2009年12月29日

【第8位】年間ベストアルバム2009

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「Central Market」(2009)
Tyondai Braxton
評価:9.2



これはロック等のカテゴリーに属する音楽ではない、かと言ってオーケストラに媚びたクラシックアルバムというわけでもない。そう、これはまるで映画のサウンドトラックである。その映画もディズニーなんかにぴったりと似合うだろう。BATTLESのギタリストTyondai Braxtonによる2作目はそんなロックからスクリーンへ飛び出したようなまさに圧巻の内容だ。

この作品にはほとんどボーカルは入っていない、途中にコーラスを入れたり後半に1曲歌ったりしているがほとんどはクラシック音楽から映画音楽・ミュージカル音楽までを組み込んだオーケストラが際立つ曲だったり、BATTLESの前作までの路線に近いものにオーケストラを組み込んだ曲だったりと概ね半インストアルバムと言ってもいい。しかしその内容はどれも職人の域に達していて聴いていて引きつけられる魅力がある。

中でもM4「Platinum Rows」は本作でも屈指の収録時間9分台の曲だが中盤のテンポが落ち着く場面の中でも削がれることなく最後まで続く緊張感に満ち溢れている最もポピュラリティのある曲であり、本作はこの楽曲のためにあると言っても過言ではないと思う。クラシックに関する教養を持っていない自分がこの作品を選ぶことに抵抗がなかったわけではないのだけど、M4の完成度の高さや後半のBATTLES路線の楽曲によってサウンドトラックもどきに作品が終わることを許さなかったその姿勢が良かったのでランクイン。

昨年のメトロノミーに対する評価から個人的に相性のいいSNOOZERの年間ベストにも選盤された、アヴァンギャルドなロック好き〜ディズニー好きまで巻き込めるかもしれない異色な作品。

tsunani at 15:03|PermalinkComments(0)TrackBack(0)Best Album(2009) | 9点

2009年12月26日

【第9位】年間ベストアルバム2009

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「Two Dancers」(2009)
Wild Beasts
評価:9.1



Wild Beastsのボーカル、ヘイデン・ソープのファルセットボイスは素晴らしい。彼の声はアントニー・ヘガティのような一瞬にして世界観に包み込むような声ではない。もっと尖っていて海の底に連れて行くような、むしろ人によっては彼の声に不快感を抱くかもしれない。しかしそれと同時に一度掴まれた人が深みにはまってしまうだけの中毒性がある。本作はそんな彼のボーカルを上手くポップとダークの中間に落とし込んでいる。

音周りで言えばアニマル・コレクティブやグリズリー・ベアーの新作のドリーミーな雰囲気に近いが、しかしアメリカのバンドの彼らに対して本作はイギリスのバンドによって組み立てられている。それ故か彼らとはまた一線を引いた世界観を構築しているように感じたが、それもボーカルの際立った個性が大きいからだと思う。

どの楽器もあまり自己主張をしていない故に歌モノのような印象を最初に受けたが、決してそんなこともない。どのパートも過剰に音を加えることをせずに無駄を削ぎ落としているだけで、結果的にそこには最高のグルーヴが楽曲を盛りたてている。ポストロック〜エレクトロの音が楽曲の基調になっているが、必要最低限の音でここまでの中毒性を持たせているのは見事としか言えない。

深海にようこそ。

tsunani at 23:08|PermalinkBest Album(2009) | 9点

【第10位】年間ベストアルバム2009

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「世界のフラワーロード」(2009)
100s
評価:9.0



中村一義における2枚目、100sにおける最初の金字塔。

本作から連想されるのは中村一義のデビュー作「金字塔」である。M3「魔法を信じ続けているかい?」は金字塔に収録されている「魔法を信じ続けるかい?」 のセルフオマージュだし(歌詞にはこれまでの作品のタイトルが入っている)、前作の「ALL!!!!!!」よりもギターの比重は落としている。どちらかと言えば中村一義のソロ作品からの流れを感じた作品となった。

本作は代わりに鍵盤の音が印象的で、ビートルズの影に触れるか触れないかのような、それでいて音楽が持っている「人の人生を少し幸福にする」力を備えている。少なくとも僕にとっては音楽界における厄年とも言えた2009年において救われた音楽の一つだった。

中村一義はこの作品において自分の生まれ育った街並み、風景、「原点」を自分の音楽に溶け込ませているが、そこには昔の自分が見てきたものとは少しズレが生じた居場所があったことが想像できた。決して世界は変化を止められない、そしてその世界には大きいも小さいもない。僕は数年前に昔住んでいた街へ行ったときに感じた、昔なかった建物もあれば昔あった憩いの場所がなくなってたりもする、昔住んでいた家には違う人が住んでいる、昔の仲間はもう立派な大人になっていた。そんなちょっとした変化が少し残念だったりした。

しかし彼は歌う

「のぞまない何も。自分を生き通すだけ。
さぁ、だから、笑顔でいつも乗り切ってゆく。
さぁ、だから、ここらで「さよなら」だ。

乗り越えてゆくならば。」

乗り越えていこう、でもまた帰ってこよう。
それまで、さらば。

tsunani at 13:46|PermalinkBest Album(2009) | 9点