2019年7月17日〜7月27日 8月9日〜8月15日
走行日数18日間
累計走行距離1584km(95237km〜96209km・97468km〜98080km)
◎道路
私が今まで走ってきたヨーロッパの中で最も走りにくい国。路面状況とかそういうのはしっかりしてると思いきや、ちょっと小さな道走ると平気で未舗装路が出てきたりもする。しかし本当に問題なのは日本と同じく車のことを基準にした道路造りとなっていて自転車が走ることを顧慮に入れてない点が多すぎること。
道路が1本しかないのに自転車走行不可のトンネルを設置してるのも腹立つ(しかもそんな道を「自転車で走るのに人気の道」とかPRしてやがる)し、自転車専用道路が出てきても道路と自転車道を完全に区分けしていてなかなか入れない。というのも自転車道が始まるといった標識がないため、いつの間にか自転車道路が出てきてるけどガードレールなり溝があってそちら側へ行くことができないという間抜けな状況に陥りがち。しかもこの自転車道が突如として途切れ、そこから道路へと戻る道がなかったりする。要するに自転車のことを知らない人間が「自分の国は環境に配慮し自転車に対してちゃんと色々対応してるんですよ」という感触を受ける。
坂道が急だとかトンネルが多いとかは土地柄仕方のないことと思うけど、自転車に配慮している風を装って実際は駄目駄目というのはタチが悪い。ドライバーの運転マナーに助けられてるから良いものの、多くの道路で側道は作られてないし、先の自転車用道路は町の近辺しか出てこない。しかも道路と違って自転車用道路は整備をしてなく路面のギャップが多かったりボコボコで危ないことも多い。下手すると自転車用道路は未舗装の砂利道だったりもする。
まぁコレはヨーロッパ他国と比較しての道路事情というのもあって、全世界的に見ればかなり上位だとは思うんだけどさ。周辺諸国が良すぎた感は確かにある。ちなみに右側通行。
◎治安
コレはほとんど気にしなくても良いんじゃないかと。もう走ってても雰囲気が緩やかというか、危険を感じる予感がしない。地元の人も「野宿?うん全然問題ないよ」とか言ってくるほどの土地だし、少なくとも都市部分でもなければトラブルに出会う確率は非常に低いと思っていた。そしてノルウェーにはその「都市」と言えるような規模の町がほとんどない。
首都のオスロだけは物乞いとかもいたりして注意が必要だと指摘されたが、そもそもオスロの町に行ってない私にとってこの国は1から10まで治安に対して不安視することがない素晴らしい国であった。後半なんかスーパーに買い物入る際、自転車に鍵かけてなかったし。油断しすぎじゃない?とか思われるかもだが、それが気にならないくらい緩やかなのだ。
◎ビザ・出入国
シェンゲン協定に属する国なので審査なし。それは別に構わないけどさ、シェンゲン入ってる国は自国通貨のノルウェークローネじゃなくてユーロに統一するとかそういうルールが欲しい。何しろ陸路国境には看板1つ立ってるだけで両替所なんて気の利いたモンは存在しないため、現金支払いスタイルの場合特に北部は事前にお金を用意してないと両替所や銀行・ATMが無くて何にも買うことができないパターンにハマる。
◎交通事情
非常に良い。かなり他国のドライバーも多かったけれど、みんな揃ってマナーの良い運転を心掛けてる印象。基本的に信号とか無いのでスピード上げがちな国だけど、自転車追い越す時でもカーブの手前とかちょっと先が見えないとちゃんと減速して待っているのは素晴らしいと思う。
この時期は特に大型車であるキャンピングカーや観光バスも多いのだけど、こうしたドライバーの努力があってかノルウェーの走行はそれほど怖い思いをしたことがない。世界一危険な道とかされる国道63号線らしいけど、この道が普通に運行されてるのはこうした人たちの運転マナーの良さが根底にあると私は思う。
◎特徴
そりゃもうフィヨルドですよ。ノルウェー海岸線を走る複雑怪奇な地形は特に南西部の方がダイナミックで迫力に飛んでいるらしく、私もそうした場所を好んで走ったのだが成る程コレは圧倒される。
海から突き出た陸地がそのまま数百mの山に直結してるフィヨルドは、トンネルは多いし道路も途切れて船使わないと渡れないことも多々ある。洒落にならない急激な坂道が出現したりと自転車で走るの決して楽な場所ではないのだが、それを補って余りある楽しさがありますとも。
ちゃんとルートを選べば海岸線沿いの海面スレスレで高低差ない場所のみを走行することも可能。かなりのルートをフェリーが結んでいるので是非とも面白ルートを探って走って欲しい。
◎気候
北欧全体に言えることだがこの時期のノルウェーは雨が多い。私はかなり運が良かった方だと思っているが、それでも時おり雨で停滞し動けなくなることがあった。なお7〜8月のノルウェーなら寒さは気になるほどではない。今年(2019年)のヨーロッパは猛烈な熱波に襲われる異常気象だったらしいので、来年以降どうかは分からんが。
とにかく雲の流れが早く、さっきまで晴れていた空があっという間に雲に覆われてしまうことも珍しくない。天気予報は注意して確認繰り返したが1〜2日後ならともかく、週間予報なんてまったく当てにならないというのが私の感想。1週間ずっと雨だった予報が全部快晴になったりとかするくらい。
◎言語
これがノルウェー語で基本はアルファベットを使用してるものの、見たことない文字が色々使われている上発音が英語とかなり異なるので地名もうまく読めないことが多い。
会話する分には国民のほぼ全員が綺麗な英語を話すので問題となることは少ない。トンネル通過するときにピックアップしてくれたおじいちゃんの4人組は、内3人が英語話せなかったのでお年寄りになると英語使用率も若干下がるのかもしれない。
◎宿(野宿)・Wi-Fi
森林地帯が多くて人口が少ない上に川やら湖が無数にあり、それでいて動物に襲われる危険性が非常に少ない上に、レストエリアは設備も立派で数も多いという、もしかすると世界一野宿がやりやすい国ではないかと思う。宿どころかテントサイトのキャンプ場ですら3000円軽く超えてくるような国なので、恐らくほとんどの自転車旅行者は野宿を繰り返しながらこの国を走っているのではないかと想像する。それを示すかのようにちょっとケモノ道を入っていくと野営した後なのか焚き火の跡を発見することも多かった。
ちなみに宿泊施設を利用せずともネット環境は非常に高いレベルで整っているので問題となることはない。大手チェーン系のスーパーは3つくらいFreeWi-Fi使えたし、図書館がかなり小さな町でもあるため便利に使える。町のコミュニティセンターみたいな場所でもネット使えることがあったし、どうにもならなければそこら中にカフェがある。鬼のように物価高いノルウェーだが、何故かコーヒー関連は日本より安いのでこういった場所を利用したこともあった。
速度もまったく文句ないレベルで速いしネットに関して北欧は本当に優秀ですわ。
◎動物
一応熊が出るらしい。といってもアラスカやカナダ北部ほど生息数が多くないそうで、日本と同様に熊が人を襲ったりした場合は大事件としてニュースで報道される程度には珍しいとのこと。
他の動物では鹿というか要するにトナカイをよく見かけるが、こちらもムースみたいな大きさではなく小型なのでそれほど危険を感じることはない。そういう意味では同じ極地にありながらアメリカ大陸より随分走りやすい土地だと言えるかな。
◎自転車店
通規模程度の町なら専門店があると思って良い。それ以外にもノルウェー全土にあるスポーツ系のお店で「SPORT1」という店等にも自転車コーナーがありある程度のパーツが取り扱いしている。普通にこのSPORT1でチェーンリンクが販売されてたりもしたので、店舗によって異なるが品揃えは悪くない。ただし専門系ではないので店員の知識や技術は今ひとつの印象がある。
物価が高いとはいっても自転車のパーツのみを切り取れば他の北欧諸国と値段的にはほぼ変わりない。私の場合は店員さんがやたら親切にしてくれた関係でノルウェーのショップはすこぶる印象が良く、そうすると全体的によく見えるバイアスがかかっているかもしれないが。
あと大型ホームセンターみたいなお店で取り扱ってる自転車コーナーのパーツは驚くほど安くてビックリした。どこぞ謎メーカーのチューブだとかライトやグローブがあったが、こうした消耗品で品質を気にしないのならば有用だと思う。実際私は予備のチューブをここで購入している(まだ交換してないので実力は未知数)。
◎物価・食事
日記では散々「高すぎる」だの「狂ってる」と罵詈雑言並べてはいるが、別にノルウェーの商品全てが一律に高いわけではなくて、ある程度値段抑えられた商品だって存在しないこともない。特にファーストプライスと表示された多分ホームブランド商品とかは比較的お求めやすくなっていて、こうした商品を中心に野菜類を選んでいけば食事に関してはそれなり程度の金額に抑えられる。
とにかく食材では肉が無茶苦茶な高価格で、魚に関しては比較するとそこまで凶悪ではない印象。これはやはり漁業国だからなのか?それを示すようにツナ缶なら1缶120円くらいで購入できるタイプがあり、これもあってノルウェーの昼食はツナパスタ1本になってたな。
ヨーロッパは全体的にビールが安い傾向あったがノルウェーだけはビールも異常に高いのが飲兵衛サイクリストにとっては辛いところ。普通の500mlビールだと4〜500円するし、1番安いタイプでも250円くらいからスタートという料金設定にはビール好きの私も購入に躊躇を覚えますよ。かといってノンアルコールタイプは美味しくないしでホームブランドのコーラを買ってそれで我慢する日が多かった。そのコーラも本物のコーラは500mタイプが1本300円とかするし、偽コーラでも1.5リットルで200円近い。酷い国ですよまったく。
あとフィヨルド地帯を走行すると何回かは短距離フェリーに乗船することがあると思うが、1kmに満たない距離で4〜500円平気で取ってくる。なお支払いに関しては船員がカード読み取る機械持ってるのでカード払いが可能。
唯一安いと感じたのはコーヒーくらいかな。カフェだと1杯300円とかで、コーヒー豆も500円とかで色々売ってる。それでも隣国スウェーデンより高かったが。
キャンプ場代金も3000円を超える値段ばかりだったが、どこでも野宿できるので利用はしていない。ノールカップに関しては自転車なら入場料無料というのもあるし、そりゃ最北端だけ目指して他は出来るだけスルーしたいというサイクリスト増えますよ。
◎総括
物価クソ高い上に道も悪いという、およそ自転車旅行に向いてない国なのだが、フィヨルドの圧倒的な光景がそれらのマイナス面を一蹴する、他には無いワンポイントの輝きで勝負している印象が強い。
ただそれだけじゃ私だって18日間もこの国に滞在したりしないのであり、何だかんだノルウェーという国が好きだったんだなと走り終えてみて改めて感じる。良いところってのは少し離れてみないと見えづらいとでもいうべきか。
ノールカップに向けて走るサイクリストの多くがフィンランドやスウェーデンではなくノルウェーを走りたがるのも、他の国には無い特別な景色と体験を求めているからなのだということが今はよく分かる。北欧の景色といって最初に思い出すのがさ、森林地帯とフィヨルドの海岸線なくらい思い出深かった。
ただし本当に物価高い。旅行者多いのに絶対値段下げないマンのノルウェーは、何につけても我が道を行く国であり、我々旅行者は悔しいことにそのノルウェースタイルに迎合せねばこの国を走ることは許されないのだ。