これまで、3年3ヶ月ホルモン療法を中心にして、前立腺がんと向き合ってきました。そして抗がん剤の治療に踏み切りましたが、いろいろなサイトで調べても「個別的」には理解できても「総合的」には、なかなかわからないことがあります。例えば、ホルモン剤の交替と抗がん剤の使用タイミングなどです。そこで「ホルモン治療薬の働き」を再考してみました。同時にそれは、ホルモン剤が効かなくなり抗がん剤へシフトするのはなぜなのか、ということにもつながります。

slide11  このブログにコメントを寄せてくださる泌尿器科医でいらっしゃるSulSup先生の発案とアイディアで「なぜCRPCとなるのか---治療薬の働き」という4枚のフリップを先生と共同作業で作ってみました。参考になれば幸いです。

 右の図は、「ホルモン療法って何?」ということを比喩的に、表わした図です。

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  アンドロゲン受容体の働きを水道水の流れで、バケツにたまった水が「増殖」とたとえると、
ビカルタミド(カソデック
 ス)
は水道の蛇口を軽くし
 める。
フルタミド(オダイン)
 水道の蛇口と元栓をそれぞ
 れ軽くしめる。
 しかし、この二つの薬剤は、完璧に水道の水をしめ切れていないので、PSAが一旦下がるものの、再び上昇に転じる再燃が起こります。
 漏れている水を効率よく利用してまた増殖する結果、PSAも上昇するのです。再燃後の前立腺がんは、去勢抵抗性前立腺がん:CRPCと呼ばれます。
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 そこで、エンザルタミド(イクスタンジ)アビラテロン(ザイティガ)が有効なのです。
アビラテロンは水道の元栓
 を完全にしめる。
エンザルタミドは水道の蛇
 口を完全にしめる。

   ですので、これら二つの新楽は、結果的にほぼ同じことをするわけで、一方を服用すると、一方が効きにくいあるいは効かないのです。
 これが「交差耐性」と呼ばれているものです。
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 ところが一方で、訳の分からないところから誰かがバケツに変な水を持ってきてバケツの水が増えていってしまうのがアンドロゲン非依存性増殖です。(これは、フリップ2枚目のホルモン薬を服用している最中から徐々に進行していると考えられます。)
 そして、アンドロゲン非依存性増殖が顕著になると、抗アンドロゲン剤(ホルモン剤)はもう役に立たなくなります。ホルモン非依存性のがん細胞が増えてしまっているからです。

 この局面になると、化学療法(抗がん剤:ドセタキセルやカバジタキセル)ということになるわけですが、同時に「訳の分からないところの誰か」を特定しないと積極的な治療にはなりません。 
 これを特定するのがCTやMRIや超音波検査や骨シンチグラフィーなどの画像検査(内臓転移・骨病変の有無など)やBAPとI-CTP(骨代謝マーカー)やPSAが治療で低下しているにもかかわらず、画像が悪化しているようなときに検査するNSEとProGRP(神経内分泌細胞への変化)などのマーカー検査ということになるのだと思います。

 実際の治療では「どちらのバケツが大きいかでどちらの治療を優先すべきかが変わってきます。」また「患者さんと相談しながら臨機応変に治療を選択すべきです。」とSulSup先生はおっしゃっています。医師にとっては、個人個人によって治療を微妙に変えなければならない、経験が要求される局面になるのですね。