2017年12月10日~12月16日  2018年1月28日~2月16日  3月1日~4月1日  4月12日~4月20日  5月3日~5月6日
 走行日数72日間
 累計走行距離3752km(1回目266km・2回目1277km・3回目1449km・4回目510km・5回目250km)
         (71659km~71925km・73421km~74698km・75716km~77165・77806km~78316km・79018km~79268km)


◎道路
 路面状態で言えば非常によろしいチリの道。側道もしっかり広いし交通量多い場所は車線が増えるので怖さもない。そんなこの国において道路の問題となるのは坂の斜度である。
 チリも非合理的というかむしろ合理性を追求しすぎてこうなったのか。急な斜面に対して迂回路を作るということを考えない直情型道路ばかりの国である。結果、ギア最軽でも登るのに全力出したり、むしろ登れなかったりするレベルの坂道がゴロゴロ出てくる。
 プエルトモント以南のアウストラル街道入ってからは未舗装路の道が多くなるのだが、こうした道でもその特徴がそのまま続いている関係で、未舗装&急斜面という厳しいコンボを食らわせてくるため要注意。
 サンティアゴ周辺になると高速道路に自転車進入禁止の看板が出てくるが、これ以外の郊外地域では基本的に自転車走行が可能。というか南北に通る道路が高速道路1本しかない場所もあったりするので、高速道路を走るしか先へ進む余地がなかったり。

◎治安
 少なくとも南米では特筆するレベルで治安の良い国である。首都のサンティアゴですら一部地域を除いて危険を感じるような場面はない。まぁ住所不定でダンボールハウスに住んでるような人はたくさんいるけども。
 とはいえあくまで「南米では」という注釈が付くのだが。普通に大都市の防犯レベルは高いし夜中に1人で出歩きたくはない。そういう意味で暗くなるのが21時とかである夏のチリは安全に一役買っていると思う。
 とりあえずガンガン野宿しても大丈夫だなと思った程度には緩やかな雰囲気であった。アウストラル街道入ってしまえば現地人との変な対人トラブルに巻き込まれたりすることはまずない感じであるが、案外アウストラル街道での盗難報告は多いんだよね。私も箸とか謎のアイテム盗まれたし。とはいえチリにおける注意区間はサンティアゴを中心とする中央地域が主となっている。

◎ビザ・出入国
 かなり真面目というか入国時のチェックが長くて遅くて何より生鮮食品の持ち込みが禁止されている。このため荷物を全て外して検査させられるのが面倒臭い。この手のチェックって自転車旅行者には甘いというか割とお目こぼししてくれることが多いのだが、チリは5回の入国でキッチリ5度とも荷物検査させられたもんね。流石に南部地域のマイナー国境では緩かったけど。あと下手に隠して持ち込みして、それがチェックで発覚した場合には結構な額の罰金を取られるらしく、実際イミグレーションではその旨の書類にサインを求められるのであり、南部の食糧事情厳しい場所でもリスクのある行為は辞めたほうがいいと思う。
 ちなみに1回の入国で90日まで滞在可能なので、アタカマからそのまま南下しても普通はこの国縦断できるくらいの日数的な余裕はある。私はアンデスの山を走りたかったりとか色々あって国境越えたが、この国で国境越えるということは=アンデス山脈越えるということになるため、それなり程度には覚悟しておかないと泣きを見る。なるべく楽して国境越えたいならば、南下すればするほど山の高さが低くなるためとりあえず楽にはなる。

◎交通事情
 マナー良いですね~。交通量は少なくないのだが、道路状況の良さとチリドライバーの運転マナーの良さでかなりストレスなく走れたと感じる。といっても北部地域はほとんど高速道路だったし、アウストラル街道は交通量が少ないのでチリの一般道路がどうなのか?と問われると余り自信を持って答えられないが。
 ちなみにチリでも危ないなと思う運転してたのはバスである。あと一部のトラックかな。要するに一般道路でデカい車に追い越される時が1番怖かった。
 クラックションを鳴らされた記憶がほとんどないのは好印象で、むしろ挨拶だとか応援で鳴らしていた光景ばかりが思い出される。
 車種として大型2輪バイクが南米にしては非常に割合が高い。要するに長期ツーリングで走っている層なのだが、彼らは多人数ツーリングしていることが多いため、1台に抜かれた場合下手すればその後10台くらい後続が続くと思っておいたほうが良い。
 見通しの良い直線的な道路が多いので、どの車両も平気で100km/hとか出してるのには注意が必要。排気音が遠くから聞こえたと思っても一瞬ですぐ側まで迫ってくる感じで、厳しい登り坂でフラつきそうになったりするリスクを鑑みると、郊外における走行は割と危険度合が高い国だと感じた。

◎特徴
 1、緩やかではあるがシエスタの制度が存在する国である。シエスタこと昼寝の時間は正確に決まってないようだが、おおよそ午後1時から3時くらいを目安に個人商店系の店が一旦シャッターを閉めてしまう。
 大きな町であればチェーン店系のスーパーがあり、この手の店はシエスタ休憩入ることがないため安心して訪問できるが、ちょっとメイン道路から外れた小さな町ではシエスタは非常に厄介な制度として走行を邪魔してくることになる。
 幸いというかアウストラル街道の町は観光に特化している関係なのか、それほどシエスタ休暇をしている店は少なかった。数日無補給で走行続けてようやくたどり着いた町でお店が閉まっているとそれはもうガッカリこの上ないため要注意である。
 2、タイムゾーンを勘違いしてるんじゃないかと思うほど日照時間が他国と異なる。南部の高緯度地域で日照時間が長いのは当然としても、北部地域でも夏だと21時以降の日没が普通だったりする。
 日が落ちる時間が遅いだけならそれほど問題ないのだが、問題は日が昇る時刻もやたらと遅いこと。4月5月とかなんて8時になってもまだ周辺真っ暗だったりするため、時計を指針にしていると毎朝夜明け間からの活動を余儀なくされる。かといって一般的な商店とかそういう施設はチリ時間を基準に活動してるため、時計を一切気にしないでいると前述のシエスタ制度もそうだが色々と面倒なことも多い。なおチリでは何年か前にサマータイム制度は廃止になったらしく、年間通じて朝も夜も遅いサマータイム側の時刻に統一したらしい。

◎気候
 砂漠から高地に雪山、パタゴニアまで各種揃っております。南北で4000kmに渡る国というのはもう完全に別種の気候となることを意味しており、各地域の特色を把握する必要がある。
 大まかに分けると北部はほとんど雨が降らない砂漠地帯で、標高や気温、日光の強さ全てが高い数字を叩き出す地域。サンティアゴの北あたりから徐々に緑が増え始めるが、依然として陽射しの強さは変わらない印象。この周辺は海霧がすごく、午前中はガスっているが午後になると晴れ間が広がる印象が強い。
 プエルトモン以南のアウストラル街道になると雨の割合がかなり増え、南部に進むにしたがって西風が強くなる。なお緯度も40度を超えてくるため夏場でもかなり冷え込むようになってくる。ちなみに40度って北半球だと東北とかそれくらい。あと雨が多いといっても日本の梅雨なんかとは比較にならない程度の降雨量ですよ。日本の雨多い時期に自転車旅行した人ならば、雨の多さに辟易するようなことはないと思われる。なおアウストラルを越えてしまうとそれほど雨は降らない。
 東へ向かうと大体アンデス山脈になるため、気候的な特徴はその標高次第とも言える。北部ではまだ4000後半の山が頻発するが、南下するに従って徐々にその標高を下げていき、パタゴニア地域まで入ればほとんどの山が1000m以下の低山となる。

◎言語
 もちろんチリもスペイン語。だがまぁ南米の他国に比べればかなり英語の通用度合いが高いため、それほど苦労はないかと思われる。やっぱりね、年齢層の高い方たちでも割と普通に英語喋れる人がいるのは凄いというか教育水準の高さが関係しているのではないかと思うのですよ。
 ああ、でもパタゴニア地域に入ってからは多少苦労したかな。そもそもの人の数が少ないのとが関係あるのかもしれん。観光に特化した地域だから割と英語通じると思ってたんだけどな。小さな村では全然だったこともあり。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 郊外ガソリンスタンドでの野宿が多かった。チリガソスタ2大巨頭のコペックとシェルには無料のWi-Fiや800ペソで利用出来るシャワーがあったりと設備が非常に整っており快適。普通に水道水を飲んでたけど、こうしたガソスタには飲料用の水道があったりもして有り難い。
 その他主要道路には適当な間隔でレストエリアがあったりもする。こちらもトイレに併設してシャワーがあったりと便利に利用させてもらっていた。
 大きな町ではホステルも利用したが、1泊の値段がかなり高くて連日使い続けるのはちとしんどい。安くても1泊1500円くらいする。安宿系ならまずキッチンがあり、その他Wi-Fiやホットシャワーといった設備に不満を覚えるようなことはほとんどない。これはアウストラル道中においても同様である。この地域はキャンプやりたい放題なので自転車的にはホステルに宿泊するメリット少ないのだが。
 こうした設備の充実があるため、ホステルに関しても敷地内にテントを張らせてもらうタイプの宿兼キャンプ場みたいなホステルをなるべく利用するようにしていた。チリのキャンプ場にはホットシャワーのみならずキッチンやWi-Fiがある確率が非常に高いため、テント1つ持ってることでかなり宿泊に関する費用を抑えることが可能である。

◎犬
 基本は可愛いもんですよチリの犬。ただ全く吠えてこないかというとそうでもなくて、割と本気で追いかけてくるアホ犬もそれなりの数存在する。ほとんどの場合は敷地の柵から外に出られなかったり、自分のテリトリー外に出ると諦めるのだが、恐らくどの世界もそうであるように棒でぶっ叩かれるまで分からないような奴もいる。地味にチリでは複数回に渡って犬叩き棒が火を吹いた。

◎自転車店
 よっぽどマニアックな部品でもないならチリの自転車ショップで揃えるのが困難な用品はないと思う。サンティアゴにはオルトリーブのバッグですらモールスポーツに売っていた。とはいえあくまで自転車部品関連でということで、自転車旅行として使うような専門のバッグだとかタイヤなんかは入手するのかなり難しいと思う。
 サンティアゴには自転車街が存在したが、そんな幾つもお店を回らなくてもほとんどの店でSHIMANOのパーツ類が取り揃えていたし。ただし空気入れとかそういう物の種類は決して多くはない。
 物価の割に自転車の整備代金はそれほど高くなく、店員の腕も確かだったと思われる。まぁ選んだお店が良かっただけかもしれないが、アウストラル街道入ってしまうと未舗装が続き自転車への負荷も大きいことを考えるとサンティアゴの町でそうした整備を考えるのは理にかなっているのではと思う。ということでCARDENAS BIKEのショップはオススメですよ。ここで組んだホイールのスポークは2000km走らないで10本折れたけど。

◎物価・食事
 クソ高い。物価安いボリビアからの入国ということもあり、余りの物価の違いに頭がクラクラしてくる。というかそのファクターが無くてもチリの国は物価高と断言できるが。大型スーパーに行けばホームブランド商品が扱っており、それに準じた米とかパスタとかは安価で入手できるものの、ちょっと肉なんかに手を出そうとすると日本の倍近い値段だったりもする恐怖。そりゃ鶏肉ばかりになりますよ。ちなみに日本のコメに似たタイプの米が扱っており、米袋に「GRADE1」と表記されているタイプがこれに当たる。
 一応メルカド等の市場系ならばかなり値段抑えて果物・野菜は購入することが可能だが、そのメルカドをチリでは滅多に見かけなくなってしまい、南米の中でもかなり異彩を放つ国だという印象が。
 宝石の道を抜けてくると最初にアタカマの町へと辿り着く形になるのだが、この町なんか観光に特化している上に大型スーパーが存在しないので更に値段が上昇する。もうここで「チリは物価高い」と刷り込まれるのは間違いない。ただまぁアルゼンチンと比較するとチリは全体的に僻地での値段上昇幅が低い方だとは思うけどさ。
 そんなワケで結局1度もレストランに入ることなく完全自炊で最後まで通した珍しい国。ファストフード系の「安くてとりあえずお腹が脹れる」店というのも都市部にしか存在せず、しかも安くないため利用価値が著しく低いので。
 どの国でもそうだが果物・野菜は比較的お安いため、チリでの食事はこうした商品に頼りきっていた。その他だとツナ缶は安くて美味いのでお昼パスタの主力具材として君臨していた。
 そんでもってチリワイン。まぁ安ワインしか飲んでいないが紙パックタイプなら1ℓで300円しない安さ。それでいて美味いのだから恐れ入る。チリのビールはメインの2種類が個人的にそれほどだったこともあり、恐らくワインの消費量がビールを超えた唯一の国になると思う。

◎総括
 南米の優等生とか評されるチリだが、北部の砂漠地帯はまぁそれなり。中央部に近づくとレベルの高さを感じるようになり、それが再びアウストラル街道で自然ばかりの景色へと戻っていく。そう考えると1つの国で一通り経験できる国ということでもあるな。
 ただまぁレベルが高いのに比例してとにかく物価高なのは間違いないところで、南米他国と同じような気分でいると猛烈な勢いでお金が減っていく。物によっては日本より遥かに高いぞチリ。
 自転車旅行者的にはアウストラル街道とパタゴニアがこの国の楽しみになるだろうし私も同様の気持ちであったが、個人的にはアルゼンチンとの国境に連なるアンデス山脈を押したい。チリの海岸線から2~300kmも移動せずに4000mもの高さまで駆け上る道は気候も景色もダイナミックに変化していく様を心底楽しめる。かなり厳しい峠が多いので余裕ある日程と体力が必要だけど、南下するにつれて徐々にその高さを減らしていくアンデスの終わりを感じられて良いルートだと思うのです。そうすると私みたく5回も入国したりすることになるけど。