2019年4月25日~5月19日
 走行日数25日間
 累計走行距離1391km(91925km~93316km)

◎道路
 ヨーロッパの道路は自転車に優しいと聞いてたので期待してたのだが、割とガッカリした。というのもイギリスの道路は基本的に路側帯というものが存在せず自転車が走るの非常にストレスかかる仕様。アルゼンチンと同じくらい側道がない・・・といえば、分かる人には分かってもらえると思う。誰もわかんねーよ。
 ・・・とまぁこれは郊外の話であり、都市部は流石に自転車が走りやすいよう考えられた道路設計が成されている。自転車専用路も数多く通っているし、ロンドンでは横断歩道でわざわざ自転車用の道が歩行者用と別に作られてたの見て驚いたりしてる。
 また一般道路を走る分には自転車に優しくない国だが、自転車における移動というのが確立されているので国中にナショナルサイクリングロードという自転車走行に適したルートが無数に広がっている。車両の交通量が少なく景色の良い走って楽しい道を通れるよう、ちゃんと考えられて構成されてるので非常に有用。曲がり角毎に電柱等にサイクリングロードを示すステッカーで進行方向を示しているので迷うこともない。予算もかからないだろうし日本も同様のサービスやったら良いのにとか思わずにはいられなかった。
 全体的に高い山がなく標高低い国なのだが、特に細い道では鬼のような斜度した坂が出てくることも多くむしろ走るの大変な方の部類に入る国。平坦路を選ぼうとすると主要道路でストレスかかる走行となり、気持ちよく走りたいと思うと幾多の山越えを余儀なくされる、私のイギリス道路はそう言ったイメージだ。なお日本と同じく左側通行である。

◎治安
 非常によろしい。ロンドンみたいな大都市の一部には雰囲気悪い場所もあると聞いたが、まぁ南米から来た身としては何処に行っても「これはヤバい」と感じる場所がなく、というかコレって危機察知能力が鈍ってんじゃね?と不安になるレベル。
 ただ自転車の盗難は非常に件数多いことが伺える感じで、それを示すかのように自転車の防犯レベルは皆さんしっかりされていた。私もロンドンの市内では鍵かけててもロシナンテ号から長時間目を離すのが怖くて博物館などの見学には公共交通手段を利用したという事情がある。
 まぁ出会うにしてもスリとか置き引きとかの軽犯罪だろうなというのが私の感想。そういう事件なら遭遇しても良いのか?というワケではないが、銃の危険をそれほど考慮しなくても良いのは有難い。

◎ビザ・出入国
 世界でも有数の厳しい入国審査があると聞いて戦々恐々の思いだった私だが、ヒースロー空港の入国審査に並ぶ長蛇のハズだった列は5分も待たなかったし、3つ4つの定型的な質問を受けただけでアッサリ入国することができた。
 私はこの入国審査に備えて前日のうちに髪を切りヒゲも剃ったし、滞在先の住所から銀行残高のコピーに出国用フェリーチケットの控え、あまつさえイギリスの訪問予定を記載したカンニングペーパーまで用意してたのだが、これらは全て使われないで終了した裏事情がある。
 ちなみに当初はアイルランドも合わせて訪れようと考えてたのだが、その場合ルートの都合上イギリスに2回目の入国をすることとなってしまい、これはリスクが高いかな?と判断して取りやめている。滞在日数25日程度ではイギリス国内のみで半分も回れたか怪しい結果だったので、訪れる時間的な余裕は無かったと解釈すれば結果オーライと思っているが。

◎交通事情
 非常に紳士的なドライバー多し。道路幅が狭い関係で対向車がいるから反対車線に出られず私の自転車を先頭にして何台も車両が並ぶ・・・という状況が割と頻発したが、無理して狭い隙間を抜いていこうとかそういう運転はしない。あんまり慎重に追い抜きするので、むしろこちらの方が申し訳なるほど。
 交通弱者に対する配慮が出来ているので横断歩道で歩行者が止まっていたら停止して道を譲るし、それは自転車に対しても同様に配慮した運転をしてくれる。そんで「ありがと」と片手を挙げると向こうもサインを返してくれるというね。これがお互いに譲り合い感謝しあう心というモノですよ!何年ぶりかな、こういう感覚味わったのは。

◎特徴
 1、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国という正式名称に示す通り、4つの地域がそれぞれ連合して成立している国である。ちなみにこの国において「イギリス」という単語は存在しない。ユナイテッドキングダムを省略して「UK」若しくは「ブリテン」と呼ぶのが一般的。私はイングランドとウェールズしか走行しなかったが、この区域を通過しても別段何も変化はないのだし同じ国でいいじゃん!とか思うのだが、そこはまぁ人様の国なので。
 2、アメリカ同様一部の単位があまり目にしない基準のモノを使用している。要するに道路の距離はマイル表示なのだがイギリスの看板には町までの距離を通常数字のみで表記するため、この事実を知っておかないと「数字以上に距離ある気がする」というパターンに陥ることになる。
 なおほとんどの道路に道路ポストはないのだが、私が見つけた主要道路に設置されてた道路ポストはキロメートル単位のポストだった。何で統一して使わないのかな?
 余談だが物の重量単位はポンドではなくグラム表記。これはイギリス通貨(ポンド)と混同して混乱を招くからではないかと私はニラんでいる。

◎気候
 まだ4月は寒かったイギリス。最初は自転車旅行に人気らしいスコットランド地域を旅行しようとしていたのだが、これを却下した2大理由の1つが「より北部に位置するスコットランドはさらに寒い」と教えられたため。なおもう1つの理由は普通に時間的余裕がないから。
 イギリス人曰く「今の時期は寒くも暑くもなくて自転車で走るのちょうど良い季節だよね」とか言ってたが、ちょっと感覚オカシイんじゃねーの?と疑ってしまう程度には寒いぞ。気温にして日中でも15度とかそんな程度までしか上がらず、鼻水出すぎて鼻の頭が痛くなったりした。
 ちなみに雲が少ない日ほど放射冷却現象が強烈で朝晩の冷え込みが激しくなる。朝起きて出発する前はフリースの上にジャケット羽織って活動してもまだ寒いという日も多かった。
 ところが5月も中旬に入ると一転して陽光が降り注ぐ暖かな日が続くようになったのであり、まさに今がイギリスの季節の移り変わる時期であったことが伺える。ちなみに暖かい日に彼らはTシャツとかで行動していたのを多数目撃しているが、割と寒さに強い私でも「それは勘弁」と思える寒さだったことを鑑みるに、やっぱり白人とは身体の耐寒性能が違うのだと感じる。
 なお寒さが厳しい地域の先進国なのでカナダ等と同じく公共施設や公衆トイレ、何処のお店でも水道から熱々のお湯が出る。大きな声では言えないが、洗濯したり頭とか洗う時にこれは非常に都合が良い。

◎言語
 まごうことなき英語。ただ学校で習うアメリカ英語ではなくイギリス英語なのでややクセを感じはする。とはいえ他国と比較して自分の意思を伝えられるし、相手が何言ってるのか大体理解できるというのは本当に楽。余談だが英語ができれば世界中どこの国行っても何とかなるなんて大嘘で、少なくとも超観光地以外の英語を第一言語としてない国では英語も全然通用しない。
 そういう意味でも超ど田舎だろうがとりあえず英語が通じるという環境は非常に気が楽だと言える。別に英会話能力なんかほとんどないと今でも思っているけどそれでも。
 ちなみにウェールズ領ではウェールズ語が英語と同様に主要言語となっており、あらゆる場所で2ヶ国語が並んで表記されているのを見かけた。でもまぁ出会った人とは全員英語で会話したし特別問題にはならなかったが。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 割と野宿して見つかってもフランクな感じで「良いキャンプを!」とか言われることが多かったが、流石にこれは町中ではなく郊外で野営してるからだと思う。なおイギリスの町構成として割と郊外に出ても点々と牧場が散見する傾向が強く、町と町との間に全く人が住んでないエリアが続くことは少ないと感じた。国土小さい国ほどこうした傾向が強いのだが、イギリスレベルの規模でこれほど人のいない土地が出てこない国は初めてかも・・・?と思ったけど、我が国日本がそうだったな。
 テント張るのに適した森林地帯は場所によって30km走っても続いたりする一方で、どれだけ走っても姿を見せないというパターンがあるためチャンスを逃すと泣きを見ることも。まぁロンドン周辺でもなければ幾らでもキャンプ場が営業してる国なので、料金さえ厭わなければ泊まる場所が見つからないということはない。なお私が利用した限りで料金は5~10ポンド程度。設備もWi-Fiまで完備してる場所から電源コンセントもない場所まで色々あったが、何処でもホットシャワーを利用することはできた。
 ちなみにFreeWi-Fiは割とシビアな印象で、図書館を除くと大型チェーン店スーパーのTESCOが非常に便利だったが、それ以外では確実なWi-Fiスポットというのはあまりお目にかかってない。喫茶店さえ使えば何処でもネットできるといえるが、そうしたお店利用で安く済ませる代表格のマクドナルドは携帯電話番号を持ってないとネット利用ができない方式をとっているため、私はこのパターンではCOSTAというコーヒーチェーン店を利用していた。速度は何処行っても爆速で使っててストレス一切ない。フランス行きのフェリーで使えたWi-Fiですら十分な速度が出たし。ただ場所によってはアップロードが全くできず、ブログの写真1枚すら上げることができないというWi-Fiもあった。

◎動物
 特に問題となるような生き物はいない。この時期のイギリスで有難いことは「蚊が出ない」という点で、このためテントの入口全開にしながら作業することが全く気にならなかった。寒い国では調理をテントの前室で行うのが常なので、地味にテント内に虫が入ってこないかは気になるのだ。
 犬?この国には私の知ってる「犬」は存在しなかった。

◎自転車店
 当然作業工賃とかバカ高いけど、ちゃんとした部品を取り扱ってるし作業場の備品レベルも高い。ヨーロッパ圏内だからといってカンパニョーロ系の部品ばかりとかそういうこともない。というかSHIMANOばかりでカンパの部品を見たことの方が少ないレベル。
 ロンドンに2回訪れることが分かってたので、この時間を利用してヘタってるリムを新調してもらおうかと考えてたのだが、最初に訪れたショップが人の話をマトモに聞きもしない最低の店だったのでアホらしくなって辞めた。この印象が強いためやや偏った見方をしてるとは思うが、ロンドン市内のお店は総じて値段が高く店員も対応が今一つであり、地方のショップの方が印象良かったイメージがある。
 とりあえずかなり小さな規模の町でも専門的なショップがあるし、町と町との距離も近いしで走行不能になるようなことはまずないだろうというのは分かる。
 とにかく私の場合はヨーロッパでショップに頼る回数は極力減らそうと、フライト前のブラジルでガッツリ気になるパーツを新調したり修理してきたこともあり、イギリス国内ではショップにお世話となる機会がなかった。事前準備大事な。

◎物価・食事
 そりゃまぁ高いよヨーロッパだもん。ただ食事に対する費用としては工夫次第でかなり安価に済ますことが可能であり、私が目を剥いたのはむしろ交通費や宿泊料金の方だった。もちろんホテルなんぞに泊まることはなかったが、どんな小さな町でもB&Bがあるこの国で宿の利用を続けて旅行するというのは、ある程度自転車乗りでも需要があるのだろうなとも思う。
 ちなみに郊外ホテルの看板で歌っていた料金でよく見かけたのは1泊49.9ポンドで約7000円となる。先進国と考えれば普通なのか知らんけども。それなりの中核都市や観光地ならばホステル系の安宿も見かけたのであり、でもまぁ私は利用できてもキャンプ場だよなぁ・・・という思いから確認することもせず。
 さて食材に関してだが自炊を続けさえすれば、ビール飲みまくっても1日1000円以下を継続することは難しくないくらいの物価。やはりスーパーのホームブランド商品がコスパの面で強く頼りになる。よく利用してたスーパーがテスコ・セインズベリーズ・リディル・アサダ・モリソン・アルディ・アイスランドとかで、後者2つが異様に安い。ただこの2店舗は業務スーパーみたいな感じでホームブランド商品はあまり置かれておらず、4本パックで1ポンドの激安ビールは前5店舗でそれぞれ見かけることができた。なお普通のビールは1本で1.2ポンドくらいからある。
 レストランは初日に従兄弟と1回入ったきりだからなぁ・・・。噂通りイギリス料理は不味いのか体験してみたかったのだが、どこもかしこも高すぎて入る気すら起きなかった。よく道路脇のパーキングエリアとかで車両の移動販売型軽食店とかあるのだが、そんな店でもハンバーガー5ポンドとかそんなレベル。そりゃ自炊しますよ仕方ない。

◎総括
 ヨーロッパとはこういうものだ!とイメージしてた姿を存分に見せてくれる町並み。前半とにかく寒くて往生したものだが、暖かくなり過ごし易い気温となると「これほど自転車で走るのに適した土地というのもそうあるまい」と思える土地でもあった。自転車走るということに対しあらゆる点でレベルが高く便利に揃ってはいるが、野営の難しさは残念なところ。
 なおイギリスの自転車旅行といえばスコットランド地方という風潮が強く、そこからフェロー諸島を経てアイスランドやノルウェー・デンマークへと移動する方法もあるらしく、まだまだこの国は走り足りない。物価の高さと夏の時期でないと走行が難しいことが最大の難点だが、地方ごとに大きく姿が異なるイギリスという国は一夏を使って全土を回ってみるのも面白いかもしれないと感じさせる。なんにしても1ヶ月程度じゃ全然周り足りない魅力の詰まった国でした。