岡本眞一郎の不成、原田清実の中合、八尋久晴のヤヒロ印…etc
詰将棋作家には、その人特有の「お家芸」を持つ者がいる。
そして移動合といえば新井直之氏である。

将棋世界昭和51年3月号で初入選。
将棋世界の入選はおそらく1回のみで、その後かなり期間が空いて詰パラ平成12年5月号で初入選。
「新井直之といえば移動合」というイメージが定着するほど人気があったが、平成24年頃を境に作品発表が途絶える。
そして誰も、冬眠したこと自体、気付いていないのではないだろうか。
しかし、このまま忘れられてはいけない作家だと思うのである。
なにしろ、筆者が詰パラの購読を始めた頃に最も影響を受けた作家だからである。
実際に、筆者の詰パラと将棋世界の初入選作はどちらも移動中合を含んでいる。
そこで独断と偏見で選んだ新井直之作品を、前後編に分けて5作ずつ紹介したい。


①詰将棋パラダイス平成12年5月号
2018-05-25a

23桂成、同飛、22銀、同飛、35馬、24飛、同馬、22玉、
34桂、21玉、22飛、11玉、23桂、同銀、12飛成、同玉、
13香、21玉、11香成、同玉、33馬、12玉、22馬まで23手詰

本作が詰パラ初入選作。
デビューからいきなり移動捨合が登場する。
北原義治・原島利郎両作品と類似しているとはいえ、初入選とは思えない纏まりである。


②詰将棋パラダイス平成12年7月号
2018-05-25b

15香、14歩合、同香、13歩合、同香成、同桂、23金、同玉、
24歩、12玉、32飛、22角合、同飛成、同玉、23歩成、同玉、
32角、12玉、21角成、23玉、24歩、同銀、32馬、12玉、
22馬、同玉、32龍まで27手詰

物凄い美しい実戦型で、手順もかなり良い。
ところが5手目より23金、同玉、24歩、12玉、13香成、同桂の手順前後が成立している。
これがなければ中編名作選級だっただろう。


③詰将棋パラダイス平成14年4月号
2018-05-25c

13金、同玉、15飛、14金合、同飛、22玉、13飛成、同玉、
15飛、14金合、同飛、22玉、13飛成、同玉、24金、同玉、
15金、同玉、27桂、25玉、35角成まで21手詰

捨合を含む手順を繰り返して、飛車2枚を金に持駒変換。
『四百人一局集』では本作を自選されている。


④詰将棋パラダイス平成19年8月号
2018-05-25d

12歩成、同玉、11飛、22玉、13飛成、21玉、11龍、同玉、
23金、13角、44角、同銀、13香生、21玉、43角、同龍、
12香成、31玉、22成香、41玉、42香、同龍、同銀成、同玉、
41飛、同玉、32成香まで27手詰

かつては沖縄在住で日本最南端の詰将棋作家と呼ばれていたが、平成18年頃に東京に移住された。
丁度この頃から移動合のイメージが定着し始めたようだ。
本作は狙いの移動中合の直後に44角の好手が飛び出す呼吸が良い。


⑤詰将棋パラダイス平成19年11月号
2018-05-25e

27銀、29玉、18銀、19玉、27銀、17馬、同飛、28玉、
29金、同玉、19飛、同玉、28角、同玉、17馬、29玉、
19金、同玉、18馬まで19手詰

序盤の銀の動きの味が良く、移動中合以降も自然なまとめ。
派手な狙いを含みながらも軽快なタッチで進むのが新井直之作品の特徴である。