今週のことわざ (222)    「死中に活を求める」
 解説: 死ぬ以外ないような状況の中で、なお生きる道を見出そうとすること。 
 感想: 私は今までに本気で死のうとしたことが一度だけある。
 それは30年前の脳内出血発症のときで、開頭手術後に意識を回復した私が真っ先に考えたのが、自分で死ぬことだった。
 というのは私が多くの記憶を失って自分の名前すら書けなくなったことに気がついたとき、もう自分に未来はないのではないかと感じたからである。
 そこである夜私は独自に考案したユニークな手段を使って自殺を決行したが、大ぼけ頭が考え出したアイデアが成功するはずがない。
 しかし自殺に失敗した私はそれまでの考えをガラリと変えたのである。
 つまり消えてしまった記憶が戻ってくるのをただ待つよりも、もう一度新しく覚え直すほうが賢明ではないかと考えたのだ。
 とはいえ当時の私の記憶能力はゼロに近いから、どんなことでも簡単に記憶出来なかったのは事実である。
 しかし何度でも繰り返せば、私の壊れた脳でも記憶可能と知り、私は毎日のように記憶作業の訓練を続けたものだ。
 それでも時計の文字盤を読み取れるようになるまでには数年を要したはずだ。
 そんなわけで今や本物の高齢者になった私だが、次第に衰えていく記憶力に対しては、記憶作業を繰り返すことで抵抗している。