2017年8月29日~11月8日
走行日数72日間
累計走行距離3555km(66721km~70276km)
◎道路
山岳部では普通に町を繋ぐ主要道でも未舗装路が頻発する。ショートカットできるじゃん!とちょっと小さめの道とかに入り込むのであれば、そこは全く整備されてないダートが待ち構えている・・・くらいの覚悟を持っておいた方が良い。
ペルーの坂は斜度が緩やかだと多くのサイクリストに言われたし、まぁそれは事実に反してないけども、その実態はあくまで「主要道路」に限定されると言って良い。ちょっとマイナーな道に入ってしまうと未舗装とのコンボで普通に困窮するレベルの坂道ゴロゴロ存在してるため、坂が緩いというのを信頼しすぎないほうが吉。なお地図で見てひたすら九十九折りが続く「無茶苦茶キツそう」な道の方が斜度を緩やかにしているため楽であることが多い。割と直線的な小さな道の方にこそ、洒落にならないのキツい坂が待ち構えていることが多いのであり「人生と一緒で行ってみなけりゃ分からないことだらけ」とまぁ、分かったようなことを言っておく。
側道は小さくなったし、自転車道路はほとんど見かけなくなった。そういう意味でもペルーの道は、走行にかなり難あると言わざるをえない。まぁこれは山岳地帯の話であり、この地域が嫌になったら坂を下って超快適(で面白くない)海沿い道路にエスケープできるという利点がある。町の出入り口には漏れなく速度殺しのトーペ(段差)が設置されており、下り坂の途中だったりすると下手すりゃ転倒しかねない危険あるため注意が必要。
なお標高に関しては高い場所で4000後半、場所によっては5000m越えを体験することもある。まぁ5000オーバーは狙わないと普通のルートプランニングでは訪れないため問題とならないが、一般的な主要道路を走っていても簡単に4000mを越えてくるのは流石ペルーアンデスだと感嘆する。これより高い道を恒常的に走る国はもうボリビアくらいでなかろうか。
◎治安
全体的に悪いと思う。小さな集落でも家々の防犯レベルが上がったのが分かるし、所得格差が開いたのかスラム街に代表される低所得者層の住宅様相がかなり酷い。格差が大きいほど犯罪が発生しやすくなることから鑑みても、何かしらの軽犯罪に遭遇する確率はかなり高いと感じさせる。そう思わせる町の雰囲気は、どことなく中米の国々に近い気が。
首都のリマでは日中でも出歩きたくない明らかに雰囲気悪そうな地域もあったし、宜しくない噂は方々から耳に入ってきたペルー。たとえ一大観光地であってもカメラ等の貴重品を出して歩くのは憚られる雰囲気。クスコだけは別世界だったけど。
全体的な点で語ると沿岸部ほど雰囲気悪く、山岳部に行くほど治安良くなる傾向にある。沿岸部はその大多数が砂漠地帯で姿を隠せるような場所も少ないため野宿という点でも適さない。日記でも書いたが「ピウラ~チクラヨ~トルヒーヨ」間の道は、治安の悪さに加え道中で自転車旅行者を狙った強盗が出没する地域として有名なので、回避ルートを取るなりバスワープするなりの対処を考えたほうが良いかと。実際道中で会ったサイクリストの多くはこのルートを避けるようにして旅行していた。
◎ビザ・出入国
マイナー国境だったこともあり、並ぶどころか外で休憩していた職員を呼んで手続きしてもらう程の緩さ。目の前でツーリストカードの書き方教えてくれたり、こちらの滞在日数伝えたらその期間に設定してくれたりと融通効いて有難かった。一応正規には滞在期間183日まで許されてるらしいが、職員がそこまでの滞在期限をくれないと情報取ってたので、その中で「これくらいならOK貰えるんじゃないか?」と狙っていたのが4ヶ月という期間だったりする。実際にはそんなに滞在しませんでしたが。
出国に関しては3人も係員がいるイミグレーションで、私以外1人も利用者がいないような国境だったからか、あっという間の手続きである。出国で面倒ごとがあったことは1度もないけども。
◎交通事情
ハッキリ悪いと言える。首都のリマは人口850万の大都市だからある程度仕方ないとしても、ペルーではドライバーの無茶な運転に辟易させられることが明らかに増えた。特にコロンビアやエクアドルと比較してクラックションを平気で鳴らしまくるようになったのがいただけない。
しかも騒音に対して全く躊躇がない人たちなので、深夜時間帯でも平気でピーピーとウザすぎる。前のバスが人を降ろすために停車してるのが明らかに分かるのに、ただ煽るためだけにクラックション連発してるのを見るとペルー人の民度の低さを感じさせる。
運転マナーに関して上げるとキリがないのだが、やはりこの国で最も酷い運転をするのはバスである。前の車両が動かないからと、自車のフロントミラー軽くぶつけてプレッシャー与えてるのを見た時は、呆れるを超えて「運転技術ダメな方向に高いな」とか感心してしまった。
基本的に山岳地帯の田舎へと行くほど交通量が減ることになるため、ペルーでストレスのない自転車旅行を楽しみたいのであれば、必然的にアンデスを走ることとなると思う。まぁ海沿いは200kmくらいしか走ってないので、あんまり大したこと言えないけども。
◎特徴
1、中南米ではどの国もお釣りを用意してない向きがあるが、ペルーはその傾向が特に激しい。更に巨大スーパーが大都市にしかないため高額紙幣の使い勝手が無茶苦茶悪い。ペルーで最大額である200ソル紙幣と2番目の100ソル紙幣だが、この2種類の紙幣は田舎で使用する場合、9割方お釣りを用意してもらえないと思っておいたほうが良い。というか50や20ソル札ですら「お釣りないよ」と言われるのが茶飯事である。
しかしATMからお金を引き出すと100ソル紙幣が出てくるんだな、コレが。なので私の場合は銀行でお金引き出したらそのまま窓口へ行って「全額20ソル紙幣に交換してくれ」とお願いしていた。
一応書いておくと、ペルーのお金単位は単数系が「ソル」で複数形は「ソレス」となる。面倒なのでソルで統一してるけども。
2、沿岸部と標高4000m以上の山が隣接してるため、ルートを選んで登らないと高度障害の苦しさを味わう可能性が強い。ワスカラン国立公園では4700mでも全く問題とならなかったが、一旦海岸沿いのリマへと降りた後に向かったノール・ヤウヨス・コチャス・景観保護地区では同じくらいの標高で物凄い息苦しさだった。斜度とか色々な要素があるため単純比較はできないが、海沿いで1週間も滞在すれば高度順応は1からやり直しだと思っておいたほうが良い。
◎気候
暑いというより太陽光が強いというのが適当。このため晴れている場合はエクアドルとの比較で、標高差分1000m程度低い場所にいると考えるとベター。ペルーの3000mはエクアドルの2000mくらいの暑さだ!って感覚。
太陽による影響が強いということは、天気や朝夕における温度差の影響が大きいということでもある。朝起きた時には寒くて上着とウインドブレーカーまで羽織ったのに、時間が経つにつれてどんどん暑くなり結局Tシャツ1枚で走っていた・・・というパターンが往々にしてある。これ、上衣は素早く着脱できるから良いのだが、靴を含む下衣だと面倒くささが勝ってなかなか着替えしない。4000mオーバーでもサンダルで走ってたのは、こうした理由が強い。ここまで書いておいて何だが、それでも全体的に気温も高い。2000mで寝袋使わずに寝るとか普通にあったし。
なお海沿いに関してだが、少なくともリマ周辺は低緯度地域と思えないほどに涼しい。その気候的特徴の要因で、空は大体ガスっているような天気が続くため、気持ちのいい快晴の空は滅多に拝めないけれど。あとペルーを南下するサイクリストにとって、海岸線走ってると南方からの海風がウザい感じで吹き続けてしまう。遮蔽物がほとんどない砂漠において、向かい風が吹き続けるのは本当楽しくない。
私がペルー入ったのは8月の終わりからだが、諸説あれども基本は11月からが雨季のシーズンであるとのこと。とりあえず10月中ならば午前中は問題なく晴れていることが多い。午後になると天気が崩れだし、夜には雨止んで次の朝に再び晴れる・・・というパターンが続く。ちなみに海沿いでは1度も雨に降られなかったのであり、やはり山岳地帯の方が天気は安定してないのだと思われる。
◎言語
スペイン語ですね。個人的には使いまくりの便利食材であるアボカドが「アグアカテ」から「パルタ」という名称に変更になったのが最大の注目点。同じスペイン語でも国によって割と使用語彙が変わるとは聞いていたが、南米の中ではエクアドル~ペルー間においてその違いがやや大きく出てくる印象。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
これが安かった。値段を鑑みれば設備も悪くない宿が多く、かなり小さな町でも宿のあることがほとんどであり、たとえ田舎山岳地域であろうと連日に渡って野宿を続ける必要に駆られることは少ない。
ただし部屋の鍵がないとか、ベッドメイクされておらず前回使用した時のままだとか、夜中断水するのにそれを教えてくれずシャワーが浴びれないだとか、ホットシャワーと歌っておきながら水しか出ないだとか、文句を上げると枚挙にいとまがない。こんなに宿で問題噴出したのは今のところペルーのみである。
なおアンデスのド田舎では3000m越えてても水シャワーがほとんど。電熱式のシャワーにおいて湯量豊富でも暖かいと感じる温度であったことは1度しかないし、絶縁弱くて所々感電したりすることも多かった。ペルーの電圧は220Vなので、かなり痺れて危ないんだけど。
1泊が350~850円くらいのリーズナブルさで、値段よりも宿泊する町の規模に応じて宿の設備レベルが上下する。具体的には田舎の山岳地帯ほどボロっちい宿になり、都市や観光地では安くても綺麗で設備も良くなる傾向にあり。というか田舎の宿は安くてボロい物件しかないというのが正しい表現。
Wi-Fiがその典型例で、ある程度の規模の町へ行かないと宿にWi-Fi併設される確率がガクッと落ちる。そうした町でもネット屋はあったし、もうどうしてもネットしたけりゃsimカード買えば大抵の町で電波は通じているようだが。基本的にWi-Fiのみでやりくりしようとするならば、山岳地帯を走る場合なら4~5日程度使えなくなる期間を見ておけば良いかと。
カフェを筆頭としたお店でのWi-Fiも非常に厳しい。県都クラスの町でも観光地でない場合は全然見つからないこともしばしば。むしろ小さな田舎町ではパルケの側にある庁舎関係の建物とかにFreeWi-Fiが飛んでおり、お世話になったことがチラホラとある。アメリカ系ファストフード店がないことで、こんな弊害が出てこようとは。
◎犬
ペルーの犬は頭がオカシイ。これはこの国を走ったサイクリストの共通認識であり、私もまたペルー犬の酷さに散々な思いをした1人である。とにかく自転車を見かけるなり狂ったように吠えまくり追いかけまくる犬の割合が他国と比較して非常に高い。しかも徒党を組んで多数で追いかけてくるわ、他の犬の鳴き声に反応したのか別の場所からも湧き出てくるわと始末に負えない。
あんまり犬叩き棒使いすぎて、箒の柄を使っていた2代目犬叩き棒は途中で折れてしまい、3代目にはアルミパイプ製の棒が就任した。しかしペルー出国時の時点で既にボッコボコになっている始末。
とにかく犬が来たら「停車する」ことが最大の防衛策で、止まって睨み付ければ大方向こうがビビったりして退散していく。それでも興奮冷めないアホ犬には牽制で棒を振り回してやると、危険を察知して距離を取ってくる。間合いを取ったら後は噛まれないよう注意して石投げるなり水かけるなりして追い払えばいい。
牽制してもバッグ等に噛みつこうとするどうしようもないバカ犬というのが一定数おり、こういうのに対してはもう遠慮せず攻撃ぶちかますしかない。ただし足で蹴ると反撃で噛まれてしまう可能性があるため要注意。狂犬病の危険が付いて回るペルー犬は本当に厄介極まりない存在である。
◎自転車店
よく考えてみれば、砂漠・アンデス山脈・アマゾン森林地帯で構成されてるペルーにおいて、この国の自転車需要が高まるわけないんだよね。そんなペルーでは自転車ショップを探すのも大変だし、中規模程度の町ではショップがあってもスポーツ用のパーツを見つけるのは非常に難しい。というか古い型式のMTB用品ばかり取り扱っていたりで、選択肢が皆無に近いというべきか。
首都のリマやクスコには自転車街や先進的なショップもあったのだが、基本的にペルーで何かしら自転車パーツを取り揃えるのは容易ではない。素直にコロンビアで購入なり整備なりするのが正攻法で、私みたいにペルー国内で予期せぬトラブルが発生し、他に方法がないからという理由でもなければペルーで自転車ショップの扉を叩くのはオススメしない。
◎物価・食事
全般的に安い。特に食に関してはコロンビア・エクアドルより明らかに値段下がったにも関わらず、料理のレベルが向上するという離れ業を行っている。ビバ、ペルー料理。
多くの食堂で料理の種類が玄関前の看板に表示されており、親切な店だと料金表示までされている。地域による料金の変動幅がやや大きく、最も安かった北部・南部山岳地帯では1食100円程度がある一方で、観光地とかだと安食堂でもその3倍以上する店が多い。
普通の店でもかなり料理の種類を選べるため、旅行の最中にペルー料理に辟易するという人は少ないだろうし、ペルーは味の素に代表される「味の~」シリーズが一大勢力を持っているためか、調味料やベースとなる出汁が日本人好みの味だと思う。同じ味の素からの提供で、完全に日本の醤油と同じ味がする「AJINOSILLAO」には値段の安さも含めてお世話になりました。
あとじゃがいも。アンデス地域が原産とされるこの食材は、何というか他の国で食べるじゃがいもとはレベルが違う。普通に油で揚げただけのポテトが屋台でよく売られてるのだが、無茶苦茶美味くてよく食べていた。
市場に行くとよく分かるのだが、同じじゃがいもでもペルーでは無数の種類があり、お店の一面が全てじゃがいもで占められているという光景をよく目にする。なお違いは全然分からない。
ビールは基本的に3種類。北部トルヒーヨ近郊ではその名もズバリ、トルヒーヨビールも扱っている。大ビン比較で1ソルだけ高いクスケーニャというビールと安目の2種類に大別され、どんな場所でも必ず扱われてるのがクリスタルという種類。でも私はもう1種類のピルセンというのを好んで飲んでいた。なお料金は大ビンで180円くらい。350缶だとこの半額で購入可能。
小売店では場合によってデポジット制度があり、飲み終えたビンをお店に持っていくことで1ソルと交換してくれる。これは有難い!といえばそんなことはなくて、大抵通常の料金に1ソル上乗せして販売してくるため、デポジットない店で買う方が手間かからない分得である。なお外国人相手だと、この制度を知らないフリしてコチラが要求するまでお金を返さないセコいお店が結構ある。
結局アンデスの山中走ることがほとんどで、水を購入することは1度もなく終わった。飲み物で言えばペルー特有のインカコーラがよく挙げられたりするけれど、あれ普通にエクアドルやボリビアでも買えるからね。値段もコーラ系の輸入飲料と同じで若干高いし、そもそもコカコーラ社の提供だし。そんなに特別感はありません。
しかしまぁ本当、食に関して楽しい国であった。私が好きな料理でロモ・サルタードとミラネーサが個人的な2大巨頭であり、セビッチェなんぞよりこれらの料理ばかり食べてたな。
そうそう、お米で一般的な外国産米と違って日本的なモチっとした食感のタイプがある。ただしペルーでは系統の違うお米を使い分けているため、レストランによって日本系のお米が出るかパサパサ米が出るか別れる。傾向として高山地帯であるほどモチ米の確率は下がり、パサパサ米が出されるように思う。でも3500m越えの小さな集落でもモチ米出たりしたので、単に店主の好みによる違いかもしれない。結局最後までペルーモチ米の種類が何という名前なのか分からずじまいであった。
◎総括
いやまぁ自転車で走るの大変な国だった。同じ南米でもコロンビアやエクアドルは道や人、治安といった様々な点で高いレベルを維持してるのに対し、同じようなイメージを持ってペルーに入ると様々なストレスやトラブルに晒されることに。
ではペルーの国に魅力がないのかというと、そんなことはない。むしろ私は今まで走ってきた国の中で、もう1度自転車旅行をしてみたい国を尋ねられたなら、真っ先にペルーを挙げたいと思うほどこの国が好きである。
厳しくも美しいアンデスの山、何時間登り続けても頂上が見えないスケール感、目にするだけで圧倒されてしまいそうな九十九折りの坂道・・・ってアンデス山脈ばかりだな。
まぁ私にとってペルーというのは、ナスカでもマチュピチュでもなくアンデスの国だった。そしてこの国はアンデスを走ろうとする者に対し、無限の喜びと感動を与えてくれる懐の深さを備えている。結局2ヶ月以上ほとんどの期間をアンデスばかり走っていたが、まだまだ行ってみたい地域や挑戦してみたい場所が幾らでも残っており、その魅力は尽きることがない。
もしいつか再びペルーを走る機会があったとすれば、きっと私はペルーの罵詈雑言を並べ立てながら、それでもアンデスの山を登るのだろう。