2016年10月4日~12月29日

 走行日数87日間

 累計走行距離6410km(47797km~54207km)


◎道路

 州を跨ぐと道路にもかなり変化が出たりするものの、全体を通して語れば非常によろしい。都市部が近づくと路肩がなくなり交通量が増える傾向にあるが、田舎においてはほぼ全ての車両がインターステート(州間高速道路)を利用するため、下道は車の交通量が少なく非常に快適なことが多い。このインターステートは人口希薄州に限って自転車での走行が許可されており、そうしたポイントには入り口に自転車通行可の看板が設置されている。されてないこともあるが。

 基本的に日本と同じく「車のために作られた車に都合の良い道」であり、時に自転車だと異様な回り道を余儀なくされたりすることもあるものの、日本よかよっぽど自転車に対して理解がある国でもあり、多くの自転車専用道やれ非常に広い側道が存在してたりするのでそんなに文句はない。むしろこのレベルで文句言ってたら他の国まともに走れない。

 国が広大なためか、主要道路では山を登っても厳しい斜度の坂というものが出てこない。ひたすら長い距離を緩やかに登らされるパターンがほとんどで、アメリカ本土において自転車を押して進ませるようなことはしなかった。荷物満載の重量自転車にとっては大いに助かる。


◎治安

 基本的に良い。というか治安を一言で表すことに無理があるなぁと強く感じたアメリカ。訪れる前は割と銃社会の国というイメージを持っていたのだが、そも自転車で旅行している限りは銃の存在を意識する瞬間はほとんどない。

 私が訪れた町ではセントルイスを代表とする治安に不安が残る町も幾つかあり、確かにそういった場所では一部明らかに危険な雰囲気が漂っていたわけだが、まぁどこの国でも大都市には程度の差こそあれスラムや治安の悪い地区があるものだ。その点アメリカは情報豊富なので、事前に下調べしとくことで対策が取れる分よろしいのでないかと思う。

 滞在中5度も警察官に職質されたりしたわけだが、彼らは野宿を咎めるとかでなく「ここは危険だから別の場所でテントを張りなさい」だとか「今夜だけ特別だぞ」といった実に理解のある対応をしてくれた。そういう意味で私はアメリカ警察に対する印象はすこぶる良い。

 そんなワケできちんとルールを守って行動してる限りではそんなにトラブルに巻き込まれることはないんじゃないかと思う。私が荷物盗まれた場所も、後で調べてみたらあんまり治安のよろしくない場所だったようで。下調べって大切だよねぇ・・と思った次第。


◎ビザ・入国

 6月にアラスカ(正しくはLA空港)から入国して以来2度目となるアメリカ入国。噂に聞いてた通り本土への再入国は実に面倒くさかった。とりあえずアメリカのノービザ再入国として、

1、事前にESTAという電子認証登録をしておけば最大90日間の滞在が可能

2、この場合、1度アメリカを出国しても隣国となるカナダやメキシコ、カリブ海の国々に滞在してる場合は出国した扱いとならずに滞在日数が減っていく

 という基本ルールが存在し、アラスカから南下する自転車旅行者を悩ませる種となっている。これの対処方法は大まかに2パターンがあり

①アメリカ本土再入国の際、滞在日数は残っているが入国管理官にこれをリセットして再度90日の滞在許可をくれるよう交渉する

②カナダの走行中に90日の滞在期間を全て消費し、アメリカ再入国時に改めて90日間の滞在許可を申請する

 ・・・という具合だ。私の場合は後者を選択したことになる。なおアラスカからアメリカ本土を縦断し、メキシコまでを90日以内で走りきるというプランはあまり現実的でないため除外とした。

 ①の選択というのは「ルールはそうだけど、それだと自転車での旅行は無理でしょ?だからよろしく頼むよ」的ないわばルールを曲げて管理官にお願いする方法であり、最悪の場合は日数リセットが効かない可能性が残る。まぁ私の観測範囲でダメだったサイクリストはいないけれども。

 これに対して②の選択は「アメリカ国外で滞在期間の90日を超えた形になっただけで、もう1度入国するから滞在期間90日よろしく」という理屈となる。もちろん管理官が拒否すれば駄目なのだが、一応ルールに則った形であるためこちらの方が理解は得られやすいというか、理由を説明しやすいと思うのだが如何なものか?

 そもそもこの90日ルールだが、アメリカにおける違法な就労を防ぐという目的が強いため、自転車で旅行するだけで働く意思はない・・・ということを示せるかが重要であると思う。

 実際私は事情聴取にて銀行預金の残高確認を求められた(旅行するだけの資金があるかの確認だと思われる)し、アメリカ国内で働けない旨を知ってるか質問もされた。

 その他にも「第3国へのフライトチケットを見せろ」だとか「何でビザを取らなかったんだ」等々、割と無茶な質問もあったのだが、ここら辺は自転車旅行として陸路でアメリカを走り抜けていくことを繰り返し説明したら特に問題とはならなかった。下手にダミーチケットとか作ると話の接合性合わせるの大変なので、どうするべきか難しいところだと思う。

 なお完全にアメリカ出国してからの再入国ということでか、入国税として6USドルを徴収された。①のパターンならば免除されるのか気になるところ。とりあえずこんな大変な思いは2度としたくない。


◎交通事情

 非常に素晴らしい。追い越しをかけてくる車両は多くが反対車線まではみ出る形で距離を取ってくれるし、道路横断する際にはわざわざ停止してくれる車両が多かった。幅寄せしてくるようなクソとか見たことない。

 カナダと同じく信号での右折(日本でいうところの左折)は赤信号でも通過して良いというルールがあるので中止されたし。でもそれでクラックション鳴らしてくるような輩はほぼいないが。

 ちょっとビックリしたのがオートバイに乗っている人の多くがヘルメットを被っていない点。オートバイですらそうなので、自転車で律儀にヘルメット付けてるのは完全にスポーツ自転車に乗っている人くらい。事故した時のことを思うと怖くないのか?とか思うわけだが、怖くないんだろうなぁ。

 各州ごとに最高速度等のルールが異なっており、人口が少ない州ほどガンガン速度出しても良い傾向にある。側道の幅が広かったり交通量が少ない場所が多いので、隣でスピード出されてもわりかし平気だが。ただしガードレールみたいな物体は田舎道には存在しないため、疲れてフラついたりするとそのまま道路脇の坂を転がり落ちてしまう危険あり。あと車道と側道の合間に(車に気づかせるための)凸凹があるのだが、これが側道寄りに進出してきて走るのに邪魔な区間があった。特にアリゾナ州。なおご存知の通り右側通行である。


◎特徴

 1、日本人的に使用頻度の少ない単位が使われまくり。長さはマイルとフィート、重さはポンド、気温は華氏温度、体積はオンス・ガロンでの表示が一般的であり、見慣れた単位に変換しないとピンとこない。

 特に面倒なのが華氏→摂氏への変換で、最初は公式に当てはめて計算しようとしてたのだが、自転車漕ぎながら計算するのが大変すぎてやめた。仕方ないので変換した大体の数字を覚えてしまい、今の気温は大体○度だよな!というアバウトさで対応していた。

 嫌らしいのがグーグルで距離や気温を調べると、わざわざアメリカに即した単位で数字が示されるという点。そういう余計なことしなくて良いと思うのだが。アメリカに来て初めてオプションから単位を固定できることを知ったよ私は。

 2、カードでの支払いが一般化している国であるためか、高額紙幣を見る機会が極端に少ない。というかアラスカも含めるとほぼ4ヶ月も滞在してたのに50・100ドル札をついに見ることがなかった。

 南米一部の国で、現金入手の際にアメリカドルの方が割が良くなる関係上、幾らかまとまった現金を隠し持っておこうと考えていたのだが、少なくともこの国で一般的なATMから排出される現金は20ドル紙幣となっている。


◎気候

 秋から冬にかけての走行となったのだが、装備を整えてりゃどうにか大丈夫かな?という印象。もちろん国が広大なので12月のミネソタ州やシカゴ周辺は相当に厳しい状況であったろうことが予想されるため、あくまでも私が走った地域と時期において・・・の話ではあるが。

 1番しんどかったのがロッキー山脈周辺のアルバカーキ付近で、緯度的には東京よりも南に位置しているものの、標高2000mを超える場所まで登らされることからの低気温がキツい。丁度私が走っていた時期にかなり強い寒波が訪れていたとのことで、最高気温が氷点下となる日が2日ほどあった。

 太陽光が強烈なため日中はそれほど苦労しないが、夜間における気温の下がり方がえげつない。それなりの装備がないのであれば、テント泊しても夜間中震え続けて安眠できないと思う。と、メッシュテントの人が申しておりますよ。参考までに私が体験した最低温度はー18℃ほどであった。

 なおカナダと違って風の規則性はあまり感じない。ものすごい向かい風で苦労するなぁと思ったら、午後には逆方向の風が吹いてる日とかもあったりで、先が読めない分覚悟のしようもない。そうはいってもネット使ってある程度情報入手してましたが。一応西海岸へと出るにつれ、東からの風が強烈に吹く日はなくなっていった。

 なお中央部では時おり竜巻なりが発生する地域とのことで、テント泊中に1度だけ台風か!?と思うような強さの風に襲われたことがあり。きっかり30分で一気に収束したが、これ以降は平地のど真ん中にテントを張ることを躊躇うようになった。


◎言語

 そりゃ英語なんだが、メキシコに隣接するテキサス・ニューメキシコ・アリゾナ・カリフォルニアあたりでは結構スペイン語も飛び交っている。

 どの州でも皆さん聞き取りやすくて助かります。英語には日本で言うところの方言的な地域差とかないんかね?とか思ったりもしたが、TVが発達した現代はそうした影響少なくなってると聞くし、何言ってるか全く分からん!ということはない。単に英会話に慣れてきただけかもしれんが。


◎宿(野宿)・Wi-Fi

 使ってないからよう知らん。宿看板には時おり最安値30ドル!とか表示されていたが、それでも高すぎるだろ常考。基本的に人口50万クラスの大都市でもないと内陸部においてバックパッカー系の宿は存在しないため、モーテル泊が基本になると思われる。なおキャンプ場はRVカー(キャンピング車)を対象とした施設がほとんどで、テントサイトが別に料金表示されているか否かが重要な分岐点。そのテントサイトでも25ドルとか平気でするけど。

 Wi-Fiに関しては何も心配する必要ない。あらゆるファストフード店でFreeWi-Fiが使えるし、図書館もあれば一部のガソスタですら使用可能。なんだかんだで人口過疎地域でも1日1回くらいはネットに接続できることがほとんどで、この国でsimカードを利用してまでネットに躍起になる必要はほとんどないんじゃないかと。

 あと大抵の回線が高速かつ安定しているというのは地味ながら素晴らしい点。そこらのへっぽこ途上国とは雲泥の差である。


◎自転車店

 人口にして5万人を超える町なら自転車を扱うようなスポーツショップがあると思って良い。なおルート66自転車マップには通過する町に自転車ショップの有無が記されているので非常に有用。

 アメリカだけあってスラム(アメリカの自転車部品会社)系のパーツが多いのだがSIMANO系も豊富に取り揃えているので問題ない。長距離サイクリスト御用達のマラソンシリーズもちょいちょい見かけたものの、取り揃えている種類やサイズが非常に少なくて意外と狙ったタイヤを入手するのは難しい。というかスポーツバイクばかりでツーリングに対する品揃えはそんなに良くないんだよな。オルトリーブバッグとかほとんど見かけなかったし。

 西海岸を南下するサイクリストであれば、マラソンシリーズの入手は素直にサンディエゴ北部にあるサイクルクエストへ行った方が良いと思う。

 なおショップがなくても最悪ウォルマートへ行けば自転車関連のコーナーがあるため、タイヤやチューブとか基本的な商品は取り揃えることが可能。というかウォルマートは独特の製品をもの凄い安価で扱ってたりするので、上手く活用すればかなり優秀な店であると思う。


◎物価・食事

 先進国にしては相当頑張っていると思う。アメリカはスーパー食材の値段が安く、400gの肉とか300円以下で買えたりするレベルで大変よろしい。ビールはその種類によって価格差があるものの、最安値だと約500mlサイズ(16OZ)の缶で80円とかある。ただし4本とか6本セットの販売が一般的なので「仕方なく」毎日4本とかビール飲んでしまう羽目に。

 テキサス州より西に入った時点で特にビールの値段が上がったことをよく覚えている。聞いた話では東西の大都市に近くなるほど物価は上がる傾向にあるのだそうで、確かに私もアメリカ中央部にいた時が最も物価安いと感じていた。

 なお素晴らしいと感じたのが、僻地であっても法外な料金を付けない点であり、近郊の大都市から100kmとか離れているガソリンスタンドとかでも食料品が町と変わらぬ値段で販売されているのには感動した。カナダが酷かっただけにそれはもう。

 チップが必要となるようなレストランにはついに自分1人で入ることはなかった。でも何度か奢ってもらった際にチェックしたところでは、中華レストランとかは10ドル以下で大抵のものが食べれたし、量も満足できる程度にあった。

 お高い店はそりゃあ高いのだが、そんなのどこの国でも一緒であり自転車旅行者には縁遠い世界ですので。ちなみにマックだとチーズバーガー2個、ポテトとフリードリンクのセットが(安い地域で)約5ドル。ファストフード最強説。

 食材ばかりでアレだが、宿泊関係は先に述べた通り酷い料金設定なので。唯一料金支払ったキャンプ場がグランドキャニオンでの自転車サイトで6ドル。ここがアラスカ地域含めてアメリカにおける圧倒的最安値のキャンプ場だったなんて皮肉としか言いようがない。


◎総括

 割と滞在期限ギリギリまで走り回ったアメリカであるが、それでも行きたいと思っていた場所の半分程度しか回れないほどに広大な国である。人口200を下回るような僻地でもない限り、小さな町でも充実の設備が広がっているため多少のトラブルでもリカバリ効きやすいありがたい環境だった。

 実際アメリカでは色んな部品が消耗し破損してしまったワケだが、これが他国であったら部品を見つけることもままならない状況であった可能性が高いのであり、たくさんの親切な人と同じくして大いに助けられた。

 食や物の品質の高さ、言語、道路状況と適度な間隔で出てくる町。これらを考慮するとアメリカという国は自転車で旅行するのが非常に容易でありつつも走り甲斐のある国だと私は考える。あとは入国の厳しさと滞在期限さえ延ばしてくれればなぁ全く。

 なお犬は割と好戦的。大抵の場合は敷地内から出られず吠えてくるだけなのだが、田舎で放し飼いしているタイプの犬とかに永遠追いかけ回されたことが2度ほどある。いずれも小さい犬であり「弱い犬ほど良く吠える」というのは真理なのかと思ったり。