価
読みやすさ 3
情報量 4
情報質 5
価格 3
と言うことで「★★★★」です。
次回も見に来てくれると嬉しいです。