「うわぁーーー」

つくしは、目を輝かせ、天井を見上げた。

「お前、こう言うの好きだろ?」

「はい!」

司がつくしを連れてきたのは、屋敷とは別棟の建物。

二階に相当する高さがあり、上は、ドーム型になっている。

そこに描かれているのは、星座。

まるで、NYのグランド・セントラル駅のよう。

そして、壁には、作り付けの棚が並び、びっしりと本で埋め尽くされていた。

「ここって・・・」

「俺の爺さんが、無類の本好きだったんだ。自分のお気に入りは、全てここに集めてある。残りは、英徳の図書館に寄贈されたけどな」

司は、名残惜しげにつくしの手を解放してやった。

彼女は、蝶が舞うように、フワフワとした足取りで、本に近づく。





こんにちは

はじめまして

あたし、まきのつくし






心の中で、本に挨拶をする。






みんなのこと、おしえてね

あたし、すーーーごーーーく、たのしみ






触れては、離れ、離れては、近づき、選びきれないほど沢山ある本を前に、つくしは、幸せな悩みに浸っている。

「好きな時に、好きな本を読めばいい」

「いいんですか?」

「あぁ。お前が読んでやらないと、埃を被るしか無い運命だからな」

司も、手短にあった本を一冊取った。

そして、空間の中心に置かれたソファーに座り、本を開く。

それを見たつくしは、んーんーとかなりの時間悩み、一冊の本を手に取った。

それは、司が、こっそりと潜ませてあった赤毛のアン。

警察の帰りに図書館に寄り、赤毛のアンシリーズだけ、まとめて引き上げてきた。

傷が治るまで、この屋敷に居てもらう為、彼女を引き止める材料は、多いに越した事はない。

その後、陽が傾き、夕焼けで空が赤く染まるまで、二人は、並んで本を読み続けた。

そして、一気に、本を読み終えたつくしは、満足げに微笑み、司を見上げた。

しかし、彼は、まだ、本を読んでいる。

邪魔をしたくなくて、黙っていると、そーっと司の手がつくしの頭に伸びてきた。

そして、ゆっくりと優しく、司の肩につくしの頭を誘う。

もたれかかったつくしは、体重を掛けたくなくて、身を固くした。

その視界に、司の読むトムソーヤの冒険が入る。

つい、目が、文章を追った。

そうなると、次々とお話がつくしに流れ込み、彼女を魅了する。

ドンドンと体重を掛けてくるつくしに、司は、苦笑しながら、読みやすいように本を傾けてやった。

寄り添ってから、どれだけの時間が経っただろう。

夕食を知らせに、屋敷中を探し回ったタマが、二人を見つけた時には、本物の空にも、星が瞬いていた。

「ったく、あんたらときたら・・・」

スースーと寝息を立てる司とつくし。

怒ることも忘れ、タマは、幸せそうに微笑んだ。
















「もう直ぐ、到着です」

車の中で資料に目を通す楓に、西田が声を掛けた。

「そう」

楓は、眼鏡を外すと、窓の外を見た。

見慣れた街並みが、今日は、特に美しく見える。

「椿・・・やっとね」

まだ、楓が子供の頃、幼馴染の少女達は、我が子を結婚させようと約束していた。

共に子を成し、それは、現実のものとなるはずだった。

それが、ある日を境に、崩れ落ちた。

最後まで、つくしを気にかけていた椿。

蜜石椿としての人生は、幸せではなかったかもしれない。

だが、きっと、今、天国で微笑んでくれていると思えた。

「牧野さんのご家族は、如何かしら?」

「昨夜は、居間に布団を三つ敷き。今日も、他の部屋には入らないようにしていらっしゃるそうです」

蜜石巌から守る為、半強制的に、道明寺傘下のマンションへと引越しさせたが、大き過ぎる居住スペースは、かえって迷惑のようだ。

「そう。では、彼らが受け入れられそうな物件を探して。勿論、セキュリティーは、完璧に」

「了解致しました」

西田は、楓の横顔を、盗み見た。

長年支えてきたが、これほど清々しい笑顔は初めて見た。

「西田」

「はい」

「明日、一日、休暇を取りなさい。今回は、とても助かりました」

労いの言葉に、西田は、返事をするのも忘れて、何度も瞬きをした。

「何か、不満?」

「いえ・・・ただ、お休みを頂いても、する事が無いので」

「そう?貴方も、私に負けず劣らず、仕事の鬼ですものね」

長年主従関係を続けてきた二人の間には、夫婦とは違う絆がある。

戦友とも言うべき西田の休日を想像し、楓は、クスリと笑った。

「たまには、昼頃まで寝てみたらどうかしら?」

「腰が痛くて、そんなに長くは、眠れないと思います」

生真面目な返事に、楓は、また笑った。


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三連休ラスト。
素敵な一日を♡