昨日の今日でまさか清掃活動は行っていないだろうと思ってはいるのだが、

一応警戒するに越したことはない。

睡眠不足ということもあり、まずメイドミトリーに足を運んだ。

「おかえりなさいませ、ご主人様」

テンプレのような挨拶を受けると、いつもと同じようにカウンター席に案内された。

「あっいらっしゃい」

「ど、ども……」

これまたお決まりの言葉をやりとりし、ドリンクを注文した。

ものの数秒でドリンクサーバーからコーラが注がれ、テーブルに置かれた。

今日もお客がまばらに入っていた。

ふと窓際の席に目をやると信じられない、いや信じたくないような人物がいた。

「ふっふ~ん♪ ふんふふ~ん♪」

鼻歌を歌いながら一生懸命テーブルを拭いている女性店員。

その横顔はまさに昨日遭遇した黒髪の少女、その人だった。

「はごっごほっごほっ……」

「ちょっと~どうしたの? 気管に入っちゃった??」

「あああのっあの人は?」

動揺してどもりがちになりながらそう聞いてみた。

「ああ~ゆいなちん? ちょっと前に研修で入って、今日から晴れて本メイドとして
出勤、じゃなかった……ご奉仕させていただくことになった子だよ~」

「そ、そうだったんですか……」

「な~に? 狙ってんの?」

「ちっ違いますよ……」

「あの~テーブルのおかたづけ終わりました~」

カウンターがざわついているのを察してか、遠目から遠慮がちな声がした。

「おっありがとっ。ねぇ~こっちのご主人様がゆいなちんに興味があるんだって~」

「ちょっちょっと!」

「はい? なんでしょう? ってああ~!」

「ど、ども……」

まさかこんなところで再会するとは夢にも思わなかった。

「へぇ~もしかして知り合い?」

「はい……といってもご主人様とは昨日お会いしたばかりですよね?」

「う、うん……」

「そっか~そういうことね~」

と、みほりんさんが不敵な笑みを浮かべながら何か納得するようにうんうんと頷いていた。

「な、なんですか……」

「べっつに~? あっ私外でビラ配ってくるわ~。それじゃあごゆっくり~」

というとわざとらしく鼻歌を歌いながらみほりんさんは店を出て行った。