2016年6月27日~7月26日
走行日数30日間
累計走行距離1772km(41170km~42942km)
◎道路
主要道路に関しては文句の付け所がないレベル。どんな郊外に出ても大きな路側帯が整備されているので走行危険は少ない。ただし車優先社会なので、大きな町では自転車が走ることを禁止されている道路が多かったりもする。まぁ大抵の場合、すぐ脇に自転車用道路があったりすることがほとんどだが。
アップダウンは多いが、そんな無茶な斜度の坂はない。標高に関しても主要道路では1000mを超えることはなかった。ちなみにアラスカでは1度も自転車を押して坂道を上がっておらず、要するにその程度であったとも言える。これは路面状況の良さが大いに影響していると思われる。
それよりも都市部を抜けると極端に補給箇所が少なくなる方が問題。150km以上に渡って無人地帯が続くことはなかったが、スーパー等の施設で食材を購入するという点においては最大で200kmくらい見ておく方がいい。
◎治安
銃社会で怖いな~と思っていたのだが、少なくとも一般人は銃を携行している姿は1度も見ていない。とはいえ大型スーパーにガンショップがあるし、道端の道路標識は銃創の穴だらけというのを何度も見た。あとアンカレッジの図書館に入った際、持ち物検査で荷物をX線に通したり等色々と厳重な印象を受けた。
アメリカ本土はまた違うかもだが、アラスカにおいては治安の悪さを感じたことはなかった。まぁわざわざ人口希薄地帯の僻地に来てどうこうという人は少ないのかもしれない。あと季節が夏だったこともあり、0時過ぎても街灯が全く必要ないレベルで明るかったという点はあるかも。子供とか0時になっても外で遊んでるしさ。
◎ビザ・入国
日本人はノービザで90日まで滞在可能。ただしノービザの場合は、ESTAという電子認証システムの事前登録が必要。この申請自体はPCから簡単に手続きできるが、手数料の支払いにはカードが必要となる。
んでここからが重要なのだが、アメリカの滞在日数90日間はカナダ・メキシコ・カリブ海の諸国に移動しても滞在日数がリセットされない。どころか第3国にいるのに普通に日数が減っていく。このためアラスカから南下する自転車旅行者は、普通に走っている限り90日をオーバーしてしまうという滞在日数の問題にぶち当たることになる。
幾つか情報を拾ってはいるが、私自身が現在カナダを走行中の身なので、アメリカ本土のまとめに滞在日数がキャンセルされるか否かについては詳細を記したい。
そういう問題もあり、ただでさえ厳しいアメリカの入国審査はどうなることかと思ったが、別にどうということはなかった。ノービザでの空路入国者は、第3国に抜けるフライトチケットが必要だとの情報もあり、このためにキャンセル前提のダミーチケットまで用意したのだが確認されることもなく。まぁここら辺は運とか時勢とか絡みそうな話なので参考程度に。
そもそもアメリカの入国に関しては、中東のアメリカと関係がよろしくない国々の入国履歴があるとESTAが取れないだとか凄まじく面倒なルールが大量にあるため、長期の旅行者は事前に十分な情報収集が必須となる。このルールに引っかかり、わざわざ第3国で時間と手間と大金払ってアメリカビザを取得した自転車乗りもいる。
1番確実なのは、最初に入国する国をアメリカにしてしまうことだとは思うんだけども。
◎交通事情
前述の通り道路が広くて快適なのであまり問題にならない。郊外に出てしまえば信号もなくなるし、そもそも交通量がかなり少ない。ちなみに右側通行。
ぶっちゃけ運転は「下手だなぁ・・・」と思うような人の割合が高いとは思う。普通にこちらの存在に気付かずバックしようとする車や、左右確認せずにメイン車道に入ろうとする車とかいたので要注意。なお大量の荷物を積載した大型オフロードバイクの数が非常に多かったのが印象的。荷物を積みきれなくてトレイラーを引っ張っているバイクとかもいる。
キャンピングカーもバスと見間違えるほどの大型タイプが主流であるらしく、遠くからもの凄いエンジン音が唸りを上げて走ってくるためすぐ分かる。こういった大型車両でも余裕綽々の道幅なあたり、アラスカの道路すげぇ。
余談だが、こういう車が出入りしやすいために、スーパー等の大型ショッピングモールがこぞって町の中心部からやや離れた場所に位置しているのではないかと思っている。
◎特徴
1、熊が出てくることで有名な地域。一般的にブラックベアとブラウンベア(グリズリー)、あと北極海周辺にはホワイトベアがいる模様。非常に鼻が良く、食料の臭いを嗅ぎ別けて出てくる可能性があるとのことで、俗に「アラスカンルール」と呼ばれる、食事場所・テント・荷物置き場をトライアングルに50m以上離しておく(できれば食料は高さ1m以上の木に吊るす)のはできる限り実施していた。あと枕元には常にベアースプレーを置いていた。
アラスカ旅行中に「デナリ国立公園で女性が熊に襲われて死亡」というニュース記事も読んだので、心配してしすぎるということはないかと。
2、北半球でも北部に位置しているため夏の期間は極端に日が長い。深夜になっても空が真っ暗闇になるということはないため、自転車の走行という意味では多少遅れてもあまり問題にならない。一応北極圏(北緯66.3度以北)にも行ったわけだが、太陽が地平線に沈む/沈まない程度の違いで、大した変化はない。
◎気候
夏のアラスカは過ごしやすい。7月の気温にして15~30度前後なのでTシャツで十分。ただし太陽光が非常に強く、陽の下とそうでない場所とで全く違う。帽子とサングラスは必須。このため天気が崩れると一転して肌寒い日が多くなる。
基本的にほとんどのアウトドア系施設が5月の後半から9月そこそこまでという短いシーズンしか営業していない。というかそれ以外の時期にアラスカくる人は、本気の変態サイクリストだと思う(一応いるらしい)。ただし8月の後半になると、それまでとは比較にならないほど雨の日が多くなってしまうとのことで、この地域を走るのならば夏の前半戦が勝負どころだと言える。実際、この地域を走るサイクリストのほとんどが6~7月に集中しているらしい。
なお狂った数の蚊に襲われることがあるため、寒くなくても長袖・長ズボンを用意してくる意味は大いにある。あまり薄手のモノだと服の上から刺されるが、それでも被害は格段に減る。ウェア関連は色々対策しといて損はない。
◎言語
語るまでもなく英語。しかも学校で勉強するアメリカ英語。そうはいっても人によって発音にクセのある人もいるし、がんがんスラング使って何言ってるのかわかり難い人だっている。
まぁそんなに心配しなくても大丈夫なんじゃね?私がどうにかこうにか通用しているワケだし。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
安宿は数が少ない上に高い。私の走ったルートだと、アンカレッジとフェアバンクス以外で安宿を見た記憶がない。そのため必然的にキャンプ場を含めた野宿が主体となるアラスカ。
非常にキャンプがしやすい地域だと聞いていたのだが、それは一般的に車におけるキャンパーの話。屋根もないようなだだっ広い駐車場を「キャンプ場」とされて、料金15ドルとか普通にある。別に道路脇のちょっとした空き地とかにテント張ってもまず怒られはしないだろうが、99%が森林地帯なので何処から熊が出てくるかと思うと、あまりに僻地でのキャンプは躊躇われたんです、ビビりなので。
なおWi-Fi事情はすこぶる良い。郊外のガソリンスタンドや小さな商店でもFreeWi-Fiが普通に使えるし、大型のスーパーなどの施設にも大抵Wi-Fiが飛んでいた。キャンプ場も当然のようにWi-Fi使えるので、ネットに繋がらなくて困ったという覚えがない。少なくとも主要道路を走っている限り、3日もネットに繋がらないという状況にはまずならない。いや本当、素晴らしいですな。
◎自転車店
アンカレッジとフェアバンクスにはたくさんある。商品のラインナップも良いし品質も高い。だがそれ以外の町ではそもそもショップを見かけなかった。ダルトン除いても1000km強の距離があるアラスカだが、この2つの町以外で良質なサイクルショップに出会える確率は極めて低いため、予備のチューブやチェーンくらいは所持しておく方が無難かと。
ちなみにアメリカだからか結構サーリーの自転車を見かけた(サーリーは米国の会社)。ロード系ではないマシンばかりを販売しているちょっと独特なメーカーのサーリーだが、アメリカ国内でしっかりとした地盤を築いているようで、サーリー乗りとしてちょっと嬉しい。
◎物価・食事
もう本当に高くて嫌になる。幸運にも私がアメリカ入国したタイミングで急激な円高が進み1ドル=約100円くらいだったが、それでもなお高いぞくそぅ。スーパーの商品値段はオーストラリア・ニュージーランドとさほど変わらないはずだが、単位がグラムで表されてないので混乱必至。なおチップが必要そうなレストランとかそういう店には入ってないのでよく分からん。あとアラスカの人参は痩せ細ったものしか扱っていなかった。
アメリカの中でも僻地だし、ここが1番物価高いのだと信じたいところ。ただしガソリンは本当に安い。1ℓあたり70円以下とかそんなレベル。まぁ自転車乗りには大した意味がないけれど。
◎総括
物価が高いことを除けば、実に雄大な景色の中を楽しめる素晴らしい土地。なお別項にまとめているダルトンハイウェイは完全に別モノとして考えてもらいたい。
アラスカ州を走るほぼ全ての自転車旅行者がアンカレッジをスタートかゴール地点にするだろうが、その場合に走る主要ルートは2×2通りしかない。というかアラスカには州道の数字が11号線までしかない模様。まぁそんな地域です。
そういった人口希薄でありつつ広大な土地。わざわざ時期を選んでまでして走りに来る甲斐は大いにあると思う。
ちなみにアラスカは大型犬を飼っているお家が多い。野良犬は全く見かけないが、吠えられるは割と多いし攻撃的なやつも多い。彼ら大型犬に噛まれたら洒落にならんぞ、とか思ったりすることも。