こちら医師(医者)叩き110番-医師不信の深層-

医師達の心の叫びが聞こえますか?この論考をすべてのマスコミ被害者に捧ぐ。 <内容要約> 医療に関する公平なマスコミ報道は、増えてきたとはいえ依然表層的で本質論を欠く。現在の医療問題の根底には、総じて医療への不安や軽視、患者-医師関係の荒廃がある。それらはマスコミ報道による醸成結果という意見も根強い。真の意味で現場医師発のものやマスコミ医療報道のどこがどうだめなのか体系的に実証的に論じたものも少ない。患者医師の信頼関係修復の為に、医療従事者以外の方と共に考えてみたい。記事タイトルの先頭番号順にご覧いただくと論理展開がスムーズです。「医療~被害」と「~を冷静に見ている人も」は順不同です。絶えず記事は、校正・追加・改変していますので、何度でもご覧下さい。

世相を冷静に見ている人たちも341 ユダヤ人は金持ち。医師は全員金持ち

 東京五輪が幕を閉じた。振り返ればトラブル続きの五輪だったが、中でも深刻だったのは、ホロコーストの揶揄問題だ。ジャーナリストの池上彰さんと、作家で元外務省主任分析官の佐藤優さんは、そう指摘する。この問題を二人はどう見たのか、AERA 2021年8月16日-8月23日合併号で、オンライン対談した。

*  *  *

――五輪開会式の前日、開閉会式のディレクターだった小林賢太郎さんが解任された。ナチスによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を揶揄する表現を過去に用いていたことが原因だった。この問題にこそ、日本が抱える深刻な問題、国際感覚との驚くべきズレが凝縮されている。対談はこの問題から始まった。

佐藤:今回のオリンピックでは、驚くようなことがたくさんありました。なかでも開会式の前日のショーディレクターの小林賢太郎さんの解任は極めつきだったと思います。首相官邸やオリンピック組織委員会の対応が迅速だったことからもわかるように、この問題はとても深刻なのですがそれがなかなか伝わってきません。

池上:IOCのバッハ会長はドイツ人。ドイツはホロコーストに厳しいですから、解任の判断があと半日遅かったら、開会式には間違いなく出られなかったと思います。

■ギリギリで間に合った

佐藤:ジル・バイデン米大統領夫人もアメリカ国内のユダヤ系の人たちのことを考えたら、出られません。

池上:イスラエル選手団もボイコットするかもしれなかったわけです。さらに言うと、この時、ファイザーのCEOが日本に来ていて、菅義偉首相は改めてファイザーのワクチンをお願いすることになっていました。ファイザーCEOの両親はホロコーストの生存者として知られています。菅さん、あのままでは合わせる顔がなかったでしょう。そのギリギリのところでした。

佐藤:つまり、開会式前日の7月22日未明から午前に最大の攻防戦があったわけですが、あまり報道されてないんです。ホロコースト問題の発覚で、菅首相は朝の5時半に起こされています。早朝から内閣の幹部たちは連絡を取り合い、外務省はアメリカ政府、イスラエル大使館と接触をしました。オリンピック組織委員会もきちんとした対応をするということで、バイデン夫人の出席を確保したのです。

池上:それこそ海外からの列席者がいなくなり、開会式自体がつぶれてしまうところだったんですよね。そういう危機的なギリギリのところで、何とか間に合ったんだということを、みんな気づいていないですよね。

佐藤:今回、政府と組織委員会は危機管理という点においては、適切な対応をしたと思います。

池上:そうですね。その直前に大騒ぎになった小山田圭吾さんの過去のいじめ問題に関しては、小山田さんに辞意を表明させていますが、小林さんの件では、解任という形で素早い対応をしました。そうでなければいけなかったのです。

佐藤:素早い対応の背景にあるのは、ホロコーストは国際法が変わるほどの類を見ない犯罪だったからです。ロヒンギャやウイグルの問題でも、ジェノサイド条約が注目を集めましたが、ジェノサイドとはホロコーストをきっかけに出てきた概念です。ニュルンベルク裁判や極東軍事裁判における人道に対する犯罪というのも、それまでの戦争犯罪にはなかった。これが新たに加わったのも、このホロコーストが原因です。ホロコーストが起きる前と後では、国際的なルールが違ってしまったわけです。

 一部の新聞が、欧米のスタンダードでは許されないみたいなことを書いていましたが、ホロコーストを揶揄してはいけないというのは欧米だけのスタンダードではないんです。現行の世界で受け入れられている国際法の基準であり、人権基準そのものです。これが今回、私が非常に肌寒く感じていることです。

池上:私は高校生や大学生に現代史などを教えていますが、中東問題、ユダヤ人の差別の歴史などをきっかけに国際社会も同情的になり、イスラエルの建国を国連が決議することになったという話をしているんです。歴史の一環として話はしていたけれど、ホロコーストがどれだけ悲惨でどれだけ許されないことなのかということは、サラッと通り過ぎていた。その結果がこんなことになっているんじゃないかなと反省しています。

■過去の問題ではない

佐藤:私も非常に反省しているのが、非歴史的な問題だということを、もっと強調して論壇できちんと発信しておけばよかったということです。非歴史的な問題にしないといけない理由は、過去の戦争中の問題ではなくて人間の本性に絡む問題として、この教訓をきちんと受け止めていないと、また繰り返すかもしれないから。だからホロコーストは歴史の問題ではない。歴史問題に留まらないと言ったほうがいいですね。歴史問題に留まらないから、ホロコーストに絡む犯罪は、ドイツでは時効がないわけです。池上さんはドイツにお詳しいのでおたずねしますが、今回のこの小林賢太郎さんの発言は、ドイツだったら刑事立件されていましたよね?

池上:そうですね。間違いなく逮捕されるような要件ですよね。

佐藤:歴史的に見たら日本は、ナチスドイツと同盟国でした。その日本のほとんどの道徳の教科書には、杉原千畝さんの「命のビザ」の話が出てきます。この話がなぜ重要なのかというと、日本はナチスドイツの同盟国ではあったけど、ユダヤ人に対しては違う態度を取っていた。少なくともそういう外交官がいて、ユダヤ人を弾圧せよとドイツから圧力がかかってきても、日本はそれをはね返したわけです。道徳が必修科目となって、多くの国民が杉原千畝を知っているのに、その根っこにあるホロコーストに対する認識がこんなに甘いのはどういうことなのかと、私は衝撃を受けました。

 国際社会からどういうふうに見られるのかということも含め、今回の解任の発表があった2021年7月22日っていうのは、日本の外交が一つの瀬戸際に立った日だったと、僕は思います。

池上:逆説的にいうと、日本ってユダヤ人差別がヨーロッパに比べて社会にはないんですよね。そもそもよくわかっていないということがある。ユダヤ人差別を実感していないがゆえに、こういう問題に、むしろ鈍感になってしまっているわけです。遠い世界の昔の話、と受け止められてしまっているところがあるんじゃないかなと思います。

佐藤:そうですね。例えば、ユダヤ人は金持ちであるというようなことを言う人がいますが、こういうのは極めて危険な反ユダヤ主義思想につながるんです。どうしてかというと、ユダヤ人にもお金持ちもいれば、そうじゃない人もいる。なのにユダヤ人は金持ちだという表象を使って、ユダヤ人が富を収奪しているという偏見を増長して攻撃していったのが、ナチスです。

池上:ホロコーストの対象はユダヤ人だけじゃないですよね。ナチスドイツの場合は、まず身体障害者を抹殺した。そして、ロマ族などの少数民族を抹殺し、そしてユダヤ人をという、そういう一連の流れがあるわけです。

佐藤:今後も、この種のことが起きる可能性はあります。オリンピックのディレクターにこういう人がいたっていうことで、日本人のホロコーストに対する認識、反ユダヤ主義に対する認識に根源的な問題があるんじゃないかという疑念が世界で出ています。そういう目で見られていますから、日本の政治家や有識者の発言で今までは問題にならなかったことでも問題になる可能性が十分にあると思います。対応次第では日本が世界での信用を失いかねないという、それぐらい大きな話です。このへんの皮膚感覚というのがなかなか共有できていないんですよね。

 こういうことが起きてしまったということに対する日本政府、それから論壇人である私たち、また国民の一人としての責任が、すごくあるんですよ。

(構成/編集部・三島恵美子)

※AERA 2021年8月16日-8月23日合併号より抜粋、佐藤氏発言を太線にした。現代にも
医師は金持ちであるというようなことを言う人がいますが、こういうのは極めて危険な反医師思想につながるんです。どうしてかというと、医師にもお金持ちもいれば、そうじゃない人もいる。テレビ・雑誌・各種媒体でも全員金持ちというイメージを印象操作している。医師は金持ちだという表象を使って、医師が富を収奪しているという偏見を増長して攻撃していったのが、ナチスです。

不適切医学記事304 現代の患者-医師関係

2021年7/29朝日新聞朝刊1面「折々のことば2099 鷲田清一」stump01-008 「ぼくを心もとないなあと思う・・・患者さんが、しっかりしてくれるんです なだいなだ」
 「欠けるところもつけ入る隙もない人の前に立つとしんどくなる(中略)。逆に、いつも間が抜けていて、なんか心細くなってしまう人とつきあっていると、この人は当てにできない、自分でなんとかしないと、と思い定めるほかなくなる(中略)。精神科医・作家の『親子って何だろう』から」 
 いつの時代の話か、なにせ 
なだいなだ の時代だ。精神科領域であるから許されるのもあるだろうが、何とも牧歌的な時代の話だ。確かにこのような「人間性の力学」はあり、このような臨床風景を懐かしむのもいいが、こと現代の患者-医師関係だと患者本人や家族からクレームが舞い込むことだろう(不適切医学記事タイプ2、3)。

不適切医学記事303 煽り記事の尻ぬぐい

週刊ポスト2021年8月13日号stump01-008「ワクチン2回目後に死亡した77人が飲んでいた薬全実名」

 
 ワクチン接種後に死亡したら、飲んでいた薬のすべてを疑ってしまう。中には死亡と関連がある薬もあるかもしれない。しかし、考えてみるとワクチン後でなければその薬を疑わないのではなかろうか。老衰で死ぬこともあるかもしれないし、全く別の病気になって死ぬかもしれない。昨日犬の糞を踏んで次の日に死んだら、犬の糞を踏んだせいで死んだと思うのだろうか
「厚労省報告書を徹底検証して判明!」と興奮しているが、何でもすべて公表してもその中身を誰がどのように評価するかは大切である。たくさんの人が飲むような薬は、それだけでこのリストの中では多くの人が服用しているかもしれない。
「降圧剤、高コレステロール薬、鎮痛剤、胃腸薬、血液サラサラ薬・・・3種類の薬を飲んでいた65歳男性は接種翌日に亡くなった」
 「血液サラサラ薬」という言い方は医学的には問題であると筆者は以前から指摘している。近頃は何でもかんでも血液サラサラ、血液ドロドロというようになっており、誤解を生みやすくなっている(不適切医学用語タイプ1)。  
 それよりも「・・・3種類の薬を飲んでいた65歳男性は接種翌日に亡くなった」はマスメディアの常套手段とはいえ、扇情的でいただけない。記事の中には有益な情報もあるかもしれないが、少なくとも典型的な不安を煽る見出しである(不適切医学記事タイプ2、3)。そして記事の中身まで子細に検討しない、検討できない読者には不安だけが残り、何となく不安で問題ないかもしれない薬剤を勝手にやめるという行動をしがちである。有益な情報を提供しているつもりかもしれないが、不安を煽って雑誌・記事を売るという動機が強い。現場の職員は、その記事で責任がない薬剤を勝手にやめた患者がいた場合、その人のマインドコントロールを解くという大変厄介な作業をしなければならなくなる。

世相を冷静に見ている人たちも340 専門家や表現者に対するルサンチマン(うらみ)

2021年7/23朝日新聞朝刊22面「国立競技場黄昏の時代の象徴 建築批評家 に聞く」(構成編集委員・大西五十嵐太郎・東北大教授若人)の2段目最後あたりと3段目最初から
 「小山田圭吾氏らによる差別が問題視されるのは当然ですが、専門家や表現者に対し、ルサンチマン(うらみ)のようなものを持つ人がいて、こういう現象が続いている。菅義偉首相の日本学術会議への対応にも通じます。ザハ(ハディド、筆者注)案は先鋭的でしたが、テレビのワイドショーで彼女をおとしめていたのは、ひどい光景でした。非白人の外国人女性だったことも理由だと思います(以下略)。」
 医師にもルサンチマンのようなものを持つ人がいる。
世の中の多くの人に対して、勤務医と開業医の区別もできず、日本の医師は能力が低い割には、どんな医師も裕福で、脱税していて、患者の治癒よりも自己の利益至上主義で、医師や病院の都合中心の傲慢で権威主義的なよからぬ医療しか提供できず、専門性が高く容易には理解できないことを隠蔽体質と決めつけられ、誠意が乏しく、欧米諸国より著しく劣った医療を日本国民は強いられているというネガティブキャンペーンを昔から営々と強固に築いてきた。
  

不適切医学記事302 見出し2題 週刊新潮と週刊女性

週刊新潮2021年7月8日号 「接種後死亡365人ワクチンの不安に答える」
 見出しで不安を煽り本文を読ませるのはテレビや雑誌の常套手段である。公器として誠実に情報提供をしようとしているのは尊いが、はたして読者に膨大な情報を取捨選択し様々な判断ができるだろうか。時には専門家によって意見は異なり、概して消化不良に陥ったり、センセーショナルな意見に振りまわされることもありがちだ。些細な言い回しの違いで完全に文面を読み間違えている例も経験する。何も読者のリテラシーが低いとは限らず読者自身が専門知識を持たないのだから責められない。だから記事が詳しければいいというものでないし、専門家意見の両面併記で済むものでない、ましてや煽り調の見出しは厳に慎みたい(不適切医学記事2、3)。いまのところ、従来のワクチン性悪説隆盛の時代と異なり、幸いにしてマスメディアのワクチンのデメリットを煽る報道は成功していないようだ。

週刊女性2021年7月27日号 「ワクチン接種後にとるべき食材」
 みのもんたの健康情報番組の隆盛以来、特定の食材ですべての病気が治る、すべての病気が予防できるという悪しき機運が高まった(不適切医学記事2、3)。この記事の動機もワクチンの効果を確かなものにするという善意のものとは思うが、普通にバランスよく食材を摂取している現代日本人ならそれほど一部の食材だけに固執することはあるまい。この手の特定食材ブームも一過性で、はやり病みたいなもので、定説も頻繁に変わる。一部の明らかに害のある食材は別にして、「たくさんの種類の食材をバランスよく摂取する」ことこそが変わらぬ真実と考えるし、もっとも効率的な医食同源であろう。

世相を冷静に見ている人たちも339 あの子はお金持ちになりたくて英国に出稼ぎに行ったわけじゃない

2021年6/6朝日新聞別刷GLOBE242号10-13面「リサーチ あるベトナム女性の夢」(ハノイ支局長宋光祐)の13面第三段の上1/3位から
 「母親のフォンが私に訴えていた言葉を思い返した。『あの子はお金持ちになりたくて英国に出稼ぎに行ったわけじゃない。そのことを、日本の人たちにわかってほしい』
 2019年、ベトナムからの出稼ぎ目的のチャー・ミーが英国ロンドン東のエセックス州グレーズでトラックの貨物コンテナからベトナム人の男女39人とともに遺体で発見された事件の詳報である。
 医師
はお金持ちになりたくて医師になったわけじゃない。大体、金持ちでない医師もいる。特に勤務医はそうである。そのことを、イメージでしか物事を判断しない人たちにわかってほしい。もちろん利益が主目的の人も中にはいる。だがそれも不正な手段を使っているのでないかぎり非難されるべきものではない。 

不適切医学用語301 盲腸という病名はない

2021年7/3朝日新聞朝刊15面「横綱空位 闘ったボロ錦 玉錦 猛稽古で昇進 優勝9回」(鈴木健輔)の4段目stump01-008 「綱を失ったのは38年。巡業先に向かう道中で盲腸をこじらせ、現役のまま、34歳で逝った(以下略、太線部筆者)。」

 北の富士のライバルだった玉の海も同じ病気で逝ったが、ここではその話はしない。またしても盲腸という正しくない病名、正しくは虫垂炎あるいは盲腸炎である(不適切医学用語タイプ1)。別に常に医学用語に準じていなければならないと主張はしない。が、盲腸は大腸の一部を表す用語で病名ではありえない。頭痛のことを「頭、頭」、胃炎のことを「胃、胃」と称するに等しい。また通常、虫垂炎で化膿するのは盲腸の一部、虫垂であって盲腸全体が化膿したら大変重篤である。最低限の医学校閲、医事監修は敷いて記事にしてほしい。

不適切医学用語300 盲腸は病名ではない 

朝日新聞折り込み定年時代2021年6月21日発行号stump01-0087面(株式会社新聞編集センター)
「6月 編集室から」(浜田)の3段落目から
 「30年以上前に盲腸の摘出手術を受けましたが、全身麻酔のため術中の記憶はありません(以下略、太字部は筆者)。」
 ここは少し微妙。虫垂炎の手術で盲腸の一部である虫垂を切除したというのが本来のところであろう。盲腸は大腸の一部でかなり大きい。よっぽど病変が進展していない限り盲腸全体を摘出するとは考えにくい。やはり虫垂炎のことを盲腸、盲腸と呼称している俗習を踏襲した記述であろう(不適切医学記事タイプ1)。盲腸は病名ではない。

不適切医学記事299 コラーゲン食べて肌ツヤツヤの誇大広告

朝日新聞折り込み定年時代2021年6月7日発行号stump01-008(株式会社新聞編集センター)5面全面広告
「高級料亭の天然コラーゲンを飲むと 九州の老舗料亭に眠る、秘境のコラーゲンとは・・・」の3段落目から
「なんと翌週にはツヤツヤ!」
「しばらくしてから嬉しい出来事が!鏡を見たら私は思わず・・・『何よー、このプルプル感!しぼんでいたのが嘘みたい!』とびっくり(以下略、創業大正9年料亭やまさ、女将山上綾子さん)。」(文責高木麻里)
 隅に小さく「個人の感想であり、使用感を保証するものではありません」と記載されていること、この手の通常のコラーゲンものとはやや異なり、「翌週にはツヤツヤ、しばらくしてから」と慎重だ。たいていは「翌朝にはツヤツヤ!」と銘打っていることが大半だ。確かに食べてからたんぱく質として吸収されていったんアミノ酸に分解され、それが肌に血液を介して運ばれ、肌でアミノ酸から高分子たんぱく質コラーゲンへと組み立てられるのは、一晩で足りるわけがないので翌週は翌朝よりはるかに正しい。美味であることは何ら否定するものではないが、コラーゲンが吸収されにくい点と、果たして
主として到着してほしい皮膚に都合よく選択的に達するのか、そして皮膚真皮で都合よくアミノ酸からコラーゲンII型に組み立てられるのかは疑わしい(不適切医学記事タイプ1、3)。

不適切医学用語298 三谷幸喜のありふれた生活から 盲腸という病名はない

2021年5/13朝日新聞夕刊4面「三谷幸喜のありふれた生活1038 僕を作った小学校の6年」の冒頭2段落目からstump01-008「自分の小学生時代を思い出してみる。盲腸の手術が失敗し、数か月入院する羽目になったのが、三年生の時だった(以下略、太線部は筆者)。」
 いつも愉快な文章で大いに楽しませてもらっているが、この箇所はいただけない。盲腸という病名はない、虫垂炎である(不適切医学記事タイプ1)。盲腸を病名として使うのは、頭痛を「頭、頭」、胃炎を「胃、胃」と呼称するのに等しい。それと虫垂炎の手術が本当に失敗したのか、筆者がそう受け取っているだけなのか、虫垂炎の手術で数か月入院するのは極めて稀なことだけに、医学的には詳細を知りたいところである。筆者が医学に知識がある人でもない限り、医学的な編集・校閲はできない。新聞・テレビ・雑誌は、少しでも医学的事項が含まれている限り、医学監修・医事監修を敷く必要がある。

不適切医学用語297 ワクチンしました は誤用法

週刊文春2021年6月3日号stump01-00850-51頁 
林真理子「夜ふけのなわとび1699 ワクチンしました(太線部筆者)」

 昔大学の英語の授業で「Can you mahjan」と冗談交じりに質問した猛者がいたが、これはもっと問題かもしれない
(不適切医学用法タイプ1)、公の週刊誌誌上。ワクチンを打つのは、医療従事者。ワクチンを受けるか、ワクチンを接種された、ワクチン接種を受けたが適切である。

不適切医学用語296 珈琲いかがでしょうの医学監修欠如

テレビ東京2021年5/24日「珈琲いかがでしょう第8話 2杯目ポップ珈琲」開始16分頃から
 「青山(中村倫也)『タコさんの骨』(手で持ち示す)
  ペイ(磯村勇斗)
げえっstump01-008  
  垣根(夏帆)
面白い形
  青山
フフッ、のど仏の骨です
  ペイ
ふ~ん(太線部は筆者、以下略)。
 のど仏は解剖学的には喉頭という。ここは骨ではなく、軟骨で構成されている(不適切医学セリフタイプ1)。また軟骨なら遺体を焼いたら焼けてしまうだろう。画面で示されていた形は、喉頭というよりは椎体(背骨)の軸椎だったが、骨に見えた。人実物の骨、軟骨を示すのはテレビでは難しいだろうが、セリフには医学監修が必要である。同様に同27分15秒頃から
 「青山
じいさんののど仏ですstump01-008  
  市毛良枝(じいさん、タコさんの元妻)布に包まれた軟骨を見て
きっとたくさんのコーヒーが彼ののどを通ったんでしょうね
  青山(微笑して頷く、以下略)。

 のど仏(喉頭)は気管へと連なる部で飲食物はここを通らない。咽頭を通る(
不適切医学セリフタイプ1)
 別に素人のセリフすべてを医学的に整える必要はない。が、今回は医学的には問題があるセリフが多く、いつものことながら最低限の医学監修もないことを示している。脚本・監督は荻上尚子さん。番組のエンドロールでも医学監修担当者の記載はなかった。

  

不適切医学ドラマ295 医療ドラマは嘘が多い。

2021年5/1朝日新聞朝刊30面「試写室 泣くな研修医 朝日夜11・00 空回りして落ち込んで」(黒田健朗)の1段目最後あたりからstump01-008 「主人公の研修医、雨野隆治(白濱亜嵐)は失敗ばかり。手術終了後に傷痕を見て気絶したり、患者の少年の父親(木村昴)を不用意な言動で不安にさせてしまったり(以下略)。」
 医療ドラマには嘘が多い。このドラマは実在の外科医原作なので、嘘は少ないはずと思うし、原作ではどのように描かれているか不明だが、少なくともこの文章の記述はやや不自然である。研修医になる前、医学部では解剖実習や臨床実習で傷痕はもとより、開創そのものも何回となく見てきたはずである。それを今になって気絶するとは。そういう実習をすべて欠席していたら卒業できないし、傷痕がだめなら外科系に進まないだろうが、内科でも医師ならいくらでも遭遇する(不適切医学ドラマタイプ1)。

世相を冷静に見ている人たちも338 かつてワクチン性悪説が日本で跋扈した

2021年4/13朝日新聞朝刊10面「経済気象台 ワクチン先進国復活を」(呉田)
  「日本はかつて世界に冠たるワクチン先進国だった(中略)。だが皮肉なことに、ワクチンが普及して人々が病気にかからなくなり、感染の恐怖を実感しなくなると、接種のありがたさや重要性の認識が薄れる。副反応を心配するようになって大きな社会問題となり、ワクチン行政は大幅な後退を余儀なくされた。
  ワクチンへの不信感は今なお国民の間に強く残り(以下略)」
  かつてワクチンのメリットに言及することなく、副反応ばかりを報道して世論を煽って、医師や行政や製薬会社を悪の根源かのようにつるし上げ(不適切医学記事タイプ2、3)、医学的にも公衆衛生学的にも必要なワクチンでさえ任意接種や中止に追いやった過去がある。東アジアで新型コロナのワクチンに日本脳炎や麻疹ワクチンほどのメリットがあるかどうかは疑問だが、全否定や全肯定は建設的ではないのは確かだ。

世相を冷静に見ている人たちも337 たまには機能する医療監修 イチケイのカラス

フジテレビ2021年4/26月曜日「イチケイのカラス~第4話 17歳の少年が5千万を強奪」開始35分(CM含む)頃
 「所在尋問(裁判所外での証人尋問)
検察官(山崎育三郎扮する井出伊織)『「吉沢未希さん」』
吉沢未希 『はい』
検察官  『調べたところあなたの左手、最先端医療で完治する可能性が高いそうですね』
未希   『はい』
stump01-006検察官  『しかし、保険外治療の手術、高額な手術費が必要、そこで望月博人はお金を盗んでつかまっても手術費を捻出する方法を考えたんです。5千万という大金をあえて盗んで手術費に必要な額だけをぬきとりお金をばら撒く前に別場所で落ち合った滝本陸さんに託す(以下略)。』」
 ドラマでは大金が必要なものとして、手術が安易に設定される例が多い。世の中のイメージとは違い、基本的な手術の大半は保険ですむ(不適切医学設定タイプ2、3)。このドラマでは手術の詳しい内容まではわからないので、ここではこれ以上問わない。それよりもわざわざ保険外治療と限定しているセリフが素晴らしい。高額療養(医療)費制度があるので、手術費用には上限があり、大金という金額を要することは実際はほとんどない。このあたりを勘案して、保険外治療というセリフにしたのだろう。ただし実際の数はそれほど多くないのでいつもいつも保険外治療が必要というのはリアリティがなくなるので注意したい。
 原作は浅見理都「イチケイのカラス」講談社モーニングKC刊、脚本は浜田秀哉、医療監修は松本尚とクレジットされているが、そのどれか、或いはそのいずれもが行き届いた仕事をしているといえる。

不適切医学用語294 血液のがんという言い方 

週刊文春2021年5月6、13日号stump01-008217-218頁
「涙なしに読めない 瀬古利彦 がんで行った34歳長男最後の言葉(太字部は筆者)」冒頭から
 「神奈川県内の病院で昴さんが亡くなったのは4月3日の午後十時三十七分。2012年にホジキンリンパ腫という血液のがんを発症して以来、闘病していた。」
 最後から2段目
「その本は自費出版として世に出ることになった。『がんマラソンのトップランナー』(文芸春秋企画出版)だ。」
 最後は最期の方が適切かもしれないが、本文中は最期になっているし、ここでは問わない。他、本文中に「がん」の記載が3か所ある(不適切医学用語用例タイプ1)。著書のタイトルは医学的に間違っていたとしても既に出版しているので、呼称としてはやむを得ない。が、ほかの4か所はやはり指摘しないわけにはいかない。リンパ腫は悪性腫瘍であってがんではない。俗に世の中では、~のがんという言い方をすることは承知している。が、病理学上、がんは上皮性の悪性腫瘍に使う医学用語である。リンパ腫は上皮性ではないので病理学上がんには含まれない。報道機関に医事監修、医学校閲は欠如している。
 

不適切医学用語(用例)293 壊死するでなく壊死に陥る

2021年4/23朝日新聞朝刊27面生活「患者を生きる4131 義足のランウェー5情報編 目・鼻・頭痛・・・症状様々」(小川裕介)stump01-008は多発性血管性肉芽腫症の記事である。これの1段目最後から2段目冒頭に
「組織や臓器の働きが悪くなり、壊死してしまうことがある(太線部は筆者)。」とあるが、壊死するは正しい用法(用例)ではない(不適切医学用語用例タイプ1)。正しくは壊死に陥る。新聞・雑誌・テレビいずれも医学監修・医学校閲が欠如している。

不適切医学記事292 月並みではない医学用語

2021年4/8朝日新聞朝刊23面教育「明日へのレッスン 探求 第1週イノベーション」「少子高齢化 様々な場から発信」元官僚・精神科医木下祥太郎さんの冒頭からstump01-008 「医者になろうと思ったのは親が医者だったのと、盲腸で入院した時の経験と・・・。月並みです(以下略)」
 医師の文章としては、月並みでない。この用語では素人同然である。そう、盲腸という病名はない(不適切医学記事タイプ1)。正しくは虫垂炎である。元官僚・精神科医だから許されるとも思わない。新聞社には医学校閲、医学監修というものはないのだろうか。

不適切医学記事291 一般読者は医療記事にすぐ不安になる、誤解するので細心の注意が必要

2021年4/3朝日新聞土曜版9面「元気にキレイに 安心して接種受けるには コロナワクチン」(小宮山亮磨)
 
またしても土曜版、元気にキレイにである。今回はワクチン接種の主な副反応がテーマで、主として長崎大教授森内浩幸への取材によると記述されている。大きくわけて3つ挙げている。すなわちアナフィラキシー、筋肉痛やだるさ、血管迷走神経反射である。ただし前二者はいいが、最後の血管迷走神経反射はワクチン固有の副反応ではない。これは点滴注射や検診の採血、極端にいえば血管に針を刺す医療行為なら何でも起こる。そのような説明、受け取れる記述が記事全体にない(不適切医学記事タイプ3)。
 3段目で「世界保健機関(WHO)は2019年、血管迷走神経反射を含む『予防接種ストレス関連反応』について、実態や対策をまとめた。」とある。この言い方だと、血管迷走神経反射は、予防接種に固有であるというニュアンスは薄まるだろう。
 かろうじて冒頭あたりに「注射時のストレスで失神してしまう『血管迷走神経反射』をあげる専門家がいる。」との記述があるが、上記のように注射以外、採血でも起きる。
読者は、ワクチン接種固有の副反応と誤解するだろう。このあたりは専門家が取材時になんと説明したかまでの経緯を知りたいところである。一般読者への説明にあたっては細心の注意が必要である。ほんの少しの不適切な記述で誤解、不信、不安のもとが始まるからである。



不適切医学記述290 國重惇史著 住友銀行秘史 盲腸という病名はない 

「講談社 住友銀行秘史 國重惇史著 2016年10月1刷」の131頁の3行目stump01-008「私は彼(同時に取締役に昇格する佐久間博)に近寄り、『どうしたの、公務員試験は』とたずねた。彼は公務員試験の当日に盲腸になって受験できなかったのだという(ゴチック部は筆者)。」
 よくある俗語のまま記述されている。そう、盲腸は病名ではない。大腸の一部でしかない。いうなれば病名として盲腸を使うことは、胃潰瘍のことを「胃!」「胃!」と連呼したり、頭痛のことを「頭!」「頭!」と連呼することに等しい。正しくは虫垂炎である。ものすごく化膿が拡大していたとしてもせいぜい盲腸炎である。何も素人の会話そのままを採録するだけなら目くじらをたてない。が、ここでは事実の説明としての病名の記載が必要である。新聞でも雑誌でもテレビでも毎度のことではあるが、出版社にも医事校閲がまったくないのはいただけない。少しでも医学的記述が含まれるのなら医学監修を通す機能を持つべきである。

 

不適切医学記事289 お粗末と片手落ちのワクチン記事 痛点というものがあることをお忘れなく

2021年3/20朝日新聞土曜版3面「サザエさんをさがして ワクチンの接種 痛くないことを切に願う」(冨田悦央)の3段落の途中からstump01-008 「(前略)1回目のコロナ接種を受けた医師は『痛みや熱はなかった』と話す(中略)。
 最近の針は細くなった。痛みの少ない接種テクニックで蚊が刺すほどの負担になればありがたい(以下略、ゴチック部は筆者)。」
 接種を受ける側の願いとはこの程度である。接種テクニックで多少痛みに差が出るとは思うが、筋肉注射も皮下注射も技術差はあまり出ない。この手の注射では皮 内 注射が痛い。皮膚には神経が密で痛みに敏感だから。
痛みに差が生じるほかの要因は次の記事のあとにも記す。
 それにしても人体実験じゃないんだから「1回目のコロナ接種」は驚愕かつお粗末の記述である(不適切医学記事タイプ1)
もちろん正しくは、1回目のコロナ(ウイルスの)ワクチン接種である。いつものことながら医学校閲、医事監修が欠如していると言わざるを得ない。
 あと痛みが少ない注射針は、コストがかかる。それが社会的にどこまで許容されるか。ワクチンをこれから大々的に実施していくにしても、実施する側には金をできるだけケチりたい勢力もある。願いは大切でもちろんばかにはできないが、記事はしっかりとしたものにしてほしい。


2021年3/20朝日新聞土曜版9面「元気にキレイに 新型コロナのワクチン接種は 筋肉注射と皮下注射」(竹野内崇宏)の最後1/3あたりstump01-008 「感じる痛みはどうか。福岡看護大の岡田医師は『筋肉注射だから痛いのではなく個人差が大きいのでは。薬液の成分によって刺激も随分違う』と話す(中略)。『痛いと感じる人が多いワクチンなのかもしれない』
 実際にコロナワクチンの接種を受けた北海道科学大の岸田医師は『筋肉注射は痛いと思われがちだが、接種時はインフルエンザの予防接種より痛くなかった。薬液の量が少ないからではないか』と話す(中略)。
 岡田医師は『痛みに対する恐怖心も、痛みの感じ方に関わってくる。』(以下略)」

 二つの記事をまとめると、予防接種の痛みの要因は、針の細さ・形、薬液の量・刺激性、痛みに対する恐怖心等である。医師の技術差も思われているほどではないが、多少は痛みに関与するだろう。ただし大事な要素が抜けている。あるいはひょっとしたら記事の内容を絞るためか、医師の差にどうしても責めを負わせたいのか。
 抜けているとは、皮膚には目に見えないが、痛点というものがあることである(不適切医学記事タイプ2)。ほかに温点や冷点もある。すなわち皮膚は、痛みや温度に一様
同程度反応するのでなく、その反応には敏感な箇所とそうでない箇所があるということである。針がその痛点にピンポイントに刺さればとても痛いし(クリーンヒット)、痛点をはずれれば痛くない(凡打?)上手な医師と神格化される。痛点は気の利いた理科の先生がいるなら中学の理科で学習する基本的な事項である。これはワクチンに限らず、針を皮膚で刺す手技なら当てはまる。採血や点滴も痛点をクリーンヒットすれば痛いのである。ただしこれらは手技上ワクチン接種より技術差が大きくはなろう。
 
結局は予防接種を受ける人が気にすることは、痛いか痛くないか。判断材料があまりない、あっても専門的になるので理解できないということであろう。予防接種の会場ではどんなワクチンでもそうだが、「今日の先生は痛かった!」とか「今日の先生は痛くない!」とか毎回盛り上がっているが、医師から見れば毎回「なんだかな~」である。感じる痛みは医師の技術差より、上記の諸要因の方が大きい。
 それと意図的かもしれないが、このような記述をせず、文中に出てくる医師もその点に言及していないのは、編集でカットしたのか、どうしても医師には能力が低い者がいるとイメージづけたいのか、朝日新聞アルアルといえるだろう(不適切医学記事タイプ3)。
 ワクチンの話をするのなら、ワクチンのメリットデメリットもするのが本筋である。今回は
ちゃんとワクチンの効用も記述してある。その点では副作用ばかりに焦点をあてていた従来の記事よりは進歩がある。コロナ報道で進歩した数少ない利点である。ただし、上記の痛みの説明が片手落ちであったのは残念であった。

不適切医学用語288 いつも俗語でないほうがいい

2021年3/9朝日新聞朝刊2面stump01-008「ひと 生理を快適にする給水ショーツで起業した 寺尾彩加さん」(文・写真 秋山訓子) 

は月経のことを単に生理と4回も記述している。特に2段目の真ん中あたり「会社名は英語で生理を表す『Period』は、俗語でなく正確に月経と記述するか、何らかの注釈が欲しい。生理はこの意味では正確な医学用語といえない(不適切医学用語、用例タイプ1)。

世相を冷静に見ている人たちも336 医療ドラマの大嘘

2021年3/6朝日新聞夕刊5面「惜別 バス歌手 岡村喬生さん」(編集委員・吉田純子)の2段目から
 「仏教と神道がごちゃまぜの歌詞、僧侶にちょんまげを結わせる演出、あり得ない着物の着せ方に所作。多くの『誤解』が今なお広がり続けていることへの危機感を訴えた(以下略)。」
2021年3/13朝日新聞朝刊23面書評欄「読書 売れてる本 盤上の向日葵 柚月裕子著 将棋で勝ち救われる者たち」(棋士先崎学)の冒頭から
 「(前略)私は滅多に将棋小説を読まない。趣味である読書に仕事を持ち込みたくないという事もあるが、どうしても現実と対比させてしまい、リアリティという名の壁にぶつかってしまうのだ。小説が虚構だという事は百も承知でもついこんなわけねえじゃんとなってしまう(以下略)。」
 これらは医学ドラマでは常時である。筆者などは、医療ドラマで5分に1回は「
こんなわけねえじゃん」という設定、場面、セリフに気づく。将棋ドラマはともかく、問題は医学ドラマでは見ているほとんどの人が、指摘されない限りあるいは指摘されたとしても、荒唐無稽な部分に気づけないことである。そして誤解は広がり続ける。時には医師に対するネガティブなイメージが拡散したり、患者ー医師の信頼関係を損なうことも生じる。場合によっては、イメージを悪くさせるために故意にそのような番組、記事を作っているとしか思えないときもある。

不適切医学用語287 生理もこの使い方では俗語(用法)

2021年3/3朝日新聞夕刊6面「私のThink Gender 女性だから期待されもやもや 徳島市長内藤佐和子さん」(聞き手・伊藤あかり)の2段落目
 「例えば、私は副市長や部長の前でも『きょうは生理でつらい』と言うようにしています(以下略)。」
 日常の話しことばや純然たる素人の場合は、俗な用法として月経のことを生理と呼称することまでめくじらは立てない。ただ正確な記載が必要な際は、正しい用語が望ましいと考える。月経を生理と称することは医学用語としてはない。別の意味になってしまう。ここでは本人の発言による直接話法なので何らかの注釈が必要であろう(不適切医学用例タイプ1)。

不適切医学用語286 複雑骨折は俗語

テレビ朝日2021年2/24「報道ステーション」22時40分頃stump01-008見出し画面右上「タイガー・ウッズ右足を複雑骨折(太線部筆者)していて選手生命の危機」
ナレーターも同様に複雑骨折と発語していた。
 これは骨が複数に破片上に骨折した状態を言いたいのだろうが、医学用語で正しくは粉砕骨折である。
 複雑骨折というと創(傷口)が開いた状態の骨折を指す(不適切医学用語用例タイプ1)。広く普及している俗語を使ってもいいが、ニュース等で正しく伝える必要がある場面では正規の用語か、注釈を追加する配慮があるべきだろう。医事監修が欠如していると言わざるを得ない。

 一方、2021年2/25朝日新聞朝刊17面
「ウッズ、運転中に事故重傷 足手術早期復帰は絶望的」(共同)
stump01-006では共同通信の配慮が行き届いているのかその5行目で
 「
タイガー・ウッズ選手(45)が粉砕骨折の重傷で(以下略)」と正しい用語を使っている。

世相を冷静に見ている人たちも335 ごく一部で全体を判断するな

2021年1/30朝日新聞夕刊7面「甘味料の説明『適切でない』共通テスト英語問題 業界団体が見解 第1日程」(小林未来)
 「問題は英語リーディングの第6問B。『低カロリー甘味料のうち、発がん性の疑いがある強力な物質を含むものもあれば、記憶力、脳の発達に影響するものもあり、それらは、特に幼児、妊婦、高齢者に危険となりうる』といった内容が書かれていた。
 この問題文について、日本食品添加物協会は21日、見解を公表。『一部にそうした主張をしている科学者がいるのは事実』としたうえで『科学全体としては認められていない、ごく一部の研究内容をもとに安全性への懸念だけをクローズアップさせることは、誤った認識および不安や混乱を与えてしまう』としている。」
 これは問題文が不適切医学文タイプ2である。全体のごく一面は真実であるが、全体としては誤った見解になってしまう。例えば一人の警官が破廉恥事件を起こしたら、警察官全体がエロとみなすようなもの。これは医学関連には極めて多い。それを利用して反医療キャンペーンが展開される例もある。大きなメリットがある予防接種であるにもかかわらず、何万分の一かで副反応が見られたら、その悲惨な事例ばかりが報道され、予防接種性悪説、医師や製薬会社、医療行政が袋叩きにされた例もかつてあった。問題は食品添加物にしろ、ワクチンにしろ、一般市民が自分でメリットデメリットを比較検討して判断選択できないこと。それだけにマスメディアにはフェアな報道姿勢が求められる。

不適切医学記事タイプ2
http://blog.livedoor.jp/tttt1967/archives/237446.html 

世相を冷静に見ている人たちも334 医学用法に見る奇跡のひとつ

フジテレビ2021年1/30「ミュージックフェア」18時24分頃stump01-002
 コメコメクラブのミナコさん「階段から転んで『なんとか粉砕骨折(だけ、筆者注)で済みました』」
 
 驚くことに本人の発言をそのまま記述した。ここは従来必ず「複雑骨折」と言いたがっていた箇所である。よくぞ正しい医学用法で発言したものである。そう、医学的には複数に砕けた骨折は粉砕骨折が正しい。複雑骨折は開放骨折とも呼称し、創が開いた状態を指す。本人が行き届いた人物なのか、かかった医師が偉いのか、まさかとは思うがフジテレビの担当者が偉いのかわからないが、稀にみる正しい医学用語を使っていた。現代の奇跡の一つといえよう。

不適切医学用例285 ~のがんという言い方 

2021年2/4朝日新聞朝刊26面社会「がんとともに 感染リスク闘病に影 症状進行検査早ければ」(黒田壮吉、編集委員辻外記子)の2段落目「恐怖こらえ通院」の冒頭からstump01-008 「血液のがん、悪性リンパ腫を患う都内に住む男性(41)は昨年3月末以降、コロナ感染の恐怖と闘いながら通院を続けている。骨髄移植をし、その影響で肺に炎症がおき、完治していない(以下略)。」
 毎度ながら、悪性リンパ腫は上皮性の悪性腫瘍ではないので正式な病理学的分類では「癌」ではない(不適切医学用例タイプ1)。俗な用例である。一般には許容されている用例かもしれないが、何らかの注釈が欲しいところである。

不適切医学用語284 月経と生理

2021年1/27朝日新聞夕刊4面
「女子組 オトナの保健室 明るくポップに性教育」
(取材 田中ゑれ奈、杢田光、尾崎希海、河合真美江)stump01-008
 性にまつわる女性の被害を主に議題とする連載である。本文では月経のことを「生理」生理と連発しているが(不適切医学記事タイプ1)、もちろん医学用語としては月経が正しい。生理は俗語、俗用法である。
 一方その欄外の「読者のモヤモヤ」のコーナーで、
62歳、無職の方は「小学stump01-002校で月経の話を聞いた時、教わったのは手当ての方法だけ。性という字は心が生きると書く。大切に生きるため正しく性に取り組む必要がある。」と用語も内容と同様正しく取り組まれておられた。

不適切医学受容感情意識283 患者の感情、口には戸を立てられない

2021年1/20朝日新聞朝刊23面「患者を生きる4087 新型コロナ読者編3」(横浜市会社員女性40代)
 「(前略9その後、何とか探し当てたのどの専門医に診察してもらうと、『悪いところは全くなし』と薬も出してもらえませんでした。この医師にはコロナにかかったと言えませんでした。事前に伝え、『うちでは診られない』と門前払いされるリスクがあると思ったからです(以下略)。」
 コロナと伝えられたら、そののどの専門医の対応も違ったことだろう。患者本人の配慮が裏目に出た例といえる。それよりここで問題にしたいのは、「薬も出してもらえませんでした」という感情。これは患者の心情としてよくあるもの。病院に行ったら薬はなんでもいいから貰いたいという患者やその家族なら思わず思ってしまう、記述してしまった感情である。医学的には問題なくても、薬よりは手術や処置のほうが有益とか、むしろ薬を出さないほうがいい場合もある精神的な要因の場合でも、気休めでもいいからとにかく薬は欲しいというのが患者心理。ただ本来は、その医師が「悪いところはなし」と判断したなら薬も処方しないほうが論理としては一貫している。悪いところがないなら、その薬は何なの?である。
 この医師はむしろ今どき珍しい気骨のあるタイプの医師かもしれない。患者心理に熟知した現代風の無難なタイプの医師なら、
医学的に必要もないのを百も承知の上で「とりあえず薬を出しておきますから、これで様子を見てください」程度でお茶を濁すだろう。それならそうで上記のような事情をすべて患者本人にわかるように説明すればいいではないかという意見もあるだろうが、医療現場ではそのような時間はまずないし、仮に説明しても「とにかく薬を貰えれば安心だ、薬も出さない医師は最低だ」としか思わないような人にはその理屈は丁寧に説明しても通じない。そこそこの事情があるし、強い調子の非難ではないが、コロナに罹ったという重大な現病歴を最初の問診で医師に伝えていないのに、その医師を「薬も出さなかった」と非難するのは見当違いであろう(不適切医学受容意識タイプ2、3)。大事な情報を伝えてくれなかったら、如何な神の手医師でもわからないことはある。それとも関連の症状で来た受診者全員に「最近コロナに罹りましたか」と聞くべきと期待するのだろうか。こういう経緯が発端で医師たたきが勃発することもまた多い。ベースに医師不信があればなおさらである。この意味でも日常から患者-医師の信頼関係を損なう風潮、イメージ醸成には害が多い。

不適切医学記事のタイプ分類
http://blog.livedoor.jp/tttt1967/archives/237446.html

世相を冷静に見ている人たちも333 一部の情報ですべてを判断することは誤謬

2020年1/11朝日新聞朝刊19面朝日教育会議2020 東海大×朝日新聞の基調講演サヘル・ローズさんの2段目最初辺りから
 「なぜ、報道されるネガティブな部分だけみて、自分も悪であると判断されなくてはならないの?と、つらい日々を過ごしました。 
 外国人、特にアジアや中東、難民として母国を追われてきた人たちへのイメージは、流れてくる一部の情報によって固定されがちです。しかし、生まれ育った環境や抱える事情は、一人ひとり異なります。」
 医師に対しては、流
されるネガティブな部分だけみて、医師=悪であると判断されることが多い。そこまで極端でなくても、日本の医師の能力は低いとか、権威主義的だとか、銭ゲバばかりとか偏ったイメージがついている。
 流される一部の情報によって固定されてきた側面も大きい。等身大の医師は語られることが少なく、当然であるが、
生まれ育った環境や抱える事情は、一人ひとり異なる。

不適切医学セリフ282 不適切医学セリフの監視

WOWOWテレビドラマ「大空港2013年」三谷幸喜作 竹内結子主演 開始25分43秒頃
香川照之扮する田野倉弁護士「半年前くらいに初めて歯医者に行って親知らず(智歯、筆者注)を抜いてもらった」
stump01-008竹内結子扮する大河内「はあ」
田野倉「その時私についてくれた歯科衛生士だ」
大河内「歯医者さん」以下略
 親知らずが俗語であるが、混同は起きないのでここでは問わない。
 病院のスタッフは、全員看護師か医師、歯科医院では歯科医てなものだろうか。いうまでもなく
実際はさまざまな職種のスタッフがいる。相手が歯科衛生士と言っているのだから、それで返せばいいものを。たいていの場合歯科医と歯科衛生士の区別くらいつくだろう。もちろん歯科医と歯科衛生士は別の職種(不適切医療用語タイプ1)。深読みすれば大河内のややとんちんかんな応答を示唆しているセリフかもしれない。

同29分05秒頃
stump01-008田野倉「この話はもうここまで」と義理の兄の腕をつかんで乱暴にふりほどく。
生瀬勝久扮する義理の兄「あ、複雑骨折して ません!」
田野倉「うるさいよ、本当にもう」以下略
前回の不適切医学セリフ281
http://blog.livedoor.jp/tttt1967/archives/9632492.html と
たまたま同じ、素人衆の間違った医学用語が人口に膾炙してしまっている悪弊といえよう。ここも粉砕骨折が医学用語としては正しい(不適切医療用語タイプ1)。この状況で創(傷口)が開く開放骨折としての複雑骨折はありえない。上記いずれも医学監修、医事監修がまったく入っていない証左であろう。

不適切医学セリフ281 俗語と医学用語 テレビ東京「孤独のグルメ大晦日SP」から

テレビ東京2020年12/31「孤独のグルメ 大晦日に生で打ち上げ花火スペシャル」22時から開始12分15秒頃stump01-008 
 松重豊扮する井之頭五郎「お世話になっております。井之頭と申します」
 大倉孝二扮する森田「あ、どーも、森田でございます。何か骨折してる、動けないみたいですね岡田さん」
 五郎「えっ、あの野郎」
 森田 「えっ、何ですか」
 五郎「そうなんですよ、かなりの複雑骨折みたいでですね」
 森田「そうなんですか」以下略、太線部筆者

 これは非常によくある医学用語と俗語との違い。おそらくここで五郎が言いたいのは、医学用語では粉砕骨折。医学用語で複雑骨折とは、開放骨折ともいい、創部が開いてしまったものをいう(不適切医学セリフタイプ1)。何もすべての医学的事象を正しい医学用語で統一してほしいと主張するものではない。が、注釈を加える等の配慮が欲しい。メディアには満足な医学編集、医事監修が機能していない所以である。

世相を冷静に見ている人たちも332 まだまだ表面的な医療への応援 

2020年12/15朝日新聞朝刊23面の東京地方「回顧2020第二回コロナ禍苦境の飲食店 赤字続き死に物狂いの日々」(増山祐史)の4段目から
 「なぜ取材に応じてくれたのか。男性店主はこう話した。『飲食(店、筆者注)が潰れるのが、当たり前のような空気を感じる。私たちは死に物狂いで生きている。その現実を知って欲しかった』」
 コロナ騒ぎで医療関係者を応援しようという気運は感じるが、まだまだ表面的なもので、本質的な議論には到底及ばない。医師は金持ちで鼻持ちならない、いけ好かない人種というのが今までの空気であった。奴隷のように働いて構わない、どうせ金持ちだから少々の経済的苦境ぐらい我慢しろというのが関の山だろう。メディアも深く報道することはほとんどない。

世相を冷静に見ている人たちも331 全国学力テストと専門知軽視

2020年11/21朝日新聞朝刊16面書評面「全国学力テストはなぜ失敗したのか 学力調査を科学する 川口俊明著」(評・本田由紀)の最後の段落から
 「もっとも深刻な問題は、文科省も、教育委員会も教員も、そして日本社会全般が、『学力』調査の実施と分析のための専門性、もしくはそれに対する敬意を欠いていることだ。膨大な費用と負担を投入して茶番が繰り返されていることに対して暗澹とした気持ちになる。」
 ここでは全国学力テストに関しては、学力調査分析の専門家を軽視したので失敗だったと論じている。
 いずれ歴史が判定するだろうが、コロナ禍では感染症の専門家たちがかなり評判を落とすことになるはずである。したがって専門家とはいえ常に信用していいとはいえず、また専門家でもいろいろな意見があるので、なかなか難しい。やはり重要な問題に関しては、個々にその専門家のご託宣を吟味する必要があるだろう。一般的には専門的な情報にアクセスできる機会が増えた現代では、専門家は軽視されているといえるだろう。さらにこと医療・医学に関しては荒唐無稽な与太話が面前の医師の意見よりも信頼されているケースも多い。問題はどうやって信頼関係を醸成するかどうかだが、それ以前にマスコミ報道で概して日本の医師は信用できないという風潮が醸成されてきたことにも一因があるだろう。

不適切医学記事280 当時の医学的発言でも注釈を

2020年12/9朝日新聞朝刊15面「多事奏論 100年前の災厄 世界史すら変えたパンデミック」の2段目前1/5あたりからstump01-008 「当時の(筆者注、1919年3月第一次世界大戦後の講和条約を話し合う)パリはインフルエンザが流行し、『まるで我々の周りには何百万もののどに悪さするばい菌がうようよしている』と米国代表団のの一員が書き残すほどだった(太線部は筆者)。」(編集委員駒野剛)
 当時はまだウイルスが発見されておらず、細菌感染で発症するものすらすべてが解明されているわけではなかった。この発言には疫病に対する得体のしれない嫌悪感がよく表されている。が、ばい菌と呼称する発言は今となっては間違いである。ただし今の科学的水準で断罪するのは行き過ぎである。望むらくは「ばい菌(当時)」等の注釈が欲しい(不適切医学記事タイプ1)。リテラシーが低い人によってはインフルエンザ感染症は、ばい菌で発症すると誤解するかもしれない。また現在ばい菌は幼児語であって、ウイルスなのか細菌なのかそのほかの病原体なのか明記するべきなのは言うまでもない。

不適切医学タイトル279 煽るタイトル週刊女性

2020年12/1朝日新聞朝刊25面下段の雑誌広告
stump01-008「週刊女性(大きな活字で)コロナ感染大爆発迫る5つの生活危難 見捨てられる高齢者 今すぐ備えを!」

 
 これは典型的な不安を煽る見出しである(不適切医学タイトルタイプ2、3)。感染者、重傷者増加と大爆発は違う。
見捨てられる高齢者というのも扇動的である。今年の春以来「怖がらせた方が読んでもらえる、視てもらえる」という意識が浸透しきったのだろう。冷静に怖れる気持ちを徹底したい。


不適切医学記事タイプ分類
こちら医師(医者)叩き110番-医師不信の深層- : 14. 第4章 不適切医療報道 タイプ分類 (livedoor.jp)

世相を冷静に見ている人たちも330 NHK連続テレビ小説エールにおける図式化の罪

2020年11/22朝日新聞朝刊23面文化・文芸「戦時の音楽家 非常時の決断 『軍に加担』朝ドラ(NHK連続テレビ小説『エール』の山田耕筰像に思う」(編集委員吉田純子)の2段目から
 「だからこそ、戦時中の描写において、実在の音楽家を『軍部に加担=悪』という安易な構図に押し込めていたことが残念でならない。フィクションによる演出が、史実をより強いインパクトをもって伝える装置となることは理解できる。山田耕筰をモデルとする小山田耕三を、主人公の才能に嫉妬するヒールとして描いたのには、そうした意図もあったのだろう。しかし、故志村けんさんの熱演もあり、山田が権威主義的な悪代官として印象づけられてしまったのならば、あまりにも罪深い。
 Dr. コトーなどの医療ドラマや医学バラエティの描く医師は、スーパーマンか聖人、あるいは悪の権化かの両極端である。メディアの描く医師像は、権威主義や利益至上主義に
加担=悪』という安易な構図に押し込めていることが極めて多く、残念でならない。フィクションによる演出、すなわち医師=悪、医師=無能、日本の医療は医師のせいで問題だらけと描いたほうが、読者や視聴者に受けるのは理解できる。また医療や医師に対する問題提起の意図もあるだろう。しかし、そういった意図が成功しすぎて、医師が権威主義的な悪代官として印象づけられてしまうのは、あまりにも罪深く、現在の医師不信、医療不信の片棒を担ぐことになる。

不適切医学用例278 腕神経叢の説明 

2020年10/21朝日新聞朝刊22面医療
stump01-008「どうしました 胸郭出口症候群 治すには 答える人 岩本卓士さん 慶応義塾大学整形外科専任講師」の冒頭から

「Q 胸郭出口症候群とは。
 A 上肢(腕や手)の神経は脊髄から枝分かれして首の部分で鎖骨下動脈、鎖骨下静脈と合流し、鎖骨と第一肋骨の間を通過します(以下略)。」
 ここでは疾患の説明に入る前に、上肢を支配する神経群である「腕神経叢」の解剖の記述をしている。神経が血管である動脈や静脈と合流はしない(不適切医学用例タイプ1)。
(非常に誤解を与えやすい記述である。当たり前のことではあるが、神経は下流で動脈や静脈に突然なりはしない。正しくは「ピッタリと伴走」しとか「ピッタリと並走」というべきであろう。わかりやすく表現しようとしているのはわかるが、用語や医学的事実には細心の注意が必要である。

不適切医学用例277 煽る医学タイトル

週刊文春2020年11月12日号22頁からstump01-008
「コロナ危機再び 冬コロナはこんなに怖い」
週刊ポスト2020
年11月20日号46頁から「インフル(エンザ、筆者注)死のリスクの真実」
 
 大仰なタイトルで煽るのはマスメディアの常套手段で、商業的には正解かもしれないとはいえ、正確で冷静な情報提供をすべき公器としては不適切だろう(不適切医学記事タイプ2、3)。


不適切医学記事タイプ分類
http://blog.livedoor.jp/tttt1967/archives/237446.html

世相を冷静に見ている人たちも329 夜の街ラベリング差別と医師

2020年10/13朝日新聞朝刊4面「コロナ禍の日本と政治『ラベリング』差別を引き起こさないか 単純化あらがう社会を」早稲田大学大学院准教授田中幹人さんの冒頭から
 「『夜の街』というのは、政府や専門家、マスメディア、市民が協業してつくり出してしまった(烙印)と捉えています。」
 ラベリングは人のもつ脳の効率化の営みでもあろうが、時にマイナスの作用もある。医師に関しては、全員金持ちとか、朝日新聞などは医師=権威主義とか、患者=弱者で医師=強者を前提にした論調も多い。その方が図式的で分かり易い、その方が読者・視聴者に受けがいいという面もあろう。当たり前のことだが、医師にもいろんな医師がいる。

世相を冷静に見ている人たちも328 デマ醸成と医師不信

2020年10/24朝日新聞夕刊2面「ネット方面 藤田直哉の見聞録 デマ入り乱れる学術会議批判」(文芸評論家)の2段目から
 「デマを広めるのはたやすく、訂正は広まらない。一度印象が形成されれば、覆すことが難しく、言ったもの勝ちになりがちだ。だから、デマが世論誘導には有効になる。ネット上では元々、知識人や学者に対する憎悪が存在していた。SNS上で発言を注意したり、説教したりしてくるので、不満が鬱積したことも原因の一つだろうし、生活が楽で優雅に見えるからでもあろう。このような、デマを用いて情動を操作するポピュリズムのテクニックが、国内外での現実の政治に大きな影響を与えている。」
 これのいい例が医師に対する世相、イメージであろう。日本の医師は能力が低く、怠惰で権威主義的で常に金持ちで鼻持ちならないというイメージは広く流布されて、現在も拡散を続けている。インターネット上だけでなく、こと医師に対しては雑誌、テレビ、時には新聞においても例外ではない。その結果患者ー医師関係には悪影響を及ぼしており、医療現場に影を落としている。はたまたどんなに勤務が過酷で時に理不尽な待遇を受けても医師は常に金持ちでいい仕事だから悪い待遇のままでも差し支えないといったような結果を導く。

不適切医学用例276 壊死に陥るが正しい

2020年10/17朝日新聞朝刊土曜版be1面フロントランナー「患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋理事長豊田郁子さん52歳、医療事故で逝った息子に導かれ」(文・大久保真紀)の本文から
 3段目最初辺りからstump01-008 「解剖すると死因は、『絞扼性イレウス』。腸が2か所ねじれて壊死し、緊急手術が必要だった。対応の遅れを問うたが、『医師は最善を尽くした』と言っていると繰り返した(太線部は筆者、以下略)。」
 文章全体は、病院で医療事故に遭った母親が裁判を起こし、病院側と和解し、医療対話推進者となり、関連NPOも設立した感動的な話である。ただし、ここの壊死するは、よくある間違いだが、「壊死に陥る」が病理学上は正しい(不適切医学用例タイプ1)。新聞・雑誌・テレビの医学用語・用例の校閲・チェック体制は杜撰である。 
 

世相を冷静に見ている人たちも327 フジテレビ平井文夫の誤情報と医学記事ファクトチェック

2020年10/10朝日新聞朝刊35面「Media Times学術会議の誤情報ネット拡散 学士院行き年金250万円 フジ番組」(大野択生、宮田裕介)の5段目から
 「(学術会議の議員は優遇されすぎているという誤情報)を流したことに対して同局(フジテレビ)幹部は放送で補足と訂正はした。それ以上はできない。(平井氏の発言の誤りは)『社として重く受け止めたということ』と説明。同局企業広報室は取材に対し『今後、チェック体制を強化し再発防止に努めてまいります』としている。 
 NPO法人『ファクトチェック・イニシアティブ理事長』の瀬川至朗早稲田大教授は、誤った情報の流布は『人々の学術会議についての認識を惑わせ、この問題に対する適切な判断ができなくなってしまう』と懸念。フジテレビは誤情報が拡散したネット上にも訂正が伝わるよう、SNSやホームページなどに投稿する必要があると指摘する。『SNSで情報の真偽を問わず拡散される時代だ。メディアがチェック機能を発揮しなければならない』」
 誤情報を訂正してもらえるだけよいといえる。平井氏は自分の主張を優先するために事実を捻じ曲げたのであろう。朝日新聞でいえば従軍慰安婦の誤情報がこれに該当する。
 医学的な間違いは、テレビ番組、新聞、雑誌にあふれているが、まともに訂正されることは少ない。番組、記事を見ても専門知識を持たない多くの人は間違いとはまったく気づかない。「
今後、チェック体制を強化し再発防止に努めてまいります」や「誤情報が拡散したネット上にも訂正が伝わるよう、SNSやホームページなどに投稿する必要がある」や「メディアがチェック機能を発揮しなければならない」はその通りだが、こと医学情報に関しては一向に努めたり、発揮された形跡はない。筆者が以前から提案しているのは、コストがかかることとはいえ、医学校閲、医学監修を常駐させ、記事や番組にわずかでも医学的内容が含まれていれば、すべて目を通す体制を敷くことである。

不適切医学用語(用法)275 ~のがんという用法(言い方)

2020年10/3朝日新聞朝刊テレビ欄のNHKEテレ午後8時は誤解を与える。stump01-008「チョイスまとめて解説 血液のがん急性骨髄性白血病・多発性骨髄腫治療のチョイス」は不適切医学用語タイプ1に属する。
 

 スペースの都合や一般にわかりやすい用語をという制約はあろうが、急性骨髄性白血病・多発性骨髄腫は上皮性の腫瘍ではないので、病理学上は悪性腫瘍ではあるが「癌」ではない。注釈等の工夫を求めたい。

世相を冷静に見ている人たちも326 地銀への印象論と医師への印象論

2020年9/26朝日新聞朝刊7面「菅印の行方5 地銀多すぎる発言に動揺 地域経済逆に疲弊慎重論も」(柴田秀並)の後半から
 「地銀からは反発の声も出ている。大垣共立銀行(岐阜県)の土屋嶢会長は7日、報道陣に『もうちょっと地銀の中身をみて発言してほしかった。地銀は努力をしており、地域ごとに規模やサービスにも種類がある。十把一絡げにせず、精査したうえで考えていくべきだ』と不満をあらわにした(以下略)。」
 これは病院・医師へのイメージでは従来からみられる。「医師や病院は金持ちだから」というような印象論だけで語られてきた。それに医学会が、この会長のように毅然と反論・主張してこなかった悪弊にも世相が放置されてきた要因のひとつがある。

世相を冷静に見ている人たちも325 大坂なおみと折々のことば

2020年9/24朝日新聞朝刊1面「折々のことば鷲田清一1944」
大坂なおみ選手の言葉を紹介している(冒頭は英文)。「一部の人の無知によってみんなの前進が阻まれてはなりません」とその解説文から
 「事態をよく見据えないまま罵声を浴びせてはならない」
 これは特に医療や医師に対する報道でも心したい。何か医療分野で悪いことがあると、背景の説明や制度上の問題に言及することなく、単に医師や医療を糾弾する報道がきわめて多い。専門性が高い場合も多いので報道機関が事情を斟酌できない場合もあろうが、中には意図的に医師を悪者にしているとしか思えない報道も散見される(不適切医学記事タイプ3)。
  

世相を冷静に見ている人たちも324 加藤登紀子のひらり一言と8割おじさん

2020年9/13朝日新聞朝刊29面「Reライフ人生充実 加藤登紀子のひらり一言」から
 「世界は結果で埋め尽くされている。洋服の形も、社会のシステムも、学校の決まりも、専門家の答えも・・・。」その解説「それは他の答えもあり得る中でのひとつの結果でしかないのよ。ばかに立派に見えても、絶対じゃない!」
 朝日新聞紙上のひとことなら一面の「折々のことば」とかぶっている。こちらは日曜だけで朝日新聞が好きそうな加藤登紀子を前面に出し、気の利いたと思わせるひとことを俎上に載せる。ご時世でいうと、8割おじさんのご託宣なんかも立派に見えても絶対じゃない。はずれたことで専門家不信という余計な副産物を加速させてしまった。本人も外れたら外したで、訂正する勇気が必要である。過ちを改めるに憚ることなかれである。

不適切医学記事274 典型的な煽る見出し「家庭内感染死が激増」

2020年9/8朝日新聞朝刊22面下段雑誌広告
stump01-008女性自身9/22号 光文社

「新型コロナ入院は重症者だけ政策で家庭内感染死が激増」
 もうどうしようもない煽り系のタイトルである。マスメディアの宿痾とはいえ、ここまでレベルの低いものは珍しい。半年前ならともかく、今では東アジアにおけるコロナ感染症の重症度は周知になっている。高齢者や合併症を抱えている人には感染死があるだろうが、激増はない(不適切医学記事タイプ2と3)。無責任この上ない。情報弱者は不安に慄くだろう。今となってはさすがにこの手の記事は少なくなったが、半年前は隆盛を極めていた。

不適切医学記事273 偏頭痛、偏頭痛と簡単に言うが

日本テレビ2020年9/4金曜日「アナザースカイII 武田真治が20年振りに鹿児島へ!恩人忌野清志郎との想い出の地」開始6分51秒頃
stump01-008武田真治「燃え尽き症候群というかもう本当に身体が悲鳴上げてしまって」
今田耕司「はあ~、でも真っただ中にそうなってもうたんや」
武田「はい、でなんか、顎関節症、なんかもう顎あかなくなっちゃったんですね。食いしばり過ぎちゃって軟骨がすり減って骨と骨が当たりだして」
今田「で痛くて」
武田「偏頭痛もしちゃって」
今田「うわ~(以下略)」

 二度目のブレーク中の武田真治は個人的には好感の持てる俳優であるが、この発言は厳密には医学的な間違いがある(不適切医学発言タイプ1)。それは偏頭痛。巷間、簡単に偏頭痛、偏頭痛という傾向が目に余る。頭痛の分類では偏頭痛は原発性のもの(ほかの疾患が原因で二次的に起こされるものではないもの)である。ここでは武田の頭痛は顎関節症が原因の二次性のものである。顎関節症が周囲筋肉の過緊張を引き起こして起こる(肩こりや首のこりが原因の頭痛と同様)いわば筋緊張型頭痛が正確な表現であろう。ここではテロップで「医学的に正確な発言ではありません」等の注釈が必要である。テレビ番組・雑誌・新聞等の内容には医学監修、医事校閲が決定的に欠如している。

不適切医学記事タイプ分類
http://blog.livedoor.jp/tttt1967/archives/237446.html