2004年07月09日

トロントで見た snowball effect

井橋@TUGです。

今回は、トロントでの移民者達の勢いについて考えてみたいと思います。私
は、現在秋からの交換留学に備えてトロントのヨーク大学のサマーセッショ
ンに参加しています。

このプログラムに参加して驚いたのが、アジア系の学生が非常に多いことで
す。私は海外経験が少ないためカナダ東部はヨーロッパ色が強い印象があっ
たのですが、現在のトロントではこれは全くの間違いでした。サマーセッシ
ョンに限らず、トロントという町においてアジア系移民の存在は非常に大き
いのです。

20世紀の最初の60年間は、カナダへの移住者は、ヨーロッパ諸国と米国から
が圧倒的に多かったのですが、1990年代はアジア(中東を含む)系が58%に
達して、ヨーロッパ系は20%に減っています。1991〜2001年にカナダに移住
した人々の出身国トップ5は、1位中国(約20万人)、2位インド(約16万人
)、3位フィリピン(約12万人)、4位香港(約12万人)、5位旧ユーゴスラ
ビア(約7万人)となっています。またカナダに移住した後の居住先は、ト
ロントが43%、バンクーバーが18%、モントリオールが12%となっています


こうした過去の様々な移民の受け入れもあって、町には多くのcultural
district(Little Italy、Portuguese Village、Chinatown、Korea
Townなど)が形成されています。先日のサッカーのユーロ2004決勝戦後に
は、ギリシャサポーターが町にあふれ出て、"Big fat street party"
(映画「My Big Fat Wedding」をもじったのだと思います)なんていう新
聞見出しが大きく出ていました。また香港返還の前後には、多くの人々が香
港から移民してきたとそうです。

サマーセッションに参加する学生達の中にも、今後カナダでの就職・就学や
移民を希望している生徒も少なくありません。特に、中国本土、香港、台湾
、韓国からの学生は、同郷の人々が多く、そして平和に暮らしているという
安心感からカナダを選ぶ傾向が見られて、既にcultural districtに住ん
でいる人もいます。海外留学先を選ぶ基準に、留学先の学校の評価だけでな
く、居住先のコミュニティーも重要な要素として入っているのです。これは
日本人が考えている以上に強い傾向だと思います。

話は大きく変わりますが、企業間の関係性を競争優位の重要な要素として評
価したDyer & Singhは、関係性が持続的な競争優位になる理由の一つとし
て、cumulative (snowball) effectを挙げました。最初の特殊関係資産へ
の投資が、次の投資を促して、よりその優位性を高めていくという効果です
。この背景には信頼関係の醸成、準レントの増加などがあります。

トロントでのアジア系移民の急激な増加の背景には、政府の積極的な対応も
挙げられますが、上述のような「snowball effect」大きく作用していると
、私は考えました。最初の移民達が強固な関係性を構築すると、この中の社
会的関係やこれが生み出す情報の効率性・信頼性の向上が人をさらに呼び込
み、より大きくより強いコミュニテイーを作っていったのだと考えます。

一方の日本では外国人の積極活用が検討されています。構造改革特区では、
病院や介護施設などが、外国人の看護士や介護士の受け入れを認めるように
求めています。今後の日本の人口構成の変化を考慮すれば当然の動きですが
、こうした外国人の社会的な受け入れ姿勢が今の日本に問われていると思い
ます。

トロントにおいて移民の問題が全く無いわけではありません。しかし移民達
の積極的な融合によって、町が多様性のある豊かな生活の場になっているこ
とは間違いないと思います。日本の社会が、今後大きくなる「snowball
effect」を脅威と捕らえて、一部の地域でみられるように、アングラ的存
在に押さえ込むのか、それとも積極的に融合を図ってそれを活用していくの
か。ここトロントの活気を見て、私は後者への希望が大きくなりました。

井橋 英蔵(いはし えいぞう)
TUG - -Passion for the Next
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