2019年7月4日〜7月16日
 走行日数13日間
 累計走行距離912km(94325km〜95237km)

◎道路
 国道1号線にも関わらず未舗装路があったりする国ではあるが、全体的には良い。東部及び北西部を走ろうとする場合は嫌でも未舗装路が出てくるものの、この地域は完全に「そういった目的」で来訪する人ばかりなので車両ならば4WDだしサイクリストもダートが続いてトラブルに会っても自己対応できる装備を備えた人しか見ていない。
 海岸線に沿って伸びる道が多い割にアップダウンは多く、ちょっと内陸部に向かう道はかなり斜度ある坂を登らされることになる。ちなみに右側通行。
 レイキャビクから100km未満になると側道のある道が増え始めるが、そこ以外に側道は出てこないし基本的に自転車道路はレイキャビク以外に存在しない。ということで首都近郊の交通量多いポイントは要注意。気をつけて走っていても突風で横に煽られたりする危険性がある。
 なお全体的な走破難易度は島北部の方が道・気候共に難しいらしく、オマケに観光的な見所も南部と比べて少ないとのこと。というか南部の道は基本難しくない。

◎治安
 全く問題なし。一説では「世界で1番治安の良い国」などと評されたりもするらしいが、そう言われる要因の多くは人口の少なさに起因していると思う。アイスランド人ではない他国の旅行者の方がたくさん会話したかもしれないほど地元民は少ないし、旅行者もまたレンタカーや自家用車を使うような層が多くて盗難等の心配要素も薄い。そりゃレイキャビクでは多少の注意を要するのかもとは思うけど、個人的にアイスランドで心配する点は治安ではなく他の要素だと思っている。

◎ビザ・出入国
 シェンゲン協定に属する国なので検査なし。というか島国なのにシェンゲン入ってることで、90日間の滞在日数が滞在中に減っていくことがワールドサイクリストにしてみればアイスランドに訪れ難くなってる大きな要因だと思う。
 イギリスみたいにEU属しててもシェンゲン協定外になってれば私も2週間なんて短期間じゃなく島を丸1周する計画が立てられたのにとか思うですよ。いや、これは情報でも何でもなくてただの愚痴だな。

◎交通事情
 過疎地域では地元民よりキャンピングカーに乗った旅行者の方が数多いレベルで、そういった旅行者は運転技量の低い者や危険な運転をする人の割合が高いと思われる。実際全く交通量がないにも関わらず自転車の脇スレスレを抜けてくような運転する車両は決まって旅行系の車両だった。
 とにかく横風に煽られてフラつく危険性があるため気が抜けない走行であり、風切り音も相まって後方からの車両接近に気付きにくい環境は注意してても特に危険である。一般道の制限速度が90km/hということもあり自転車の脇スレスレを抜けてくのは勘弁してほしい。

◎特徴
 1、自転車旅行に人気の国であり、それに伴い自転車のための設備や情報が充実している。飛行場にはバイクピットがあるのはもちろん、アイスランドにおける自転車用サイクルロードマップがありこれが非常に便利だった。
 キャンプ場や自転車の修理が可能な町、風が強い危険ポイントに加えて生水を飲む場合の注意点まで自転車旅行者が欲しいと思われる情報は大体このガイドに記載されている。どの町でもインフォメーションセンター行けばまず見つかるので、アイスランド自転車旅行者は恵まれてると思う。
 2、上でも書いたが国内全土でほぼ生水が飲める。しかもヨーロッパの不味い水と違って口当たりもいいし単純に美味いのであり、普通に水売ってるショップはどういう気持ちで販売してるのか気になるな。
 一応注意点として上流に人家や家畜がいる場所では水汲むの控えた方が良いとか色々あるみたい。基本的に山岳部行けばどこでも水が流れてるのでアイスランドで水分補給に困るというのはまずないが、一部平野地帯等ではしばらく川が出てこないポイントもあるため過信は禁物。
 1度だけ行水もしたけど「天気が良くて風が弱ければ何とか入れる」というレベルで冷たいのでアイスランドで気軽にシャワー代わりとして川に入るのはややキツい。

◎気候
 アイスランドは天候の変化が激しい国で、数日前に下調べしてても当日天気が全く違うということは珍しくないらしい。とはいえ国土面積大きくない先進国なこともあり天気予報に対する信頼感は高い。どのインフォメーションセンター行っても天気情報が表示されていたりするし、私もこの情報をかなり頼りにしていた。
 あと強風が吹きまくる国として戦々恐々としていた私だが、全体的に西風が多いとのことだがパタゴニアみたく常に一定方向から吹いてる訳ではないようでむしろ私は島の東→西へと走るルートでありながら、強風とされる区間がことごとく追い風で非常に楽して走ることができた人。
 地形的に「いつも風が強い場所」というポイントがあるそうで、突如として凄まじい勢いの横風に吹かれてハンドル取られるくらいならまだしも自転車横倒しにされる危険があるため要注意。なおヤバい場所は自転車用アイスランド地図にマークが記されている。

◎言語
 使用人口が30万強しかいないらしいアイスランド語が主要言語だが、100%に近い確率で英語が通じる。少なくとも観光地ではアイスランド語の他に英語での表記がなされているし、そもそも人と会話する機会はアイスランド人ではない外国籍の旅行者が多かったくらいだ。自転車旅行でこれは非常に珍しい。
 地名は全てアイスランド語であるため、何とか読もうとローマ字読みすると全く違った発音だったりして面白い。

◎宿(野宿)・Wi-Fi
 前述の通り風の強い国であり、これに加えて高さのある木が自生できない環境のため人工過疎区域ではテントを張るのに苦労する。いや、テント張るだけなら好き勝手やれるだけのスペースが幾らでも広がっているが、ある程度風を凌げる障害物の風下に・・・とか考え始めると途端に難易度が上がる国。
 むしろ首都のレイキャビク周辺の方が植林された木々が豊富にあるし人目につかないポイントも多くて野宿しやすいという逆転現象が起きていたように思う。フライト前に諸々準備しときたかったのでウォームシャワー使ったけど、別に町のどこかでテント張ることもできたろうな。
 なお観光大国ということもあり恐らく全ての町と有名観光地の近くにキャンプ場及び宿泊施設が併設されている。キャンプ場は1500〜2000円くらいで設備は一通り揃っているためかなり利用価値が高いように思う。何しろアイスランドの宿泊施設は猛烈に高いのであり、興味本位でビークの町にあるユースホステル値段聞いてみたら1泊5500円という答えが返ってきたことがある。ユースホステルで5500円って・・・そりゃこの国ではバックパッカーもテント持ってキャンプ場に宿泊繰り返すワケだよ。
 なおWi-Fiはかなり充実しており、ある程度の規模した町ならインフォメーションセンターかショッピングモール等の大型施設にFreeWi-Fi飛んでたし、ガソスタや図書館といった施設でも利用することができた。町と町との距離がそんなに離れてない国なのでネットするのに困るという状況は割と少ない。

◎動物
 流氷に乗って白熊が流れ着いたという記録があるらしいが、北に位置する島国ということもあり危険生物が生息してないアイスランド。せいぜい出てくる大型動物は馬・山羊・羊といったところ。コイツらみんな家畜だし。
 蚊は全く見なかったが、意外と小蝿は存在する。しかも日が沈まないからいつまで経っても周囲を飛び回り続けるのがややウザい。ただし風通りの良いポイントでは吹っ飛ばされてしまうのか姿を見せないが。

◎自転車店
 前述の自転車マップにレイキャビク以外で利用できる自転車ショップや整備が期待できるポイントの情報が記載されている。私は実際に利用したことがないのでそれらの設備レベルは不明。
 レイキャビクでは多種多様なショップが軒を連ねており欲しいパーツはまず見つけることができる反面、ここも価格は非常にお高い。
 このことから旅行者がアイスランドのショップを利用するのは走行途中で何かしらのトラブルが発生し、道中にレイキャビクによることができるタイミングであった・・・というパターン以外を想像できない。あとレイキャビクで走行終了してダンボールを貰いに行く時だけど、これはショップ利用というかお願いに行ってるから何と言うべきか。
 余談だがケプラヴィーク国際空港には自転車を組み立てたり分解収納するためのバイクピットエリアがある。私は車両で運んでもらったので利用しなかったが、この国を走りに来るほとんどのサイクリストがこのサービスを利用してるんだろうな。なおこのバイクエリアを利用しなくてもバスに自転車乗せてレイキャビクまで移動することは可能。

◎物価・食事
 日記では散々高い高いと言ってたが、他国から遠く離れた北欧にある島国ということを考えればむしろ物価頑張って抑えてる方なんじゃね?・・・とまでは思えないが、それでも北欧物価と比較して無茶苦茶高いというほどではない。というか普通にノルウェーより安い。
 アラスカ等と同じく自国領土で農作物がほとんど育たないため生鮮食品を輸入に頼っており、これらの値段高いのが最大のネック。玉ねぎが1玉で100円とかするし、玉子は6個入りで400円とかするスーパーもあった。
 何にしてもスーパーがある町までの距離が短いので、ちゃんと商品を選んで自炊を続けてれば食費自体はそれほど切迫してくる感じはない。実際私はアイスランドの1日における使用金額は平均で2000円切っており、つまり食費にかけてたお金は1日平均で1000円ちょっと程度。それで毎日ビール2本は飲んでたし。
 そのビールだが、バーとかに行かないとアルコール2.5%のライトビールしか購入することができない。私的にはこのライトビールで十分に美味かったし何よりロング缶1本90円とアイスランドの物価を鑑みると猛烈な安さに毎日大喜びで飲んでいた。
 私は出費抑える方針でアイスランド回ってたから食べなかったけど、魚及び羊の肉は比較的安価で入手することが可能。いうて500gで4桁が当たり前の世界なので私の場合は見切り品しか食べなかったけど。物にもよるだろうが50%引きとか99クローネ(約90円)まで値引きする商品もあるため、本当飼い方次第という感じはする。
 ちなみにガソスタ兼コンビニの小売店でも大概の物は買い揃えることが可能で、最終日に買い忘れてたガムテープとかも急遽ここで買い揃えた。ただし食材の料金はスーパーの2倍くらい取るけど。

◎総括
 突如行くことになったアイスランドだが、結構な金額と時間を要しても来て良かったと思える自然豊かで走るの面白い国だった。夏のアイスランドはオーロラも見れないし氷洞窟も形成されておらず有名ポイントの観光としては1枚落ちるのかとも思っていたが、昼が長くて数々の自然の風景を長時間楽しめるので「アイスランドの自然が見たい」というタイプなら心底楽しめると思う。
 何より自転車で旅行するには最高の環境で、治安の良さも相まってアイスランド1周とかはもっと初の自転車旅行に広まって然るべき国だと思う。地理的に遠いから日本人サイクリストは少ないけれど、ヨーロピアンにとっては日本の北海道みたいな「夏に訪れてみたい自然豊かな憧れの地」ってポジションらしいし。
 とにかく想像していたより夏のアイスランドはずっと過ごしやすくて楽しめるので、もっと旅行者増えても良いんじゃないかな。物価も北欧と比較すればそれほど高いとは思わないし、やっぱ島国というのは独特な魅力があるですよ。