選挙よりマスコミ対策を優先すべきだが逆に

これまでは政治家の逮捕は、世間がまだかまだかと待ち望み、検察庁の看板にペンキがぶちまけれられるような騒ぎになって、やっと重い腰を上げていたものなのに、今回はやけに検察の動きが素早いのはどういうわけだ?

小沢一郎・民主党幹事長の元秘書で衆院議員の石川知裕容疑者(36)ら3人が政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で東京地検特捜部に逮捕されたが、これは民主に厳しく自民に甘いとみるのは間違いだろうか。

政治家の逮捕となれば、多くの場合国民の喝采が湧くものだが、今回の場合それはない。よろこんでいるのは、もともと民主党に批判的なひとたちが多い。
誰がよろこんでいるかをみればこの逮捕の意味はわかる。

問題になっているのは小沢氏の資金管理団体「陸山会」が2004年に取得した土地の購入原資4億円が政治資金収支報告書に記載されていないことだが、これは単なる記載ミスでもある。マスコミが連日、さも大犯罪のように騒ぐものだから世論はすっかり大悪事のように思わされている。
4億円は大金には違いないが、東京のさして広くもない土地の購入資金としてけた外れとはいえない。しかもそれは小沢氏の自宅から近い秘書寮用地だというではないか。そんな隠しようもないものの購入資金に後ろ暗い金を使うだろうか?

それに、これは小沢氏が野党時代のことで職務権限はない。したがって汚職ということにはならない。ただ怪しいと検察とマスコミが騒いでいるだけなのだ。

この程度のことは他の政治家でも探せばいくらでも出てくる。金の問題を厳しく追及されて一点の曇りもない政治家はいないだろう。なぜに6年も昔の小沢関係のものだけが今になってヤリ玉に挙げられるのか作為的というほかはない。
小沢氏に降りかかっている問題は、人を殺したというような誰がみても悪とわかる絶対悪ではなく、見方によっては悪になる解釈悪とでもいうようなものだ。ようするに見方なのだ。民主党に対する批判はこれが多い。

検察が必ず正しいかというとそうでもない。元検事2人の内部告発のような問題があるのだが、これはあまりマスコミ報道されていないので多くの国民は知らない。この2例をみるだけでも検察腐敗の根深さを知ることができる。
三井環
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E4%BA%95%E7%92%B0
田中森一
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E6%A3%AE%E4%B8%80

こういった検察の恥部を報じているのはごく一部のマスコミで、しかも小さな扱いでしかない。なぜマスコミが大きく報じないかといえば、検察に都合が悪いことを報じると、いろんな事件の情報をもっている検察から次から情報をもらえなくなるからだ。
ここにはマスコミと検察の間で貸し借り関係ができている。本来緊張関係になければならない両者が結託しては世間は闇だ。


▼マスコミのトラの尾踏んだ原口総務相

「クロスオーナーシップ」という聞きなれない言葉をぜひ検索してもらいたい。これは何かというと、新聞とテレビの一体化を禁止するものだ。現在日本では新聞社のテレビ局への資本参加があたりまえのように行われている。
日本テレビは読売新聞、TBSは毎日新聞、フジテレビは産経新聞、テレビ朝日は朝日新聞、テレビ東京は日経新聞という具合にだ。だが、アメリカなどでは、こんなことは情報の多様性が阻害されるので禁止されている。

原口一博総務相は14日の外国特派員協会の講演の中で、これを正すため新聞社のテレビ局への出資を禁止する法案を国会に提出する意思を表明している。

それはそれでいいのだが、これはマスコミにとって存続にかかわる大問題だ。なのでというべきか、なのにというべきか、マスコミでは現時点でニュースになっていないのだ。これは検索すれば一目瞭然。ここはインターネット、読者自身が取材者となって検索してみればわかる。出てくるのはインターネットメディア系の記事でしかない。

自らに都合が悪いニュースを流さないのは問題だ。
「クロスオーナーシップ」はマスコミにとって影響が大きいことではあるが、だからといってニュースにしないのはマスコミの使命を放擲したようなものだ。影響が大きければこそ広く世間に知らしめ、議論を喚起すべきだ。だが、議論など起こっては困るのでマスコミは書かないでいるのだ。
総務相が新聞社の放送局への出資禁止を明言
http://tzatk.tk

もうひとつ原口総務相は5日の閣議後の会見で、マスコミに関して重大なことを言っている。これは以下の言葉で検索してもらいたい。
「出資規制緩和 放送」
これはマスコミにとって助け舟だ。だからニュースにもなっているし検索にも沢山ひっかかる。地方局は不景気と地上デジタル化移行への巨額出費で経営が苦しい。それを実質的親会社の東京キー局や新聞社がお金を出して助けていいですよ─というものだ。これまでは放送の一極集中になるとして制限があったが、それを緩めようというのだ。こうでもしないとつぶれてしまうテレビ局があるというのだ。

このふたつは矛盾するもので、いわば「飴と鞭」のようにもみえる。原口総務相がどうしてこのようなちぐはぐなことを言っているのかわからない。マスコミに不利なことをやるので、その前に飴をしゃぶらせておこうとでも思ったのだろうか?やるなら根本からなおさなければ却って問題は悪化するのだが─。

原口総務相は、そうとは知らずにマスコミのトラの尾を踏み、その口が小沢を噛んでいるのではないだろうか。

私はこのふたつの大臣発言について総務省に取材をしてみたが、いくつもの部署をあたってみても「知らない、分からない」という答えが返ってくる。大臣が公言していることを役所が知らないことは普通はありえない。

だが、似たようなことがあった。このような現象は私が長らく取材している長野県の田中県政下でもあった。トップが先に口走ったことに手足がついていかないのだ。それと同じようなことが総務省の中にも起こっているのだ。

▼自民党政治家が牛耳る地方民放局
ここで、マスコミではけして触れることがない、さらに重大なことを指摘したい。
テレビ放送は総務省から、テレビ局が電波を出す放送免許を受けてやっている事業だ。電波は皆が勝手に出すと混信などの問題が起こるので、国民の共有財産ということになっている。
地方民放局は自民党政権時代にこの免許を受けて放送局を開設している。この免許の許可は利権が大きく絡む。この利権にいち早く目をつけたのがあの田中角栄だ。田中角栄は1957年、39歳で旧郵政省の大臣になったとたんに43のテレビ局に免許を出している。だれに免許を出すかは郵政大臣の腹ひとつだ。政治力も当然働くし、噂も様々あった。それを証明するのは困難ではあるが、実態をみればそれは証明されているようなものだ。

実態的に地方民放局の経営には自民党の政治家が深くかかわっているケースが多い。テレビ局は昔は儲かったし、世論づくりにも力を発揮する。政治家にとって2つの面で大きな魅力をもっている。

たとえば長野県では自民党の小坂憲次前衆議院議員一族が信濃毎日新聞とその関連会社の信越放送(SBC)のオーナーになっている。信越放送は中波ラジオ局も持っている。新聞と放送を支配下に置いた政治家は有利だ。だが、小坂議員は先の総選挙で落選している。このままでは何代も続いた小坂家の政治生命は途切れてしまう。これは長野県のケースだが全国各地で同様のことがあるのだ。

新聞と放送の癒着の上に自民党政権は成り立っていた。この構図にくさびを打ち込まれると自民党はカネと情報の両面から大打撃を受ける。それで、民主党政権はなんとしても倒したいのだ。

新聞やテレビは中立や不偏不党を謳ってはいるが、その実態はズッポリ自民党なのだ。

小沢氏は議席を獲得することで政権交代を行おうとしているが、その前に新聞とテレビの自民党の癒着関係をぶち壊さなければ真の政権交代を起こすのは難しい。いくらいいことをやろうとしても、それを伝えるマスコミが悪いように伝えれば真実は伝わらない。解釈悪をマスコミが報じれば世論はそれに影響される。
小沢氏は選挙戦略は得意だが作戦実行の順番を間違えているようだ。人は自分の得意の分野に力を入れるが、そうでないものの優先順位は下がりがちになる。

▼マスコミは手負いのケダモノ
民主党は政権交代前に、会見を記者クラブの独占状態から解放するとほぼ公約に近いかたちで約束していたのだが、それが現在中途半端な形になっている。
小沢代表から記者クラブ開放の言質をとった記者会見での質問
http://diamond.jp/series/uesugi/10071/

インターネットの普及によりマスコミは軒並み収益が悪化している。その存在自体にも大きな影響がでている。そのマスコミのインターネットに対する優位性は役所の一次情報へのアクセス権だ。これを独占している限りマスコミのインターネットへの優位性はかろうじて残る。これがなくなってしまうとマスコミはさらにつらい立場になる。なので、これを守るのに必死なのだ。

ところが、開放を約束したもののマスコミの抵抗にあい、首相会見は記者クラブの仕切り状態が続き、外務省や総務省など一部の役所で記者クラブの了解があればという条件付で記者クラブ所属以外のものの参加が許されている状況だ。

マスコミとしてはここが踏ん張りどころで、以下のような産経新聞の本音がインターネット上に出てくるのだ。
「民主党さんの思うとおりにはさせないぜ」
産経新聞、Twitter上での「軽率な発言」を謝罪
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/31/news122.html

民主党はさっさと会見を開放してしまえばマスコミの無駄な抵抗もなくなるのだが、そこがわかってない。役所の会見は本来役所が行うもので、私企業の集まりである記者クラブが独占するのは間違いなのだ。
マスコミが権力監視の名の元に会見を独占していたのは権力が市民と相反する存在だったときの名残で、民主党政権は多くの国民の支持の元に誕生したのだからマスコミがいつまでも既得権を楯に会見の主催権を主張すべきでない。

▼役所より閉鎖的なマスコミ
私は民主党はじめ各省に会見開放についていろんな働きかけをしている。それは会見開放の先駆けとなった長野県政を長年取材しているものとして、やっておかなければならないことだとおもうからだ。

その体験からいえば、中央での開放度は役所の方が上で、マスコミのほうがかたくなだ。先日も総務省の広報に電話したのだが、マスコミの幹事社に電話してくれというのでしたのだが、その対応はひどいものだった。

この件の担当者の朝日新聞の日浦(推定年齢36)という記者は私の話をろくに聞きもしないで2〜3分で切ってしまったのだ。あまりにひどいので翌日、朝日新聞本社と総務省広報に抗議し、謝罪と改善を要請した。総務省は私の抗議を受け、記者クラブに改善を申し入れると回答したが、朝日新聞は聞きっぱなしで窓口の男性社員は名前を尋ねても「言わないことになっています」と繰り返すのみだ。どう対処するかについてもひと言の説明もない。役所より硬直化しているではないか。

この対応はどうだろう。普段は他人様に嫌がることを質問しているくせに、自らが質問される立場になるとこの態度だ。現在は役所よりマスコミのほうが社会に対して閉鎖的になっている。こんなことで庶民の立場になった記事が書けるのだろうか。

マスコミは政権交代にともなって大きく変わらなければいけないのだが、自己改革能力がないのでそれができずに、苦しまぎれに検察とタッグを組む形で民主党政権つぶしに走っているのだ。


#これまでで最高の拍手と簡単コメントをいただきましたので、紹介させていただきます。随時追加します。下が新しいものです。
●凡人▼既得権益にしがみつくマスコミこそが抵抗勢力だ!
●名無しさん▼ありがとう!どんどん発信お願いね
●名無しさん▼議員の進退は市民の選挙投票で決めるべきであり、マスコミの怪しい電話調査で決めるべきではないと思います。
●あんど▼ツイッターからきました。恥ずかしながら初めて拝見しました。今後とも応援させていただきます。
●名無しさん▼見てます!やっぱTVニュース、報道おかしいもん。バランスをとるためにもネットでちゃんと調べてどういうことなのかは把握しておきたい。その気持ちに応えてくれるサイトだと思う。
●sky▼秀逸な記事です。今後もご活躍大いに期待しています。
●T・T▼私は、世間しらずだったなあと思います。いい年なんですけど。佐藤優氏の本を読んで、検察に疑問を持ったところ、この事件なので、大手メディアの報道には、疑いを持っています。特に「関係者によれば」という言葉を使って報道する番組には、地味ですが、抗議メ−ルをしています。応援しています。
●名無しさん▼小沢さん、日本改革の為に踏ん張れ!
●@yu***_ak***▼非常に分かり易い内容で、勉強になりました。頑張って下さい。
●名無しさん▼good job
●新聞は日刊現代▼以外は30年前から呼んでいませんし、最近はテレビも地上波はニュースも見ません。日本の民主主義と独立を守る為、悪のトライアングル(自民党・官僚・マスコミ)と戦いましょう。
●名無しさん▼全く同感です。不買運動が一番効くと思うのですが・・・。
名無しさん▼どんどん真実を語って下さい
hogaraka3▼素晴らしくわかりやすかったです。ありがとうございます。
●hakoiwa▼今はまだ人事だけど、仮に我が身が検察に狙われたらと考えたら非常に怖いwww
●斜視▼特に視聴料を取っていて国民に必要な情報を伝えないNHKは問題。小生は視聴料を払っていないしし、払わない運動を進めたい良い眼帯。
●名無しの隊員▼マスコミもひどいですね。産業界の閉鎖性もひどいですが。
●名無しさん▼「民主党はさっさと会見を開放してしまえばマスコミの無駄な抵抗もなくなる」というご意見に激しく賛成です。
●名無しさん▼マスメディアについての、冷静で重要なご指摘です。
●名無しさん▼各社差のない報道内容に辟易しています。原口大臣にエールを送りたいです。
●名無しさん▼私は、新聞からTVへ出資してるのが良くない云々を、民主党が言ったから攻撃を受けてるのだと思っています。個人的にも、報道の自由から言っても、新聞はTVに出資しちゃダメだと思います。
●名無しさん▼自民党は;昔からすかん
●名無しさん▼頑張ってください。
●名無しさん▼マスコミの階層構造は東京一極集中化への元凶です。
●名無しさん▼最近ニュースがあってもこれホントかな?って疑い深くなりました。いいことでもあるのだけど、残念でもある
●名無しさん▼国会麻痺・・・時間の無駄。検察の大罪を許すな

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