2016年12月29日~2017年4月1日

 走行日数94日間

 累計走行距離5967km(54207km~60174km)


◎道路

 まぁそこそこ良いのだが、アメリカの後だから余計に悪く思う節があるけども。基本的には中央部へと近づくほど予算が潤沢になるのか側道が広くなる傾向にある。ただし大都市においては側道が存在せず、交通量の多さと相まって走りにくいことこの上ない。そうした都市には自転車道路もある場合が多いので事前によくルートを練っていく方が吉。地域によってかなりバラツキがあるが、一般道路は割とボコボコの場所が多いし、マンホールの蓋が外れていたりとかで気が抜けない。なお右側走行。

 高速道路は自転車走行禁止の場所がほとんどなのだが、地元民も平気で走ってるし警察も全く注意していない曖昧模糊な存在となっている。特に北部地域では一般道路が危険極まりないこともあり、ルートの多くで高速を使っていた。一般道路に比べて補給箇所が少ないのが難点だが、それを補って余りあるほど側道が広いという利点が強い。メキシコで安心して走れるのは圧倒的に高速道路なのである。

 中央部地帯は最大で標高3000mを超えてくるが、斜度が厳しく登るのに難儀するような箇所は少ない。私が走ったルートではオアハカ周辺の山岳地帯が最もキツかったのだが、これは坂や道そのものよりも標高を急激に下げたことによる暑さによるファクターも大きかった。

 町中にはトーペと呼ばれる速度を落とすための突起が存在する。これがキツい段差であることも多く、自転車でも10km/h以下まで減速しないと色々と危険。たいていの場合は手前や脇に看板が表示されているが、時おり全く表示のないトーペもあり、知らずに突っ込むと洒落にならない。


◎治安

 メキシコというと、そんじょそこらでギャングがドンパチやってるイメージを持っていたが、もちろんそんなことはない。確かに貧富の差が激しく大都市の周辺にはスラム街が立ち並び、そういった場所では明らかに危険な雰囲気を醸し出しているところもありはする。

 だがまぁ想像していたよりはメキシコの治安は悪くないかと今となっては思う。そりゃあ公園での野宿とかはできないけれど(浮浪者たくさんいるので)、夜の街中を歩けないこともないし、荷物を盗まれた旅行者はいても身体的な危険に晒された旅行者の話は聞かなかった。

 町の治安の良し悪しは雰囲気からもなんとなく分かるが「一般住宅ではなく商店も全て鉄格子」「普通の小売店でもガードマンがいる」「住宅地域で異様に空き家が多い」「警察官がやたら重装備」辺りが該当する地域だと危険度合いが高いと思われる。観光客が来ないようなレベルの田舎では何の問題もない。

 事件に巻き込まれる系の危険という意味では麻薬関係のマフィアやギャングとなるわけだが、こうした組織が精力的に活動している地域というのは数年単位で移り変わっているのだそうで、要するに現地の人たちから「あの地域は危ない」と聞くのが最も精度が高いと思われる。まぁこれに関しては、自転車で旅行している程度ではそうした危険を感じるようなことはなかった。

 一応日が落ちきる前には必ず走行終了し、野営なり宿に入るなりを徹底するようにしていたが、これは治安的な不安よりも交通事故の危険性が高いと判断していたからである。


◎ビザ・入国

 日本人ならば入国時にツーリストカードを記入し入国税を支払うことで180日までの滞在が可能。このツーリストカードは記入をしなくても入国・短期滞在ができてしまうため、忘れず手続きしないと後で泣きを見る。

 というのもメキシコボーダーでは基本、カードの記入から入国金の支払いまで別々の場所にて自らで処理しなくてはならない方式となっており、あんまり別セクションの説明をしてくれない。

 ちなみに私はアメリカ出国時に提出するIー94というカードを提出しなければならないことを知らず、カード持ったままメキシコ入国してしまい、後でわざわざアメリカ本国に郵送するとか無駄なことをしている。全くアメリカという国は入国厳しいクセに、出国に関してはスタンプすら押さないとかふざけてると思う。

 なお入国時の料金はメキシコペソ・アメリカドルどちらでも支払いが可能だが、メキシコペソの方が若干割が良い。私はその時点でペソ持ってなかったので米ドルで支払ったけども。ちな金額は20ドル。

 一応荷物を調べられたのだが、ザルというほかない適当っぷり。1つ目のバッグをチラと確認した後は「もういいよ、ゲートあっちだから」と言われてしまい、こんなに適当ならもういっそ調べなくてもいいじゃないか!とか思ったり。


◎交通事情

 結構クラックションを鳴らす国だった。それでも中国やベトナムの1/10程度であるが。アホだなと思うのが、交差点などで前の車両が詰まって進めない時でも後続の車両が平気でクラクション連発している点。みりゃ分かるだろうに、他の車両に合わせて「自分も鳴らしちゃれ」と連鎖的にクラクション鳴らす車両が増える。合唱でもやりたいのかコイツ等は?

 だが都市部の町中を除けば彼らの運転マナーは決して悪くない。郊外の道ならば追い越す場合も大きく避けてくれることがほとんどだし、歩行者や自転車に対して「先に通りな!」と停車し待っててくれる車両も多い。まぁそうでないドライバーの方が断然多いので、歩行者優先だと思って行動してはいけない。

 大都市になると無茶苦茶な運転するバスの数が多くなるのが最大の危険。大体どこの国でもバスの運転は「最悪」の一言に尽きるのだが、メキシコも然り。特にこの国はハイエースタイプの中型バスもあるためか、異様にバスの数が多い。右側通行している自転車をまくって歩道脇に即急停車とか、殺しに来てるとしか思えない運転をしてくるため細心の注意が必要となる。

 実際、現在のメキシコ政府はマフィアの掃討や治安改善よりも対処に力を入れてる問題が「交通事故の減少」なのだと話を聞いた。私もこの国で1度事故を経験したし、慎重になりすぎるということはないと思われる。


◎特徴

 1、大まかに平仮名の「し」の形をしている国だが、南部の山岳地帯は東西2つの山脈に分かれている。これは1度2000m以上まで上った山を一旦海面ギリギリまで下った後に、再び上り返すことを意味しており自転車乗りを殺しに来てるとしか思えない。

 一応、ユカタン半島へと迂回するルートならば2度目のヒルクライムは回避できるのだが、どちらにしてもベリーズからグアテマラへと入る周辺で山登りになることは避けられない。諸行無常である。

 2、紙幣の種類が20・50・100・200・500・1000とあるのだが、500ペソ以上のお札だと小さな店ではお釣りがないために受け取ってくれないことが多い。下手すると200ペソでもお釣りを用意してなくて、近くのお店の人たちに両替を頼む姿を見ることになる。

 でも困ったことにATMから出てくるのは500ペソ札が基本。なので大型スーパー等に入った際は、積極的に大きな金額のお札を崩すことを心がけていないと小さな村で「お金はあるのに買い物できない」という罠にはまる可能性がある。

 3、メキシコの主要ビールには(多分)7種類が存在するのだが、ビール会社と小売店の流通パワーバランスとかそういう関係で、コンビニでは販売しているビールの系統が限られている。否、ビールの系統が分かれているというのが適切だと思う。

 具体的には「TEKATE・INDIO・XX・SOL」を販売している店と「CORONA・VICTORIA・MODELO」を販売している店とに分かれる。メキシコ最大手のコンビニであるOXXO(オクソ)や規模の小さい町でも存在するコンビニのSIXが共に前者グループのビールしか販売していないため、メキシコといえば!のコロナビール系はそうしたビールを販売している酒屋で購入することが多くなる。その手の酒屋は大体の場合青い屋根看板に「CORONA」とか表示されており、ジョッキの絵が描かれているのですぐわかる。サークルKやEXTRAというコンビニ、大型スーパーならばどちらのグループのビールも扱っており安心だ。

 なおメキシコは日曜日の午後5時以降で酒類の販売を禁止してしまうため注意が必要。


◎気候

 私が走行した時期は乾季だったためほとんど雨に降られることはなかった。ごくたまに雨が降っても短い時間で降り止み問題とはならない。だがメキシコの道路は排水設備が貧弱なため、1度雨が降ると多くの場所で道路冠水してしまうので注意が必要。

 中部地帯では緯度も20度前後となってくるため真冬でもまったく寒くない・・・というかクソ暑い。特に海沿いでは強い直射日光にプラスして高い湿度のダブルパンチで不快指数がものすごく高い。

 幸いなことに山岳地帯は標高が2000m前後である場所が多く、日中以外の時間帯はやや寒いほど。私は大体Tシャツにハーフパンツ&サンダルのスタイルで行動していたが、寒さが苦手な人には少々きついかと思われる。実際に多くのメキシコ人は長袖・長ズボンのスタイルで活動をしていた。私と同じような真夏スタイルの格好してるのは大抵欧米人旅行者である。


◎言語

 これはもうスペイン語なのであり、田舎へ行けば行くほど英語は通用しなくなる。大都市や観光地ならば宿その他ツーリスト向けのお店での英語認識率は50%を超えると思うが、田舎ではその1/10も通用しないといえる。

 そんなワケで中南米を南下する旅行者は、メキシコ以南の国がほとんどスペイン語であるためメキシコや他に料金の安いグアテマラでスペイン語を勉強する人が多い。私も例に漏れずグアテマラにてスペイン語を勉強するつもりではあるが、究極は数字と各種あいさつを覚えておけば宿と食事はどうにかなる。

 私はフロントバッグに重要単語を書いたノートを乗せて、走行中にチラチラ見ながら覚えたりしていた。なおスペイン語は読み方がローマ字読みで大体正解であるため、発音に関しては苦労しない。


◎宿(野宿)・Wi-Fi

 宿はホテル系が200~350ペソ(1200~2100円)、ドミトリーのホステル系だと150~250ペソ(900~1500円)くらいが相場。観光地とかならホテルはもうちょい安い宿もある。400ペソ出す気があれば、どんな町でも費用的にはまず大丈夫。お値段高いホテルだと朝食が付いてくる場合もあり、他にも都会のホステルならば大抵は朝食が出てきた。

 ある程度のランクならば受付部屋とかに水タンクが置かれており、宿泊客は好きに使って良い。生水が宜しくないメキシコにおいて、私は出発する前のタイミングで水筒に水をフルチャージするのが日課であった。

 ちなみにユカタン半島より手前で泊まったホテル・ホステルでエアコンが付いてた部屋がほとんど記憶にない。幸いにして夜間の気温の下がり具合が大きいため暑さで寝苦しいような苦労はなかったが、これが夏の時期だとどうなるか分からない。


 周辺のホテルと比べて余りにも値段安いホテルでもなければWi-Fiは大体完備している。速度も速いのだが、部屋まで電波が届かないというパターンは割と多い。かゆいところに手が届かない印象のメキシコ。

 その他にアメリカ系列のファストフード店でもWi-Fi使えることが多いが、お店で商品を購入して店員にパスワードを聞くとかそういうパターンであるためお店の利用が大前提。そうでなくてもアメリカでこの手の店は行き飽きてるのであんまり使用しなかった。

 あとそれなりの規模の町だとセントロの公園でFreeWi-Fiを飛ばしていることが多い。


◎犬

 かなり好戦的。特に北部地域では建物敷地を柵や鉄線で囲っていない家も多く、そこそこ追い回されたりもした。

 だがメキシコでは狂犬病対策にかなり力を入れているらしく、かなり管理は徹底されているとのこと。実際、ここ4年間での狂犬病による発症数は0らしい。

 とはいえ町中なんて野良犬だらけだし、病気の危険性が少なくともバッグを食い破られたりする危険性もある。追いかけまわしてくる犬には容赦なく犬叩き棒をぶち込んでやってた。


◎自転車店

 大型のショップというのは少なくて、町の中に小さなお店が並んでいる「自転車店街」があることが多い。このためグーグルマップ等のネットによるチェックがやや困難であり、自らの足で探しまわる必要に駆られることも。

 なお品揃えは1つの店で見るとあまり宜しくない。が、必要なパーツを決め打ちして幾つもお店を回る根気があれば、グレードはともかく自転車部品であればほとんど入手可能。大きな町になるとスペシャライズドやトレックの系列店とかあったりして、やたら良いパーツとか売ってたりする。ディスクブレーキの修理もなんのそのって感じだった。

 私もそんなに知識ある方でないため断言できるわけではないが、日本ではあんまり見かけないメーカーのパーツをやたらと見た。面白いくらい値段が安い物もあるため買ってみるのも悪くはなかろうが、自己責任で願いたい。安心と信頼のSHIMANOパーツはメキシコでも多く流通している。

 なお何度か言われたのが「中米の国々では自転車部品の品揃え悪くなるから注意しろよ!」といったセリフ。この言葉を裏付ける点として、メキシコのスポーツ自転車はかなり人気のようで、土日などはロードで走っている人や実業団っぽいチームをよく見かけた。


◎物価・食事

 イメージの通りタコス(というかトルティーヤ)の国。小さい集落であってもレストランで食事を頼むとほぼ必ずトルティーヤが一緒に付いてくる。というかトルティーヤが出てこない食事の方がレア。値段は地域によって開きが大きいが、タコス1つで30~80円くらい。なおビールはロング缶でも100円いかないため飲み放題である。下手すりゃペットボトルの水より安いし。

 タコス系は大きさや挟む具材の種類によってその名称が異なるが、どちらにしろ食べ続けるとかなり飽きてくる。特に田舎地域ほどタコス系以外の選択肢が少ないため、少々うんざりしていたのも事実。

 タコス以外の基本食は米とフォレストというペースト状にした豆に鶏肉を載せた皿、これにトルティーヤが合わせて出されるというモノ。これはメキシコ全域どこに行ってもあった。やはり飽きが来ていたので、大きな町だと中華料理屋に行ったりとかすることが多かった。

 その他「水屋」という存在があり、ここで手持ちの水筒に水を入れてもらう形をとれば10円以下で満タンにしてもらえる。AGUA(水)と看板等に書かれており、北部地域では立ち寄ることも多かった。

 バハ・カリフォルニア北部の砂漠地域とカンクン周辺に近づくと物価が上がると思っておけば大体正解。食事や飲料もそうだが宿泊費が50~100ペソくらい変動するため案外馬鹿にならないレベル。観光地ならばホステルがあるため問題とならないが、嫌でも田舎町を訪れる自転車旅行者には死活問題。

 でもクソ暑いこともあって、とてもじゃないが連日野宿を続けるのは大変すぎる環境でもある。消防署通いが増えたのも無理なかろうて。


◎総括

 まさかのカナダ・アメリカを上回る日数滞在したワケだが、面積比較してみればメキシコも日本の約5倍と広大な土地を持つ国。土地の形状的にその大部分を走行しなくては次の国へと抜けられないため、この結果は必然だといえる。

 北から南下してくる場合はメキシコから一気に物価が下がる一方、気軽に町中で野宿することが難しくなるためそれまでの走行スタイルが変化する人が多いと思われる。文化も言葉もこのラインで大きく変化するため、メキシコから別のステージに入ったと感じた。

 観光・自然・物価と程よいバランスで揃っているため、長期間滞在しても色々と楽しませてくれる懐の深い国。日本人宿も多くてついつい長逗留するのが多かったからか、アメリカよりも滞在期間長い割に走行距離は短くなった。今年の私は一味違う。