街を灯す 洋菓子店 
その洋菓子店は住民たちが愛してやまない街のシンボル

一日でケーキ1,500個 焼き菓子3,000個を売り上げる

いつも厨房を忙しく駆け回っている

この世界で別格と位置づけられる 凄腕の職人

『街を灯す、真心の洋菓子』

洋菓子職人 横溝春雄(66)

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日本の洋菓子界にその名が轟く横溝

その背中を多くのパティシエが追い続けている

小さな厨房で繰り広げられる熱きドラマに密着

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横溝には一つこだわっていることがある 

それは 朝一番の挨拶

弟子25人たちにはときかく元気よく声を出せと伝えている


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決して厳しい上下関係を求めているわけではない

いつも笑顔を浮かべながら気さくに弟子たちと接する

横溝:
洗い物は先輩、後輩ないですね

手が空いてる人がちょっとやる

ガミガミ ガミガミね

お客さんに聞こえるくらいにシェフが従業員を怒鳴りつけたりなんかして

そんな夢のある楽しいお菓子が出来るって私は思わないですね








朝10時 開店と同時に大勢の客がやってくる

横溝のケーキはオーストリア ウィーン仕込み

華やかなフランス菓子に比べれば 素朴で家庭的なのが特徴だ

40種類の焼き菓子もシンプルなものがほとんどだ

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素朴な横溝の洋菓子がこれほどの人気を誇るのはなぜなのか

ケーキによっては地味で手のかかる作り方になる

だが、その作り方にこだわる

横溝が大事にするのは華やかさでも、効率でもなく、1つの想いを大事にする

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横溝:
よく繊細な芸術的なお菓子っていいますけど そういう芸術的なお菓子じゃなくても

何か買って食べていただく方の心にほっと暖かみを感じてもらえるような

そういう温かいお菓子を作り続けていきたいなって思っていますね

お母さんの味って言うんですか

そういうお菓子を目標として作っています



母親が子供に作るように真心を込めて丁寧に

そう自分に言い聞かせながら横溝は職人技を駆使していく

完成したザッハトルテの表面は絹のような滑らかさ

表面のチョコレートはシャリッとした食感が際立つ厚さに揃えられている

見た目の派手さではなく 見えない本質にこそこだわる

それが 横溝の信念だ


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スクリーンショット 2014-07-31 20.24.29.png揃えられている


街を灯すような温かい店を作りたいと考える横溝

その思いは店舗の設計も考えられている

厨房を売り場のすぐ真下にすることで 窓から菓子作りの様子を覗くことが出来る

横溝:
子供たちが厨房を覗いたときに洞穴の中で熊さんが仕事をしているってそういうイメージでこの厨房が出来ているんですね

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他にも街に根付いた店作りのために大切にしているのが 14名の販売員だ

この日は新しいチョコレートで試作したザッハトルテの感想を販売員に尋ねた

残念ながら新しいチョコレートは不評

横溝:
販売員は直接お客様と繋がる人ですから

販売員が売りたくないっていうものは売らないんですよ

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そして横溝には店の裏方を一手に支えてきた販売員である妻が協力なパートナーだ

『妻には絶対逆らわない』

こうして25年 2人で店を育ててきた









横溝は弟子と向き合うとき 横溝は妥協無く全力で評価を下す

弟子たちに伝え続ける信念がある


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横溝:
自分の作ったもの その先には笑顔があると思いますので

それが100人中100人笑顔にならなくちゃいけないものですから

裏切っちゃいけないという責任感というか

そこがお菓子屋さんとしてのプライドだと思いますね


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店を閉める時間が近づくと横溝はランタンを灯し始める

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横溝:
閉店してからずっとつけてるの

(地域の人たちに)「あぁ帰ってきたんだなぁ」っていう気持ちになっていただけると思うしね

ふるさとのお菓子屋さんって思ってもらえる感じのお店を目指してこういうことをやっていますから



地元の街に自分の店は何を届けられるか

横溝はその答えを考え続けている


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横溝にはある楽しみがある 

独立した弟子の店を訪ねることだ

これまで50人を超える弟子を送り出してきた横溝

育て方には定評がある

横溝の指導は職人の世界では珍しく懇切丁寧だ

この日はシュー作りに失敗した弟子と一緒にその原因を探っていた

洋菓子作りの道を追求しながら弟子たちに親切に横溝

そこには20代の修業時代に味わった忘れえぬ経験がある

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洋菓子職人に憧れ始めたのは15歳のとき

兄の勤めていた店のケーキに魅せられ作ってみたいと思った

横溝:
もう素晴らしいものを作ってますしね

やっぱりケーキ屋って芸術なんだって当時は思いましたし

私も食べることがすごく好きでしたので、そういうものを作る仕事っていうのもいいんじゃないかなって思って



高校卒業後、東京の有名洋菓子店で修行を始めた

失敗すると師匠から激しく怒鳴られ殴られることもあった

もともとはおっとりとした性格だった横溝だが、次第にその色に染まっていく

いつしか自分も後輩を容赦なく怒鳴りつけるようになっていた

横溝:
殴ったりなんかはしなかったけど、言葉の叱り方がきついって

修業時代、卒業した先輩からいわれたことがあったんですね

その子の我慢の限界というのがあるから

その人間をダメにしちゃうから気をつけろって注意されたことがあったんですね


3年を過ぎる頃には店の厨房をまかされるようになった

だが、もっと厳しい修行が必要と物足りなさを感じ

28歳でヨーロッパへ修行に出る

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つてをたよりに各国の洋菓子店を渡り歩いた

そんなときドイツで大きな挫折を味わうことになる

いまだ経験のないパン生地を作る仕事

先輩からレシピを教わり取りかかったが何度やっても、伸びのある生地が出来ない

必死で工夫をしてもかえって悪くなってしまう

誰かに教わろうにも言葉が通じない横溝には困難だった

横溝:
クビになっちゃうんじゃないかっていう恐怖感があったんですね

住んでたアパートも第二次世界大戦の機関銃の穴だらけのアパートに住んでいましたし、気持ちもすごく滅入るんですね

一時はちょっとノイローゼになりかけたときもありましたね

これはちょっと自分でもマズいなと


そんなある日、1人のシェフが横溝に声をかけた

ホテルの厨房を統括するベルンハード・シャームバッハの存在だった


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ベルンハードは横溝に寄り添い懸命にパン生地作りを指導してくれた

言葉が通じない中、朝から晩までの1日かけての熱血指導

そして横溝にこう語りかけた


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横溝:
朝からずっとついてみてくれて本当の私の決定的な間違いっていうのを指摘してくれたんですね

その翌日からはもう失敗しないで、きちんと私は出来るようになったんですけど

それで我を振り返ったときに日本にいたときのやり方だったら

逆に私は下を叱って結局ダメにしちゃったかもしれない

ところが自分の失敗を一緒になってその失敗の原因を探してくれたんですね

私の失敗はその上の人の責任としてよく原因を究明してなかった

ああいうドイツにいたときの親方になりたいなってそのときに思いましたね






その後、横溝は東洋人としては初めてパティシエとして認められるようになっていった

いま、自分の店を構える親方になって25年が経った

修業時代に味わった経験を忘れたことはない








自分が経験した想いを胸に弟子を育てている横溝

弟子の成長を見届け、改めて1つの誓いを立てていた

横溝:
やっぱり「ここで働いてよかったです」ってひとこと言ってもられるような

そういうようなお店にしたいな

あり続けていきたいなと思っています

それはもう変わらない気持ちですね




プロフェッショナルとは

『決めた自分の仕事を信じてまずやり続ける人

 そして現状に満足市内で常に努力し続け

 そして最終的には感動を与えられる人



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