2016年7月26日~10月4日

 走行日数71日間

 累計走行距離4855km(42942km~47797km)


◎北部と南部

 カナダは世界2位を誇る巨大な面積を有する国であるが、道・人口共に南部アメリカ国境付近に集中している。つまりカナダの北部は巨大な人口過疎地域であり、南部を走行するのとでは走行難易度が大きく違う。具体的に

・スーパーのある町が約500km毎にしかない

・全体的に物価が2~3割り増し、宿泊施設は更に高い

・野生動物・・・というか熊との遭遇危険がある

 といった点で自転車旅行者はやや苦労する。まぁ食料関係でいうと50~100kmに1件程度は小さな商店を併設したガソリンスタンドがあったため、金銭的な問題を考慮に入れなければ携行する食料がなくてもイケる。水はそこら辺の川の水を煮沸してもいいし、主要道路沿いにおける大抵の施設では水道水が飲める。あくまで私が走ったルートでは、だが。


 なお大まかに分けると北緯55度線より南がカナダの人が住む地域の大半を占めている。アメリカとの大部分の国境線が北緯49度であり、人が定住するヌナブト準州のアラートという最北の町は北緯82度ちょっと。要するに南部の僅かな面積に大量の人間が集まっている形である。そうはいっても南部も土地面積に余裕ありまくりだが。あぁ羨ましい。

 なおこの総括で前置きがない場合、基本的に南部地域のことに関して歌っている。


◎道路

 非常に大きい道路幅であり、路面状態も東部(南部)に行くほど良くなる。ロッキー山脈地帯を越えてしまえばアップダウンは川を越える時くらいしかなくなるほど平坦基調の道となり、走行自体は楽だし緊張感も少ない。

 ただし西部の道路はかなり汚いというか、雨が降ると路面を走っていても自転車ドロぐちゃにされてしまう。特にチェーン周りに砂利が噛み込んで異音がするパターンを何度も経験しており、非常に厄介。

 西のロッキー山脈地帯では標高1000m程度まで登らされる山岳地帯の中を走らされるのだが、ウィニペグより東の地域も標高こそ低いが細かなアップダウンが多い地形となっている。中央部において2000kmくらいアップダウンのない大平原を走った後だと意外とキツかった。

 冬に寒すぎて道路工事が出来ない関係上、いろんな場所で工事が行われている。時に10kmだとかの長距離工事もあったりして、こういう場所では大抵トラックなどの車にピックアップされる形となる。荷物一式を全て取り外したりするので非常に面倒臭い。

 とりあえず50kmも走れば何かしら人工物とか小さな村くらいは出てくるため、余計な水分の携行は特に必要ない。私はカナダにおいてユーコン準州を含め、ほぼ毎日自炊しつつも手持ち約3ℓの水で十分に賄うことができた。


◎治安

 大きな都市の一部分では治安悪いと感じる場所もあったが基本的にすこぶる良い。私はカナダの田舎で海外に出てから始めて「家に鍵をかけずに外出する人」を見た次第。そんなの日本くらいだと思ってたよ。

 アメリカよりも銃関連を意識することも少ないし、道路標識に銃弾の跡が残っているのを見るのは稀。むしろこの国では人よりも野生動物の方で注意するべきことが多い印象であり、町よりも郊外の方がドキドキすることが多かったかもしれない。いい国である。


◎ビザ

 日本人はノービザで180日という長期滞在が可能。流石に半年もの時間があれば、広大なカナダでの自転車旅行でも西から東へと横断する程度なら全く問題ない。というか寒すぎて夏期でないと自転車旅行するのが本当しんどい国であり、恐らく半年を超えて自転車旅行をこの国で続けるような人はほぼいないと思う。

 ワーキングホリデービザが発給される国の1つでもあり、オーストラリアのタックスリターンが今年からルール変更になった関係で今年のカナダワーホリ渡航者は物凄い数に上っているらしい。自転車の旅行だけならば取得する必要は薄いので道中で聞いた話以上のことは知らんけど。


◎交通事情

 非常に良い。道路幅が大きいというハード面での良さもあるが、カナダ人は全体的に運転が丁寧だと思う。道路工事等のやむなき状況で自転車が車の前をノロノロ走っていても、クラックションを鳴らしてきたり、無理矢理狭い隙間を抜けていこうとするドライバーはほとんどいなかった。恐らくカナダのドライバーは「幅寄せ」という嫌がらせが頭の中に存在しないのだと思う。なんて素敵な。

 都市部ではまぁカリカリした運転する車もいるのだが、やはり自転車道が整っている点からかそれほど怖い経験をした覚えはない。

 郊外における速度制限は100km/hとか普通なのだが、速度的な制限というのが危険につながるわけではないのがよく分かる。主要道における路側帯は基本的に道路車線よりも幅広いし、小さな路側帯がないような道の場合そもそも交通量がほとんどない。5分に1台とかそんなレベルで、そういう道だと迫ってくるエンジン音で車の接近が把握できる。

 少なくとも日本より遥かに良い環境とマナーだと思うのであり、基本的な注意事項を守っておけば問題はないかと。なお注意事項として、交差点などにおいて赤信号でも右折(日本でいう左折)が可能であるためこのルールを理解してないと、信号停止中に車が覆いかぶさるように曲がってきてドキリとすることがある。


◎特徴

 1、イギリス文化の影響がかなりある。アメリカほどではないが物の重量単位はポンドだし、マイル表示の看板もそここに見かける。スーパーで野菜を買おうとして「lb(ポンド)」という表示が何なのかわからず困り果てたのは嫌な思い出だ。それでも日本人がほぼ使わない単位はそれくらいなので、まだマシというかアメリカの方が困りものというべきか。

 2、川と湖が国中に広がっている。カナダの開拓史上、こうした川をカヌーやカヤックで探検し新たな土地を切り開いてきたため、主要都市には川なり湖なりがあることが多い。そして現代においても多くのカナディアンがボートやカヌーを所持している。

 3、熊。これについては別項で語ったのでそちらを参照。なお西部が基本生息地かと思いきや、東部の山岳地帯にもワンサカ生息しているらしい。カナダの横断を考えるサイクリストは前半戦を終えてもベアースプレーを手放してはいけないという事実。私のように落としてしまった場合はその限りではないが。


◎気候

 8月も後半になると地域にもよるが気温10℃を下回る日が増えてくる。日差しが強烈なので、晴れていれば日中の気温も体感的な温度もかなり高くなるが、一旦雨が降ると洒落にならないレベルで寒い。9月上旬の時点でも早朝は氷点下まで気温が下がることもあり。

 ロッキー山脈近辺では雨となる日も多いのだが、厄介なのは山岳地帯であるため「天気予報があまり当てにならない」ということ。いや、個人的には結構頼りにしていたのだが、現地に住んでるカナディアンが「天気予報なんてここじゃあ使えないよ!」とか言ってたので、まぁそうなのでしょう。

 なお同緯度に位置する土地でも均一な気候というわけではなく、基本的に中央部ほど夏は暑く冬は寒くなる傾向にある。西部は西部でロッキー山脈がある関係上、標高が上がる町ではやはり気温は下がる。一番安定しているのが東部のトロント周辺となり、この地域ならば10月での野宿も特に問題ない。

 だいたい11月に入ると南部においても降雪が見られるそうで、自転車でカナダを走行するにあたって普通に走れる時期は、5月から10月いっぱいくらいが限界ではないかと思う。


◎言語

 英語・・・だけかと思いきや、実はフランス語も公用語であるカナダの国。インフォメーション的な標識や商品のパッケージには必ず英語とフランス語の2ヶ国語で表記されているし、ATMでは最初に「英語」か「フランス語」かの選択肢を選ぶところから始まる。

 フランス語は東部(というかケベック州)に行かない限りほとんど使われることはないが、こうした背景から割と多くのカナダ人がフランス語を喋れる。これは多くの日本人にとって特にメリットにもデメリットにもならない事実であり、私はそういう情報が大好きだ。

 ちなみに発音綺麗な人が多かった印象。アラスカでは訛りがキツくて聞き取りづらい人にも多く出会ったことを思うと、カナダ人はそこら辺で苦労した覚えが実に少ない。ただしインディアンの人達は全体的にクセのある発音の人が多い。


◎宿(野宿)・Wi-Fi

 高すぎて宿泊施設を1度も使わなかったので、宿について言及できることはあんまりない。とりあえずバックパッカー的な安宿は人口5万を超えるような大都市でないと存在しないので、カナダのほとんどを占める町において宿泊施設を利用する場合、モーテルかキャンプ場ということになる。

 そのキャンプ場は州営の場合、州によって異なるが10~20ドルほどで、基本的にサービス等は何もない。個人キャンプ場にはWi-Fiを含め完璧に設備が揃っているが、テントサイトですら20ドルを超える料金となる。稀に5ドルでテント張るだけのキャンプサイトとか見つけたけども、そういった良心的な価格のキャンプ場は少ない。無料のキャンプ場はときどきある。あとWikiCampsの情報が極端に少ないので、カナダでこれに期待するのは難しい。モーテルは1泊35ドルというのが見た限りでは最安値だった。泊まってないけど。カナダでキャンピングカーを利用して旅行する人が多いのも頷けるというもの。

 Wi-Fiは非常に優秀。セーフウェイ・ウォルマートの2つのスーパーではWi-Fiが使えるし、カナダ全体を網羅するチェーン店で「マクドナルド」「A&W」「ティムホントン」「サブウェイ」等の店でもWi-Fiが使える。

 当然図書館でも使用できるし、ある程度大きな町のビジターセンターにも大抵Wi-Fiがある。しかも速度が全体的に速くて素晴らしい。個人的にはsimカードは全く必要ないと思う。

 なんだかんだで人口希薄地帯のユーコン準州ですら、5日間以上全くネットに接続できない・・・という日はなかったのであり(カヌー除く)素晴らしいサービスだと思います。日本も見習ってほしいよマジで。


◎自転車店

 人口にして5000人を超える町ならば、一応自転車を取り扱っているショップはあると思って良い。ちゃんとしたプロショップの場合は、5万人を超える町ならばまず大丈夫だと思う。

 なお店員の技量はかなりバラつきがあるため、できれば多数のショップが揃っているような州都クラスの町で色々回ってみる方が安心できる。ショップに部品自体は豊富に取り揃えているので、技術ある人ならばパーツのみ購入し自分で作業するという方法でも良いかと。親切なショップが多く、私も工具を貸してもらって自分で修理等を行ったりもした。

 大抵のショップに長距離自転車乗り御用達のマラソンシリーズが販売されてるため、タイヤに関して探し回るような苦労は全くない。店頭取り寄せもかなり迅速だし、自転車旅行関係のアイテムも色々豊富で見ていて楽しい。やはり北米地域ってのは物の選択肢が豊富なのだなと感じた。


◎物価・食事

 これはもう高いの一言に尽きる。レストランは料金高いのに加えてチップ制度がある国のため、額面よりもさらに高額となる事実。また腹ただしい点で、カナダのウェイター/ウェイトレスはアメリカのように低賃金でチップがないと成り立たない給与ではなく、また支払ったチップは個人の懐でなく店に一旦返納して従業員で分ける形が通常らしい。

 つまり個人での働きが関係してこないため、彼らのサービスはアメリカ(アラスカ)に比べて非常に悪い。テーブルに座ってメニューが来るまで5分以上待たされるとか何もおかしいことではない。何でそんなのにチップ払わなくちゃいかんねん!とか思うのだが、流石に支払わないってのもどうかと思うのであり、あんまり入らなかったレストランはさらに足が遠のいたりするのである。

 流石にスーパーで売られている食料品は常識の範囲内。スーパーの系列によって結構商品の値段が違ってくるため、そのうちウォルマートでは○○、セーフウェイでは□□、みたいなセコセコとした手間暇をかけていた。イメージ的にはオーストラリアより若干高額な商品が多いという感じか。当然、田舎に行けば行くほど料金が跳ね上がるシステムはこの国でも同じ。田舎の個人商店における食料は、下手すると2~3倍の料金とかになる(特にユーコン)ので注意すべし。

 なおキャンプ用品については品質の高い物が安く手に入る。アメリカで購入するよりも為替の関係でカナダで入手する方が1~2割ほどお買い得なことが多い。小物や衣類も1ドルショップやリサイクルショップを活用することで安く買い集めることが可能。

 ちなみに消費税が国税と州税で2つあるため、高額な買い物をするのであれば州税0%のアルバータ州を利用するのが賢いやり方。基本的にアルバータ州が物価それ自体に関しても1番安い。

 なお北部の準州は更に値段が高くなる。まぁ輸送費の関係とかで分からなくもないけども、ユーコン準州では野菜などの食材ですら南部に比べて1~2割ほど値段高かった。宿泊施設はそんなレベルじゃないほど料金跳ね上がっていたのであり、そりゃあ私でなくとも野宿ばっかになるわけだ。


◎総括

 土地が無茶苦茶広いのだが、北部3つの準州はほとんど人も住まず道も作られていない未踏の地。多くのカナダ人にとっても北の地域というのは「いつかは旅行してみたい憧れの土地」的なポジションであるらしい。

 南部においては流石の先進国と人口の少なさが相まって、自転車で走るのが非常に楽な国であった。野宿をするのが簡単なので、やろうと思えば食料以外の出費を0近くまで抑えることが可能であり、実はそれほど金銭的に大変な思いをしていない。

 どこまでも広がる雄大な自然を体験したいのであれば、カナダという国は間違いなくそれに応えてくれる。反面、大自然以外の物を見たいのであれば、トロントやれアメリカに行く方が正解だとも思う。そういう意味で自転車旅行者こそが最もこの国を楽しめるのではなかろうか。

 なお多くの家で犬が飼われており、家の前を通ると結構な頻度で吠えられた。そんな追いかけてくるような凶暴な奴は少ないけれど、お国柄なのか大型犬が多く噛まれたりしたらシャレにならんぞと思うことも多々あり。放し飼いは勘弁してください。