2015年9月16日〜2016年5月13日(オーストラリア全体)
走行日数239日間
累計走行距離18954km(19625km〜38579km)
※なお家に泊めてくれた人様のお家は多少場所をズラしているのであしからず。個人情報の保護とか何とかそんな感じ。
◎治安
悪いと感じたことはほぼなかった。割と現地のオーストラリア人は「アボリジニに気をつけろ!あいつらはクソだ。」的なことを語っていたが、彼等は直接「金くれ」という人はいても、危害を加えるタイプにはそんなに見えなかった。というか所々で食べ物貰ったり泊めてもらったり等、親切も多々受けている。ただし大きな町中で話しかけてくるヤツは、確かに面倒くさい感じに絡んでくるけど。
なお田舎ではお店閉まる時間が早いので、田舎町では夜間に人が歩き回っている光景はそうそう見かけない。が、大都会では普通に夜でも人通りが多いし、東部の大都市にはコンビニだってある。まぁここらへんは日本と変わらんです。
大きな声ではいえないが、何かしらの大きな施設の敷地を間借りしてテントを張っていた時も、夜間に警備員がくるようなことはほとんどない。流石に外を歩けば自動販売機にぶち当たる日本とはまた違うだろうが、治安に関してはかなり安心しても良いのではないかと感じる。
◎ビザ
ノービザの入国で90日間の滞在が可能。ただし、オーストラリアは入国に際してETASという電子チェック精度を採用しているため、事前にPC等を介した手続きが必要となる。
私の場合はノービザでは明らかに日数が足りないと踏んでいたので、ワーキングホリデービザを取得し入国した。このビザの細かい説明はこちらから。
実はオーストラリアを自転車で1周しようと試みる人は結構いるのだが、そういう人はかなりの確立でワーホリビザを取得していた印象である。というか1周しようとした場合、どうしても半年以上の期間が必要になってくるため、最も簡単に入手できるビザの種類がワーホリビザなのだ。
ただし補足として、現在オーストラリアのワーホリビザは申し込み時点で30歳以下の人間しか申請できない。私の場合はオーストラリア滞在中に31歳を迎えているが、申請した時点で30歳だったので大丈夫であった。滑り込みセーフというやつである。
◎物価・食事
東南アジアから渡ってきた身としては最初「ギャグなのか!?」と思ってしまった程に物価高である。ただし、全ての物の値段が一律に高いということではないため、やりくり次第でかなり安価に旅行することもまた可能。なお、水の品質レベルが高い国であるため、一部地域を除いて水道からの水を普通に飲める。なので特にこだわりがなければ水分摂取に関してはノーマネーフィニッシュも不可能ではない。実際私は出発地点のダーウィン以外で水を購入したことはない。
スーパーは日本のそれとほとんど違いがないものの、割引き対象商品の値下げ率が99%近くまで下落することがままあり、運が良いと信じられないくらい安価で食料を入手することもできる。また、大手2大スーパーの「コールス」と「ウールワース」にはホームブランド商品があり、これが他社の同製品と比べて5〜6割の値段で購入できるため、私のリアボックスには常にこれらの商品が積載されていた。安価な商品を狙っていけば、1日の食費が平均で10ドルを下回ることも難しくはない。ただし肉や魚は高いので、安く済ませようとすると食事内容の選択肢は狭まってゆく。
そんなワケで食事の9割以上を自炊で賄った私ではあるが、親切な人にオゴって貰った時や自分でも数回程度はレストランというかファストフード店に入ったこともある。なお感想を述べるならば、コストパフォーマンス悪すぎ!利用してないがマックのセットですら10ドルを越えてくる料金表示を見てしまうと、手間がかかっても自分で作ろうという気持ちになる。同じ系統の店に複数回行ったのは、オーストラリアの中ではまだコスパが良いハンバーガー店ことハングリージャックスだけであった。なお、ハングリージャックスとは他国におけるバーガーキングのことである。
◎特徴
1、そこら中で森林火災ことブッシュファイアが発生している国である。湿度が低いためにアッサリ炎が拡大するらしく、常日頃何処かしらで火災が発生している。私の旅行中にも、数人の旅行者やファームで生活してる人が大規模な森林火災で亡くなったと教えられた。
余りにも規模が大きすぎるため、日本の消防的な「消火する」活動ではなく「火災の状況をコントロールする」ことがこの土地における消防の対処の仕方。オーストラリア全土の山火事等情報サイトで「DFES」というサイトがあり、ここから情報を入手していたのだが、面白いのは「火災がコントロール下にあるか」という点で示されたりする点。つまり「安全だよ」という情報ではあっても、鎮火してるとは限らなかったりするのであり、ナニそれ怖い。
2、特に内陸部においてハエがウザい。数百匹単位で周囲を飛び回るわ体中に引っ付くわしてくる。とにかく水分のある場所に寄り集まってくる傾向があるので、顔をハエ避けネットで保護してないと、悲惨を通り越して発狂してしまうのではなかろうか?
殺虫剤等でいくら殺しても、無限に湧き出てくるため効果が薄い。結局夜になって姿が消えるのを待つしかないというのが現実で、日中を「如何にしてやり過ごすか」という対処療法が求められる。「身を守る」以上に有効な方法があるのならば、むしろ私が教えてほしいくらいだチクショウめ。
なお東海岸や町中では蠅の数は1%程度まで減少する。そういった意味でもオーストラリアにおける町の存在が如何にオアシス的なものであるかが分かるというものだ。
全体的に夏の時期に最も数が多くなるため、気候的な観点からも4〜9月くらいの冬の時期を走行する方が吉。私の場合は一番厳しい真夏の時期が南部だったので、まだ難を逃れたクチだと思っている。
3、一般旅行者はどうあがいても飛行機を利用しないと出入国できない。そのため「飛行機予約」と「輪行」という2つの山を乗り越えなければならないこととなる。参考までに、格安航空会社の2大巨頭「ジェットスター」と「ヴァージンオーストラリア」だが、ジェットスターは荷物の制限と超過料金額がすこぶる厳しく自転車旅行には不向き。
とりあえずヴァージンオーストラリアやカンタスならば、飛行場カウンターにて大体20ドルくらいで自転車用の梱包ダンボールを買うことができる。自転車店がないような僻地の町に隣接した空港も多いので、このサービスは割と有難い。
◎言語
完全英語圏ではあるが、その発音には結構クセがあると感じた。国の成り立ちの関係でイギリス英語が基礎となっているため、アメリカ英語を勉強してきた日本人からすると単語の発音に違和感を感じることもしばしば。ちなみに私は「エイ」の言葉を「アイ」と発音する違いでかなり戸惑った。「貴方は旅行開始から何回死にましたか?(ワット ダイ トゥ スタート トラベル?)」みたいに勘違いして「コイツは何を言っているのだ?」とか思ったり。
まぁそうはいっても同じ英語だ。自転車旅行であれば嫌でも現地人との会話が増えるしヒアリング力も上がる。英会話の上達というのは個人差があるだろうが、少なくとも意思を疎通させることは難しくない。実際私は電話における英会話は殆ど成立しないレベルであるが、直接対面しての意思疎通ならばかなりいけると思っている。要するに幾つかの重要英単語を使えれば、後はコミュニケーション次第でどうとでもなるよ。
◎SIMカード
オーストラリアの携帯会社は「テルストラ」と「オプタス」「ボーダフォン」の3大勢力であるのだが、都市部以外へ行くのであれば選択肢は実質「テルストラ」1択である。元々国営の電話会社だったテルストラだけが、人口過疎地域(つまり町の外)に対しても電波を飛ばしているため、町中以外で宿泊する機会の多い自転車旅行者にとって救いとなる存在だといえる。
それでもなお大きすぎるオーストラリアの国では電波の届かない地域が多数存在するのだが、まぁそこら辺は道中で「200km電波が無い」か「2000km電波が無い」かで選べば良いと思う。ちなみにテルストラは料金割高。
そういう意味では用途と料金で見事に住み分けができているといえ、日本のどの会社を選んでも対して違いが分からん!という状況より遥かに良いと思う。クソみたいな基本使用料とかないし。
なお私が使用していたプリペイドチャージは、リチャージ1回30$で700Mのデータ通信が使用できる(期限1ケ月間)のだが、実際にはもっと大量に使えた事実。よく分からんですが月1.5Gくらい使えてた感じ。なお40$・50$とプランが選べるので、個々の使用量でお好みのものを選べば良い。大抵これにボーナスとか付いてくるので実際にはそれ以上に使えることが多い。
もちろん通話時間もプリペイド式で定められているのだが、海外に連絡するならSkypeやLINEで事足りるし、旅行者がオーウトラリアで知り合った人達に電話をかけたりする時間は、最低チャージ料金の30$でも余りあるほどの時間であった。
◎宿・Wi-Fi
初日に予約していたダーウィンのユースホステルとタスマニア島。200日を越える滞在をしていながら、料金を支払って「屋根の下で眠った宿」については以上である。それ以外は全て野宿・キャンプ場か親切な人様の家や、その裏庭に泊めさせてもらったことになる。
というのもオーストラリアの宿は値段が高すぎる!料金最底辺の安宿でも、その値段は20ドルを越えてくるのが当たり前で、お金を切り詰めたい長期旅行者が気軽に何日も宿泊できるものではない。まぁ宿内の設備は整っているし、プールやビリヤード台が無料で利用できる宿も多い。お国柄なのか宿泊客はキッチンが使用できるため、道具を持ってなくとも宿に泊まれば自炊は可能。私が利用した数少ない宿では全てWi-Fiが利用できたし、速度も速かった。ただし、宿泊者数の数も多いため、常に快適に利用できるとは限らないが。
こうしたゲストハウス以外にも、オーストラリアではキャラバンパークという主にキャンピングカーを対象にしているキャンプ場や普通に有料のキャンプ場も数多くある。わざわざお金払ってテント泊するなんて無駄が多いと思われるかもだが、温水シャワーと充電設備に大抵の場合はキッチンまで併設して10〜20ドル程度の料金ならば、厳しい環境下にある北西部や内陸部では利用価値があると思う。
なおキャラバンパークの利用には、モーテルの室内である「キャビン」、水と電源が併設されておりキャンピングカーが主に活用する「パワードサイト」、普通のテントサイトである「アンパワードサイト」と分かれており、ご想像の通り料金は大きく変動する。なお前者2つの料金は
・キャビン・・・・・・100ドル前後が普通。部屋内に個人キッチンやトイレがある
・パワードサイト・・・30〜50ドルくらいの印象。完全にキャンピングカーが対象。
といった感じ。なおPC等の充電に関しては、洗濯室やシャワールーム等に電源コンセントがあるため問題ない。ちなみに洗濯機は全て有料だった。私は洗濯機を1度も利用してないため何ともいえないが、1回2〜4ドルという金額は決して馬鹿にできない金額であると思う。
あとウルル(エアーズロック)周辺は、他に逃げ場のない恐怖の高級リゾート地。キャンプ場1泊で37ドルという値段が最安値という暴利。野宿もまともにできない環境・立地ではあるが、それでもどうしても!という人はユララから約10km離れた場所にキャンプ可能なレストエリアがある。
◎右回り・左回り
この国を1周する場合、主要道路がほぼ海岸線に沿っていることもあり、最初に右回りか左回りかという選択をすることとなる。そして起伏の少ない国であるため、この選択は「風の影響がどう違うのか?」という話に終始できる。
なお厳しい環境下である北部地域ではタウンズビル〜テナントクリーク間で東風が強く、ブルーム〜カーナーボン間は西風が強かった。なのでどちらを選択しても、楽な場所と厳しい場所を走らされることになるのは覚悟した方が良い。
それでも個人的には私の走った「左回り」ルートの方が、やや楽であったと思う。ナラボー平原において、追い風が吹く確立が高いのと、西→東ルートだと町の手前1kmで食料の検閲となるのだが、東→西ルートでは中間である600km地点で検閲されるため。私のように町でしか食料を買わない自転車旅行者の場合、この制約はかなり厳しい。
余談だが、右回りならばケアンズ、左回りならばメルボルンかシドニー辺りから出発する方が最初に楽な東海岸を走行でき経験踏めるのでオススメだと思う。単純に距離の近さだけでダーウィンスタートとかして、私のような目にあうのも面白いけどさ。
◎野宿
宿泊施設の料金が高いため、それまでとは比べ物にならない頻度で野宿を繰り返すことになった。実はオーストラリアはどこでもテントを張って良いワケではなく、テントを張るにしても場所を選ぶ必要がある。そうした中で、最も多く使ったのが「レストエリア」と呼ばれる無料の休憩施設だ。幹線道路であれば100kmも走れば大きめのレストエリアが1〜2つはあるため、こうしたレストエリアへ向けて、如何に上手く距離を合わせていくかがオーストラリア走行の基本プランとなる。
この他にも無料のキャンプ場はそれなりに利用している。その設備はレストエリアとあまり違いはないものの、場所次第で電源コンセントやキッチンが付属していたこともあったので無料だからと侮れない。
オーストラリア人はキャンプ大好き国民であるため、大きめのレストエリアであれば大抵の場合他のキャンパーもいる。色々と話をしてオススメスポットを聞いたりと、私のオーストラリア情報は9割をこのパターンで成立させていた。
誰もいないような僻地レストエリアでの野宿も多数行ったが、きちんとテントを設営していれば動物による被害を被る心配はほとんどない。私の場合はテントに小さな蛇が付いていたことと、夜の間に牛に囲まれてたことがあったくらいか。
とりあえずアプリのwikicampsがあれば、オーストラリア全土のレストエリアにキャンプ場、安宿情報が分かるためこれ1つあれば大抵の場合はどうにでもなる。ときどき嘘情報を掴まされたりもするものの、オフライン状態でも使用できる極めて優秀な情報アプリだ。有料アプリではあるが、7ドルという金額は1回の宿泊料金にも満たない料金であるため、悩むくらいならとりあえずDLしとけ。最初の1週間はお試し無料期間だし。
なおこの国では野宿することを「ブッシュキャンプ」と表現する。野宿する場所を聞く時に「キャンプ」という言い方をすると有料施設であるキャラバンパークへと案内されかねないのでご注意をば。
◎総括
とにかくデカい国である。西部・東部にまとめの内容を分けてもこの分量。いくらでも書くことが出てくるほどには長期間の滞在でもあった。思ったのが、世界1周の自転車旅行者でオーストラリアを丸1周しようと試みる人は少数派のようで、この国はそもそもオーストラリア1周や横断などといった目的を持ったサイクリストが多い。
私は大体1周したクチの人だが、そんなことしてるから8ケ月とか、1つの国にかける時間とは思えないほど長期間となってしまうんだぜ。
だがしかし。オーストラリアという国は、それほど長い期間を走るに足る魅力満載の国であったことも事実だ。「何もないのがオーストラリア」とか評されることもままあるが、そんなことはない。この国の人達は自転車旅行者を放っておかない親切心で満ちている。
毎日大勢のオーストラリア人と話し、笑い、ときには泊めてもらったりもした。辛い場所でも楽しく走っていけたのは、間違いなく多くのオーストラリアで出会った人達のおかげである。
ちなみに犬は東南アジアのそれと全く別の生き物と考えて良い。私が海外に出て以降、犬を可愛いと思ったのはこの国が始めてである。